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【見学】ヤマシン醸造(愛知・碧南市) - 白醤油

白醤油のヤマシン醸造を見学しました。
白醤油は三河地方で主につくられる琥珀色の醤油です。

日時:2016年4月8日(金) 14:30~
場所:ヤマシン醸造(愛知県碧南市西山町3-36)
内容:見学(ガイド付き、約1時間)
料金:無料
交通:名鉄三河線(北新川駅→刈谷駅ほか)、18きっぷ(刈谷駅→東京ほか。1日あたり2,370円)
URL:http://www.yamashin-shoyu.co.jp/

★アクセス・外観
160408ヤマシン醸造 (2)
最寄り駅は名鉄三河線の北新川駅。駅から工場までは約600mです。社名を記した木製看板と古い型の郵便ポストが良い感じでした。
160408ヤマシン醸造 (外観)
最初に左側の事務所で男性スタッフの方が社史や白醤油の概要などについて説明してくださいました。

★白醤油の始まり
大正時代末期(1920年頃)、新川町の内藤弥作氏が現在の”金山寺味噌に似た味噌から浸み出すたれ”にヒントを得て、このたれの製法を鳥居商店(現在のヤマシン醸造)に教えたのが白醤油の始まり。鳥居家は江戸時代後期の享和2(1802)年より醸造業を始め、味噌・溜・味醂などを作っていたそうです。

★白醤油の製造工程
160408ヤマシン醸造 (白醤油の製造工程)

①原料処理
通常の醤油の原料は小麦5:大豆5ですが、白醤油は小麦9:大豆1。小麦を多く使うことで、色が淡く、甘味が強い醤油が作られます。原料置き場には、小麦が山のように積まれている一方で、大豆の袋はわずかしか置かれていませんでした。
160408ヤマシン醸造 (原料_小麦)c
小麦は”精麦”したものを使用。精麦といってもビールやウイスキー(の大麦)の”製麦”と違って発芽はさせません。原料の小麦には国産と米国産がありますが、白醤油には米国産の方が適しているそうです。理由は、国産よりも柔らかく、アミノ酸(うま味成分)のもととなるたんぱく質が国産よりも多く含まれるため。通常の醤油は、小麦のでんぷん(アミラーゼ酵素でブドウ糖などに分解)から主に甘味成分、大豆のたんぱく質(プロテアーゼ酵素でアミノ酸に分解)から主にうまみ成分を引き出しますが、小麦が原料の9割を占める白醤油では、小麦のたんぱく質含有量がうま味を引き出すうえで軽視できないそうです。

160408ヤマシン醸造 (原料_大豆)
大豆はNon-GMO(Non-Genetically Modified Organisms。非遺伝子組み換え)のものを”焙煎”して使用。他の醤油(濃口・薄口・たまり・再仕込)は”炒った小麦と蒸した大豆”を使いますが、白醤油の場合は”炒った大豆と精麦した小麦を共に蒸して”使います。

②洗浄・浸漬
160408ヤマシン醸造 (洗浄)
原料を洗浄する機械。洗浄した原料は浸漬の工程で適度な水分を吸収させます。
160408ヤマシン醸造 (洗浄後の小麦)c
洗浄したての小麦を手に取って見せてくださいました。お願いして試食させて頂きましたが、ビール工場で試食したモルトと違って、甘味や香ばしさは感じられませんでした。

③蒸煮[じょうしゃ]
160408ヤマシン醸造 (蒸煮)
原料が機械の中を右から左にむかって移動している間に、常圧のもと95℃位で約40分ほど蒸されます。

④放冷
160408ヤマシン醸造 (放冷)
蒸した原料を冷まします。

⑤製麹
160408ヤマシン醸造 (製麹)
緑のパイプの中を原料が通過しているところに、機械で自動的に種麹(黄こうじ)をふりかけます。黄こうじにも色々な性質のものがあるようですが、白醤油の原料は小麦の割合が多いため、”糖化力がつよいもの”を選んで使用しているそうです。種麹は(自社培養ではなく、)専門メーカーから購入してくるそうです。

160408ヤマシン醸造 (麹室)
種麹のついた原料をポンプで麹室に送ります。麹室は直径7.5mの円盤型で、1度に6トンの麹がつくれるそうです。麹の出来不出来は”酵素量の問題”であり、見ためではわからないため、温度を少しずつ変えたりするなどの試行錯誤を重ねているそうです。
160408ヤマシン醸造 (麹室内部)c
麹室の中。2日かけて原料を麹にします。訪問時は原料を入れたばかりの状態でしたが、破精が進むにつれて独特の麦麹の香りがしてくるそうです。

⑥塩水混合
麹ができたら、麹室の下のタンクに落として塩水と混ぜ、ポンプで仕込・熟成蔵へ送ります。同社の敷地は2,500坪あり、麹室のある建物から仕込・熟成庫までは少し歩きました。

⑦仕込・熟成
160408ヤマシン醸造 (熟成庫)
仕込・熟成庫。庫内には杉の木桶やタンクが並んでいます。木桶では2回、タンクでは1回の仕込みを行うそうです。

160408ヤマシン醸造 (木桶)
木桶の仕込みは”2回”。下にワラを敷いてもろみを入れ、暫くして麹が浮いて来たら、シートをして置き石をします。3カ月くらい熟成した後に桶の下から引いたものが”一番汁”で、甘みをうま味も強く濃厚。この時点でまだ桶内に麹が残っているため、再び塩水を入れて2-3カ月熟成させて(今度は引かずに)圧搾機でしぼったものが”二番汁”で一番汁に比べたら薄め。通常は一番汁と二番汁をブレンドしますが、一番汁の割合が多いものはJASの特級品となるそうです。ビールの製造工程でも”一番搾り麦汁”と”二番搾り麦汁”を通常は混ぜて使用するので、似ている点が面白いと感じました。ちなみに「キリン一番搾り」は一番搾り麦汁だけを使用した濃厚でリッチな味わいのビールです。

160408ヤマシン醸造 (仕込タンク)
タンクの仕込みは”1回”。木桶よりも温度を高めにして発酵を促し、短期間で熟成。タンクは2重構造で、水や湯を通して内部の温度をコントロールできるそうです。

⑧圧搾
160408ヤマシン醸造 (圧搾機)
愛知県常滑市に本社がある(株)マキノの圧搾機。日本酒のヤブタ式と同じ考え方に基づいた圧搾機とのこと。昔は縦型の機械を使い布で絞っていたそうですが、粕が崩れやすいため、研究してマキノの横型に変更したそうです。
160408ヤマシン醸造 (粕)c
白醤油粕。粕には塩分が8%くらいあり、以前は一部をぬか床などに再利用していたこともあるそうですが、現在はほとんどが廃棄されるそうです。

⑨ろ過
珪藻土を利用したろ過器で菌などを取り除きます。白醤油は着色を防ぐために加熱殺菌処理を行わないため、酵素は生きたまま残ります。

★お土産
最期に2種類の白醤油を頂きました。
160408ヤマシン醸造 (25)
左は「ヤマシン白醤油」。”木桶仕込み”で、熟成は2-3カ月。麹の香りと木桶の杉の香りが感じられる複雑で独特な香味。
右は「金完熟白醤油」、”タンク仕込み”で、熟成は約1カ月。癖がなく、使いやすいもの。

★白醤油の利用
料理の味だけでなく色も重要視されるようになり、白醤油の利用範囲が広がっているそうです。
和食では主に魚介類のだしと合わせて、お吸い物や鍋料理、うどんやそばのつゆ、茶わん蒸し、だし巻き卵などに。白身魚を漬け焼きにすると、塩焼きよりもうま味が増し、身も柔らかくなるそうです。また、中華ではラーメンのスープにも使われているほか、チーズやホワイトソースとの相性も良いため、パスタソースやグラタンなどの洋食にも用いられているそうです。同社では、白醤油にオリーブ油やハーブ類などをブレンドした”オリーブ白醤油”を発売しています。

オリーブ白醤油の原材料:食用オリーブオイル、白しょう油、果糖ぶどう糖液、ガーリック、こしょう、食塩、バジル、オニオン、セロリ、タイム、オレガノ、マジョラム、増粘多糖類(原材料の一部に小麦、大豆を含む)

★碧南の多様な発酵文化
碧南市には白醤油、たまり醤油、味噌、みりん、日本酒など多くの醸造メーカーがあります。醤油ひとつをとっても、"濃色のたまり”と”淡色の白"が同じ地方に存在しており、その多様性が伺えます。醸造業が盛んになった背景には、①醸造に適した矢作川の水、②矢作川流域の穀倉地帯、③海運の拠点であったこと(知多湾につながる衣浦港に面している)などが挙げられています。

★その他、メモ
・全国の白醤油の生産量は年間約6千㎘(6,000,000ℓ)。うち、同社のシェアは1/6の約1千㎘(白醤油ではトップ)で、加工品はその倍くらい作っているそうです。
・薄口醤油は大豆、小麦の他に米を使用し、最後に甘酒が入るため、白醤油とは香味が異なるそうです。

★感想など
昨夏の”和食とワイン”のセミナーで、田崎真也さんが「ソムリエ・コンクールで”醤油の種類5つを答えよ”という出題をした」と言及されました。日本人として、また、和食への注目度が高まりつつある中で、醤油をきちんと理解しておきたいと思い、今回の見学につながりました。
かなり昔に醤油の仕組みを勉強しようとした時には難しすぎて挫折していましたが、ワイン(シンプルなアルコール発酵)、日本酒(麹菌による糖化とアルコール発酵)、ビール(発芽による糖化とアルコール発酵、小麦を多用した白ビール)などを勉強していたおかげで、醤油の製造工程を少しは理解できるようになっていました。シンプルな基礎から段階を追って学ぶことの重要性を実感しました。


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テーマ : しょうゆ工場見学
ジャンル : グルメ

プロフィール

Nomura Seiji

Author:Nomura Seiji
・お酒と薬膳理論の入門講座、飲酒教育
 nomuras.jimdo.com
・JSAワイン検定講師
・JSAワインエキスパート
・1971年生
・東京在住

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