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【見学】もっと知りたい!キリンビール取手工場!2015(茨城・取手) - なぜビール瓶はスクリューキャップにならないのか?

工場の技術員3名が担当分野の説明をしてくれる特別イベントに参加しました。9/12のハートランドツアーのガイドさんに紹介して頂かなければスルーしていたところでした。
数々の疑問が解けて、今回も収穫の多いツアーでした。

テーマ:もっと知りたい!キリンビール取手工場!2015
日 時:2015年9月23日(水) 14:30-16:00(100分)
場 所:キリンビール取手工場(茨城県取手市桑原188-1)
定 員:25名
料 金:無料
内 容:①工場見学(60分)、②試飲(約30分)

★ツアーの概要
女性ガイドさんの案内で工場見学をした後に、取手工場で造られる5種類のビールを試飲します。ツアー途中の”醸造棟”、”パッケージングライン”、”試飲会場”では各1名の技術員が同行し、担当分野の説明をしてくれます。このツアーが行われるのは年に1日程度だそうです。取手工場の45周年ということで、当時との比較の説明が随所でありました。

★工場の紹介
150923 (1)キリン取手_映像ルーム
最初にキリンビール取手工場の紹介映像を観ます。工場長さんのご挨拶もありました。

★工場見学(醸造棟)
続いて醸造棟に歩いて移動し、ビールの原料と仕込み・発酵工程の説明を受けました。
ここで1人目の技術員、ビール造りを担当しているYさん(醸造エネルギー部?)が合流してくれました。

<ビールの原料>
150912 (28)キリン取手(麦芽)
麦芽のサンプルは、”淡色麦芽”と”カラメル麦芽”の2種。両者は焙燥する温度が異なり、ビールに与える色合いや香味が異なります。
150912 (26)キリン取手(ホップ)
ホップには、”アロマホップ(香りが特徴的)”、”ビターホップ(苦味が特徴的)”、”どちらにも分類できないもの”の3種があるそうです。この日のサンプルは、キリンが岩手県・遠野で契約栽培している”キリン2号”。アロマホップの中でも特にフローラルな香りが強いホップだそうです。

<麦汁>
150923 (4)キリン取手_麦汁
恒例の一番搾り麦汁と二番搾り麦汁の試飲。この日は特別に、”ホップを加えた後の二番搾り麦汁(コーン・スターチ入り)”が試飲できました。

麦芽を食べて「おいしい!」と言っていた子どもが、ホップの香りを嗅いだときには「変なにおい」と言い、この甘苦い麦汁を飲んだ時に発した言葉は「パパにあげる...」でした。子どもは正直だなぁ...(大人になればこの香りの良さがわかるはずですが...)

<仕込室の中>
150912 (31)キリン取手(銅製のウォルトパン)
この日は仕込室の中にも入ることができました。室内は熱気がむんむんしていて、もろみの甘く香ばしい匂いが漂っていました。

手前にある”銅製の麦汁煮沸釜(ウォルトパン)”は現存する世界最大級のもの(直径約7.5m)で、1970年~2007年まで実際に使われていたものです。銅は熱伝導性が高く加工しやすいというメリットがある一方で、腐食しやすいという欠点があります。後にステンレスの加工技術が進歩したため、メンテナンスのし易さなどを考慮して、銅製のものからすべてステンレス製のものに切り替えたそうです。ちなみに、創業時に銅釜で仕込みを行っていた「キリンビール」は、1989年に名称変更して「キリンラガービール」になったそうです。

<副原料>
キリンラガーの原材料中の“米・コーン・スターチ”は、副原料専用のマッシュパン?で(麦芽とは別に)煮沸するそうです。仕込室の奥に立ち並ぶステンレス釜の真ん中の列が副原料専用のものだそうです。
”コーン・スターチ”の表記は、とうもろこしの黄色い部分もすりつぶした“コーングリッツ”と、デンプンだけを精製した“コーンスターチ”に分かれていて、後者を使うとよりスッキリとした味わいになるそうです。製品の目的とする方向性によって副原料の使用比率は異なり、具体的な数字は企業秘密でした(当たり前か...)。

<発酵>
酵母を混ぜて使うことがあるか質問したところ、「1品種につき1酵母」とのご回答でした。まぜると酵母自体がお互いに影響しあって違う性質のものに変わることもあるそうです。

<45年前と比べて一番変わったこと>
「ろ過技術の進歩により、加熱処理(による殺菌)をしなくなったこと」とのご回答でした。ただし、「キリンクラシックラガー」は昔の味わいを出すために敢えて今でも熱処理を行っているそうです。また、発酵で使った酵母を一部ビールに残した”無濾過ビール”も販売しているそうです(セブンイレブンで限定販売している「まろやかエール」)。

★キリンビール取手工場の概要
醸造棟を見学した後は、バスでパッケージングラインのある建物に移動しました。車内ではガイドさんが取手工場の概要について説明してくれました。
・1970年(昭和45年)に創業開始、今年で45周年。
・敷地面積は約26万平方メートル(8万坪)で、およそ東京ドーム5.5個分。
・従業員はグループ会社も含めて約620名。
・年間の最大製造量は350缶で570万本分。
・生産量が圧倒的に多い銘柄は「キリン一番搾り」。
150923 (7)キリン取手_発酵貯蔵タンク - コピー
バスは屋外の貯蔵タンクの脇を通り過ぎます。タンクの容量は350缶×120万本分で、全部で139本もあります。最大のもので高さが18m。今は縦長のタンクですが、昔は横長だったそうです。

★工場見学(パッケージングライン)。
ここで2人目の技術員の方のご登場。この日はハートランドビールの瓶詰めが行われていました。
150923 (10)キリン取手 - コピー
びんのパッケージングラインは創業時の2列から、10年後の1955年には8列まで増えたそうです。しかし、後に缶ビールの出荷量が約7割を占めるようになり、現在は再び2列に戻っています。
キリンビールでは他社と異なる“独自のなで肩びん”を使っています。この瓶はこわれにくく洗いやすいメリットがあるそうです。きれいに使えば、1本につき平均8年、計24回も使用できるそうです。

<45年前と比べて大きく変わったこと>
「容器種の構成比が、”瓶”から”缶”主流へと変わった」ことと、「検査機の導入で(目視で行っていた)検瓶作業が大幅に省力化できたこと」とのご回答でした。

<王冠のギザギザとスクリューキャップ>
王冠はのギザギザのすき間からガスが漏れることがないか質問したところ、「基本的に漏れることはない」とのご回答でした。ギザギザの数(21個)に秘訣があるのか伺ったら、具体的な効果は不明だが、昔からその数は変わらないそうです。
また、王冠よりも開けやすい「スクリューキャップ」を使わないのか質問したら、「(パッケージングの)高速化の技術がそこまで追いついていないので、生産数が伴わない。」とのご回答。ものすごく納得できました。

追記:王冠のギザギザの数(21)は、フタがビンの口をしっかりつかむために最もよい数であり、1892年にアメリカのクラウンコルク&シール社の創始者のウィリアム・ペインターが発明して以来、海外でも日本でも統一されてきた数字だそうです。物をしっかりつかんだり、支えたりするには、(二点でも四点でもなく)三点が最も安定するというのが”力学の常識”であり、研究を重ねたところ、直径26.6mmの王冠は21個のギザギザで固定するのが最もよいことがわかったそうです。現在、このギザギザの数は日本工業規格(JIS)にも規定されているそうです。

<その他の質問など>
・ビールの泡はアルコール発酵で発生したものがほとんど。充填時にガスが逃げる分があるので、少しだけ炭酸ガスを吹き込むこともあるそうです。
・”必ずコップに注ぐ瓶ビールは、缶ビールよりも容器の中の圧が高い”と言及していた本があった(と記憶していた)ため、それを確認したところ、「缶ビールも瓶ビールも中の圧は変わらない」とのご回答でした。
・ある女性がパッケージングラインを見て「なぜあそこだけ(私は目視できませんでした...)水があるの?」と質問していました。下から超音波を当てて、容器の中の圧力を高め、漏れがないかをチェックしているとのご回答でした。

★試飲
工場見学の後は、取手工場で造られている5種のビールを試飲しました。通常のツアーの試飲は1人につき3杯までなので、この日は5種ともグラスの半分の量で提供されました。
試飲会場では、ビールの品質を分析する技術員の女性(品質向上室?)が、各銘柄の紹介とテイスティングのポイントを説明してくれました。
150923 (14)キリン取手_試飲5種
①「キリン一番搾り生ビール」
②「キリンラガービール」
③「キリンクラシックラガー」
④「ハートランドビール」
⑤「ハイネケン」

まず、“オールモルト(麦芽100%)”の①キリン一番搾り、④ハートランドビール、⑤ハイネケンの3種を飲み比べるようすすめられました。
一番搾り麦汁だけを使ったコクのある①に対し、二番搾り麦汁も使用している④と⑤にはスッキリとした飲みやすさがありました。

ハイネケンはオランダに本社がある世界シェア第3位(1位:アンハイザー・ブッシュ・インベブ、2位:SABミラー)のビールブランドです。日本国内では、ライセンス契約を結んでいるキリンビールの工場で生産されており、キリンとの合弁会社”ハイネケン・キリン”を通じて販売されています。ハイネケンには、H.エリオン(酵母菌が多種であることを発見。低温加熱殺菌法を開発したルイ・パスツールの弟子)が分離した”A酵母”が1873年以来使われており、淡い色合いのスッキリとしたキレのある味わいに仕上げられています。

次に、②キリンラガーと③キリンクラシックラガーの飲み比べをしました。キリンラガーは副原料(米・コーン・スターチ)を使用している定番商品。120年以上の歴史の中で、徐々に味わいが変わってきているそうです。Wikipediaの「麒麟麦酒」によると、1996年に従来よりも軽めで爽快な味わいに変更(アルコール度数も0.5%上げて5.0%に)したところ、深刻な”ラガー離れ”が起きたため、1998年には再びコクと苦味を高めてラガーらしさを持ち直したそうです。キリンクラシックラガーは、昭和40年頃の味わい(コクと苦味)を再現して2001年に発売された商品です。

<ビールのテイスティング>
技術員の方に“ビールのテイスティングのコツ”を質問したところ、「温度を少し高めにすると香味がわかりやすくなる」とのご回答でした。温度が低すぎると、ビールの良い香りと好ましくない香り(オフフレーバー)の違いがわかりにくくなってしまうため、官能検査では一般的に飲みごろとされる8℃(夏場)~10℃(冬場)よりも高めの品温で検査をしているそうです。検査員の中には、工場ごとの製品の違いを利き分けるような天性のセンスを持っている方もいるそうですが、基本的には何回も訓練を重ねることで、違いがわかるようになってくるそうです。また、プロでも得意不得意があるそうです。やはり利き酒も「ローマは1日にして成らず」でした。

★感想など
8月22日に地元で「キリン系ビール8種のテイスティング会」(※)を開き、同じピルスナー・タイプ(他にスタウト、エール、ホワイトビールを各1種)でも香味が異なることを参加者の方に楽しんで頂きました。今回は、その時に疑問に思っていたことなどを直接専門家の方に質問できたので、とても有意義なツアーでした。

(※)テイスティング会での使用ビール(キリン6種、ヤッホーブルーイング2種に、ハイネケン輸入品とピルスナー・ウルケルを追加)
・キリンラガー
・キリンクラシックラガー
・ハートラードビール
・キリン一番搾り
・一番搾りスタウト
・ハイネケン(国産・缶)
・ハイネケン(輸入・瓶)
・よなよなエール
・水曜日のネコ
・ピルスナー・ウルケル

[初稿]2016.8.20

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テーマ : ビール工場見学
ジャンル : グルメ

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Nomura Seiji

Author:Nomura Seiji
・お酒と薬膳理論の入門講座、飲酒教育
 nomuras.jimdo.com
・JSAワイン検定講師
・JSAワインエキスパート
・1971年生
・東京在住

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