FC2ブログ

【見学】愛友酒造(茨城・潮来) - 岩手の南部杜氏が関東の水郷で醸す酒

茨城県・潮来市[いたこし]の愛友酒造を見学しました。潮来は霞ヶ浦と北浦に挟まれた”水郷のまち”で、江戸時代には利根川水運の港町として栄えていました。毎年6月には”あやめ祭り”が行われ、多くの観光客でにぎわいます。

日時:2016年4月28日(木) 13:40頃~14:30頃
場所:愛友酒造(茨城県潮来市辻205)
内容:見学、試飲(ガイド付き)
料金:無料

★アクセス
160427 (75)愛友酒造_外観
最寄り駅はJR鹿島線の潮来駅。駅から酒蔵までは約1.4kmです。この日は千葉県佐原市の東薫酒造から車で訪れました(約15km、車で約25分)。

★愛友酒造について
160427 (74)愛友酒造_
もとは江戸時代から「糀友[こうとも]」の屋号で親しまれた糀屋[こうじや]。糀づくりで培った技をもとに、初代・兼平常七[かねひら つねしち]氏が文化元年(1804年)に愛友酒造を創業しました。愛友には、”友を愛し相睦み肝胆相照らす”という意味が込められています。
現当主は七代目の兼平紀子[かねひら みちこ]氏。生産石数は、およそ4,000石(1升瓶で40万本)です。

★見学受付
160427 (70)愛友酒造_酒工房
見学受付は、売店がある”酒工房”で行います。予約なしで訪れましたが、若い女性ガイドがすぐに対応してくれました。

★製造場の見学
160427 (71)愛友酒造_製造場
見学は、写真右奥の煙突の下のスペースからスタートしました。最初の見学箇所の①洗米、浸漬、蒸米のスペースは、蔵の屋外の屋根があるだけの場所でした。

①洗米、浸漬、蒸米
160427 (41)愛友酒造_洗米
洗米:精米時に米に付いたぬかを洗い落とします。通常は機械で洗いますが、吟醸酒などの高級酒は、写真の手前のスペースで手洗いされます。

160427 (44)愛友酒造_浸漬タンク
浸漬:洗米した米は30~60分ほど水に漬けて水分を吸収させ、水から上げて一晩おかれます。写真の3つの銀色のタンクが、浸漬タンクです。

160427 (45)愛友酒造_甑
蒸米:手前の大きな釜(甑[こしき])を奥のもうひとつの釜にうめこみ、蒸し機として使います。2トンの米がおよそ50分で蒸し上がります。

160427 (42)愛友酒造_酒造の神様
続いて、蔵の中へ移動しました。入口の上部には酒造の神様(松尾神社の分社)がまつられていました。

②放冷:
160427 (47)愛友酒造_放冷機
蒸し上がった米は、放冷機で冷まします。高級酒の場合はムシロの上に蒸米を置いて機械を使わずに冷まします。写真左のシャッターの向こう側が、先程の蒸し機のある場所です。

③製麹、仕込み(酒母・もろみ)
160427 (53)愛友酒造_仕込み_通し柱
冷ました蒸米は2階の麹室に運ばれます。一般酒用の蒸米は写真右の筒の中を機械の風力によって運びますが、高級酒用の米は蔵人が背中にかついで運びます。
米麹:蒸米に種麹を付け、約2日かけて造られます。
酒母:出来上がった米麹に、酵母菌・蒸米・水を加えて造られます。
もろみ:出来上がった酒母に、蒸米・米麹・水を3度に分けて投入して造られます。

2階まで通っているひのきの1本柱は「通し柱」といい、現在では非常に貴重な構造物です。

④上槽
160427 (50)愛友酒造_上槽_圧搾機
発酵が終了したもろみを圧搾機で搾り、清酒と酒粕に分けます。白米総量の約25%が酒粕になります。

160427 (52c)愛友酒造_槽
高級酒は、槽[ふね]で時間をかけてゆっくりと搾られます。

⑤貯蔵、火入れ、加水、瓶詰
160427 (49)愛友酒造_貯蔵タンク
搾った酒は熱処理(火入れ)により殺菌され、タンクで貯蔵されます。火入れをしないものは”生酒”となります。貯蔵タンクに入っているのは加水をしていない”原酒”で、アルコール度数が20度近くあります。原酒はホースによって塀の向こう側にある瓶詰工場に送られ、瓶詰の直前に加水が行われます。

蔵内のタンクは、大小あわせて125個あるそうです。

160427 (69)愛友酒造_調合用タンク
各タンクの酒は品質を均一化するため、屋外の大きなタンク(約23,000ℓ)で調合されます。

★試飲
160427 (67c)愛友酒造_試飲
見学の後は、酒工房に戻って試飲をさせて頂きました。試飲のラインナップや提供の順番は、愛友酒造の酒の多様性がわかるように配慮されていると感じました。

<試飲アイテム> 価格は税別・720ml
①「愛友」大吟醸、山田錦(兵庫県産)、精米38%、Alc.16-17%、3,880円
②「友寿」純米吟醸酒、五百万石(茨城県潮来産)、Alc.15-16%、1,940円
③「水郷潮来 あやめまつり」純米酒、美山錦、精米60%、1,203円
④「酒蔵の粋」普通酒(米・米麹・醸造アルコール・糖類・酸味料)、1升瓶で千円程度
⑤「純米しぼりたて本生原酒」純米、生原酒、限定品、H27.2より販売、1,300円
⑥「ピュア茨城 しずく」特別純米、生酒、ひたち錦(茨城県産)と茨城の酵母使用、精米55%、Alc.16-17%、1,600円
⑦「(ラベル白紙)」蔵出し吟醸原酒、2,600円
⑧「鹿嶋 神の道」純米酒、原酒、日本晴(鹿嶋市谷津田産の無農薬栽培米)
⑨うめ酒

まず①と②の2つの吟醸系を利くことで、アル添で華やかな香りを引き出した”大吟醸”と、米のふくよかな旨みを感じる”純米吟醸”の違いがよくわかりました。さらに、③吟醸系ではない”純米酒”、④糖類・酸味料を使って価格を抑えた”普通酒”と続き、添加物の有無による酒質の違いを感じることができました。生酒では、⑦タンクから直接注がれた吟醸原酒のほかに、直近酒造年度の⓹最初に搾った酒と、⑥最後に搾った酒がありました。また、②⑥⑧は地元の米(⑧は無農薬栽培)、③⑥は地元で研究開発された酵母で造られたものでした。

どの酒にもそれぞれの個性があり、価格帯も様々でした。酒のタイプを知り、自分の好みと懐具合に応じて酒を自由に選べるようになれば、楽しみ方が大きく広がると改めて感じました。

ガイドさんは説明の中で度々、「お酒の好みは人それぞれなので、”値段の高い酒(大吟醸)”や”生酒”が必ずしも好まれるわけではない」ことに触れていました。それぞれのお酒ときちんと向き合って好き嫌いを判断してほしいという想いが伝わってきました。

★地元の米、酵母
愛友酒造では、茨城県産の酒米や酵母を使った酒造りにも積極的に取り組んでいます。
酒米では、「純米吟醸 友寿」に地元・潮来産の”五百万石”を使用しています。また、茨城県初の酒造好適米”ひたち錦”や、茨城県の鹿行・県南地域で”あきたこまち”に代わる極早生品種として研究開発された”一番星”などが使われています。その他、「鹿嶋 神の道」は、“蛍の里”とよばれる鹿嶋市・谷津田で無農薬栽培された“日本晴”が使用されています。

酵母では、平成21年6月に潮来のあやめの花から抽出に成功した”あやめ酵母”が、「水郷潮来 あやめまつり」に使われています。

★水
潮来市の大生神社[おおうじんじゃ]の”思井戸[おもいど]”は名水として知られています。この地域の水脈は、酒づくりに最適なミネラル分を含む”中硬水”。愛友酒造では、この水脈の水を井戸からくみ上げて仕込み水としています。
地元出身の女性ガイドさんも、むかしから井戸水に親しんできたそうで、この辺りが水に恵まれた環境であることが伝わってきました。

★杜氏・蔵人
現杜氏の多田一郎氏、前任の阿部昭一氏は、ともに岩手県の南部杜氏。毎年10月後半に岩手県からやって来て、蔵に寝泊まりしながら酒造りを行い、翌年の4月上旬(今年は4/1)にふるさとに帰ります。同蔵ではおよそ30年に渡り、南部杜氏による酒造りが行われているそうです(その前は新潟県の越後杜氏)。現在の多田杜氏は同蔵で3年目。前杜氏が退任する際は南部杜氏協会に後任の紹介を依頼したそうです。
現在の酒造りは5-6人(岩手から訪れる2人と、蔵の社員3-4人)で行っているそうです。10年ほど前は、まかないのおばさんもあわせて岩手から5人来ていたそうです。

★鹿島神宮の御神酒[おみき]
酒蔵のおよそ8kmほど東側に、全国の鹿島神社の総本社である鹿島神宮があります。同社の御神酒には、愛友酒造の「霰降[あられふり]」が選ばれています。

★関東の水郷にいまも生きる季節労働の杜氏文化
杜氏が蔵人を率いて冬の間だけ出稼ぎにでる文化は、もう消滅していると思い込んでいました。過去の酒蔵見学でも、造り手は(寒仕込みだけの蔵でも)年間雇用契約をした地元の社員が中心でした。
ところが、愛友酒造だけでなく、同日訪れた千葉県佐原の東薫酒造でも、杜氏を冬季のみ岩手県から招聘して酒造りを行っていました。地元の関東で一昔前の杜氏文化がいまも生き続けていたことに新鮮な感動を覚えました。

[Link]Indexページに戻る
[Link]Nomura Seijiの公式HP
[Link]ご意見・お問い合わせはこちらから
関連記事
スポンサーサイト



テーマ : 日本酒の酒蔵見学
ジャンル : グルメ

プロフィール

Nomura Seiji

Author:Nomura Seiji
・お酒と薬膳理論の入門講座、飲酒教育
 nomuras.jimdo.com
・JSAワイン検定講師
・JSAワインエキスパート
・1971年生
・東京在住

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR