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【見学】オードヴィ庄内(山形・酒田) - 庄内の自然の恵みで”命の水”を醸す蔵。米、梨、メロン、そしてこんなものまでも...。造り手の方の酒造歴は「まだ40(年)」。

亀ノ尾の里資料館、熊谷神社に続き、酒田市のオードヴィ庄内を見学しました。
前日の電話予約にもかかわらず、快くご対応してくださいました。

日時:2016年8月26日(金) 14:00~
場所:オードヴィ庄内(山形県酒田市浜中乙123)
内容:見学(ガイド付き)、試飲
料金:無料

★アクセス
160826 (170)オードヴィ庄内_外観
酒蔵は、庄内空港から2.2km、酒田駅から約13kmのところにあります。この日は車で連れて行ってもらいました。
160826 (218)オードヴィ庄内_蔵の煙突
蔵の煙突。雰囲気があります。

★オードヴィ庄内
160826 (171)オードヴィ庄内_入口
明治8年(1875年)に醤油・味噌の麹醸造業から衣替えして創業。代表銘柄の「清泉川[きよいずみがわ]」は、付近より湧き出る泉の水を用いて仕込みを行った事に由来するそうです。酒蔵は日本海に面する庄内砂丘の近くにあり、一帯には庄内空港、湯の浜温泉、土門拳記念館、庄内夕日の丘オートキャンプ場、山居倉庫などがあります。清酒以外にも地元の果物を使ったワインなどを造るようになったため、1991年の庄内空港の開港を機に、社名を清泉川酒造(ある雑誌では、佐藤酒造場)からオードヴィ庄内に変更しています。現在の当主は6代目の佐藤晴之氏。酒造りのモットーは「酒に手のぬくもりを伝える」こと。

★蔵見学
最初に、蔵の中を案内して頂きました。

<神棚>
160826 (186)オードヴィ庄内_松尾様
酒造の神・松尾様をまつる神棚。

<蒸きょう、放冷>
160826 (173)オードヴィ庄内_鉄釜 - コピー
米を蒸すのはなんと鉄釜!大小2つの釜は米の量によって使い分けているそうです。この釜に甑[こしき]をはめて米を蒸します。
160826 (175)オードヴィ庄内_ボイラー - コピー
蒸気を発生させるボイラー。
160826 (172)オードヴィ庄内_放冷機
蒸し上がった米は放冷機で冷まします。
160826 (176)オードヴィ庄内_蒸米を運ぶパイプ
冷やした米はポンプで仕込み用のタンクに運びます。麹米や酒母用の蒸米は、別途、人の手で運ぶそうです。

<麹室>
160826 (184)オードヴィ庄内_麹室の入口
麹室の入口。煉瓦造りの佇まいが歴史を感じさせます。扉にも松尾大社の御守がありました。
160826 (180)オードヴィ庄内_麹室の中
麹室の中。吟醸系の麹は手作り(蓋麹)で行うそうです。
160826 (182)オードヴィ庄内_麹を砕く機械
固まっている麹を砕く機械。

高温・多湿の室の中での製麹作業はただでさえ過酷なものですが、あらゆる作業を手で行っていた時代は本当に大変だったそうです。案内してくれた方が「昔はぜんぶ手でやって泣いた記憶がある。」と仰ったので酒造歴を伺ったところ、少し考えられた後のお答えが、

「まだ40(年)前後じゃないかな...」

「天の無い酒造り」という言葉がありますが、技を究めようとする方の謙虚かつ真摯な姿勢に心を打たれました。

<仕込み>
160826 (178)オードヴィ庄内_タンク
仕込み用のタンク。

<上槽・火入れ>
160826 (187)オードヴィ庄内_槽
上槽は写真の槽[ふね]で行い、ヤブタ式の圧搾機は(保有はしているものの)使わないそうです。ヤブタ臭とよばれる匂いやゴム臭が入らないよう(加えて、その匂いを消すために炭を使いすぎることがないよう)、敢えて手間のかかる圧搾法にこだわり、火入れも一本一本、人の手で行っているそうです(ろ過はSFフィルターという非常に目の細かいフィルターを使用)。

少ない人数で作業をしているため、造りは秋口から翌年の5~6月までかかるそうです。蔵のモットーにも掲げられている通り、手間を惜しまず手造りを貫くこだわりが感じられました。

★酒造り
米は基本的に山形県・庄内産の「出羽燦々」、「美山錦」、「出羽の里」などを中心に使い、水は”鳥海山の伏流水(地下水)”で仕込んでいるそうです。酵母菌も山形酵母(の中にも色々と種類があるそうです)がほとんどで、麹菌も山形産(オリーゼ山形?)を使うものがあり、”オール山形”へのこだわりが感じられました。酒質としては、香りが高いものよりも、味がしっかりしたものを目指しており、食事の邪魔をしない”究極の食中酒”を理想としているそうです。

★試飲
160826 (191)オードヴィ庄内_試飲カップ
蔵見学を終えると、社長が直々に試飲のご対応をしてくださいました。テーブルにご用意頂いたのは3つのカップとやわらぎ水。カップ数から試飲は3種だろうと思っていたら、なんと4種も出して頂きました(そして、これがオードヴィの物語のまだ”第1章:Chapter1”であることに、この時点では全く気付きませんでした...)。

<Chapter1~山形米の純米編>酒米と一般米、吟醸造りの違い
160826 (193)オードヴィ庄内_試飲4種_雪女神 - コピー
最初は酒造好適米を使った①「出羽の里(酒米)の”純米”」と②「出羽燦々(酒米)の”純米吟醸”」の比較試飲。どちらもやわらかな米のうま味があり、②にはやさしい吟醸香が感じられました。続いて、③は酒米ではない「つや姫(一般米)の”純米”」。やや甘口で、心地よい酸味も感じられました。
これで終わりだろうと思っていたら、なんと④「大吟醸用の酒造好適米「山形酒104号」を使った”純米大吟醸”」を出して頂きました。登録名が「雪女神」に決まったばかりだそうですが、純潔で気品のある名前通りの、エレガントできれいな酒でした。手に入りにくい米なので、使っているのは10社程度しかないそうです。

(参考)山形酒104号(農研機構HPより):大吟醸酒用酒造好適米の育成を目標に、短稈で心白発現が極良の「庄酒2560,出羽の里」を母、高度精米での砕米率が低い「蔵の華」を父として、2001年に人工交配し、その後代から育成した品種。【長所】①玄米千粒重が大きい、②玄米粗タンパク質含有率が低い、③大吟醸酒としての醸造適性が良好。【短所】①葉いもち圃場抵抗性が”やや弱”、②耐冷性が”中”。

①「清泉川」純米、Alc.15.0%、出羽の里100%(精米歩合60%)、山形酵母、日本酒度+4、酸度1.4、1,296円/720ml。
②「清泉川・銀の蔵」純米吟醸、Alc.15.0%、出羽燦々100%(精米歩合50%)、山形酵母、日本酒度+4、酸度1.4、1,512円/720ml。
③「清泉川・つや姫様」純米、Alc.15.0%、つや姫(精米歩合70%)、明利酵母、日本酒度-2、酸度1.4、1,132円/720ml。
④「清泉川・山形酒壱〇四号」純米大吟醸、Alc.16.0%、山形酒104号(精米歩合40%)。

<Chapter2~日本酒のバリエーション編>王道の大吟醸、辛口と甘口の対極。
4種も利かせて頂いて満足!と思っていたら、なんとさらに4種も出して頂きました(しかも、すべて新しいカップです)。
160826 (201)オードヴィ庄内_試飲8種 - コピー
①~④までが山形米の純米系であったのに対し、⑤は「山田錦(兵庫原産の酒米の王様)の”大吟醸”」。純米大吟醸とは異なる、アル添で引き出された華やかな吟醸香とスッキリとしたキレが楽しめました。
続いて辛口の2種へ。⑥は「出羽きらり(酒米)の”純米吟醸”」で、日本酒度は+8、⑦は「麹米が出羽の里(酒米)の”原酒”」で、日本酒度は+10。後者は酒好きにはたまらない”アルコール度数が19度のガツンとくる酒”でした。
”辛口の階段”を上りきったら、今度は⑧の「つや姫(一般米)の”にごり酒”」で、甘口の世界へストーンと落とされます。あぁ、この組み立てがたまらない...

⑤「清泉川・金の蔵」大吟醸、Alc.15.0%、山田錦(精米歩合35%)、山形酵母、日本酒度+5、酸度1.2、2,268円/720ml。
⑥「清泉川・夏の辛口酒」純米吟醸、出羽きらり、日本酒度+8。
⑦「占飲」極辛原酒、Alc.19.0%、麹/掛:出羽の里/酒造用米(精米歩合70%、酒母55%)、きょうかい9号酵母、日本酒度+10、酸度1.3、1,134円/720ml。
⑧「つや姫 にごり酒」Alc.11.0%、つや姫(精米歩合70%)。

<Chapter3~日本酒のクライマックス編>円熟の極み。
160826 (218)オードヴィ庄内_古酒
160826 (218)オードヴィ庄内_古酒(説明書)
さらにお出し頂いたのが、なんとタンクで25年も寝かせた純米原酒。これだけの年数を経ているのに色合いは輝きのあるゴールドを保っています。ナッツやシェリー酒(アモンティリャード)のような複雑な香りで、まろやかな甘味と果物のような酸味があり、カラメルのニュアンスも感じられました。ワインの世界ではヴィンテージものが高い価値のひとつとされていますが、”穀物酒の古酒”には、果実酒の古酒とは違った良さがあり、日本酒の古酒もワインと同様に高い評価を得られる(べきである)ことを再認識しました。

⑨「清泉川・長期熟成酒25年・純米原酒」Alc.17.0%、雪化粧、今野種麹(秋田今野?)、きょうかい9号酵母、日本酒度±0、酸度1.8。

<Chapter4~果物の恵み編>フルーツの華やかな香味をワインとリキュールに
160826 (202)オードヴィ庄内_梨のミューズ - コピー
さらに物語は続きます。次にお出し頂いたのは、山形県・刈屋の梨で醸したワイン。和梨だけでは狙いの香味が出せないため、なんと洋梨(ラ・フランス)もブレンドしたそうです。白ワインに果汁を混ぜたものではなく、梨の果汁を酵母菌で発酵させた”本物の梨ワイン”。華やかな梨の香りと、極上のはちみつのような気品のある甘さが印象的でした。ミューズ(ギリシア神話の女神、「ムーサ」の英語名・複数形)という酒銘も洒落ています。
160826 (204)オードヴィ庄内_メロンリキュール
さらに、メロンのワインをベースにしたリキュールも利かせて頂きました。同社ではメロンのワインも造っていますが、リキュールにすることで、ワインとは違う魅力~凝縮した甘味と香りに、アルコールの力強さが加わり、甘口ながらもしっかりとした酒質~が感じられました。ワイン(果物の醸造酒)が”ぶどうの独壇場”であるのはもったいないとあらためて思いました。

⑩「梨のミューズ」ワイン、Alc.10.0%、刈屋の梨(和梨・洋梨)、1,440円/720ml。
⑪「メロンリキュール」リキュール、Alc.7.0%、メロンワイン・醸造アルコール・香料・糖類、410円/300ml。

<Chapter5~謎のリキュール?編>
満足感のダメ押しに次ぐダメ押しに酔いしれていたら(←利き酒なのに...)、次の一杯は、

「何の酒か当ててみてください。」

枯れた青草のような香りがしたので、ハーブ系(もしくは笹?)かと思い考え込んでいたら、答えはなんと、

「松」

アカマツの新芽を砂糖水に溶かして一升瓶の中で発酵させたものを原液としたリキュールでした。これはさすがに思いつきません。松ならではの清涼感のある香りがあり、体の中がスーッときれいになっていく感じがしました。成分的にも、約30種のアミノ酸やテルペン酸(精油)、葉緑素などを含んでおり、「薬酒」のひとつとしても期待できそうでした。ちなみに、「松酒」は酒田市西荒瀬地区の住民によって伝承されてきたそうです。商品の共同企画者は、山形県環境アドバイザーの守屋元志氏、リーフレットの内容の問い合わせ先はNPO法人庄内海岸のクロマツをたたえる会(蔵の近くの庄内砂丘は”白砂青松”の景勝地としても有名ですが、海岸線の松林はアカマツではなくクロマツだそうです)。

(参考)アカマツとクロマツの違い:アカマツは”雌松[めまつ]”とも呼ばれ、”雄松[おまつ]”と呼ばれるクロマツよりも葉がやや細くて柔らかく、手で触れてもクロマツほど痛くない。アカマツのほうが目に触れる機会が多く、樹皮は赤褐色(クロマツは比較して黒っぽい樹皮)。クロマツとアカマツの交じっている林では、稀に雑種の間黒松[あいぐろまつ]が生じる。

⑫「森のセラピー」リキュール、Alc.15.0%、松葉・清酒・スピリッツ・砂糖、2,100円/500ml。

<Chapter6~〆のデザート・カクテル編>柿と日本酒のマリアージュ
160826 (216)オードヴィ庄内_試飲(ワイン、リキュール) - コピー
最後(←本当にラスト)はやはり甘口のデザート酒。濃厚な甘みの”庄内柿の果汁”と、米麹のやさしい甘さを持つ”日本酒”を使ったカクテル(リキュール)。日本酒を介在させることで、アルコールと柿の果汁がよりまろやかに(しかも和のテイストに)まとまるのかなと感じました。あぁ、日本人に生まれて良かった...

⑬「柿滴カクテル」リキュール、Alc.7.0%、庄内柿・日本酒・醸造アルコール、1,028円/360ml。

160826 (217)オードヴィ庄内_試飲13種
結局、13種もの唎き酒をさせて頂きましたが、数の多さ以上に、その”物語の組み立て”に感動と興奮を覚えました。

★感想など
殆ど予備知識がない状態で訪れましたが、蔵の持つ”世界観”に圧倒されました。酒造りへのこだわりは言うまでもないことですが、社名のみならず、商品名にも洗練された響きがあり、ボトルの形状からパッケージに至るまで、あらゆる面へのこだわりが感じられました(社長さんの服装もシックでおしゃれでした)。13種すべての試飲に新しいカップをご用意くださり、運転手にも「香りだけでも」とすべてのお酒を注いでくださいました。細やかなお心遣いの数々にも感激しました。

山形の自然の恵みを余すことなく”命の水”に変える蔵。
数々の貴重な体験をさせて頂き、心身ともに心地よい酔いを感じながら酒蔵を後にしました。

(初稿)2016.8.31

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テーマ : 日本酒の酒蔵見学
ジャンル : グルメ

プロフィール

Nomura Seiji

Author:Nomura Seiji
・お酒と薬膳理論の入門講座、飲酒教育
 nomuras.jimdo.com
・JSAワイン検定講師
・JSAワインエキスパート
・1971年生
・東京在住

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