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第6回 飲酒と健康に関する講演会(東京・国立がん研究センター)- ①アルコール健康障害対策基本法施行後の動き等、②アルコール健康障害対策推進基本計画、③女性と飲酒、④アルコールと肝臓

(公社)アルコール健康医学協会が主催する講演会に参加しました。過去に「女子とお酒と東洋医学と」という講座を行ったことがあるので、「女性と飲酒」の講演が特に興味深かったです。

テーマ:第6回 飲酒と健康に関する講演会
日 時:2016年10月31日(月) 13:00~16:45
場 所:国立がん研究センター内・国際研究交流会館(東京都中央区築地5-1-1)
料 金:無料(事前登録制)
主 催:(公社)アルコール健康医学協会
後 援:厚生労働省、国税庁、(公財)日本学校保健会、健康日本21推進全国連絡協議会

★会場
161031 (4)第6回飲酒と健康に関する講演会(国立がん研究センター)会場入口
国立がん研究センター・国際研究交流会館は、都営地下鉄・大江戸線の築地市場駅(A3出口)から徒歩3分です。この日は地下鉄の東銀座駅から歩きました(約850m、徒歩11分)。事前予約者に郵送される”受付票”を担当者に渡して入場します。

★プログラム
161031 (6)第6回飲酒と健康に関する講演会(国立がん研究センター)レジュメ
主催者あいさつ(10分)
【1】アルコール健康障害対策基本法施行後の動き等(30分)
【2】アルコール健康障害対策推進基本計画(55分)
【3】女性と飲酒(55分)
【4】アルコールと肝臓(55分)

★講演
161031 (5)第6回飲酒と健康に関する講演会(国立がん研究センター)会場内
(公社)アルコール健康医学協会の田中慶司理事長の開会あいさつに続いて、4本の講演が行われました。


【1】アルコール健康障害対策基本法施行後の動き等
講師:吉見 逸郎氏(厚生労働省 健康局 たばこ対策専門官)
※同局の正林督章氏(健康課長)が急遽欠席されたため代役

<抄録より>
・厚生労働省では平成25年度から”健康日本21(第二次)”を中心に、飲酒に関する正しい知識の普及啓発や未成年者の飲酒防止対策等の取組みを行っている。

・第63回WHO総会で「アルコールの有害な使用を軽減するための世界戦略」が採択された(平成22年5月)。国際的な流れを追い風に国内でも法整備を求める声が高まり、「アルコール健康障害対策基本法」が平成25年12月に成立、平成26年6月1日より施行されている。

・”アルコール健康障害対策推進基本計画”は、14回の関係者会議を経て、平成28年5月に公表された。

《基本計画の基本理念》
①発生・進行・再発の各段階での防止対策/当事者やその家族が日常生活及び社会生活を円滑に営むための支援
②アルコール健康障害に関連して生ずる飲酒運転、暴力、虐待、自殺等の問題に関する施策との有機的な連携への配慮

《基本計画の基本的な方向》
①正しい知識の普及及び不適切な飲酒を防止する社会づくり
②誰もが相談できる相談場所と、必要な支援につなげる相談支援体制づくり
③医療における質の向上と連携の促進
④アルコール依存症者が円滑に回復、社会復帰するための社会づくり

《健康日本21(第二次)から引用した目標設定》
①生活習慣病のリスクを高める量を飲酒している者(1日当たりの純アルコール摂取量が男性40g以上、女性20g以上の者)の割合の減少(目標:男性13.0%、女性6.4%)
②未成年者の飲酒をなくす
③妊娠中の飲酒をなくす
基本計画は平成32年度までであり目標達成時期を2年間前倒ししている。

・同省では、国民一人一人が自ら健康づくりに取り組むことのできる社会環境の整備を含めて、関係者各位と連携し、健康づくり施策を推進していく意向。


【2】アルコール健康障害対策推進基本計画(55分)
講師:杠 岳文[ゆずりは・たけふみ]氏(肥前精神医療センター 院長)

<抄録より>
(1)わが国のアルコール健康障害対策の課題
・アルコール専門医療が久里浜医療センターで始まってから半世紀が過ぎるも、なお多くの課題。

・アルコール依存症患者数107万人(推計)のうち、専門医療機関を依存症の病名で受診している者は4万人程度と少ない。
→専門医療機関の整備とともに、一般医療機関(患者の8割以上が過去1年間に受診している)での”過量飲酒”への積極介入と専門医療機関との連携強化が求められる。

・これまでは重症の依存症患者に対する断酒治療が中心で、軽度の依存症や(1千万人にも及ぶとされる)依存症の手前の段階にある者への介入が行われていない。さらに(学校教育等でアルコール健康障害が取り扱われるも)一般住民のみならず保健医療従事者の理解も不十分。飲酒運転事故は未だ止まず、アルコール依存症への偏見も根強く残る。
→”不適切な飲酒が様々な健康障害や事故を招く”ことや、”過量飲酒を続ければ誰でもアルコール依存症になり得る”ことの再啓発、保健医療従事者に対する研修強化が必要。

・トラブルを抱える家族の相談窓口が周知されておらず、身近に整備もされていない。
(参考)基本法第1条「不適切な飲酒はアルコール健康障害の原因となり、アルコール健康障害は、本人の健康の問題であるのみならず、その家族への深刻な影響や重大な社会問題を生じさせる」

(2)推進基本計画に掲げられた対策
・基本計画で示された2つの重点課題
①「飲酒に伴うリスクに関する知識の普及を徹底し、将来にわたるアルコール健康障害の発生を予防」
→数値目標を設定(生活習慣病のリスクを高める量を飲酒している者を男性13.0%、女性6.4%まで減少させる。未成年者の飲酒をなくす。妊娠中の飲酒をなくす。)
②「アルコール健康障害に関する予防、相談から治療、回復支援に至る切れ目ない支援体制の整備」
→目標を設定(都道府県における”地域の相談拠点”と”アルコール依存症に対する専門医療機関”をそれぞれ1箇所以上定める)

・これまでアルコール健康障害の早期介入、二次予防についての取組みがなかったが、今回の基本計画では(早期介入の手法として)ブリーフインターベンションの調査研究、早期発見や早期介入のための研修プログラムや人材育成に触れられている。


【3】女性と飲酒(55分)
講師:真栄里 仁[まえさと・ひとし]氏(久里浜医療センター 教育情報部長)

<抄録より>
・女性の飲酒は、増加傾向(経済成長や女性の社会進出)。
・一方で女性は男性と比べてアルコールに脆弱。様々な問題が生じやすい。

《急性アルコール中毒》男性よりも体格が小さく、水分量も少ないため、血中アルコール濃度が高くなりやすい。肝臓も小さいためアルコール代謝速度も低い。
《肝障害》男性の半分程度の飲酒から肝障害をきたす可能性あり。脂肪肝に至る期間も短い。
《乳がん》飲酒量に比して増加することが明らかになっている。
《骨粗鬆症》大量飲酒は骨密度を低下させる。
《胎児への影響》低体重、顔面等の奇形、精神発達遅滞などが生じる胎児性アルコール症候群。
《精神科領域》女性アルコール依存症が近年増加。若年発症、他の精神疾患(摂食障害など)の合併が多い等の傾向。

・女性の飲酒問題については男性以上に予防が重要(上記の健康障害に加え、社会的偏見も強いため)。また、男性とは異なるアプローチが望ましい(自責感の強さ、対人緊張の高さ、家族の非協力などの特徴)。

・健康日本21(第二次)の数値目標
①中学3年女子11.7%、高校3年女子19.9%の月飲酒率を0%に。
②生活習慣病のリスクを上げる飲酒(男性40g/日、女性20g/日)をしている者の割合を女性では7.4%から6.3%に。
③妊娠中の飲酒を平成22年の8.7%から0%にする。

・女性の飲酒問題への認識はまだまだ不十分。健康日本21やアルコール健康医学協会等の各種取組が、社会的な認知度を高めるきっかけとなることを期待。


【4】アルコールと肝臓(55分)
講師:坪内 博仁氏(鹿児島市立病院長)

<抄録より>
・肝がんの原因:B型やC型肝炎ウイルスが大部分→非B非Cの肝がんが20%超まで増加。
・(肝がんの背景となる)肝硬変では非B非Cが26%、うちアルコール性は半数以上。

《アルコールの代謝》
・アルコールの大部分は小腸(一部は胃)から速やかに吸収され、肝臓に運ばれて分解される。
・アルコールは主に肝細胞のアルコール脱水素酵素(ADH)の働きで、まずアセトアルデヒド(毒性が強く、悪酔いの原因になると考えられている)に分解される。
・アセトアルデヒドは主に2型アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)の働きで酢酸に分解され、筋肉などで炭酸ガスと水になる。

《アルコールに強い人と飲めない人》
・ALDH2の活性は、遺伝的に決まっている(ALDH2活性が高い=アセトアルデヒドの分解が早い=お酒に強い)。
・ALDH2の活性は、517個のアミノ酸のうち504番目(以前は487番目)のアミノ酸が”野生型(グルタミン酸)”か”変異型(リジン)”かにより規定されている。

(*1/*1)野生型ホモ接合体→活性が高い。日本人の50%強。
(*1/*2)ヘテロ接合体→活性が低い。日本人の40%弱。
(*2/*2)変異型ホモ接合体→ほとんど活性がない。日本人の約5%。

・この遺伝子多型はがんの発生や薬の効果とも関連する。また、ADHにも遺伝子多型があることがわかってきている。

《アルコール性肝障害》
・長期(5年以上)の過剰の飲酒(1日平均純アルコール60g以上)により生じる肝臓の病気。脂肪肝、肝繊維症、肝炎、肝硬変、肝がん。
・女性やALDH2活性欠損者はこれより少ない飲酒量で肝障害が起きるので要注意。

・アルコール性肝障害の年齢調整死亡率は、男女とも高く(特に女性が高く)なっている。
・重症型アルコール性肝炎(常習飲酒者が大量に連続飲酒をして発症する)は生存率約60%と重篤な病気。
・肝硬変(アルコール性肝障害の末期像)は最近高齢化している。肝がんの発生リスクも高い。

・アルコール性肝障害の治療は、まず断酒。アルコール依存症に対しては、ALDH2を阻害する薬や、最近は飲酒欲求を抑制する薬も使用できるようになってきている。


★日本の酒情報館(東京都港区西新橋1-1-21)
講演会の後は、内幸町の「日本の酒情報館」で利き酒を楽しみました。
161031 (20)日本の酒情報館_大吟醸セット
大吟醸セット3種(税込500円)。
①大吟醸「正雪」神沢川酒造場(静岡県清水市)
②大吟醸「王者」三宅本店(広島県呉市)
③純米大吟醸「花美蔵」白扇酒造(岐阜県川辺町)

華やかな吟醸香と芳醇な味わいが、長時間の聴講の疲れを癒してくれました。
30ml×3杯なので、十分に適正飲酒の範囲内です。

(初稿)2016.10.31

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テーマ : お酒と上手につきあう
ジャンル : ヘルス・ダイエット

オーストラリアのワイン産業を学ぶ(千葉・松戸商工会議所)- ホワイトホース市との姉妹都市45周年記念イベント。全米ナンバー1の豪州ワイン「イエローテイル」とブルー・オーシャン戦略。

松戸市の国際交流協会が主催するオージーワインセミナーに参加しました。旧ボックス・ヒル市(現在のホワイトホース市)との姉妹都市提携45周年を記念したイベントのひとつです。

テーマ:オーストラリアのワイン産業を学ぶ~オージーワインセミナー
日 時:2016年10月21日(金)18:30~20:30
場 所:松戸商工会議所4F中会議室
料 金:2,000円(非会員。会員は1,500円)
定 員:35名
主催者:松戸市国際交流協会
協 力:サッポロビール㈱

★アクセス
161021 (4)オージーワインセミナー松戸_会場
会場の松戸市商工会議所は松戸駅から約400m、徒歩5分です。大学を卒業するまで松戸市に住んでいたので懐かしかったです。

★プログラム
161021 (6)オージーワインセミナー松戸_レジュメ
①主催者挨拶
②講義「ワインの歴史について」講師:合津浩則氏
③講義「オーストラリアワインセミナー」講師:田村祐介氏
④ワインのテイスティング方法とオージーワインの紹介
⑤食文化(ベジマイト)の紹介&参加者交流会

★講義「ワインの歴史について」
講師は、㈱栗原酒販の合津浩則氏。ワインの起源に始まり、ワインが欧州各地やニューワールドへ広がる過程を説明してくださいました。
161021 (20)オージーワインセミナー松戸(ぶどうの口噛み酒)
テレビアニメ「はじめ人間ギャートルズ」で”果実の口噛み酒”が登場したエピソードが興味深かったです。果実には糖分(アルコールの原料)がたくさん含まれるため、猿が木のくぼみなどに溜め込んだものが自然発酵して酒になるという説があります。これを「猿酒(別名、ましら酒)」といいます。一方で、穀物の場合は主原料のデンプンを糖分に変える必要があるため、大昔は口の中で原料をかみ砕いて(唾液の酵素を利用して糖化をして)いたといわれています。これを「口嚙み酒」といいます。同アニメでは猿が果実を”口噛み”していますが、その工程が必要ないほど、果実(特にぶどう)は酒造りに恵まれた条件を備えています。

★講義「オーストラリアワインセミナー」
講師はサッポロビール㈱の田村祐介氏(ワインアドバイザー)。オーストラリアのワインの概要や本日のテイスティング銘柄などについて説明してくださいました。

<オーストラリアについて>
・国土面積は世界6位(日本の約20倍)で、ヨーロッパとほぼ同じ大きさ。
・名目GDPは世界12位(日本の約1/3)で、人口は2,305万人(日本の約1/5)。
・1人当たりの国民所得は世界5位(世界でも裕福な国の一つ)。

<オーストラリアのワインについて>
・生産量は世界6位。60以上の産地で100種以上のぶどうを栽培。
・輸出量は世界4位(輸出が6割)。
・ワイナリー数2,572社(2012年)のうち、上位22社で約8割を占める。

2015年1月に日豪EPA(経済連携協定)が締結され、ボトルワインの関税が2021年3月末までに撤廃されることが決まりました。従来の税率は15%もしくは125円のいずれか低いほうでしたが、同年より毎年2%ずつ逓減されており、同国のワインがさらに注目される見通しです。

<オーストラリアのワインの歴史>
1788年、英国人のA.フィリップ大佐がシドニーへ入植した際に最初のぶどう樹が持ち込まれました。1832年にはジェームズ・バズビー(豪ワインの父)がスペインやフランスからブドウ樹を持ち帰り、ワイン産業がスタートしています。1951年にはオージーワインの名声を世界に轟かせたペンフォールズ社の「グランジ(当時の表記はGrange Hermitage BINI)」が試験生産され、以降、現在のワイン産業の基礎ができあがったとされています。同国ではステンレスタンクを利用したリースリング(日本のシニア世代がおなじみの甘口ではなくドライ・タイプ)や、冷涼産地でのぶどう栽培などの試みが行われています。高級ワイン「グランジ」はサッポロビールが日本への輸入を扱っているそうです。

★イエローテイル~本日のテイスティング銘柄
161021 (11)オージーワインセミナー松戸_赤ボトル
イエローテイルは、豪州のカセラ・ワインズ(Casella Wines)が「PLAY BY YOUR RULES.(ワインくらい自由じゃないと)」をテーマに、誰でも気軽に飲めるワインとしてリリースされました。2001年にアメリカで発売したところ、瞬く間に輸入ワイン全米No.1の売り上げを記録し、”伝説を造ったワイン”と呼ばれています。イエローテイルの成功物語は、有名なビジネス書「ブルー・オーシャン戦略」でも紹介されています(後述)。
日本国内でも15万函の実績があり、オージーワインNo.1の座を占めています。国内で発売されている1,000以上のブランドのうち、15万函を超えるのは12ブランドのみだそうです。
イエローテイル(黄色いしっぽ)の名称は、オーストラリアで人気の動物”ワラビー”の同国での愛称にちなんでつけられたものです。

<カセラ・ワインズ~イエローテイルの醸造元>
1969年にイタリア移民のフィリッポ&マリア・カセラ夫妻がニュー・サウス・ウェールズ州に設立した家族経営のワイナリー。約500の栽培農家と契約を結んでおり、オーストラリアのワイン用ブドウの約10%を同社が使用しています。瓶詰マシーンの処理速度は1時間に36,000本で世界最速。通常は8,000本でも早い方とされているそうです。110万ℓのタンクを100本(1,200万ケース分)も所有する大規模なワイナリーです。

★テイスティング
161021 (8)オージーワインセミナー松戸_カベルネ・ソーヴィニヨン
細長いプラスチック・カップが一人ひとつ配られ、テイスティングのレクチャーを受けながら3種のワインをテイスティングしました。ブルーのラベルは7万人の応募の中から選ばれた日本向けのオリジナルで、今年9月より限定販売されているそうです。

<テイスティング・アイテム>
①白:「イエローテイル シャルドネ」alc.13.0%
②赤:「イエローテイル カベルネ・ソーヴィニヨン」alc.13.0%
③赤:「イエローテイル シラーズ」alc.13.0%
価格はすべて、税別1,007円(750ml、希望小売価格)。

どのワインも果実味が非常に豊かで、気候に恵まれた産地のぶどうで造られているように感じられました。個人的には、パイナップルやマンゴーのような南国フルーツの香りが豊かなシャルドネが好みでした。赤は少し甘みが強く感じられましたが、どの銘柄も充分にコストパフォーマンスの良いワインだと思われました。
講師の方は、甘めのソース系の料理(焼きそば、お好み焼き、タレの焼き鳥など)と赤ワインの組み合わせをおすすめしていました。

★おみやげ
161021 (10)オージーワインセミナー松戸_イエローテイル(ハーフボトル)
アンケート用紙と引き換えに、イエローテイルのハーフボトルがお土産に渡されました。

★ブルー・オーシャン戦略
イエローテイルのサクセスストーリーは、有名なビジネス書「ブルー・オーシャン戦略」でも紹介されています。以下、Wikipediaからの引用です。

”(ブルー・オーシャン戦略とは)INSEAD(欧州経営大学院)教授のW・チャン・キムとレネ・モボルニュが著したビジネス書、およびその中で述べられている経営戦略論。
競争の激しい既存市場を「レッド・オーシャン(赤い海、血で血を洗う競争の激しい領域)」とし、競争のない未開拓市場である「ブルー・オーシャン(青い海、競合相手のいない領域)」を切り開くべきだと説く。そのためには、自分の業界における一般的な機能のうち、何かを「減らす」「取り除く」、その上で特定の機能を「増やす」、あるいは新たに「付け加える」ことにより、それまでなかった企業と顧客の両方に対する価値を向上させる「バリューイノベーション」が必要だとしている。そのための具体的な分析ツールとして、「戦略キャンバス」などを提示している。従来からよく知られているマイケル・ポーターの競争戦略が「事業が成功するためには低価格戦略か差別化(高付加価値)戦略のいずれかを選択する必要がある」としている一方、ブルー・オーシャン戦略では「「減らす」「取り除く」ことによる低コスト化と「増やす」「付け加える」ことによる顧客にとっての高付加価値は両立し得る」と主張している。”

(初稿)2016.10.27

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テーマ : ワインイベント
ジャンル : グルメ

[JSA]プレミアム・チリワイン - ワイン9種類をテイスティング(東京・目黒雅叙園) - コスタ、エントレ・コルディリェラス、アンデスの垂直区分。パイス種のロゼ・スパークリング

日本ソムリエ協会(JSA)のセミナーに参加しました。チリという細長い国のワイン産地を「垂直に区分する」という新しい原産地呼称の考え方がとても興味深かったです。

テーマ:「プレミアム・チリワイン」《ワイン9種類をテイスティング》
種 別:JSA関東支部 分科会セミナー
日 時:2016年10月19日(水) 14:00~16:00
会 場:目黒雅叙園2F華つどい(東京都目黒区下目黒1−8−1)
講 師:野坂 昭彦氏(JSA理事。2014年第7回全日本最優秀ソムリエコンクール準優勝)
協 力:ワインズ・オブ・チリ(チリワイン協会)、チリ大使館商務部
料 金:無料(JSA会員価格。一般2,000円)
定 員:150名

★会場
161019 (1)プレミアムチリワイン目黒_会場
会場は目黒雅叙園。大きな部屋がほぼ満席で、チリワインに対する注目度の高さが伺えました。

★チリワインの状況
最初に、野坂理事による講義がありました。チリワインの5つのトピックスにつき、スライドを使ってわかりやすく説明して頂きました。近年、ソムリエ協会教本のチリの項目が拡充されており、復習の際にとても役立ちました。

【1】チリワインの輸入量
2015年の日本への国別ワイン輸入量において、チリワインはフランスワインを抜いて1位になりました。2016年1~8月の最新数値でも、チリワインの416万ケースは、フランスワインの325万ケースを大きく上回っています。ただし、金額ベースではフランスに軍配が上がるため、チリからは安価なワインが多く輸入されていることが伺えます。チリワインは他国のワインと比べてボトル1本につき関税が60円ほど安いため(※)、コンビニやスーパーなどで売られているような安価なワインほどメリットを享受する状況となっています。
(※)2007年7月に日本とチリの2国間で経済連携協定(EPA)が締結され、ワインにかかる関税は2019年9月までに撤廃される予定(足元は逓減中)です。

【2】歴史
チリのブドウ栽培は16世紀半ば、スペインのカトリック伝道者が聖餐用ワインを造るためにパイス種を植えたことに始まります。1818年にスペインから独立した後は、いわゆる鉱山富豪らがワイン産業のスポンサーとなり、チリワインの新しい時代が始まりました。1850年代にはフランスから大量の苗木が輸入され、マイポ・ヴァレーをはじめとするセントラル・ヴァレーの各地にブドウが植え付けられています。当時(19世紀半ば)のブルゴーニュ・ワインはまだ田舎のワインという認識であったため(?)、輸入されたのはすべてボルドー品種でした。このため、1980年代から1990年代にかけての世界的なヴァラエタル・ワインブームの際に、(カベルネ・ソーヴィニヨンと並ぶメイン品種であった)シャルドネが植えられていないという問題が発生しました。栽培家たちは、セミヨンやソーヴィニヨンの樹を切って、そこにシャルドネを接ぐことで生産量を増やそうとしたそうです。
19世紀後半にはフィロキセラの被害に喘ぐヨーロッパのワイン産地から栽培家や醸造家たちがチリに移住してきました。彼らの造るワインはヨーロッパへと輸出され、1889年のパリ万博ではチリワインの品質が大いに評判になったそうです。
1970年代から1980年代初にかけては、チリのブドウが深刻な生産過剰状態に陥りました。ブドウ価格はほとんどタダ同然になりましたが、農産物の価格引上げ策などが功を奏し、1980年代半ばにはワイン産業に活気が戻りました。
現代のチリワイン産業は「シンプルでマーマレードのようなヴァラエタル・ワイン」と言われる状況から抜け出すべく、テロワールをより重視した付加価値のあるプレミアムワイン造りへと舵を切っています。

【3】ブドウ品種
栽培面積(2014)の上位3位は、ボルドー品種が占めています。
1位:カベルネ・ソーヴィニヨン 41,522ha
2位:ソーヴィニヨン・ブラン 14,132ha
3位:メルロ 11,649ha
4位:シャルドネ 10,571ha
全体:128,638ha(黒: 95,095ha, 白:33,543ha)

フィロキセラ被害も秋雨の心配もないチリでは、19世紀半ばの状態が手つかずのまま引き継がれています。畑の新陳代謝は「プロヴィナージュ(成木の枝を誘引して土中に埋め、発根したら切り離して新株を得る手法)」で行われるため、接ぎ木の手間もかかりません。
チリの農業省農牧庁SAGの植物検疫は非常に厳しく、新品種を外国から輸入する際は検疫所で2~3年かけてウイルス・チェックなどを行うことが義務付けられています。

<フィロキセラ・フリーの理由>
「ブドウの生育期間を通じて乾燥状態が続く」という恵まれた自然環境こそが、チリがフィロキセラ被害から免れた理由であるようです。
2016年のソムリエ協会の教本には、“「東をアンデス、西を太平洋、北をアタカマ砂漠、南を南氷洋に囲まれているチリは自然の要塞でフィロキセラを寄せ付けない」と説明されることがしばしばある。だが、フィロキセラの住む(アルゼンチンの)メンドーサとは、毎日たくさんのトラックが往来しているから、いつでもフィロキセラは侵入できるはずだ。だからこの説明には無理がある。”と記されていました。
現在に至るまでチリにフィロキセラの被害は報告されていませんが、以下の理由から北米台木への接ぎ木を取り入れる栽培家も増えているそうです。
・水田のようなナチュラル灌漑からドリップ・イリゲーションに切り替えるとフィロキセラが発生するリスクが高まる。
・ネマトーダ(ネコブセンチュウ)という害虫対策。
・ヴィティス・ヴィニフェラの根は怠惰で地表近くに水分があるとそこに居座り、地中深くまで入り込もうとしない。

<ヴィーニョ VIGNO ~ ひそかなカリニャン・ブーム>
1939年のイタタ・ヴァレーの大地震でカウケネスのパイス種が壊滅した際、代替品主としてフランス・ラングドック地方のカリニャンが導入されました。大量生産の時代だったため、収穫量の多い品種が選ばれたそうです。
戦後からヴァラエタル・ワインの全盛期にかけて、需要が減少したカリニャンはすっかり放置されていました。しかし、ほんの少ししか実を付けなくなった古木のカリニャンをワインにすると凝縮したすばらしい品質であったため、ヴィユー・カリニャンを売り出すVIGNOが誕生しました。
VIGNOの製造基準:カリニャンのヴァラエタル・ワインであり、以下のブドウを65%以上使用していること。
・樹齢30年以上。
・灌漑をしていない(ドライ・ファーミング)畑で株仕立て(エンバソ)。
・マウレ・ヴァレーのブドウ。

【4】ワイン法と品質分類
<原産地呼称>
チリの原産地呼称はD.O.。ただし、フランスのA.O.C.のような収穫量の制限や栽培品種の特性、熟成期間などの醸造法等に関する規制はありません。また、州>県>市町村に分割されていますが、A.O.C.のようなピラミッド型の品質階層ではなく、栽培面積の大小を表しているにすぎません。

<ラベル表記>
原産地D.O.、ブドウ品種、収穫年のラベルへの表記は、75%以上使用されている場合に限られます。

【5】気候風土の優位性
161019 (4)プレミアムチリワイン目黒_map - コピー
<新しい原産地呼称表示 ~ 垂直区分>
チリのブドウ栽培地域は国土のほぼ中間部分(南緯27~39度までの約1,400km)にあり、産地ごとの特徴は北部、中央部、南部と“水平に区分”して捉えられてきました。しかし、1,000kmも離れているD.O.リマリ・ヴァレーとD.O.ビオビオ・ヴァレーの栽培品種やワインに共通項が多い一方で、東西に50kmしか離れていないD.O.マイポ・ヴァレーとD.O.カサブランカ・ヴァレーでは大きく異なる等の現象があり、チリのワイン産地は(水平区分よりも)気候の特徴や土壌の組成に沿って“(東西に)垂直に区分するほうが適している”という考え方が生まれました。そこで、2011年より、従来の原産地呼称表記に「コスタ」、「エントレ・コルディリェラス」、「アンデス」というニ次的な産地表示を付記することができるようになりました(当該産地のブドウを85%以上使用している場合に限られます)。

①コスタCosta ~ 海岸に面した畑。コースタル。
海から内陸に向かって冷たい海風が吹く地域(南極海から流れるフンボルト寒流の影響。真夏でも海水が冷たいため人々は海水浴ではなく浜辺での日光浴を楽しむ)。土壌にもカルシウムなど海洋性の要素を多く含んでおり、ワインにミネラルや塩味、心地よいシャープな酸味などをもたらす。ソーヴィニヨン・ブラン、シャルドネ、ピノ・ノワールなど冷涼地に適した品種が主体。独特の香味を持つ冷涼地シラーや冷涼地メルロも注目を浴びている。

②エントレ・コルディリェラスEntre Cordilleras ~ 海岸山脈とアンデス山脈の間。中央部の平地。
地中海性気候で肥沃な沖積土壌に恵まれた地域。テロワールは多様で北部と南部では大きく異なる。チリワイン生産の約60%を占め、同国を代表する赤ワインの多くがこの地で造られている。スペインの開拓者が初めてブドウ畑を開いた地。

③アンデスAndes ~ アンデス山脈側の斜面。ヒルサイド。
崩積土(斜面の麓に溜まった土壌)や火山性土壌で構成されており、凝縮した高品質のブドウを生む地域。早朝にアンデス山中で形成された冷気の塊が、朝日とともに麓へ吹き下ろす(ラコ)。そのため、山の麓のブドウ畑は比較的涼しく風通しも良い。遅霜の降りる心配もない。日中は強い日射しを受ける斜面も夜には急激に冷えるので昼夜の寒暖差が大きい。アンデスの雪解け水があるため灌漑も容易。

★テイスティング・アイテム
161019 (11)プレミアムチリワイン目黒_テイスティングアイテム(ボトル9本)
1. 「Sauvignon Blanc Aconcagua Costa 2015」D.O. Aconcagua “Costa” (Errázuriz) 3,800円
2. 「Chardonnay Reserva de Familia 2014」D.O. Límari “Costa”(Santa Carolina) 2,920円
3. 「Riesling Single Vineyard Block 23 2015」D.O. Bío Bío“Entre C.” (Cono Sur) 1,950円
4. 「Pinot Noir Marea 2013」D.O. Leyda “Costa” (Luis Felipe Edwards) 2,300円
5. 「Syrah Valle de Aconcagua 2014」D.O. Aconcagua “Entre C.” (Arboleda) 非売品
6. 「Cabernet Sauvignon Montes Alpha 2007」D.O. Colchagua “Entre C.” (Montes Alpha) 非売品
7. 「Coyam 2012」D.O. Colchagua “Entre C.” (Emiliana) 3,500円
8. 「Carmènere Carmin de Peumo 2010」D.O. Cachapoal “Entre C.” (Concha y Toro) 23,000円
9. 「País Santa Digna Estelado Rosé N.V. 」D.O. Secano Interior (Miguel Torres) 2,200円

<白ワイン>3種
161019 (6)プレミアムチリワイン目黒_白3種

1.アコンカグア(33°S.。コスタ)のソーヴィニヨン・ブラン100%。Alc.13.5%、ph3.18、残糖1.08g/l。ステンレスタンク発酵、3カ月シュール・リー。品種特性のパッションフルーツやツゲのような香りががしっかり感じられる。味わいのアタックは強く、凝縮した果実感があり、中盤からしっかりした酸味が口中を引き締める。ミネラルも豊か。余韻にはコスタの特徴である少しの苦味と塩味を残す。エラスリス社。

2.サンタカロリーナ社のシャルドネ。ブドウはリマリ・ヴァレー産90%と、石灰質土壌のレイダ・ヴァレー産10%をブレンド(前者は31°S.。アンデス、後者は34°S.。コスタ)。Alc.14%。発酵はフレンチオーク樽90%、ステンレスタンク10%。MLFは10-30%でヴィンテージ毎に比率を変えている。外観は輝きのある濃いめのイエローで粘性は高め。香りには熟した黄色いりんごや洋梨のコンポート、ストーンフルーツ系の果実に加えて、MLF由来のアーモンド、樽からの香ばしいトースティーさも感じられ複雑でリッチ。アタックは力強くヴォリューム感があり、ふくよかな果実味ときれいな酸のバランスとれている。

3.ビオビオ・ヴァレー(37°S.。エントレC.)のリースリング。カルシウムを多く含む粘土石灰質土壌でドライ・ファーミング。Alc.13.6%、ph2.9、残糖5.95g/l。ステンレスタンクで低温発酵し、MLFも樽熟成も行わない。外観は緑がかったイエローで、粘性はしっかり。トップノーズはアロマティックで、黄色い果実やカモミール、ジンジャーなどの香り。ふくよかな果実味とヴォリューム感が感じられるが、鋭角な酸味がボディを引き締め、余韻にかけてフレッシュ感を残す。コノスル社。

<赤ワイン>5種
161019 (9)プレミアムチリワイン目黒_テイスティングアイテム9種(グラス)

4.レイダ・ヴァレー(34°S.。コスタ。海岸山脈の西側にあり、海からわずか7km)のピノ・ノワール。クローンは777を使用。海からの冷たい風を受け、ぶどうは酸をキープしながらゆっくりと糖度を上げる。Alc.14%、ph3.4。ホールバンチ(全房)20-50%と残りをホールベリー(除梗破砕後)で別々に発酵。オーク樽で10カ月ほど熟成。外観には熟成を感じさせるグラデーションが見られ、粘性はしっかり。香りは非常に複雑でサワーチェリーなどの赤系果実に加えてスパイス、クローブ、熟成した生肉、湿った土などを感じさせる。上品な果実味と繊細な酸、心地よい熟成香が楽しめるエレガントなワイン。

5.アコンカグア(33°S.。アンデス)のシラー。若干海風の影響も受ける半地中海性気候。Alc.14%、ph3.56。ステンレスタンク発酵後にフレンチオーク樽で12カ月熟成(新樽10%)。外観は黒みがかった濃いめのルビーで、エッジには紫のトーン。粘性はしっかり。濃縮感のあるブラックベリーやスパイス、樽由来のバニラやビターチョコレートの香り。わずかにメントールのニュアンスも。味わいは濃縮感のある果実味が主体だが、余韻にしっかりした上品な酸が残るためフレッシュでエレガントな印象に。アルボレダはカリフォルニアのロバート・モンダヴィとエラスリス社5代目当主エデュアルド・チャドウィックにより誕生したチリのブティック・ワイナリー。

6.プレミアム・チリ・ワインの元祖であるモンテス・アルファ社のカベルネ・ソーヴィニヨン。メルローを10%ブレンド。コルチャグア・ヴァレー(34°S.。エントレC.)。Alc.14.5%。フレンチオーク樽で12カ月熟成。中心部の黒味がしっかりした濃い色調で、エッジにはわずかにオレンジのニュアンス。ブラックベリーやカシスリキュールのような黒系果実の濃縮した香りに加え、甘苦いリコリス、樽由来のビターチョコ、スパイス、土、レザーなどの複雑な香り。ローズマリーやセージなど温暖地のハーブの清涼感も。ふくよかな果実味、円みのある酸味、成熟したタンニンのバランスが良く、熟成のポテンシャルを感じさせる。同社では風水も導入。建物入口には中国語の言葉も。

7.コルチャグア・ヴァレー(34°S.。エントレC.)。ブレンド比率はシラー39%、カルメネール32%、メルロ17%、カベルネ ソーヴィニョン9%、ムールヴェードル2%、マルベック1%。エミリアーナ・ヴィンヤーズは2001年にチリのワイナリーとして初のISO14001を獲得し、所有する1,117haの畑のうち約600haが有機栽培(IMO認定)とバイオダイナミック(デメター認定)で、残りも有機栽培に移行中。同国最大の有機栽培畑を持つ100%自社畑のワイナリー。商品名の「コヤム」はアルゼンチン南部の先住民の言葉で”多くの樹”を表し、畑が多くの樹で囲まれていることに由来。土壌は崩積土。Alc.14.9%、ph3.59.グラヴィティ・フロー(重力を利用して果実やワインを移動させる方法)などの近代醸造技術を導入。6度でコールド・プレマセレーションを行った後、ステンレスタンクで22-25℃で28日発酵。MLFは木樽内で自然に行い、熟成は13カ月。外観は濃いめのルビー色でエッジには若々しい紫のトーン。カシスやブラックベリーの黒系果実に加え、スパイス、リコリス、シナモン、樹皮などの複雑な香りが層をなすレイヤーのある香り。豊かな果実味となめらかな酸、丸みのある成熟したタンニンのバランスがよい。

8.カチャポアレ・ヴァレー(34°S.。エントレC.)のカルメネール。年間3千本しか造らないコンチャ・イ・トロ社のアイコニック・ブランドで、エラスリス社のカイ(KAI)と双璧を為すカルメネールの傑作と言われる。カルメネール86%、カベルネ・ソーヴィニヨン7.5%、カベルネ・フラン6.5%。チリではカルメネールの収穫を最後の5月下旬に行う(早く収穫するとメトキシピラジン由来の青っぽい香りが出てしまうため)。Alc.14.5%、ph3.54。ステンレスタンク発酵でMLFは自然に行い、熟成はフレンチオークの新樽を100%使用。瓶熟12カ月。ノン・フィルター。外観は濃いガーネットでグラデーションは見られずまだ発展段階。香りはカシスリキュールやブラックベリー、ブラックチェリーなどの凝縮感の強い黒系果実に加え、木樽由来のロースト香やバニラビーンズ、ビターチョコ、スパイスなどの複雑な香り。微かなメントール香が爽やかさを与える。味わいのアタックには濃縮感のある果実味を感じ、上品な酸味と滑らかなタンニンのバランスが見事でフィネスを感じさせるワイン。提供の2時間前にダブル・デキャンタ済み。

<ロゼ・スパークリング>1種
161019 (10)プレミアムチリワイン目黒_パイス - コピー
9.16世紀にチリに持ち込まれた伝統品種「パイス種」を100%使用したロゼのスパークリング・ワイン。パイス種の需要激減に悩む約50,000軒の栽培農家を救うため、2008年よりミゲル・トーレス社、タルカ大学、チリ政府が共同研究を行い、3年がかりで同商品を開発。商品名の「エステラード」はスペイン語で星を意味する「Estrella」に由来した造語。Alc.12%、ph3.0、残糖9.0g/l。一次発酵は17℃で19日間、二次発酵は瓶内で9カ月間。外観は桜の花びらのような淡いピンク色で、きめ細やかな泡立ち。ラズベリーなどの赤系果実やピンク・グレープフルーツなどの果実香に加えてバラの花のような香りも。爽やかなフルーツ・フレーヴァ―と心地よい炭酸ガスの刺激、余韻にほのかな滓由来の旨味が感じられる。

(初稿)2016.12.10

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テーマ : ワイン
ジャンル : グルメ

ワイングラスで大吟醸を楽しむ!(東京・白鶴銀座スタイル)~日本酒道連盟の勉強会に初参加。ビルの屋上に実る白鶴錦の稲穂。

日本酒道連盟の勉強会にはじめて参加しました。同連盟は垰野兪[たおの-やすし]弁護士が発案され、総裁に竹田恒徳宮様を戴いて昭和63年に設立された日本酒の愛好会です。「お酒にも、(日本古来の文化である)華道・茶道と同様に『道』があってもよいのではないか」という趣旨のもとに、勉強会や懇親会、酒蔵見学などが行われています。

日時:2016年10月13日(木) 14:00~15:45
場所:白鶴銀座スタイル(東京都中央区銀座5-12-5白鶴ビルディング7階)
料金:4,000円(会員、ビジター同額)
参加:27名

★会場(白鶴銀座スタイル)
161013 (1)白鶴銀座スタイル(外観)
会場の「白鶴銀座スタイル」は、東銀座駅の近くの白鶴ビルディング7階にあります。兵庫県・東灘区に本社がある白鶴酒造が「銀座から日本酒文化の情報発信をする」ことを目的につくられた施設で、日本酒に関するセミナーやイベントが行われています。屋上の「白鶴天空農園」ではオリジナル酒米の“白鶴錦”が育てられています。

★勉強会の内容
①「白鶴銀座天空農園」見学
②日本酒基礎知識
③ワイングラスで大吟醸
④利き酒クイズ
⑤日本酒と料理の相性 

★白鶴天空農園
161013 (6)白鶴銀座スタイル_天空農園のかかし - コピー
7階のセミナールームで本日の予定などを確認した後に、階段で天空農園に移動しました。屋上に通じる扉を開けると、白鶴錦の稲穂と案山子[かかし]がお出迎えしてくれました。

161013 (18)白鶴銀座スタイル_屋上看板
屋上では、農園長の小田朝水さんが農園立上げの苦労話などをしてくださいました。

屋上で白鶴錦の稲を育てるというプロジェクトは、2007年6月にスタートしました。プランター100基と使用済みの酒樽40荷(樽は一度使うと廃棄する?)を屋上の空きスペースに配置し、社員5-6名で土づくりから始めたそうです。ビルの屋上での稲作は誰もが未経験だったので、試行錯誤の連続でした。最初はコンクリートの上にブロックを積み、防水シートをはって土を入れてみましたが、ふわふわして作業性が悪く、すこし引っ掛けただけでもシートが破れて水漏れしていたそうです(後に、アスファルトを地面に焼き付けることで解決しました)。土も当初はホームセンターで購入したものにJAの肥料を入れて使っていたそうですが、軽量で保水性がある屋上緑化型の土を何とか探し当て、土の深さが10センチほどの田んぼをつくれるようになったそうです。
「夜も明るい銀座での稲作は無理」という専門家もいたそうですが、屋上のネオンを22時に消すなどの配慮を重ねながら、なんとか9月頭の出穂を迎え、10kgちょっと(800株分)の稲の収穫にこぎつけたそうです。現在では、大体60kg、最高時で65-67kgの収穫ができるようになったそうです。

161013 (12)白鶴銀座スタイル_屋上(用具類)
稲作と並行して、白鶴銀座では醸造免許の申請準備も進めていました。2008年2月に小仕込み(試験醸造?)の免許を取得し、試行錯誤を重ね、2012年にようやく商品化にこぎつけたそうです。銀座の屋上で育った白鶴錦は、当初は“吟醸酒”、後に“大吟醸酒”に生まれ変わり、毎年30本が銀座のデパートで販売されているそうです(三越銀座店と松屋銀座店で15本ずつ。以前は松坂屋銀座店でも販売)。仕込みは毎年3月1日くらいに開始し、商品は5月に発売されます。大吟醸酒の販売価格は、税別10,000円(600ml)です。
日本酒道連盟の勉強会では、過去に銀座の白鶴錦を使ったお酒の仕込み体験と試飲を行ったそうです。

161013 (8)白鶴銀座スタイル_白鶴錦の稲穂 - コピー
収穫した米は銀座ビルの屋上で足踏み式の脱穀機を使って脱穀し、本社(農業試験場?)に送られて玄米にされます。後に、特定名称酒を名乗るために、全農パールライス八王子工場で穀物検定検査を受けますが、指定米以外では最高ランクとなる2等米を取得し続けているそうです。

161013 (11)白鶴銀座スタイル_屋上からの景色 - コピー
害虫については、「葉巻虫がよく飛んでいるけど見つけて手でつぶす程度。農薬を播くほどではない」そうです。近隣の紙パルプ会館でミツバチを飼っているため(銀座ミツバチプロジェクト)、なるべく農薬を使わないように配慮しているそうです。

屋上での農作業は、2009年より近隣の小学生にも体験してもらっているそうです。今年は10/25に60名ほどの生徒が来て白鶴錦の刈り取りを行う予定です。収穫した米は小学校に持っていき、おにぎりなどにして食べてもらうそうです。小田さんは「酒米は美味しくないと言われているけど、白鶴錦はおいしい。粒が大きくてもちもち感がある。小学生たちにとって、食べて初めて記憶に残ると思っている。地域密着の活動を目指している。」と仰っていました。

161013 (10)白鶴銀座スタイル_埼玉のくわい
屋上では白鶴錦以外にも、1都16県35品種ほどの植物が栽培されています。写真は埼玉県のくわい。年間を通じた屋上緑化を約束することで、中央区の助成金を得ているそうです。多い時はプランターで300ほどの植物を栽培しており、水やりだけでも2-3時間(朝の7時から9時ごろまで)かかるそうです。古いビルで屋上に貯水槽があるため、水圧が高い1階と違って、水やりに時間がかかるそうです。

161013 (19)白鶴銀座スタイル_お稲荷さん
屋上には商売繁盛を祈願するお稲荷さんも祀られていました。

<白鶴錦>
161013 (25)白鶴銀座スタイル_白鶴錦_純米大吟醸
白鶴錦は酒米の王様と呼ばれる「山田錦(母:山田穂×父:短稈渡船)」の兄弟品種です。山田錦と別のお米を交配した”子”や”孫”はたくさんありますが、山田錦と同じ父母を交配した”兄弟”の育種は初めてだったそうです。母の山田穂は、山田錦という優秀な子ができたため、昭和初期で栽培が途絶えていました。白鶴酒造は山田穂を60年ぶりに復活させることから始め、1995年に、山田穂と渡船(短稈渡船と同じ?)の交配品種の育種を始めました。そしてようやく、2004年に「白鶴錦」として品種登録申請・出願公表を行うに至りました。白鶴錦は現在、兵庫県と山口県(と銀座のビルの屋上)で育てられているそうです。
白鶴錦は、山田錦と比べて”背丈が短いため倒れにくい”、米粒や心白が大きい”、”タンパク質の量は同程度に低い”という特長を持ち、お酒にした時の味わいが”山田錦よりも深い”とされているそうです。
161013 (21)白鶴銀座スタイル_土壌 - コピー
山田穂の背丈は140cmもあり倒伏しやすかったため、山田錦は品種改良により130cmに抑えられたそうです。白鶴錦はさらに低い1mほどに抑えたため、より育てやすいそうです。山田錦は(背丈だけではなく)根も長かったと記憶していたため、屋上の深さ10cmの田んぼでは浅すぎないか質問したところ、根が横に張って一枚岩みたいになるため風にも強いとのご回答でした。

★日本酒基礎知識
161013 (5)白鶴銀座スタイル_セミナー資料など
屋上から7階のセミナールームに戻り、白鶴酒造の紹介と日本酒の講義を受けました。講義では、日本酒の原料、ラベルの読み方、日本酒の分類などのポイントを説明して頂きました。

★利き酒~ワイングラスで大吟醸
続いて、白鶴錦の純米大吟醸をテイスティングしました。
161013 (26)白鶴銀座スタイル_白鶴錦大吟醸とリーデルのワイングラス
「超特選 白鶴 純米大吟醸(白鶴錦)」Alc.15-16%、日本酒度+4、酸度1.4、アミノ酸度1.0、税別3,000円。
161013 (27)白鶴銀座スタイル_ワイングラスで大吟醸
使用するグラスは「リーデル大吟醸オーグラス」。リーデルは260年以上の歴史を持つオーストリアのメーカーで、世界で初めて”ブドウ品種ごとに”理想的な形状のグラスを開発しました。「大吟醸オーグラス」は縦長のボウル形状で、次のようなメリットがあるそうです。
①香りがわかる:ボウル型の形状で、香りが溜まり、上立ち香が強く感じられる。
②酒が見える:ガラス製で酒が光を通して見えることで、輝き(テリ・サエ)や色調、グラスを伝う酒の粘性あが見える。
③味の印象が変わる:ワイングラスは飲むときに顎が上がり、口径が広いので、酒が一直線に早く流れ込み、味わいの豊かさ、濃さが強調される。

レクチャーに従って外観を見たあとに香りを確認しました(まだ飲まないで下さいと何度も念押しがありました)。
まずワイングラスで香りをかぎ、続いてポリコップに酒を移します。後者だと香りがこもらずに逃げていってしまうそうです。
味わいも同様にワイングラスとポリコップで利き分けました。口径が広いワイングラスだと酒が一直線に奥まで流れ込んで舌の上にまんべんなく広がる一方で、ポリコップだと酒が口中の手前に落ちてしまい、味わいが奥まで伝わらないそうです。

ボウル型のグラスをテイスティングで使い慣れていないため、新鮮な体験でした。脚が付いているグラスと比べてスワリングがぎこちなくなってしまったので、ボウル型の取扱いにも徐々に慣れていきたいと思います。個人的には、大吟醸をブルゴーニュ型のゆったりとした脚付きのグラスで楽しんでみたいと思いました。

★利き酒クイズ
続いて、5種類の日本酒を利き分けるクイズがありました。
161013 (28)白鶴銀座スタイル_利き酒クイズ
①「大吟醸」Alc.15-16%、日本酒度+3、酸度1.3、アミノ酸度1.1。
②「山田錦」Alc.14-15%、日本酒度+3、酸度1.5、アミノ酸度1.2。
③「生貯蔵酒」Alc.13-14%、日本酒度+2、酸度1.2、アミノ酸度1.1。
④「樽酒」Alc.15-16%、日本酒度+1、酸度1.3、アミノ酸度1.3。
⑤「まる」Alc.13-14%、日本酒度+1、酸度1.2、アミノ酸度1.1。

下段の順不同のポリコップの酒が上段の何番に該当するかを利き分けます。まず、消去法で樽香のきいた④、酸味の強い②を消去し、残りの3種をじっくり利きました。香りが取りにくかったので、味わいのアタックと余韻の強弱を軸に判断したところ、なんとか全問正解できました。

★日本酒と料理の相性 
最後に日本酒と料理の合わせ方について説明がありました。

以下の「3つの基本形」がとても参考になりました。
①バランス:日本酒と料理の味の強さを合わせる。
②ハーモニー:日本酒と料理の両方がお互いに作用し、単品では得られない味になる。
③ウォッシュ:料理の後味や嫌味を日本酒で洗い流す。口の中がリフレッシュされる。

①は、甘い(濃い)味×甘口(濃醇)の酒、旨みが強い×濃醇な酒、塩辛み×辛口の酒
②は、酸味が強い×甘口の酒、香りが控えめ×吟醸タイプ、脂っこい×熟成タイプ
③は、脂っこい×淡麗タイプ
というように、組み合わせのコツをよく理解できました。

日本酒と料理の相性について、③のウォッシュ効果だけが語られたり、「料理の”邪魔をしない”酒がよい」、「料理が良い時は酒は二級酒でよい」という言葉を耳にするたびに寂しい思いをしていましたが、この「3つの基本形」を知って、日本酒と料理のマリアージュには無限の広がりがあることを再認識できました。

<本日のおつまみとの相性>
161013 (29)白鶴銀座スタイル_料理との相性
①ポテトサラダ×大吟醸→香りが控えめ×吟醸香(ハーモニー)
②ぶり照焼き×山田錦→塩辛さ×酒の酸味、魚の旨味×米の旨味(バランス)/生臭さ×キレのある味(ウォッシュ)
③やきとり×生貯蔵酒→タレの甘味・脂っこさ×すっきりとした味わい(ウオッシュ)
④ジャーマンポテト(カレー風味)×樽香→スパイシー×樽香(バランス)
⑤大根の田楽味噌×まる→タレの甘み×マイルドな味わい(バランス)

⑤はお店のご好意(?)によりローストビーフにグレードアップしたため相性の確認ができませんでした。しかし、女性講師の「⑤のまるは何にでも合います!」というナイスフォローが入り、楽しく食事と酒の相性を確認することができました。

★おみやげ
最後に、灘の白鶴酒造資料館で限定販売されている「白鶴蔵酒」をおみやげに頂きました。
「白鶴 蔵酒」Alc.17-18%、日本酒度+3、酸度1.9、アミノ酸度1.4。税別1,000円(500ml)。

★打ち上げ
勉強会の後は、「魚々十 銀座本店」での打ち上げに参加させて頂きました。粋に楽しく(たくさん)お酒を嗜まれる方々に囲まれて、とても楽しい時間を過ごすことができました。最後に、有志で新橋の「信州おさけ村」に流れ、立ち飲みで〆めました。

学びがあり、交流があり、とても有意義な一日でした。

[追記]
白鶴錦のお酒は白鶴酒造しか造っていないと思い込んでいたところ、なんと、「十四代」(山形県・高木酒造)でも取り扱っていました。ぜひ利いてみたいと思い値段を調べたところ、1升瓶で2万円超えばかりだったので諦めました... 白鶴錦のお酒をリーズナブルに楽しむには、白鶴錦を100%使用した純米酒の「灘の生一本」(税別1,170円)がおすすめだと思います(秋だけの限定販売品です)。

(初稿)2016.10.28

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【見学】梅宮大社(京都・右京区) - 日本最古の酒「天甜酒」を醸したのは、絶世の美女の酒解子神?その父の酒解神?

日本最古の酒造神をまつる梅宮大社[うめのみやたいしゃ]を見学しました。同じく酒造の神として有名な松尾大社[まつのおたいしゃ]から徒歩圏のところにあります。

日時:2016年9月25日(日) 15:00~
場所:梅宮大社(京都府京都市右京区梅津フケノ川町30)
料金:無料

★アクセス
160925 (22)松尾大社駅
最寄駅は阪急電鉄・嵐山線の松尾大社駅です。この日は四条河原町方面から訪れました(河原町駅13:40→13:47桂駅14:00→14:04松尾大社駅。運賃220円)。最寄駅から梅宮大社までは約850mです。

160925 (24)松尾橋
改札口を出て右手に進み、踏切を渡って、松尾橋がかかる道を直進します。
160925 (25)松尾橋
松尾橋からの桂川の眺め。少し北に行くと有名な観光地の嵐山があります。

160925 (29)梅宮大社_案内板
松尾橋を渡って更に直進し、この看板のあるT字路を左折すると梅宮大社です。

★鳥居から楼門[ろうもん]まで
160925 (31)梅宮大社_一の鳥居
一の鳥居。
160925 (32)梅宮大社_鳥居
赤い鳥居。
160925 (33)梅宮大社_随身門 - コピー
楼門の”随身門”。2階には酒造会社から寄贈された(はずの)菰樽[こもだる]が積まれています。

160925 (34)梅宮大社_石碑 - コピー
楼門の脇の石碑。「梅宮日本第一 酒造之祖神 安産守護神」と刻まれています。

★境内
160925 (38)梅宮大社_菰樽 - コピー
御手洗[みたらい]の脇にも菰樽が積み上げられていました。
160925 (36)梅宮大社_拝殿
拝殿。
160925 (39)梅宮大社_本殿 - コピー
本殿。
160925 (44)梅宮大社_百度石 - コピー
お百度参りのための百度石。
160925 (46)梅宮大社_見切石の説明書きとベンチ
境内のベンチには、様々な酒造会社のステッカーが貼られていました。

他にも、本殿の横には、またぐと子宝に恵まれるといわれる”またげ石”があります。
また、梅宮大社はその名の通り、梅の花の名所としても知られてます。

★梅宮大社の祭神
160925 (35)梅宮大社_説明書き
梅宮大社の本殿には、「父-娘-娘婿-その子供」の4柱が祭られています。

【父】酒解神[さかとけのかみ]=大山祇神[おおやまづみのかみ]
【娘】酒解子神[さかとけこのかみ]=木花咲耶姫命[このはなのさくやひめのみこと]
【娘婿】大若子神[おおわくこのかみ]=瓊々杵尊[ににぎのみこと]
【子】小若子神[こわくこのかみ]=彦火火出見尊[ひこほほでみのみこと]

娘の”木花咲耶姫命”は、絶世の美女といわれており、夫との一夜の契りで身ごもったことから”安産の神”とされています。また、この懐妊を喜んで(日本最古の酒といわれる)「天甜酒」が造られたため、”酒造の神”ともされています。ただし、この酒を造ったのが、出典によって娘であったり父であったりするため、どちらが(もしくは共同で?)造ったのかを正確に調べきれませんでした...

ちなみに、境内の案内板では造酒の主語が娘でしたが、梅宮大社由緒略記では、主語が父でした。

<境内の案内板より>
”酒解神の御子・酒解子神は大若子神との一夜の契りで小若子神が生まれたことから、歓喜して、狭名田の稲をとって天甜酒を造り、これを飲んだという神話から、古くから安産と造酒の神として有名である”

<梅宮大社由緒略記の”酒造の祖神”より>
”大山祇神は、 木花咲耶姫命が彦火々出見尊を御安産になったのを非常に喜び給い、狭名田の茂穂を以て「天甜酒」を造ってお祝いなされたと日本書紀に載って居りますが、是が穀物を以て酒を醸した始まりであります”

★社務所
160925 (40)梅宮大社_社務所 - コピー
社務所で御神酒と梅酒を購入しました。
160925 (41)梅宮大社_社務所のネコ
社務所のカウンターで優雅に寝そべるネコ。梅宮大社は”ネコ詣で”でも人気の神社だそうです。

★御神酒
160925 (70)梅宮大社_御神酒一式
社務所で購入した御神酒と梅酒。
160925 (72)梅宮大社_御神酒(聚楽第)
御神酒(800円/300ml)は「聚楽第」の純米吟醸酒(精米歩合60%、アルコール分15度)でした。醸造元は、京都市上京区の佐々木酒造です。過去に購入した他社の御神酒はすべて醸造用アルコールを添加した”本醸造酒”だったので、”純米”かつ”吟醸づくり”の御神酒は新鮮に感じられました。
160925 (73)梅宮大社_梅酒
チョーヤの梅酒。アルコール分14度。梅の実が2つ入っていました。

★松尾大社(再々訪)
160925 (61)松尾大社
帰りに松尾大社にも立ち寄りました。「平成の御遷宮」による修復作業がすでに始まっており、駅から2番目の鳥居は白いカバーで覆われていました。
160925 (55)松尾大社_たぬき - コピー
お酒の資料館の前のたぬきの親子。資料館の展示物の配置が、7月12日に訪れた時から少し変わっていました。
160925 (58)松尾大社(加工)
亀の井の近くの天狗岩。前回訪問した時は肉眼で確認できませんでしたが、今回は見付けることができました。

<参考>松尾大社の”亀の井”(2016年7月8日のブログ)

★帰路
160925 (28)松尾橋バス停
帰りは京都駅まで市バスを利用しました(71系統、松尾橋15:35→京都駅八条口16:18、運賃230円)。停留所は松尾橋の近く(梅宮大社側)にあります。始発の停留所なので座れる可能性が高く、時間に余裕がある方にはおすすめです。
160925 (26)松尾橋バス停
160925 (27)松尾橋バス停
バスの時刻表。
160925 (64)京都市営バス71系統_東寺東門前付近
71系統の市バスは、東寺の五重塔の近くを通ります。

★感想など
松尾大社、大神神社に続いて梅宮大社を訪れ、お酒が神道と深く関わっていることをあらためて実感しました。日本の神々は、名称が似ているもの(梅宮大社の”大山祇神”と松尾大社の”大山咋神”など)や、漢字表記・読み仮名が出典によって異なるケースが多々あるように見受けられるため、混同しないように少しずつ勉強していきたいと思います。
天甜酒を醸したのが酒解神か酒解子神のいずれか(または両方か)は、歴史に詳しい方に質問できる機会を待つか、少し時間をおいて文献などにあたってみたいと思います。

(初稿)2016.10.2

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テーマ : 日本酒
ジャンル : グルメ

平成28年度「灘の生一本 2016」特別先行試飲会(兵庫・神戸) - 9銘柄を同時にテイスティングできる贅沢なイベントに初参加

灘の生一本[なだのきいっぽん]の特別先行試飲会に参加しました。灘の生一本とは、”灘五郷の単一の製造場のみで醸造した純米酒”を指し、灘酒研究会に加盟するメーカーが統一ラベルのもとで2011年より発売しています。今年度は灘五郷酒造組合員(28社)のうち、9社より9銘柄が、9月26日に一斉発売されています(大関・菊正宗・剣菱・櫻正宗・沢の鶴・道灌・日本盛・白鹿・白鶴)。

日時:2016年9月24日(土) 10:30~12:30
場所:北野工房のまち 3階大会議室(兵庫県神戸市中央区中山手通3-17-1)
定員:120名(2名連記 60組)
料金:無料
内容:
(1)発売9社からの「灘の生一本」の紹介
(2)「灘の生一本」の試飲会
(3)9社との懇親会(軽食付)

★申込み
160924灘の生一本特別選考試飲会(はがき)
今年の先行試飲会の告知は、灘酒研究会のHPにて9月1日に行われました。参加申込みは2名1組で、同研究会のHPより行います。応募が多数の場合は抽選となり、当選者には後日、参加票のはがきが送られてきます。

★アクセス
160924 (1)東京駅のぞみ1号
東京駅始発の東海道新幹線「のぞみ1号」に乗車し、(宿泊先の)京都駅で新快速に乗り継いで神戸方面に向かいました(東京駅6:00→8:08京都駅8:14→9:07三ノ宮駅)。会場の「北野工房のまち」は、JR東海道線の三ノ宮駅または元町駅から各800mほどです。

160924 (2)スターバックス神戸北野異人館_外観 - コピー
早めに現地に着いたので、「スターバックス神戸北野異人館店」でお茶をしました。JR三ノ宮駅から約900m、北野工房のまちから約700mのところにあります。
160924 (5)スターバックス神戸北野異人館_2階 - コピー
この建物はもともと1907年(明治40年)に北野町1丁目に建築されたコロニアルスタイルの西洋館で、NHK朝の連続テレビ小説『風見鶏』の主人公のモデル(ドイツパン職人のハインリヒ・ブルクマイヤー氏)がオーナーだったこともあります。1995年(平成7年)の阪神・淡路大震災で全壊認定を受けたため取り壊される予定でしたが、神戸市が建物の寄贈を受けた上で解体・部材保管し、2001年(平成13年)に現在地に再建・移築されました。2009年(平成21年)からスターバックスの店舗として利用されています。
160924 (9)スターバックス神戸北野異人館_2階
入館料などは不要で、メニューの料金も通常のスタバと同じです。スタバのWi-Fiも使えます(登録無料)。館内には複数の部屋があり、それぞれに趣きが異なるので、来るたびに違った雰囲気が楽しめます。

★会場
160924 (17)北野工房のまち_案内図 - コピー
160924 (14)北野工房のまち
試飲会が開かれる「北野工房のまち」は、旧北野小学校の校舎をリニューアルして1998年にオープンした複合施設です。3階建てで、館内には神戸ブランドの飲食店や雑貨屋などおよそ20店舗が入居しています。
160924 (20)灘の生一本・特別試飲会_会場入口
試飲会の会場は、旧小学校の講堂を利用した3階の大会議室でした。
160924 (18)灘の生一本・特別試飲会_会場内
会場内のようす。正面にステージがあり、両側に各社のブースが並んでいます。

★受付
160924 (21)灘の生一本・特別試飲会_プログラム
160924 (22)灘の生一本・特別試飲会_パンフレット
参加票のはがきを受付に渡し、資料一式と懇親会の席次(Cテーブル)を記したストラップを受け取ります。

★プログラム
(1)10:30~11:00
・来賓挨拶(神戸市経済観光局局長・山本猛氏)
・主催者挨拶(灘酒研究会酒質審査委員会・明石貴裕氏)
・【9社の商品説明】
(2)11:00~11:40
・【利き酒会】
(3)11:50~12:30
・【懇親会】
・挨拶(広報需要開発委員長・巽良彦氏)
・乾杯(兵庫県産業労働部産業振興局長・竹村英樹氏)
・閉会挨拶(広報需要開発委員・春山裕二氏)

★9社の商品説明
160924 (25)灘の生一本・特別試飲会_ボトル
来賓・主賓挨拶に続いて、各社につき2分間の商品説明がありました。関西の会社らしく(?)、ユーモアたっぷりでわかりやすいプレゼンが多かったです。

①「大関」:大関独自育成米「いにしえの舞」を使用。純米酒らしいふくらみと適度な酸味が調和した酒。独特な香りとコクがあるけど飲みやすい。生酛系酒母を使い、あえて滓下げをしていない。酒質は毎年変えている。
②「菊正宗」:「うまいものを見ると辛口のキクマサがほしくなる」というCMの通り、「辛口」にこだわる。飲み飽きせず、料理の味を引き立てる酒をめざしている。酒米は(山田錦よりも味に広がりと深みがある)「兵庫恋錦」を使い、生酛造りでコク、キレ、押し味を実現。
③「剣菱」:剣菱は辛口と言われがちだが、実際はコクと熟成感のある”中口”。じっくりと丁寧に熟成させた香りと黄金色、濃醇な旨みとコクの調和が特長。
④「櫻正宗」:淡麗でキレの良さを持ちながら、純米酒のふくらみもある。食事と合わせて飲んでいると気が付いたらなくなっているというような酒を目指している。
⑤「沢の鶴」:他社と大きく違うのは、加水をしない“原酒”であること(alc.18.5度)。灘の酒は男酒といわれるが、うちの灘の生一本は「男の中の男酒」。
⑥「道灌」太田酒造:酒米は6年前から「フクノハナ」を使用。おだやかな香りで、ふくよかな酒。今年の生一本は“完成形”と自負している。「今年の道灌はおいしいよ。略して“KDO”」。社長は江戸城築城の太田道灌から19代目を数える。名前を覚えてほしい。
⑦「日本盛」:酒米は「兵庫夢錦」を使用。爽やかな香り、程よい酸味。きれいでキレの良い酒。創業は明治期で、スタート時から株式会社。もとは西宮酒造(株)。
⑧「黒松白鹿」辰馬本家酒造:旨みと適度な甘みがあり、飲みごたえのある酒。辛口でも甘口でもない「旨口」。いつも辛口を注文する人に試してほしい。
⑨「白鶴」:白鶴独自開発米「白鶴錦」(山田錦の兄弟品種)を使用。芳醇な香りとキレの良さ、きれいですっきりとした後味が特長。

各社が造る灘の生一本は、「灘酒研究会の酒質審査委員会」によって厳しく審査され、酒質の評価には(各社まちまちの表現ではなく)”統一用語”が使われています。例えば、”甘辛”、”味わい”、”香り”の評価には同一の5段階スケールが使われており、消費者が各社の酒質を比較しやすくなっています。

・甘 辛:(5)辛口-(4)やや辛口-(3)中-(2)やや甘口-(1)甘口
・香 り:(5)熟成-(4)やや熟成-(3)おだやか-(2)やや華やか-(1)華やか
・味わい:(5)コク-(4)ややコク-(3)中-(2)ややすっきり-(1)すっきり

もっとも辛口は「菊正宗」(5)、もっとも甘口は「黒松白鹿」(1)。
もっとも熟成は「剣菱」(5)、華やかは「白鶴」(1)。
もっともコクがあるのは「剣菱」(5)、すっきり(1)は該当なし。

<各社の灘の生一本>
①「大関」:alc.16度+、いにしえの舞(精米歩合70%)。コクがある・豊かな味わい・適度な酸味・ふくらみがある・おだやかな香り。
②「菊正宗」:alc.16度、兵庫恋錦(精米歩合70%)。ふくらみがある・キレ良い・おだやかな香り・淡麗・辛口。
③「剣菱」:alc.17.5度、精米歩合70%。熟成香・濃醇・旨みある・コクがある。
④「櫻正宗」:alc.15度+、山田錦(精米歩合70%)。淡麗・キレ良い・ふくらみがある。
⑤「沢の鶴」:alc.18.5度、山田錦(精米歩合:麹米65%、掛米75%)。おだやかな香り・濃醇・旨みある・ふくらみがある・キレ良い。
⑥「道灌」太田酒造:alc.15度+、フクノハナ(精米歩合60%)。旨みある・おだやかな香り・ふくらみがある。
⑦「日本盛」:alc.15度+、兵庫夢錦(精米歩合60%)。爽やかな香り・適度な酸味・きれい・キレ良い。
⑧「黒松白鹿」辰馬本家酒造:alc.16度+、山田錦(精米歩合70%)。まろやか・旨みある・適度な甘味・飲みごたえのある。
⑨「白鶴」:alc.15度+、白鶴錦(精米歩合50%)。芳醇な香り・キレ良い・きれい・後味すっきり。

・720ml瓶の価格(税別)は、剣菱のみ1,500円、他は1,170円です。

★利き酒会(40分間)
160924 (24)灘の生一本・特別試飲会_プラスチックカップ
商品説明の後は、各社のブースを自由にめぐって利き酒をしました。写真右側の剣菱は他と比べて濃い山吹色をしており、他社の担当者が一目見ただけで「剣菱ですね」とわかるほどでした。

160924 (27)灘の酒蔵通り
利き酒会の後は、懇親会の会場設営のため、参加者は10分ほど退場を求められます。その間に館内のウインドウ・ショッピングを楽しみました。写真は1階にある灘酒のアンテナショップ「灘の酒蔵通り」の看板。灘の名酒が販売されており、灘の酒を紹介するパンフレットも置いていました。

★懇親会(40分間)
160924 (34)灘の生一本・特別試飲会_懇親会テーブル - コピー
懇親会は立食形式で、各テーブルには灘の生一本9銘柄と軽食が用意されていました。各テーブルには酒造メーカーの方がついてくださるので、いろいろな質問をすることもできました。参加者同士の酒談義も弾み、「東京オリンピック(に伴う和食と日本酒)のPRで樽廻船を造って運行してほしい!」や、「その船に杉樽の酒を乗せて、江戸時代の下り酒の熟成感を再現してほしい!」などの希望や夢(ヨタ話)を楽しく語り合いました。

★赤萬 元町店(神戸餃子)
160924 (37)赤萬_焼餃子
試飲会で日本酒を堪能した後は、「赤萬 元町店」で焼餃子とビールを楽しみました。メニューは餃子とビールのみで、料金は餃子1人前7個が290円、ビールは大500円、小350円です。土日祝はひとり2皿からの注文で、追加オーダーはできません。
160924 (39)赤萬_焼餃子
神戸餃子のタレは味噌がベースです。赤萬は白味噌ですが、もうひとつの人気店「瓢たん」は赤味噌です。両店とも三ノ宮と元町にお店があるので、食べ比べがおすすめです。

★感想など
同じ「灘の生一本」でも各社によって酒質がまったく異なることが印象的でした。特に興味深かったのが「原料米のバリエーションの豊かさ」でした。”県レベル”で独自の原料米を開発する取り組みは多々見られますが、”個別企業レベル”でも独自開発米に注力しているメーカーが複数あるところに、”日本一の酒どころ”である灘の底力を感じました。一方で、灘の生一本に使う酵母菌は、生酛系酒母を除くと、オーソドックスなきょうかい酵母(701や901)を使うところが多いようでした。酵母菌のバリエーションが広がる吟醸酒の世界と比べて、原料米へのこだわりがが田んぼレベルで深化していく灘の酒は、(テロワールに強くこだわる)ワイン造りに通じるものを感じました。

灘の生一本は、各社が試行錯誤を重ねながら毎年酒質を変えているようなので、来年以降もヴィンテージの確認のために全銘柄の飲み比べをしていきたいと思います。秋の楽しみがまた一つ増えました。

★「灘の生一本」のテイスティング会
この感動を地元の愛好家にも楽しんでもらいたいと思い、10/23にテイスティング会を企画しました。
16107灘の生一本 (3) - コピー
東京で9銘柄を揃えるのはしんどかったです...
161023灘の生一本2016
9銘柄を利き直してみて、新たな発見が多々ありました。来年もぜひ、全銘柄のテイスティング会を開きたいと思います。

(初稿)2016.10.9

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【見学】うすくち龍野醤油資料館(兵庫・たつの市) - ヒガシマル醬油の旧本社を活用した日本初の醤油資料館

うすくち醤油のトップ・メーカー、ヒガシマル醬油の「うすくち龍野醤油資料館」を見学しました。うすくち醤油は、こいくち、たまり、しろ、さいしこみと並んで、5種類の醤油のひとつに数えられています(JAS法)。

日時:2016年9月15日(木) 11:10~12:10頃
場所:うすくち龍野醤油資料館(兵庫県たつの市龍野町大手54-1)
内容:自由見学
料金:10円

★アクセス
うすくち龍野醤油資料館は、JR姫新線[ひめしんせん]の本竜野駅から約1.5km、徒歩約20分です(姫路駅から本竜野駅までは4駅、約20分、運賃240円)。
この日は但馬杜氏のふるさと・湯村温泉(兵庫県美方郡)から約130km(2時間10分)の道のりを車で連れてきてもらいました。

★ヒガシマル醤油の第一工場と揖保川[いぼがわ]
160915 (90)ヒガシマル醤油工場_外観
駅から資料館へ向かう途中に、ヒガシマル醤油の第一工場があります。工場見学もできますが、この日(と前日)は予約が埋まっていて見学できませんでした。
160915 (89)揖保川
工場のそばを流れる揖保川。手延べそうめんの「揖保乃糸[いぼのいと]」は、たつの市を含む揖保川中流域の名産品です。

★うすくち龍野醤油資料館(本館)
160915 (16)うすくち龍野醤油資料館_入口
ヒガシマル醬油の旧・本社屋を活用した同資料館(本館)は、全国初の醤油資料館として1979年(昭和54年)に開館しました。少し離れたところに別館があります。
160915 (83)うすくち龍野醤油資料館__外観
本館、別館ともに国の登録有形文化財に指定されています。

★ヒガシマル醤油㈱の歴史
1942年に菊一醤油、浅井醤油が合併して龍野醤油(株)が誕生し、1964年にヒガシマル醤油㈱に改称されました。創業は天正年間(1580年頃)にさかのぼります。龍野にうすくち醤油が誕生したのは1666年頃といわれています。
160915 (77)うすくち龍野醤油資料館_菊一醤油造合資会社の木製看板
160915 (78)うすくち龍野醤油資料館_菊一の看板と菊花紋 - コピー
菊一醤油の前身の幾久屋は、文禄年間(1592~1596年)に宮中から「菊屋」の屋号と菊花紋を賜りました。

★ライブラリー・コーナー(映像鑑賞)
160915 (17)うすくち龍野醤油資料館_映像ライブラリー
館内のライブラリー・コーナーでは、「昔と今の醤油造り」(約17分)の映像を鑑賞できます。

★うすくち醤油(淡口-、薄口-)
160915 (19)うすくち龍野醤油資料館_ヒガシマル醤油のできるまで
こいくち醤油は、蒸した”大豆”と炒った”小麦”に種麹をつけて、”塩水”で仕込みます。
うすくち醤油はさらに、仕込みの終盤に”(米麹から造った)甘酒”を加えてから搾ります。また、小麦を浅めに炒る、塩水の割合を増やす(約1割)、仕込み期間を短めにする(約3割)等の色を淡くする工夫がなされています。

★うすくち醤油の原料
館内の組合資料室には様々な大豆、小麦、塩のサンプルが展示されていました。素材の違いが、醤油の香味にどのような影響を与えるかが気になりました。
160915 (37)うすくち龍野醤油資料館_大豆サンプル - コピー
大豆のサンプル。
160915 (38)うすくち龍野醤油資料館_小麦サンプル - コピー
小麦のサンプル。
160915 (39)うすくち龍野醤油資料館__塩のサンプル
塩のサンプル。

揖保川の水や播州の穀物、赤穂の塩などの良質の原料が、うすくち醬油や揖保乃糸などの地場産業を育んだそうです。

★醤油をかもす微生物
160915 (33)うすくち龍野醤油資料館_醤油をかもす微生物 - コピー
醤油造りで主に活躍する微生物は麹菌、酵母菌、乳酸菌です。

★昔の醤油造り
<ボイラー>
160915 (65)うすくち龍野醤油資料館_コルニッシュ・ボイラー(横型丸ボイラー)大正11年 - コピー
蒸気を発生させるためのコルニッシュ・ボイラー(横型丸ボイラー)。
160915 (64)うすくち龍野醤油資料館_ボイラーの銘
”AUGUST 1922”(大正11年8月)の銘が記されていました。

<井戸水>
160915 (21)うすくち龍野醤油資料館_井戸地下水 - コピー
地下水を汲み上げる井戸。揖保川の水は”全国まれにみる鉄分の少ない軟水”で、色が淡く香味が良いうすくち醤油づくりに欠かせない原料の一つです。

<原料処理場>
160915 (23)うすくち龍野醤油資料館_原料処理場の地釜 - コピー
地面に埋められた”地釜”。左の釜で大豆をたき(蒸し?)、右の釜で米が蒸されていました。龍野地方では大豆の処理を煮熟[しゃじゅく](別名、地獄だき)と呼んでいたそうです。

160915 (69)うすくち龍野醤油資料館_唐箕
風を送って小麦とゴミを選び分ける装置(唐箕[とうみ])。
160915 (26)うすくち龍野醤油資料館_麦炒機 - コピー
160915 (27)うすくち龍野醤油資料館_麦炒釜 - コピー
麦炒機(上)と麦炒釜(下)。麦を炒る目的は、ひき割りやすくすることと、でんぷんを麹菌が消化しやすいように変化させることです。うすくち醤油の場合は、色が濃くなり過ぎないように浅めに炒ります。

<麹室>
160915 (41)うすくち龍野醤油資料館_麹室
レンガ造りの麹室。藁室、土蔵室などもありますが、この地方ではレンガ室が多かったそうです。室の出入り口と窓は二重になっており、天井には温度調節のための天窓が設けられています。また、保温材としてもみがらが使用されていました。
160915 (45)うすくち龍野醤油資料館__麹室の説明書き - コピー
麹室のレンガは長手積み。説明書きの横には、現在の麹室の写真が貼られています。
160915 (42)うすくち龍野醤油資料館_麹蓋
室内の麹蓋。大豆と小麦に種麹をつけ、麹蓋に盛って室内で麹菌を繁殖させて醤油麹をつくります。甘酒用の米麹も同じように、蒸した米に種麹をつけて麹蓋に盛り、麹室のなかでつくられます。
160915 (40)うすくち龍野醤油資料館_麹蓋の積みかた2
4通りの麹蓋の積み方(棒積、すぎなり積、めんどり積、すきばい積)。

<仕込み蔵>
160915 (43)うすくち龍野醤油資料館_仕込み桶
醤油麹と塩水を合わせて諸味[もろみ]を仕込みます。昔は空調設備がなかったため、発酵熟成におよそ1年もかかったそうです。

160915 (44)うすくち龍野醤油資料館_仕込み蔵の天井 - コピー
仕込み蔵の天井。

<圧搾場>
160915 (50)うすくち龍野醤油資料館_圧搾場
醤油の諸味を搾る圧搾機。

160915 (52)うすくち龍野醤油資料館_棒締式圧搾機
天井近くまで"はね棒"が伸びた巨大な「棒締式圧搾機」もありました。
160915 (47)うすくち龍野醤油資料館_阿弥陀車
天井の阿弥陀車。

160915 (57)うすくち龍野醤油資料館_垽桶
垽桶[おりおけ]。しぼった醤油の中の垽(沈殿物)を分離するための桶(江戸~昭和初期)。

<醤油の色>
160915 (35)うすくち龍野醤油資料館_色時計
資料室の色度計。一番右は、搾りたての醤油の色「赤(褐)色」のようでした。

<出荷>
160915 (62)うすくち龍野醤油資料館_青い竹のタガ(映像)
出荷用の樽を作っているようす(館内映像)。仕込み桶と同様に、秋田杉でつくられた容器に”竹のタガ”を巻いています。

<運搬船と醸造道具>
160915 (29)うすくち龍野醤油資料館_浅井丸
醤油を運んでいた「浅井丸」。浅瀬でも航行できうように船底が平らになっている高瀬舟(小型の木造船)です。
160915 (28)うすくち龍野醤油資料館_醸造道具の展示
160915 (30)うすくち龍野醤油資料館_醸造道具の展示
昔の醸造道具の展示。

<帳場>
160915 (60)うすくち龍野醤油資料館_帳場
明治時代の醤油蔵の帳場を再現したコーナー。主に番頭さんが帳面を付けたり、お金の授受をしていました。

★北王子魯山人が語るうすくち醬油
160915 (73)うすくち龍野醤油資料館__ - コピー
160915 (74)うすくち龍野醤油資料館__ - コピー
北王子魯山人が、料理を作るときにうすくち醤油を使うことを薦めていました。彼はこいくち醤油に対して批判的ですが、各々の特長を活かした使い分けをする方が、より楽しみ方が広がると思いました(好みに合わないものを”こき下ろす”ような文調は、個人的には少し苦手です...)
昨夏の「和食とワイン」セミナーでの、「うすくち醤油とこいくち醤油はまったく使い方が違う。前者は最後の方に使ってスパイスのように香りを付け、後者はフォンドヴォーのように素材にしっかり味をつける」という指摘を思い出しました。

★その他
160915 (72)うすくち龍野醤油資料館_中庭の神社
中庭には神社がまつられていました。
160915 (58)うすくち龍野醤油資料館__館内の半円窓からの景色
半円窓からの、風情のある眺め。
160915 (85)龍野・資料館周辺
資料館周辺のようす。

★感想など
充実した展示物や映像を通して、うすくち醤油の複雑な製造工程をイメージすることができました。昔の酒造道具と同じつくりのものも多く見られ、とても興味深かったです。

160915 (96)姫路駅の新幹線ホーム
資料館を見学した後は、法事に出席するために山口県に向かいました。写真は姫路駅に入線するのぞみ107号(姫路駅13:55→14:53広島駅)。
翌16日にはさいしこみ醤油の資料館を見学し、5種類の醤油の関連施設を一通り訪ねることができました。

(初稿)2016.12.19

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テーマ : しょうゆ工場見学
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【見学】但馬杜氏の郷・杜氏館(兵庫・美方郡) - 日本一の源泉温度を誇る湯村温泉で、元杜氏の方の貴重なお話を伺う

岩手県の南部杜氏、新潟県の越後杜氏、兵庫県の丹波杜氏とあわせて日本四大杜氏に数えられる但馬杜氏[たじまとじ]のふるさとを訪ねました(但馬杜氏の代わりに、石川県の能登杜氏を数える場合もあります)。杜氏館は湯村温泉の中心地にあり、この辺り(旧・温泉町[おんせんちょう])を出身とする杜氏は「温泉杜氏」と呼ばれていたそうです。

日時:2016年9月14日(水) 15:00~16:20頃
場所:但馬杜氏の郷・杜氏館(兵庫県美方郡新温泉町湯98-3)
料金:無料

★アクセス
160914 (13)但馬杜氏の郷・杜氏館_外観
山陰の名湯・湯村温泉の中心地に但馬杜氏の郷・杜氏館があります。この日はJR姫路駅から約126kmの道のりを車で連れて来てもらいました。所要時間は約2時間です(播但連絡有料道路、山陰道、国道9号線経由)。東京都内から姫路駅までは東海道新幹線を利用しました(ひかり461号。東京駅7:03→10:50姫路駅)。

★杜氏館
160914 (15)但馬杜氏の郷・杜氏館_外観
杜氏館は湯村温泉の観光案内所(観光協会)と同じ建物にあります。
160914 (44)但馬杜氏の郷・杜氏館_注意書き - コピー
開館時間は10:00~17:00、お酒の販売と試飲は行っていません。入場は無料です。

★湯~たん
160914 (16)但馬杜氏の郷・杜氏館_湯〜たん
入口では湯村温泉のマスコット・キャラクター「湯~たん」がお出迎えしてくれます。湯村温泉の源泉「荒湯」から生まれた精霊で、夜な夜な寝ている人の布団の中に「湯たんぽ」をしのばせるそうです(うちにも来てほしい...)。湯村温泉のPR活動と、ピンクのタオル収集がマイブームだそうです。

★館内
160914 (19)但馬杜氏の郷・杜氏館_館内 - コピー
160914 (55)但馬杜氏の郷・杜氏館_半切など
杜氏館の館内には昔の酒造道具などが展示されています。元・杜氏の方が常駐されており、希望者にはガイドをしてくれます(5人の方が持ち回りで担当しているそうです)。

★但馬杜氏の就業先
160914 (22)但馬杜氏の郷・杜氏館_一覧1 - コピー
但馬杜氏の就業先。地元の兵庫県が多いようです。
160914 (23)但馬杜氏の郷・杜氏館_一覧2 - コピー
西日本が中心で山口県や四国の酒蔵で酒造を行う方もいらっしゃいました。
160914 (20)但馬杜氏の郷・杜氏館_三谷藤夫ボトル - コピー
但馬杜氏の名を冠した松竹梅・白壁蔵の「三谷藤夫」(宝酒造)のサンプル・ボトル。精米歩合60%の五百万石を使用した山廃純米酒です。松竹梅を醸す宝酒造(本社:京都市伏見区)は、兵庫県の銘醸地・東灘区にも蔵(白壁蔵)を構えており、今も吟醸酒など一部の酒を手造りで行っています。三谷杜氏は現役を引退して顧問についておられるそうですが、その名を冠した酒が今も造られています。三谷杜氏は、平成23年に厚生労働省の「卓越した技能者(通称:現代の名工)」に選出され、平成25年度(春の褒章)には「業務に精励し衆民の模範である者」を対象とする黄綬褒章を受賞されています。

★元・但馬杜氏にガイドをして頂くという贅沢
160914 (74)但馬杜氏の郷・杜氏館_ささらの実演
ガイドをしてくださったNさんは現在83歳。数多くの質問にも、長い時間をかけて丁寧に答えてくださいました。写真は「ささら」の使い方を実演してくださっているところです。Nさんは20歳くらいの時に(三谷杜氏と同じ)白壁蔵に2年つとめ、続く4年間は京都・伏見(大手筋)の蔵で製麹の主任を任され、42歳のときに石川県・加賀市の橋本酒造(大日盛の蔵元)で杜氏に就かれました(取引先の関係でご縁があったそうです。石川県の蔵には能登杜氏が派遣されるものだと思っていました...)。普段は地元で牛を飼い田んぼをつくる生活を送り、雪に閉ざされる冬の間は季節労働に出ていたそうです。家庭のご事情で50歳を前にして酒造界から退かれた後は、地元で農業一本の生活を送られてきたそうです。

★出稼ぎは酒造りに限らなかった!?
Nさんの最初の出稼ぎ先は、造り酒屋ではありませんでした。当初の2年間は、大和(奈良県)の豆腐屋で凍り豆腐を作る手伝いをしていたそうです。しかし、三谷藤夫さんなど酒蔵に行った人たちの、「酒は飲める、金は良い」、という話を聞き、酒蔵への出稼ぎに変わったそうです(杜氏の郷とよばれるところは皆が酒造りに行くものと思い込んでいました...)。終戦後の景気回復や、政府による酒造りの推進(酒税がほしい)などを背景に、まじめについていった人は次から次へと杜氏になっていったそうです。温泉杜氏は当初はそれほど多くなかったそうですが、Nさんの現役時代には130人くらいに増えていたそうです。
但馬杜氏が醸す酒の特徴について質問したところ、(但馬杜氏に固有の酒質があるというよりは、)国税局が毎年8月半ばに行う酒造講習で習ったことを基準に造っていたそうです。他にも、冬用の長靴の配給のお話(1クラスに3足が配られ、くじ引き?などで当たらなければ藁靴で過ごすことになる)など、昔の但馬の生活が目に浮かぶような貴重なお話を伺えました。

★昭和初期の杜氏名簿
160914 (50)但馬杜氏の郷・杜氏館_杜氏名簿
館内には過去の「杜氏就業先名簿」が残されていました。一番上に綴じられている(おそらく一番古い)ものは、なんと昭和17年度のものでした。これは、すごく歴史的価値のある資料では...
160914 (70)但馬杜氏の郷・杜氏館_名簿(地方別一覧) - コピー
杜氏の出身地と就業先の一覧。旧字体が使われていて趣きがあります。この年度は280名の方が、奈良県(86)、京都府(52)、大阪府、和歌山県(各45)などの酒蔵に就業されていたようです。
160914 (59)但馬杜氏の郷・杜氏館_S45就業先名簿
昭和45年の名簿には、案内をしてくださったNさんのお名前が掲載されていました。

★昔の広告(昭和40年代ごろ)
杜氏名簿には、昔の広告も掲載されていました。
160914 (63)但馬杜氏の郷・杜氏館_ムサシノ乳酸広告
「ムサシノ乳酸」(武蔵野商事、東京都中央区)
160914 (65)但馬杜氏の郷・杜氏館_種麹の広告
「丸福種麹」(日本醸造工業、東京都文京区)
「ヒグチモヤシ」(樋口松之助商店、大阪市)
160914 (66)但馬杜氏の郷・杜氏館_秋田今野ほか
「今井式簡易自動製麹装置」「自動あんか酛ヒーター」(佐々木本店、大阪市)
「秋田今野モヤシ」「コンパール石綿」(秋田今野商店)
160914 (67)但馬杜氏の郷・杜氏館_原野産業、川北工業所
ハラノの「特許H.L.D.(粉飴)」「水飴」「酵素ブドー糖」「葡萄糖」「結晶ブドー糖」(原野産業、愛知県)
「酒造用活性炭素」(川北化学工業所、大和高田市)
160914 (68)但馬杜氏の郷・杜氏館_菱六、上田
「菱六もやし」(菱六、京都市東山区)
「上田もやし」(上田伊兵衛商店、大阪市住吉区)
160914 (69)但馬杜氏の郷・杜氏館_今野モヤシ
醸造機器資材、公認酒類仲介(箕面崎商店、大阪市北区)
「今野モヤシ」(今野もやし、神戸市東灘区)

Nさんは、ヒグチ、コンノ、ヒシロクなどをよく使っていたと語られていました。

★但馬杜氏の信念と覚悟
160914 (62)但馬杜氏の郷・杜氏館_但馬杜氏の覚悟
杜氏名簿の裏表紙には但馬杜氏の信念と覚悟が記されていました。

『但馬杜氏の信念』
1.信用第一で責任を重んじたい
2.精勤できまりを正しくしたい
3.正直でまちがいをなくしたい
4.質素でむだづかいをやめたい
5.協力的で互助心をふかめたい
6.計画的で研究心をたかめたい
7.実行的で改良心をつよめたい

『但馬杜氏の覚悟』
私は私自身の信念で働きたい
私は私自身の良心で働きたい
  そこに本当の希望がわき
  本当の計画がたち
  本当の研究がすすみ
  本当の働きがうまれる
しかも明けても暮れても
お互全体が懸命の協力をうちこむとき
  愈々[いよいよ]能率があがり
  銘酒ができ
  信用が高まり
よろこびと感謝のうちに
ひとりで前身の途がひらけ
  勤続と昇進昇給のむくいをうける
たしかに但馬杜氏の生命力は
  信用第一の働きそれ一つのうちに生きて
これが但馬杜氏の覚悟であり
これが但馬杜氏の人生である

Nさんに「なぜ、この地が杜氏の郷になったのか」と質問したところ、「この辺で農業をする人は辛抱強い」というご回答でした。日本酒や焼酎の輸出推進をめざす『國酒プロジェクト』に、「(日本酒は)日本人の忍耐強さ・丁寧さ・繊細さを象徴」すると記されていますが、それはまさに杜氏や蔵人に求められる資質であることを強く感じました。

(参考)「國酒等の輸出促進プログラム」平成24年9月4日
”日本の「國酒」である日本酒・焼酎(泡盛を含む)は、米、水など日本を代表する産物を原料とするのみならず、日本の気候風土、日本人の忍耐強さ・丁寧さ・繊細さを象徴した、いわば「日本らしさの結晶」である。”(ENJOY JAPANESE KOKUSHU(國酒を愉しもう)推進協議会より)

★酒造り唄
160914 (32)但馬杜氏の郷・杜氏館_酒造り唄 - コピー
作業時に口ずさむ「酒造り唄」は、故郷を離れて厳しい仕事に励む杜氏や蔵人にとって、一種の心の支えでもあったそうです。温泉町の杜氏組合は、平成10年に酒造り唄保存会を結成し、伝統文化を後世に伝える活動をされています。
160914 (34)但馬杜氏の郷・杜氏館_米研ぎ唄 - コピー
米研ぎ唄。
160914 (33)但馬杜氏の郷・杜氏館_秋洗い唄 - コピー
秋洗い唄。

★昔の酒造道具など
<こしき>
160914 (47)但馬杜氏の郷・杜氏館_こしき
米を蒸す際に使われたこしき。

<蛇管[じゃかん]>
160914 (76)但馬杜氏の郷・杜氏館_蛇管
火入れ(加熱殺菌)に使われていた蛇管。お湯の入ったタンクの中に蛇管を入れ、管の中に酒を通して加熱殺菌を行っていたそうです。

160914 (48)但馬杜氏の郷・杜氏館_一斗瓶
一斗瓶。

<浜坂醸造の提灯>
160914 (54)但馬杜氏の郷・杜氏館_浜坂酒造の提灯

★原料米
160914 (53)但馬杜氏の郷・杜氏館_酒米の穂 - コピー
兵庫北錦(酒米)、五百万石(酒米)、コシヒカリ(食味米)の穂。
160915 (11)但馬杜氏の郷・杜氏館_亀ノ尾8分3厘磨き
漫画「夏子の酒」に登場する幻の米「龍錦」のモデルとなった「亀ノ尾」。精米歩合はなんと8.3%!?
160915 (12)但馬杜氏の郷・杜氏館_亀ノ尾2割3分と8分3厘の比較
左は精米歩合23%の亀ノ尾。重量精米歩合だと思われるので、見た目の違いはよくわかりませんでした。Nさんは「こんなことをされても処理に困る。砕米[さいまい]みたいなもの。(精米歩合は麹米と掛米の平均値となるので、)ここまで磨くと掛米をだいぶ黒くしないと」と仰っていました。吟醸造りに適した麹はやはり「突き破精」(針でちょっと突いたくらいの点々が米の芯まで届いたもの)で、細かい米だと粒全体が真っ白になる「ベタ破精」になってしまい、良い香りがでにくいそうです。「(ベタ破精は)甘酒にはよいだろうけど...」というお言葉がすとんと腑に落ちました。

★但馬杜氏の碑(薬師湯)
160915 (10)但馬杜氏の碑_但馬杜氏の郷碑(薬師湯)全景 - コピー
杜氏館から約200mのところにある薬師湯には、”但馬杜氏の郷”の碑があります。
160915 (5)但馬杜氏の碑__但馬杜氏の郷碑(薬師湯)正面 - コピー
160915 (9)但馬杜氏の碑__但馬杜氏の郷碑(薬師湯)碑文 - コピー

★湯村温泉
湯村温泉は、平安時代(848年)に開湯した歴史ある湯治湯です。町名は「新温泉町」(2005年に温泉町と浜坂町が合併して誕生)で、杜氏館を含む地域の地名はズバリ「湯」。町内には、”温泉小学校”や”湯交番”という名称の公共施設があります。
160914 (79)湯村温泉_荒湯 - コピー
杜氏館のすぐ近くにある「荒湯」の源泉温度は98℃(日本一)で、湧出量は毎分470L。荒湯では温泉卵をつくることもできます。
160914 (86)_湯村温泉_山上の夢
湯村温泉は1981年にNHKドラマ「夢千代日記」(吉永小百合主演)のロケ地となり、以来「夢千代の里」とも呼ばれています。母親の胎内で被爆し、余命2年を宣告された主人公の夢千代を演じたのは、女優の吉永小百合さんです。
160914 (87)湯村温泉_三好屋
ミシュランガイド兵庫2016特別版に掲載された三好屋。湯村温泉にある宿泊施設は24軒程度ですが、定員500名クラスの大型ホテルが2軒あるため、大きな温泉街の部類に入るそうです(Wikipediaより)。

(初稿)2016.11.18

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テーマ : 酒・歴史・文化に触れる旅
ジャンル : グルメ

【見学】山川醸造(岐阜・岐阜市)- 長良川の伏流水と杉桶で仕込む東海三県の地醤油「たまり醤油」の蔵元

たまり醤油の蔵元、山川醸造を見学しました。これまでに見学した白醤油、濃口醤油とは原料や造り方が異なり、むしろ八丁味噌と似ている点が興味深かったです。最初にポイントをクイズ形式で整理して頂いたので、他の醤油との違いがよくわかりました。小学生の見学者が楽しみながら学んでいる姿が印象的でした。

日時:2016年9月3日(土) 13:30~14:10頃
場所:山川醸造(株)(岐阜県岐阜市長良葵町1-9)
内容:見学(ガイド付き)、試食
料金:無料

★アクセス
160903 (45)名鉄岐阜駅
山川醸造はJR岐阜駅、名鉄岐阜駅の5kmほど北側(やや東寄り)にあります。この日は名鉄岐阜駅から岐阜バスを利用しました。
160903 (48)岐阜バス4番乗り場
名鉄岐阜駅バス停の4番乗り場。ここから、岐阜高富線に乗車します(名鉄岐阜駅12:46→長良北町13:02、運賃210円)。 
160903 (108)長良川と岐阜城(車窓)
バスの車窓。山の上には小さく岐阜城が写っています。橋の下を流れるのは鵜飼いで有名な長良川。木曽川、揖斐川とあわせて木曽三川に数えられています。
160903 (53)長良北町停留所
160903 (54)山川醸造たまり醤油_たまりや裏側
最寄りの長良北町[ながらきたまち]停留所。目的地までは約200mです。

★見学受付
160903 (56)山川醸造たまり醤油_外観(たまりや)
売店「たまりや」で見学の受付を行います。この日の見学者は計5名。案内をしてくださったのは、なんと山川社長でした。

★醤油のクイズ
160903 (55)山川醸造たまり醤油_外観(下見板張り)
160903 (63)山川醸造たまり醤油_一号蔵 - コピー
はじめに木桶が並ぶ一号蔵内のベンチに座り、4問の醤油クイズが出されました。

【Q1】醤油は何種類?
【A1】5種類(濃口、淡口[うすくち]、たまり、白[しろ]、再仕込み)
”濃口”がいわゆるふつうの醤油で、全体の約85%を占めます。最大手はキッコーマン(千葉県野田市)で、ヤマサ醤油、ヒゲタ醤油(ともに千葉県銚子市)などの大手メーカーも同じ千葉県にあります。”淡口”は主に関西で使われ、最大手はヒガシマル醤油(兵庫県たつの市)。”たまり”は東海三県の地醤油ですが、さしみ用と答える人が多いそうです。”白”は愛知県碧南市の(小麦主体でつくられる)うすい色の醤油。”再仕込み”は山口県柳井市で造られる(麹を醤油で発酵させる)ぜいたくな造りの醤油です。

【Q2】醤油の香りは何種類(三択:20/150/300)?
【A2】300種以上
バラ、ヒヤシンス、バナナ、パイン、リンゴ、バニラなどの香りがありますが、機械で調べないとわからない程度のものが多いそうです。
日本酒の吟醸香(リンゴ=カプロン酸エチル、バナナ=酢酸イソアミル)やワインのテイスティング用語(バニラ=木樽のバニリン由来)に通じるものがあり、興味深かったです。

【Q3】醤油の原料は?
【A3】大豆、小麦、塩(、淡口はさらに米)。大豆は醤油の原料として必ず使われます(JAS法)。濃口には大豆と小麦をおよそ半々ずつ使いますが、たまりは殆どが大豆、逆に白は殆どが小麦を原料として造られます。
小学生が「麹!」と答えましたが(漫画『もやしもん』の影響?)、最終製品に残っていないため原材料にはならないそうです。水も当然使われていますが、原材料に表記されるのはミネラルウォーターだけとのことでした。

【Q4】醤油は何色?
【A4】赤色
社長が持ってきた醤油のサンプルをペンライトでかざして見ると、なんと赤色でした。小学生も「え?赤?」と驚いていました。
見慣れている醤油が黒っぽいのは「酸化」による褐変化で、色の濃いたまり醤油でも、搾りたては赤い色をしているそうです。

★たまり醤油のつくり方
<原料処理、製麹>
蒸した大豆に少量の小麦をまぜて種麹をつけ、約3日かけて”醤油麹”をつくります。大豆は主にうま味、小麦は香りの元になるそうです。

<仕込み>
大きな木桶に醤油麹と塩と水を入れて、足で踏み固めて諸味[もろみ]を仕込みます。麹1に対する水の割合は、濃口で約1.5ですが、たまりは0.5~1.0と少なめ。濃口の諸味は櫂で撹拌できますが、たまりの諸味は水分が少なくて固いため、かき混ぜることができません。そこで、諸味を均等に発酵させるために以下のような工夫が行われています。

160903 (72)山川醸造たまり醤油_木桶の内部
あらかじめ煙突のような筒を桶内に入れてから諸味を仕込んでいきます。
160903 (71)山川醸造たまり醤油_木桶内部(管の穴)
筒の下部には2,3㎝くらいの穴がたくさん開いています。筒の内部には、この穴から浸みこんできた諸味のエキスが徐々に溜まっていくので、それを大きな柄杓ですくって諸味の上からかけてあげます(汲みかけ)。このような作業を週に1,2回ほど、2年間繰り返して行うそうです。

160903 (66)山川醸造たまり醤油_板を再利用した椅子 - コピー
クイズの時に座っていたベンチは、木桶の上に渡して通路にしていた板を再利用したものでした。

160903 (80)山川醸造たまり醤油_一号蔵の木桶
木桶の寿命は約200年と言われており、蔵内には江戸時代から昭和初期頃につくられたものが約100本もあるそうです。杉製の板を竹のタガで締め付けた桶を作れる会社は(八丁味噌蔵でも指摘があったように)国内に殆ど残っていないそうです。
160903 (75)山川醸造たまり醤油_木桶の内板
桶内の表面の白っぽく見える物質は大豆の成分。梅雨時などで湿度が上がってくると、醤油が浸み出してきて桶内が茶色くなるそうです。内部が見れるようにくり抜かれた桶は強度が低下しているので、「危険!手を触れないで」の注意書きが貼られていました。

<圧搾>
160903 (73)山川醸造たまり醤油_ - コピー木桶株の蛇口とバケツ
まず、木桶の諸味から(上に積まれた石の重みで)自然に流れ出てくる醤油をおよそ半年かけて集めます。桶内に残った諸味はスコップで掘り出し、次に圧搾台で搾ります。

160903 (97)山川醸造たまり醤油_圧搾場_布 - コピー
諸味をほぐして圧搾用の布の上にちりばめる機械。
160903 (87)山川醸造たまり醤油_もろみをスコップで投入するところ
スコップで機械の上部に諸味を投入し、、、
160903 (88)山川醸造たまり醤油_圧搾場(作業中)
160903 (102)山川醸造たまり醤油_諸味を入れた袋 - コピー
下の台に広げた布の上に落ちてくる諸味をほぐして、布を長方形に畳んでいきます。
160903 (92)山川醸造たまり醤油_醤油もろみ
醤油の諸味。味噌のように見えますが、塩分濃度が低いため、これで味噌汁を作っても美味しくないそうです。味噌と醤油は塩分濃度が大きく異なるため(味噌は約10%、醤油は約15%)、両方を造っている醸造蔵は全国でも稀なのだそうです。

160903 (100)山川醸造たまり醤油_圧搾機
諸味の入った長方形の布を圧搾台に積み重ね、上からプレスをして残りの醤油を搾ります。強く押すと諸味がはみ出るので、およそ2日かけてゆっくりプレスしていきます。
160903 (95)山川醸造たまり醤油_圧搾機(拡大)
たまり醤油は出来上がるまでに約2年、さらに桶1本分から醤油を搾り取るまでにもう1年(計3年)もかかります。約6カ月でできる大手の濃口醤油と比べて、4-6倍もの時間がかかっています。

160903 (104)山川醸造たまり醤油_しぼりたてのたまり醤油
搾りたてのたまり醤油を試飲させて頂きました。黒くてドロッとしているのは水分が少なく、かつ、熟成期間が長いため。しかし、見た目から想像するほど塩辛さは感じず、複雑でまろやかな味わいでした。

160903 (101)山川醸造たまり醤油_しょうゆ粕
しょうゆ粕は機械で細かく砕いて、牛の飼料や金魚のエサとして再利用されています。

★丸大豆と脱脂加工大豆
160903 (105)山川醸造たまり醤油_丸大豆と脱脂大豆
丸大豆(左)と脱脂加工大豆(右)。大豆の油分は醤油造りには不要ですが、サラダ油メーカーにとっては逆に油分だけが必要となります。そこで、大豆から油分を搾った後の脱脂加工大豆が、醤油の原料として広く使われています。業務用シェアの大きい同社では主に脱脂加工大豆が使われていますが、手間をかけてじっくり熟成させることで十分に美味しい醤油ができるそうです。丸大豆醤油は全体の2割、うち国産丸大豆を使用したものは2%程度しか造られていないそうです。
同社では伝統製法を残すために、岐阜県産大豆を木桶で仕込んだ商品を1年に1、2桶分造り続けているそうです。

★味噌
160903 (83)山川醸造たまり醤油_みそ全国マップ
山川醸造では(少量ですが)味噌も造っているそうです。醤油と同様に、味噌の種類にも地域性があって興味深かったです(一般的な米味噌に対し、東海地方の豆味噌、九州地方の麦みそなど)。

★試食
160903 (107)山川醸造たまり醤油_試食(素麺)
最後に試食をさせて頂きました。たまり醤油がベースのめんつゆとごま素麺。
160903 (106)山川醸造たまり醤油_試食(田楽、トースト)
こんにゃくの味噌田楽と「はちみつ醤油バター」を塗ったトースト。同社では「アイスクリームにかける醤油」などのスイーツ商品も数多く手掛けています。

★たまりや(売店)
160903 (203)みのびとパンフレット
見学の後は、売店で本醸造のたまり醤油「みのび」(税込583円/300ml)を購入しました。
160903 (200)みのび(原材料など)
原材料は大豆、小麦、塩、アルコール。杉桶で2年以上熟成し、火入れをしていない生醤油です。複雑で熟成感のある濃厚な香味の醤油でした。

★感想など
醤油を勉強する前は「すごく濃いのがたまり醤油?」という程度の漠然とした(かつ誤った)イメージしか持っていませんでしたが、ふつうの濃口醤油とたまり醤油は全く別物であることを強く感じました。前者は大豆と小麦を半々ずつ使うのに対して後者はほぼ大豆だけで造られ、さらに杉桶で長期間熟成させるため、【大豆由来の熟成した香味】が強く個性としてあらわれていました。たまり醤油をそのまま使うとクセが強すぎることもありますが、(濃厚な甘みを持つスイーツを含む)濃い味付けの料理に隠し味として使うと奥行きのある深い味わいになると感じられました。

”醤油”と一口にいっても様々なバリエーションがあり、一括りにできないことを改めて感じました。

(初稿)2017.1.3

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テーマ : しょうゆ工場見学
ジャンル : グルメ

【見学】アサヒビール名古屋工場(愛知・守山) - ミニ缶をつくるアサヒ唯一の工場。アーリータイムズ3種の比較試飲と9種のボイラー・メーカー。

知多半島のミツカン・ミュージアムに続き、アサヒビール名古屋工場を見学しました。思いがけず「アーリータイムズ」(バーボン・ウィスキー。以下、バーボン)の試飲もできたため、様々な「ボイラー・メーカー」(ビールとバーボンのカクテル)を試すことができました。

日時:2016年9月2日(金) 15:00~16:15(75分)
場所:アサヒビール名古屋工場(愛知県名古屋市守山区西川原町318)
内容:見学(ガイド付き)、試飲
料金:無料

★アクセス
160902 (157)新守山駅
最寄駅はJR中央本線の新守山駅。駅から工場までは約1.0km、徒歩約15分です。名古屋駅から新守山駅までは普通列車で約17分(5駅、240円)です。

★工場入口
160902 (160)アサヒビール名古屋工場_外観 - コピー
写真の看板の左脇から敷地内に入り、右手に進むと守衛所があります。
160902 (162)アサヒビール名古屋工場_守衛所
守衛所で氏名と見学に来た旨を伝えると、ゲストハウスの場所を教えてくれます。
160902 (161)アサヒビール名古屋工場_守衛所からゲストハウスへ1
守衛所の右側の通路をまっすぐ進み、右折します。
160902 (163)アサヒビール名古屋工場守衛所からゲストハウスへ2 - コピー
この写真の右奥の角を左折すると正面にゲストハウスが見えます。
160902 (165)アサヒビール名古屋工場_ゲストハウス
赤茶色の建物がゲストハウスです。
160902 (164)アサヒビール名古屋工場_屋外タンク - コピー
ゲストハウスに向かう途中に、迫力ある大きな屋外発酵・熟成タンク(以下、屋外タンク)が立ち並んでいるようすが楽しめます。

★見学受付(ゲストハウス)
160902 (166)アサヒビール名古屋工場_ゲストハウス入口
ゲストハウス入口の案内板。
160902 (170)アサヒビール名古屋工場_ゲストハウスのカウンター
カウンターで予約をしている旨を伝え、受付表に氏名などを記入します。
160902 (169)アサヒビール名古屋工場_パンフレットなど - コピー
受付を終えると、パンフレットと試飲会場での座席番号札が配られます。小さい札は大きな荷物を預かってもらった場合の番号札です。
160902 (168)アサヒビール名古屋工場_ゲストハウス(待合室)
ゲストハウスの待合室。この回の見学者は11名でした。

★工場見学(ルート)
160902 (202)アサヒビール名古屋工場_工場案内図 - コピー
工場見学は、赤い矢印のルートにそって進められました。残念ながら、製造ライン(醸造棟、装製棟)の写真撮影は禁止でした。

★工場見学(屋外タンクと八角堂)
160902 (177)アサヒビール名古屋工場_屋外タンクと通路
女性ガイドさんの案内で、屋外タンクのすぐそばの小道を歩いて工場に向かいます。
160902 (176)アサヒビール名古屋工場_屋外タンク
屋外タンク(直径約7m、高さ約20m)の容量は350mlの缶ビールでなんと約60万本分!名古屋工場では、1日に屋外タンク約3本分のビールが出荷されるそうです。出荷先は中部8県(東海3県、北陸3県、長野県、静岡県)。屋外タンクを間近に見ることができるのは、アサヒビールの8工場のうち名古屋工場だけだそうです。
160902 (175)アサヒビール名古屋工場_八角堂
醸造棟の入口にある”八角堂”に到着。
160902 (181)アサヒビール名古屋工場_八角堂(道内) - コピー
八角堂の1階のホールの壁には、中世ヨーロッパのビールづくりの様子が描かれています。陶芸家の鈴木青々[すずき せいせい]氏の作品で、約1,000枚もの陶板が使われているそうです。

★工場見学(製造ライン)【撮影禁止】
製造ラインでは、見学通路からガラス窓越しに機器などを見学します。名古屋工場では、アサヒビールが現在製造している約40銘柄のうち8銘柄が製造されています。

<ビールの原料>
・ビールの主原料は麦芽、ホップ、水。スーパードライには他に副原料(米、コーン、スターチ)が使われています。恒例の麦芽の試食とホップに触れるコーナーがありました。
・仕込水は”木曽川水系”の水を使用していますが、ビールの味わいを均一に保つため、事前に浄化し、ミネラル分の調整などを行っているそうです。

<仕込み>
・仕込室では、麦芽などのデンプンを糖に変え(糖化)、ホップを加えて煮沸をして"麦汁"を造る工程を行います。麦汁は完熟メロンやマンゴーと同じくらいの糖度(甘さ)になるそうです。
・仕込みに使われるのは、仕込釜、仕込槽、麦汁濾過槽、煮沸釜、ワールプールの5種。
・見学通路から見て奥の部屋が発泡酒用、手前がビール用のライン。
・仕込みの状況は、コントロール室で社員が24時間・3交代制で厳しくチェック。

<発酵・熟成>
・映像でビール酵母が麦汁を発酵させていくようすを見学します。
・約1週間で若ビールと呼ばれる状態になり、その後屋外タンクで数十日かけて熟成されます。

<ろ過>
・熟成させたビールはろ過器を通してビール酵母を取り除きます。
・ろ過器の中には500本ものフィルターが入っているそうです。

<パッケージング>
・できあがったビールは、缶・瓶・樽などの容器に充てんされます。円盤型の缶詰機は、1分間に約1,500本分ものビールを充てんできるそうです(1秒間でおよそビール1ケース=24本分)。

<ミニ缶の製造ライン>
・通常の缶詰機がある製造ラインに続いて、135mlのミニ缶専用のラインも見学できました。ミニ缶の缶詰機は、通常よりも一回り小さなサイズでした。135mlのミニ缶と、2ℓと3ℓのミニ樽を造っているのは、アサヒビール8工場のうち名古屋工場だけだそうです。

<主役は機械ではない!?>
・すべて機械化・自動化されているように見えるラインでも、1時間に1度は機械を止めて、品質チェックやメンテナンスなどの作業を人間が行っているそうです。

<品質管理室・官能検査>
・ビールの状態は選抜試験に合格した”パネリスト”によって検査されます(官能検査)。中には”スーパードライの製造日がわかる”ほどの味覚の持ち主もいるそうです。検査は1日1回、五感がもっとも鋭くなる16時から1時間かけて行われます。検査対象は、自社の完成品だけでなく、他工場のビールや仕掛品にも及び、1回につき多くて20~40種、最大で1ℓのビールを検査します。ワインや日本酒と違い、ビールは”のどごし”のチェックを行うため、お酒は吐き出さずに飲み込みます。よく羨ましいと言われるそうですが、車や自転車通勤ができないなどの制約があり、パネリストは大変なお仕事なのだそうです(体調管理にも相当気を遣う必要があると思いました)。

<ノンフロン設備>
・屋外の大型空調機(温水冷水を発生させて工場内の冷暖房を行う装置)をガラス窓越しに見学しました。アサヒビール名古屋工場は、国内の産業界で最初に完全ノンフロン化を実現したそうです。

<リサイクルへの取り組み>
・アサヒビールの工場ではリサイクル率100%を達成しています。廃棄物の約8割を占める”麦の殻”は家畜のえさに、役目を終えた酵母菌はエビオス錠などに、そしてペットボトルは従業員の制服などにリサイクルされています。

★工場見学(屋外からゲストハウスへ)
160902 (182)アサヒビール名古屋工場_2種の屋外タンク
屋外に出ると再び撮影ができるようになります。通路からは2種類の屋外タンクが見えました。小さい方は”アサヒタンク”と呼ばれる旧式のもので、発酵のみ(大きいタンクは発酵・熟成)を行うそうです。

★試飲
160902 (187)アサヒビール名古屋工場_ゲストハウス - コピー
工場見学の後はゲストハウスに戻り、試飲をさせて頂きました。
160902 (188)アサヒビール名古屋工場_試飲会場
試飲会場。適正飲酒の観点から、1人につき3杯までとなります。
160902 (200)アサヒビール名古屋工場_試飲会場のカウンター
カウンターで1杯目を受け取って、あらかじめ渡されている番号の席につきます。
160902 (193)アサヒビール名古屋工場_試飲(スーパードライ)
1杯目は全員が「アサヒスーパードライ」。暑い日には特にスッキリとしたキレが爽やかに感じられました。
160902 (197)アサヒビール名古屋工場_試飲(アサヒドライプレミアム豊醸)
2杯目は「アサヒスーパードライプレミアム豊醸」。
160902 (198)アサヒビール名古屋工場_試飲(アサヒスーパードライ・ドライブラック)
3杯目は「アサヒスーパードライ・ドライブラック」。

★試飲(アーリータイムズ)
160902 (194)アサヒビール名古屋工場_アーリータイムズのボトル
この日は特別に、アサヒビールが取り扱うバーボン「アーリータイムズ」の試飲もできました。

(参考)バーボン:
・1789年(合衆国発足の年)、エライジャ・クレイグ牧師によって作られ始めたのが最初といわれています。
・バーボンという名前は、アメリカ独立戦争の際にアメリカ側に味方したフランスの「ブルボン朝」に由来します。トーマス・ジェファーソン(後の合衆国大統領)が感謝の意をこめてケンタッキー州の郡のひとつを「バーボン郡」と名づけ、それが同地方で生産されるウィスキーの名前となり定着したそうです。
・主原料はトウモロコシ(51%以上80%未満。80%以上のトウモロコシを含むものは「コーン・ウィスキー」と呼ばれて区別される)、ライ麦、小麦、大麦など。これらを糖化・アルコール発酵させた後に、連続式蒸溜機でアルコール度数が80%(160プルーフ)以下となるように蒸溜します。その後アルコール度数62.5%(125プルーフ)以下に加水調整し、内側を焼き焦がしたホワイトオーク製の”新樽”に詰めて、2年以上貯蔵・熟成します。出荷の際に加水を行う場合、アルコール度数は40%(80プルーフ)以上でなければいけません。
・熟成の際に樽の内側を焦がす理由は定かではなく、”クレイグ牧師が樽を置いていた鶏小屋が火事に遭い偶然にできた”、”最初から内側が焦げていた樽を偶然使用していた”、”魚が詰めてあった樽の生臭さを消すために仕方なく内側を焦がした”など様々な説あります。

160902 (196)アサヒビール名古屋工場_アーリータイムズ3種
左から、
①「アーリータイムズ イエローラベル」Alc.40%
②「アーリータイムズ ブラウンラベル」Alc.40%
③「アーリータイムズ ブラインドアーチャー」Alc.33%

②は日本市場向けに1996年につくられたもので、原料のとうもろこしの比率がイエローラベルの71%に対して79%と高め(モルトの風味が相対的に低くなる?)。さらに、チャコールフィルターを2重にかけて滑らかな味わいに仕上げられています。
③はアーリータイムズのウィスキーをベースにしたスピリッツに、青リンゴのフレーバーを添加したフレーバード・ウィスキー(税法上はリキュールに分類)です。ブラインドアーチャー(Blind Archer)とは”目隠しをした弓矢使い”という意味で、弓の名手とされる伝説の英雄ウィリアム・テルが、目隠しをして息子の頭上のリンゴを射抜いたという話に由来しています。日本での発売は2015年3月3日です。

<アーリータイムズについて>
・1860年ケンタッキー州のバーボン郡、アーリータイムズ村で生まれたウィスキー。
・アメリカの禁酒法時代(1920~1933年)に、「医療用ウィスキー」の表示を行うことで法律の適用が免除されたことで広く知られるように。そこに目をつけたブラウン=フォーマン社によって買収され、それ以降はケンタッキー州西部の都市ルイビル(Louisville)のダウンタウン蒸溜製造所で生産されています。
・現在、アメリカ国内で販売されているアーリータイムズは、”再利用の焦がしオーク樽”で熟成したウィスキーが20%を占めるため、バーボン・ウィスキーではなく、ラベルには「ケンタッキー・ウィスキー」と表示されています。逆に輸出用のアーリータイムズは、”焦がしオークの新樽”で完熟されたアルコール度数(Abv.)40%の本物のバーボンです。日本ではサントリー酒類が扱っていましたが、ブラウン=フォーマン社がアサヒビールと国内販売契約を結んだのに伴い、2013年から同社が輸入販売を行っています。

<ボイラー・メーカー>
160902 (199)アサヒビール名古屋工場_ボイラーメーカー
バーボンとビールを使ったカクテル「ボイラー・メーカー」をいろんなパターンで試すことができました。ビールとバーボンのタイプによって、全く香味の異なるカクテルができるので、合わせる食事や気分によってバリエーションを選べる楽しみを再認識しました。個人的には、甘い樽香のきいたブラウンラベルのバーボンに、コクのある豊醸やドライブラックを合わせたものが好みでした。また、ブラインドアーチャーとドライブラックの組み合わせもツボでした。

★和食麺処サガミ(愛知県名古屋市守山区大永寺町229)
160902 (205)サガミ(外観)
小腹(?)がすいたのでガイドさんにおすすめのお店を聞いた所、「サガミ 守山大永寺店」を紹介してくれました。チェーン店ですが、名古屋らしいメニュー(いわゆる、”名古屋めし”)も揃っているとのこと。工場にはお店までの地図も用意されていました。工場からお店までは約600mです。
160902 (210)サガミ(みそカツ丼) - コピー
名古屋めしといえば、やっぱりみそかつ丼(税込1,015円)。
160902 (207)サガミ(大吟醸)
昼間に訪れたミツカンと同系の中埜酒造[なかの-]の日本酒もありました。サガミ用につくられた「國盛」の大吟醸(税込529円)。

★感想など
工場内の撮影ができないのは残念でしたが、ミニ缶の製造ラインが見学できたことや、アーリータイムズの比較試飲ができたことは大収穫でした。また、バーボンについて調べ直す良い機会にもなりました。
ガイドさんは工場内も含めて、ほとんどの時間を”後ろ歩き(参加者に背を向けない体勢)”で説明をしてくれました。特に訓練をするわけではなく、つまずいたこともないそうですが、一度だけ”生きたセミ”を踏んでしまったことがあるそうです(それはびっくりするだろうなぁ...)。説明もとてもわかりやすく、今日もガイドさんの”プロ意識”を感じ、良い刺激になりました。

(初稿)2016.9.9

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テーマ : ビール工場見学
ジャンル : グルメ

プロフィール

Nomura Seiji

Author:Nomura Seiji
・お酒と薬膳理論の入門講座、飲酒教育
 nomuras.jimdo.com
・JSAワイン検定講師
・JSAワインエキスパート
・1971年生
・東京在住

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