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【見学】松尾大社の「亀の井」 - この水を混ぜると酒が腐らない!? 日本第一酒造之神の神泉

酒造の神様として有名な京都の松尾大社を訪れました。”まつおたいしゃ”と呼ばれがちですが、正式名称は”まつのおたいしゃ”です。境内にある神泉「亀の井」の水を混ぜると酒が腐らないと言われており、今も多くの醸造家が訪れているそうです。

日時:2016年7月8日(金) 17:15頃~
場所:松尾大社の「亀の井」(京都府京都市西京区嵐山宮町3)
内容:自由見学
料金:無料

★アクセス
160708 (261)松尾大社駅
最寄駅は阪急電鉄・嵐山線の松尾大社駅。この日は堀野記念館を訪れた後に阪急電鉄の烏丸駅から向いました(烏丸駅17:00→松尾大社駅17:14、桂駅で乗り換え、220円)。大阪駅までの帰路は、松尾大社駅17:56→梅田駅18:44でした(桂駅で快速急行に乗り換え、400円)。
160708 (262)松尾大社駅
神社の正式名称は”まつのお-”ですが、駅名は”まつお-”です。

★境内図(抜粋)
160708 (268)松尾大社_境内図
亀の井は本殿の右奥にあります。駅前の交差点を渡ってすぐのところに大きな鳥居がありますが、亀の井までは300mほど歩きます。

★駅から本殿まで
160708 (263)松尾大社_駅前の大鳥居
松尾大社駅の改札口を出て左に進むと大きな鳥居が見えます。
160708 (264)松尾大社_案内板1
鳥居の近くにある説明書き。”醸造祖神”と”神泉・亀の井”の表記とともに、亀と盃を描いたかわいいイラストがありました。
160708 (265)松尾大社_大鳥居拡大
厳かな気分になります。
160708 (266)松尾大社_参道
さらに参道を進んでいくと、もう一つの鳥居が見えてきます。
160712 (27)松尾大社_日本第一酒造之神
「松尾社 日本第一酒造之神」と刻まれた碑。
160708 (270)松尾大社_お酒の資料館
2つめの鳥居をくぐると、左側に「お酒の資料館」の看板が!しかし、16時で閉館だったため、この日は見学できませんでした...(7/12にリベンジで再訪しました。)
160708 (269)松尾大社_楼門
高さ約11メートルの立派な楼門[ろうもん]は、寛文7年(1667年)に棟上げされたもの。社寺建築における楼門とは、2階建の門で、初層と上層の間に屋根の出を造らないものを指すそうです。楼門をくぐるとようやく本殿です。

★松尾大社の本殿
160708 (274)松尾大社_本殿
重要文化財の本殿。松尾造(両流造[りょうながれづくり])と呼ばれる珍しい建築で、天文11年(1542年)に改築されたものです。701年に社殿が建てられるまでは、背後の松尾山(標高223メートル)に残る磐座[いわくら]での祭祀が行われていました(松尾山の7つの谷のひとつ、大杉谷の頂上近くの斜面にある巨大な岩石)。磐座とは、古神道における岩に対する信仰または信仰の対象となる岩そのものを指します。
160708 (305)松尾大社_本殿と松尾山
境内には背後の松尾山も含まれるため、その広さは約12万坪に及びます。
160708 (273)松尾大社_案内板2
松尾大社には大山咋神[おおやまぐいのかみ]と中津島姫命[なかつしまひめのみこと](別名、市杵島姫命[いちきしまひめのみこと])の2柱が祭られています。平安京遷都後は王城鎮護の神として、中世以降は酒造の神として人々の信仰を集めています。

★神泉・亀の井
160708 (309)松尾大社_本殿右奥
160712 (92)松尾大社_亀の井標識
本殿の右端の廊下の下をくぐり、右側前方に進んだところに亀の井があります。近くに有料の庭園がありますが、亀の井に拝観料などはかかりません。
160708 (281)松尾大社_亀の井全景
160708 (298)松尾大社_神泉
160708 (283)松尾大社_亀の井
松尾山からの湧き水をたたえる「亀の井」。この水を混ぜると酒が腐敗しないといわれており、醸造家が水を持ち帰って混ぜるという風習が現在も残っているそうです。松尾大社が酒の神として信仰されるのはこの亀の井に由来し、全国に創立された松尾神の分社は1,280社にも及ぶそうです。(すべての酒蔵が松尾様をまつっていると思い込んでいましたが、そうではないようです。例えば奈良県のある酒蔵では、酒林(杉玉)の由来で有名な大神神社[おおみわ-]の神様ががまつられていました。)
160708 (301)松尾大社_亀の井の亀
160708 (300)松尾大社_亀の井アップ
「亀の井」の名称は、松尾大社の神使(しんし。神道における神の使者)が亀であることに由来するとされています。神社文書によれば、松尾神は大堰川[おおいがわ]を遡り丹波地方を開拓するにあたって、”急流では鯉に、緩流では亀に乗った”といわれ、この伝承により鯉と亀が神使とされたそうです。

大堰川:京都府中部を流れる川で、淀川水系の一部。丹波山地の東部付近に源を発し,西流したのち南東へ転じて亀岡盆地を貫流し、亀岡盆地の出口から下流は”保津川”となり,さらに嵐山からは”桂川”となります。全長83km。

160712 (90)松尾大社_なで亀
本殿の正面左側にある”幸運の撫で亀”。

★取水に際しての注意事項
160708 (284)松尾大社_亀の井・取水の注意書き
亀の井に”ろ過用のキャップ”を取り付けることを禁止する注意書き。他の人の待ち時間が長くなることを避けるため、ろ過は帰ってから行うよう促しています。この日は周りに自分しかいませんでしたが、取水のために行列ができることもあるようです(酒造がはじまる時期?)。

★石碑
160708 (282)松尾大社_亀の井・石碑
亀の井のそばにある石碑。京都クルーズ・ブログさまの記事によると、この石碑は平成になってから建てられたもので、碑文は京都府立大学名誉教授の桂樟蹊子[かつら-しょうけいし](1909~1993)さんのものらしいとのこと。
160708 (302)松尾大社_亀の井・石碑(拡大)
碑文には「うま酒の神の韻ある初泉」と記されているそうです。

★霊亀の滝と天狗岩
160708 (293)松尾大社_霊亀の滝
社務所の裏を流れる渓流”御手洗川”には「霊亀の滝」がかかっています。本殿右端の廊下の下をくぐり、左側(亀の井は右側)に少し進んだところにあります。
160712 (93)松尾大社_天狗岩
滝のそばに天狗の顔の形をした岩肌があるそうですが、肉眼では確認できませんでした...

★酒神としての信仰
松尾神を酒神とする信仰の起源は明らかでなく、松尾大社側の由緒では渡来系氏族の秦氏[はたうじ]が酒造技術に優れたことに由来するとし、『日本書紀』雄略天皇紀に見える「秦酒公」との関連が指摘されています。しかし、酒神とする確実な史料は中世後期頃の狂言「福の神」(後述)まで下るため、実際の神格形成を中世以降とする説もあります。それ以降は貞享元年(1684年)の『雍州府志[ようしゅうふし]』や、井原西鶴の『西鶴織留[さいかくおりどめ]』に関連する記述が見られるそうです。
160712 (83)松尾大社_神輿庫
神輿庫[しんよこ]に積み上げられた、奉納の菰樽[こもだる]の山。神社のスタッフに何か意味があるのか質問したら、だたの飾りとの回答でした。それでも、酒造の神としての信仰の篤さが伺えます。
160708 (276)松尾大社_菰樽1
菰樽とは菰を巻いた酒樽で、もとは運搬時の樽の破損を防ぐために菰が巻かれていました。後に、菰に美麗な絵などが描かれるようになり、祝宴での鏡抜きに使うことが増えたそうです。 菰はマコモ(イネ科の多年草)を粗く編んだむしろですが、現在ではわらを用いることが多いそうです。
160708 (277)松尾大社_菰樽2
阪神タイガースの絵柄も。
160708 (278)松尾大社_菰樽3
160708 (308)松尾大社_菰樽4
160708 (307)松尾大社_菰樽5
酒銘とデザインを眺めているだけで時が過ぎるのを忘れてしまいます。


★狂言「福の神」
狂言「福の神」によると、松尾神は「神々の酒奉行である」とされ、現在も神事にこの狂言が奉納されているそうです。
以下、文化デジタルライブラリーさまHPからの引用です。

<あらすじ>
2人の男が、福の神の社に年越しのお参りにやってきて、参拝を済ませて豆をまきはじめると、笑い声がして福の神が現れます。福の神は自分から名乗ると神酒(みき)を催促し、酒奉行である松の尾の大明神に神酒を捧げてから自分も飲み干します。そして、豊かになるには元手がいると2人に話します。2人が、元手がないからここに来たと反論すると、福の神は「元手とは金銀や米などではなく、心持ちのことだ」とさとします。さらに、早起き、慈悲、人付き合いを大切にすること、夫婦仲よくすることを説くとともに、わたしのような福の神に美味しい神酒をたくさん捧げれば楽しくなること間違いないと言って、謡い舞い、朗らかに笑って帰っていきます。

<詞章:福の神が神酒(みき)を催促する場面より>
福の神「汝らは、毎年毎年、奇特に歩みをはこぶなあ」
参詣人甲乙「ハアー」
福の神「イヤ、いつも福の神へ神酒をくるるが、きょうはなぜにくれぬ」
参詣人甲「はったと失念致しましてござる」
参詣人乙「急いであげさせられい」
参詣人甲「心得ました。ハ、神酒でござる」
福の神「これへつげ」
参詣人甲「畏(かしこ)まってござる」
福の神「オオ、ちょうどある」
参詣人甲「なみなみとござる」

★感想など
酒蔵見学にいくとまず見かける松尾様の神棚。ずっと気になっていましたが、ようやくその聖地を訪れることができました(漫画「夏子の酒」でも度々、松尾様を拝む場面が描かれています)。神頼みが切り離せないほど、日本酒造りは腐造とのたたかいであったことが伺え、造り手の苦労とそれを乗り越えてきた情熱にあらためて敬意を感じました。このような経験は酒の美味さをどこまでも高めてくれるので、本当に来てよかった...酒は古来、神事との関係も深かったようなので、そちらも少しずつ学んでいきたいと思います(酒は奥が深いどころか、森羅万象に接点があるような...)。

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テーマ : 日本酒
ジャンル : グルメ

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Nomura Seiji

Author:Nomura Seiji
・お酒と薬膳理論の入門講座、飲酒教育
 nomuras.jimdo.com
・JSAワイン検定講師
・JSAワインエキスパート
・1971年生
・東京在住

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