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【見学】神戸酒心館(兵庫県・東灘) - ノーベル賞晩餐会で楽しまれたSAKE・「福寿」

白鶴資料館に続いて、福寿の蔵元・(株)神戸酒心館[こうべしゅしんかん]を訪ねました。昨年3月に続いて2回目の訪問です。今回はガイド付きの蔵見学に参加できました。

日時:2016年5月28日(土) 11:00~11:40
場所:神戸酒心館(神戸市東灘区御影塚町1-8-17)
内容:見学(ガイド付き)、試飲
料金:無料

★アクセス
最寄駅の阪神電鉄・石屋川[いしやがわ]駅から神戸酒心館までは約800mです。この日は白鶴資料館から約1.5kmの道のりを歩きました。途中で菊正宗や剣菱、泉酒造などの工場の前を通ります。道中には、六甲の水を使った手作り豆腐の店”おかげとうふ庵”もあります。

★外観
160528 (75)神戸酒心館_豊明蔵
敷地裏側からの写真。手前は多目的ホールの”豊明蔵”。奥の高い建物は、左が売店などがある”東明蔵”、右が酒造を行う”福寿蔵”です。
160528 (77)神戸酒心館_入口
入口の”長屋門”。ギャラリーにもなっています。

★大桶
160528 (80)神戸酒心館_大桶
長屋門をくぐって右側にある2つの大桶は、お酒の仕込みに使われていました。容量は32石(約6kl)。昔は造りが終わると洗った桶を蔵の外で干していたため、子供の格好の遊び場になったそうです。

★蔵見学の集合場所
160528 (82)神戸酒心館_売店入口
蔵見学の集合場所は、東明蔵(売店)の入口の中にある長椅子付近です。開始時間の少し前に女性ガイドが迎えに来てくれました。この日の見学者は5名でした。

★福寿蔵の入口
160528 (109)神戸酒心館_東明蔵入口
見学コースの福寿蔵は酒造を行う施設です。21年前の阪神大震災で木造の建物が全壊してしまったため、新たに建てられたものです。

★神戸酒心館の紹介
はじめにビデオルームで蔵の説明を受けました。
160528 (100)神戸酒心館_ビデオルーム
・神戸酒心館の創業は、江戸時代中期の宝暦元年(1751)。現在の当主は13代目。
・灘五郷の御影郷(後述)にて260年余り酒造りを行う。
・代表銘柄は「福寿」。七福神の”福禄寿”に由来し、顧客の健康長寿と財運を祈願する名称。
・ノーベル賞授賞式の晩さん会で「福寿 純米吟醸酒」が提供されて一躍有名に。
・酒造に携わる社員は男性7人、年齢は20~50代。

★酒造工程の見学
次にエレベーターで4階に移動し、スリッパに履き替えて、酒造工程を見学しました。津波による被害を避けるため、酒造設備は2階より上に作られているそうです。2~4階は吹き抜け式になっていて、3階にエレベーターは止まらないそうです。

①蒸鏹・放冷
160528 (87)神戸酒心館_蒸米
ドア越しに蒸鏹室を見学。奥に2つの甑が並んでいます。米は下から約100℃の蒸気を当てて約1時間ほど蒸されます。蒸し上がった米は、甑を斜めに傾けてベルトコンベアーの上にかき出され、放冷室へ運ばれます。蒸米の約2割は温度を30℃に下げて麹米に、残りは約10℃まで冷やして掛米に使われます。現在は放冷機を使いますが、昔は、六甲山から吹き下ろす寒風(六甲おろし)を利用して蒸米を冷やしていたそうです。作業は午前3時頃から行うという厳しいものだったようです。

②製麹・酛立て(見学なし)
麹は箱麹法による完全手造り(箱麹法)。酒母は、速醸だけでなく、生酛も手掛けています。

③仕込み
160528 (88)神戸酒心館_仕込・醗酵室
仕込・発酵室。室内奥には、酒造の神・松尾様を奉る神棚がありました。
160528 (90)神戸酒心館_仕込みタンク
仕込みタンクの容量は9,000ℓですが、泡が立つ等の理由から、実際に仕込むのは約6,000ℓ程度。純米酒で約20日、大吟醸系で約35日かけて発酵させます。

④上槽
もろみを搾って、清酒と酒粕に分ける機械。酒造りは1年中行いますが、酒粕の販売は冬季のみとなります。
160528 (96)神戸酒心館_上槽室
メインで使われている圧搾機。横から圧力をかけて醪を搾ります。
160528 (95c)神戸酒心館_上槽室
槽[ふね]。醪を酒袋に入れて箱の中に並べ、上から圧力をかけて搾ります。昔は桜などの堅い木でできた槽を使っていました。
大吟醸系は、醪を酒袋にいれて吊り、まったく圧力をかけずに自然にしたたり落ちる酒だけを斗瓶に集める”袋しぼり”も行います。

⑤火入れ・貯蔵
160528 (99)神戸酒心館_貯蔵タンク
奥の大きいタンクには約60℃で加熱殺菌(火入れ)した酒が貯蔵されており、手前の温度調節ができるサーマルタンクには、火入れをしていない生酒が入っています。

★試飲
160528 (104)神戸酒心館_試飲
最後に売店で試飲をさせて頂きました。

<試飲アイテム>
①「福寿 大吟醸」Alc.15度、精米歩合50%。
②「福寿 純米大吟醸」Alc.15度、精米歩合50%
③「福寿 御影蔵 純米」Alc.15度、精米歩合70%
④「福寿 夏辛80」生酒、Alc.15度、精米歩合80%
⑤「福寿 大吟醸」生原酒、Alc.18度、精米歩合50%
⑥「ゆず酒」、Alc.14度、日本酒・ゆず果汁・氷砂糖・醸造アルコール

・①と②の違いはアル添の有無。醸造用アルコールを添加している①は、吟醸香がより華やかに感じられ、純米の②は米のうまみがしっかりと余韻に残りました。
・⑤は②の生原酒。火入れと加水をしていないため、香りも味わいもより力強く印象的。
・③は②と同じ純米でも、香りは穏やか。食事と合わせやいすっきりとした辛口。
・④は2割しか精白していない生酒。心地よい酸味とアフターのキレ。

★世界に認められた「福寿」
(a)ノーベル賞晩餐会に供出
スウェーデンのストックホルムで開かれるノーベル賞の晩餐会や公式行事にて、「福寿 純米吟醸」が2008年、2010年、2012年、2014年、2015年に提供されています。同国のソムリエが輸入されていた福寿を気に入り、推薦してくれたそうです。

(b)世界最優秀ソムリエがコンクールにて選出
第14回A.S.I.世界最優秀ソムリエコンクール(2013年、東京)で優勝したパオロ・バッソ氏は、最終決戦の最初の銘柄に(ワインではなく)福寿のSAKEを選びました。

★原料
(a)酒米:山田錦
酒米の王様といわれる山田錦は兵庫県が原産地。同社では、兵庫県北区大沢[おおぞう]地区の農家と特別契約(村米制度)した米を使用しています。山田錦は大粒で、低たんぱく・低脂肪・高でんぷん、吸水率がよい等の利点を備えています。一方で、稲の背が高く倒れやすい、農作業に手間がかかり育てにくい等の苦労が伴う酒米です。
160528 (103)神戸酒心館_酒米サンプル
酒米のサンプル。精米歩合が下がるに従ってサンプルの量も少なくなっていて、とてもわかりやすかったです。
160528 (81c)神戸酒心館山田錦栽培田
売店入口の手前にある”山田錦の栽培田”。この小さな田んぼで、地元の小学生が田植え・稲刈りの体験をしているそうです。今年は田植えが6月中旬、稲刈りが10月中旬を予定しているそうです。

(b)仕込み水:宮水
西宮の宮水地帯(後述)から、酒造に適した水をタンクローリーで運んでくるそうです。

★灘五郷について
”灘の生一本”で知られる兵庫県の日本酒の生産地。以下の5つのエリアから成ります。
(1)西郷[にしごう]:沢の鶴など
(2)御影郷[みかげごう]:白鶴、菊正宗、剣菱、福寿など
(3)魚崎郷[うおざきごう]:櫻正宗、浜福鶴など
(4)西宮郷[にしのみやごう]:白鹿、白鷹、日本盛など
(5)今津郷[いまづごう]:大関など

灘が“日本一の酒どころ”として栄えた理由(同社の案内板『当蔵の歴史と灘五郷』より)
①宮水:西宮の宮水地帯に湧出する水で、他の地方の酒造水に比べ、酵母の増殖に欠かせないリンの成分が約10倍と多く、またアルカリ成分も豊富で、塩分を適度に含み、酒造りに害を及ぼす鉄分が極めて少ないという理想的な水です。
②酒米:六甲山の北側の田園地帯は昼夜の温度差が大きく、粘土質の土壌であり、米づくりに最適の自然条件を備えています。酒米には、大粒で、たんぱく質や脂肪が少なく、また、心白(米粒中央部にある白斑)が大きいうえに吸水や酵素による消化の良さが要求されますが、なかでも「山田錦」は理想の米として、日本一の酒米と言われています。この「山田錦」も灘の酒造家が農家と「村米契約」という制度をつくり育ててきました。
③吉野杉(桶や樽づくり):各地の杉の中でも、吉野杉は香り、材質ともに酒造りには最高のものとされ、大いに利用されました。特に江戸積みの酒は樽に入れられ、富士山を左手に見ながら江戸へ下りましたので、江戸に着く頃には丁度良い木香がつき、「下り酒」、「富士見酒」として大変人気を博しました。
④六甲おろし:酒造りには寒い気候が必要です。六甲山から吹き下ろす六甲おろしの寒気を酒蔵へ取り込む為、酒蔵の設計にも工夫が凝らされています。
⑤杜氏(丹波や但馬杜氏の技術):灘伝承の酒造りの技術が優秀な杜氏や蔵人に継承されていきました。
⑥水車(水車精米):当地は六甲山と海がせまり、川は急な流れで、住吉川や都賀川には沢山の水車小屋がありました。全国で初めて精米に水車による動力を利用しましたので、これまでの足踏みでは八分搗きが限度でしたが、水車では約2割まで精白度を高めることができました。これにより酒の品質が飛躍的に良くなるとともに、大量の精白が可能となりました。(明治の中頃が最盛期で、近辺には水車場が277場、4647臼があったと記されています)。
⑦樽廻船:一大消費地に発展してきた江戸への酒の輸送方法では、灘五郷は沿岸部に位置するため、船積みの便に恵まれました。樽廻船という酒樽専用の船が出現し、積荷量と速さを競って江戸新川へ運ばれました。


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テーマ : 日本酒の酒蔵見学
ジャンル : グルメ

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Nomura Seiji

Author:Nomura Seiji
・お酒と薬膳理論の入門講座、飲酒教育
 nomuras.jimdo.com
・JSAワイン検定講師
・JSAワインエキスパート
・1971年生
・東京在住

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