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【見学】九重味淋(愛知・碧南) - 最古のみりん醸造元

日本最古のみりん醸造元(現存ベース)、九重味淋[ここのえみりん]を見学しました。
社名の漢字は”味醂”ではなく”味淋”です。

日時:2016年4月8日(金) 11:00~
場所:九重味淋(愛知県碧南市浜寺町2丁目11番地)
内容:見学(ガイド付き)
料金:無料
交通:名鉄三河線(碧南駅⇔刈谷駅)、18きっぷ(刈谷駅→東京ほか。1日あたり2,370円)
URL:http://kokonoe.co.jp/meet01

★アクセス
160408 (41)碧南駅
最寄り駅は名鉄三河線の碧南[へきなん]駅。前日に宿泊した岐阜県の大垣からJR新快速(大垣駅9:11→刈谷駅10:05、18きっぷ)と、名鉄三河線(刈谷駅10:09→碧南駅10:37、片道400円)を乗り継いで行きました。

★最寄り駅
160408 (42)
碧南駅は名鉄三河線の終着駅。九重味淋までは駅から徒歩約5分です。

★敷地案内図
160408 (39)九重味淋_案内図
碧南駅は図の北東(右上)方面。見学の受付は本社事務所で行います。見どころのひとつ”大蔵”は研究管理課・食堂と道路を挟んだ南側にあります。

★大蔵
160408九重味淋 (3)大蔵
宝永3年(1706年)に建築され、天明7年(1787年)に現在の場所に移築された「大蔵」。黒塗総下見板張の土蔵造りで、柱や梁には太く頑丈な木材が使われています。現在もみりんの熟成庫として利用されています。この大蔵は、国の登録有形文化財建造物として登録されています(碧南市で初)。

★見学受付(本社事務所)
160408九重味淋 (11)外観
見学の受付は、写真の左側にある本社事務所で行います。受付を済ますと、男性スタッフが迎えにきてくれました。見学できる施設は正面の建物2階にある”九重みりん時代館(以下、時代館)”のみで、製造場所の見学はできませんでした。

★DVDによる説明
160408九重味淋 (14)DVD
最初に時代館の2階で、同社の歴史やみりんの製造工程などを紹介したDVDを見せて頂きました。

★「九重味淋」の歴史
創始者は廻船問屋を営んでいた石川八郎右衛門信敦氏。安永元年(1772年)からみりんをつくり始めており、三河みりんの元祖とされています。

★みりんの原料(本格本みりん)
(a)もち米
(b)米麹(うるち米+種麹)
(c)米焼酎(清酒粕を蒸溜した粕とり焼酎)

★みりんの製造工程(本格本みりん)
①米麹づくり:
うるち米に種麹をつけ、二昼夜かけて米麹をつくります。

②蒸米・放冷:
もち米を蒸します。蒸した米は放冷機で適温に冷まされます。

③仕込み(糖化熟成)【約2カ月】:
蒸したもち米、米麹に米焼酎を合わせて撹拌し、糖化熟成を行います。その間、もろみが均一に熟成するよう、竹の棒によりかきまぜる”櫂入れ”が行われます。仕込み蔵の中の室温は18~20度。床板を張り、もろみが入ったタンクを半地下の状態にすることで蔵内の温度を安定させています。

④圧搾【2日間】:
もろみを酒袋に詰め、槽[ふね]と呼ばれる圧搾機で搾ります。はじめはもろみ自身の重みだけで、みりんがじんわりしみだすのを待ち、その後上から徐々に圧力を加え、2日間かけてゆっくりと搾ります。一気に圧力をかければ搾られる量は増えますが、 余分な雑味が混ざってしまうため、伝統的な”佐瀬式圧搾機”を用いて時間をかけてゆっくり搾っています。

160408 (38)九重味淋_佐瀬式圧搾機
<佐瀬式圧搾機>現在では製造されていない昔ながらの圧搾機。佐瀬式圧搾機で搾ると、”みりん粕”もやわらかく上質なものとなります。このみりん糟は漬け物用として品薄になるほどの人気があるそうです。

⑤貯蔵熟成【約1年】:
搾った本みりんは、半年から一年の間、大蔵でゆっくりとねかせます。熟成したら、微妙に異なる風味を均一にするため、大きなタンクの中で混ぜ合わせます。

⑥ろ過:
熟成した本みりんはろ過により不純物などを取り除かれます。

★むかしの道具
160408 (26)九重味淋
時代館には九重味淋の祖・石川家に伝わる古い道具や古文書などが展示されています。

160408 (35c)九重味淋_足踏み精米機
明治の頃の足踏み式精米機。

160408 (22c)九重味淋_酒袋とかすり
<右:かすり>タンクの中のもろみを最後まで取り切るための道具。
<左:酒袋>もろみを搾るための袋。昔は綿に柿渋[かきしぶ]を塗っていました。
(参考)柿渋:渋柿の未熟な果実を粉砕、圧搾して得られた汁液を発酵・熟成させて得られる、赤褐色で半透明の液体。柿タンニンを多量に含み、平安時代より様々な用途に用いられて来た日本固有の材料。発酵によって生じた酢酸や酪酸等を原因とする悪臭を有するが、20世紀末には新しい製法により精製され、悪臭が完全に取り除かれた無臭柿渋も誕生。ウィキペディアより。

★『和漢三才圖會[わかんさんさいずえ]』
160408 (32)九重味淋_和漢三才図絵
1712年(正徳2年)頃に出版されたといわれる日本の百科事典。中国の『三才図会』を手本とし、和漢古今に渡る事象を105部門(天文、土地、山水など)に分けて、図、漢名、和名などが記されています。みりんについては、室町時代頃から女性が飲んでいたことや製造法などが書かれています。同社で当時のみりんを再現したところ、今のみりんの半分ぐらいの甘さだったそうです。

160408 (31c)九重味淋_古文書
「按美淋酎近事多造之其味甚甘而下戸人及婦女子喜飲之」と記されており、みりんは下戸や婦人に好まれて飲まれていたことが伺えます。

★1936年(昭和11年)のみりん
160408九重味淋 (29)1936年の九重櫻
戦争中に防空壕の中に置き忘れられていたみりんも展示されています。濃口醤油のような真っ黒な色合いですが、腐ってはいないそうです。ガイドさんも味わったことはないそうですが、HPによると紹興酒のようなにおいがするそうです。
1977年の分析によると、アルコール度は5.9%、ボーメ度は18.6。
ボーメ度は”日本酒度”と同じく液体の比重を表す数値で、ボーメ度1=日本酒度-10です。日本酒造りの品質管理では、ボーメ度は主にもろみの初期段階、日本酒度はそれ以降に使用されています。日本酒度は愛飲家が甘口・辛口を判断する目安(数値がプラスになるほど辛口)にもなっています。
みりんでも日本酒と同様に消費者向けの数値(日本酒度、酸度、アミノ酸度などに該当するもの)を示しているのか質問したところ、計測したとしても分析用であり、消費者にそれらを示すことはないとのこと。そもそもみりん(本みりん)を飲用としているケースは少なく、酒税法上もアルコール度がほぼ14%(規定では15%未満)、エキス分が40%以上の甘口におさまるため、数値を示す必要性が乏しいようです。

★唯一の”名誉大賞”
160408 (28)_九重味淋_名誉大賞
大正から昭和にかけての全国酒類品評会で、同社の『九重櫻』は唯一、最高の「名誉大賞」を受賞(1924(大正13)年)しています。優等賞を3回獲得で名誉賞、名誉賞を3回獲得で名誉大賞にいたるそうです。
160408 (29)九重味淋_モンドセレクション最高金賞
同社のみりんは海外でも高い評価を得ており、モンドセレクションでは最高金賞(金賞のGold MedalではなくGrand Gold Medal)を受賞しています。

★みりんの種類(課税)
酒税法上はすべて”みりん”ですが、業界では以下の区別をしているそうです。
(a)「本格本みりん」:
原料は、もち米、米麹、米焼酎(乙類)のみ。伝統的な製法で造られるもの。
(b)「本みりん」:
原料は、もち米、米麹、醸造アルコール、糖類など。製法は、糖化熟成。

★みりん類似調味料(非課税)
酒税法がかからない、食品扱いの”みりんではないみりん”。
(a)「発酵調味料」(塩みりんなど):
加塩などの不可飲処理をしたもの。5-14%程度のアルコールを含みます。原料は、米、米こうじ、糖類、アルコール、食塩など。
(b)「みりん風調味料」(新みりんなど):
アルコールをほとんど含まないもの(酒税のかからない1%未満)。みりんの風味に似せてうま味調味料や水飴等の糖分などが添加されています。腐敗しやすいため酸味料なども加えられています。

★みりん関連法規
(a)酒税法:第三条(その他の用語の定義)
十一 みりん 次に掲げる酒類でアルコール分が15度未満のもの(エキス分が40度以上のものその他政令で定めるものに限る。)をいう。
イ 米及び米こうじにしようちゆう又はアルコールを加えて、こしたもの
ロ 米、米こうじ及びしようちゆう又はアルコールにみりんその他政令で定める物品を加えて、こしたもの
ハ みりんにしようちゆう又はアルコールを加えたもの
ニ みりんにみりんかすを加えて、こしたもの

(b)酒税法施行令:第五条(みりんの原料等)
法第三条第十一号 に規定する政令で定める酒類は、次の各号のいずれにも該当するものとする。
一  原料中ぶどう糖及び水あめ(次号において「原料ぶどう糖等」という。)の重量の合計が米(こうじ米を含む。)の重量の二・五倍以下であること。
二  温度十五度の時における原容量百立方センチメートル当たりの原料として使用された原料ぶどう糖等の固形分の重量が温度十五度の時における原容量百立方センチメートル中に含有する不揮発性成分の重量の百分の八十以下であること。
2  法第三条第十一号 ロに規定するみりんの原料として政令で定める物品は、水のほか、次に掲げるものとする。
一  とうもろこし、ぶどう糖、水あめ、たんぱく質物分解物、有機酸、アミノ酸塩、清酒かす又はみりんかす
二  米又は米こうじに清酒、しようちゆう、みりん若しくはアルコールを加え、又はこれにさらに水を加えて、すりつぶしたもの

(c)酒税法:第八条の二(みりんに類似する酒類)
法第三条第二十一号 に規定するその性状がみりんに類似する酒類として政令で定めるものは、米及び米こうじを原料の一部として発酵させた酒類と木灰(木灰を原料の一部として製造した物品の原料となつた木灰を含む。第一号において同じ。)を原料の一部とした酒類(アルコール分が十五度未満でエキス分が十六度以上のものに限る。)で、次の各号のいずれにも該当するものとする。
一  当該酒類の原料となつた木灰の重量が当該酒類一キロリットルにつき一キログラム以上であること。
二  水素イオン指数が五・五以上であること。
三  財務省令で定める方法により測定した場合における光を吸収する度合が〇・二以上であること。

★みりん(のもろみ)のアルコール度数は”仕込み”によって下がっていく!?
日本酒は、蒸米と米麹を”水”で仕込みます。仕込みの主な目的は”アルコール発酵(と糖化)”であり、酵母菌が原料に含まれる糖分をアルコール(エタノール)に変えていくため、もろみのアルコール度数は徐々に上がっていきます。一方のみりんは、蒸米と米麹を”40度近いアルコール”で仕込みます。仕込みの主な目的は”糖化(と熟成)”であり、時間が経つと米が溶けた水分で薄まるため、もろみのアルコール度数は徐々に下がっていきます(そもそも酵母菌はアルコール度数が20度を上回ってくると生存が困難になります)。
「仕込みの過程でアルコール度数は上がっていくもの」と思い込んでいたため、この説明を聞いた当初は混乱してしまいました。

★”飲むお酒”としてのみりん
漫画『バーテンダー』のGlass29「バーの隠し味」で、フランス料理の一流シェフになった日本人がブラインド・テイスティングをする場面が描かれていました。彼が「10年の熟成を経たオロロソ(シェリー)」と答えたものは、なんと「本みりん」。このエピソードでみりんがお酒として飲めることを知り、デザート酒のひとつとしてみりんのロックやソーダ割を個人的に楽しむようになりました。
ちなみに、飲用にするため”みりんに焼酎を加えたもの”を、柳蔭[やなぎかげ]、本直し[ほんなおし]といいます。

★注目度が高まるみりん
今年2月に行われた「田崎真也によるソムリエのサービスセミナー」で出された飲み物5種は、すべて(ワインではなく)日本のお酒でした。日本酒4種の後に出された最後の1杯は、なんと”みりん”(佐賀県・小松酒造の「のみりんこ 本みりん」)。同日の日本ソムリエ協会の総会で会長に選ばれた田崎真也さんは「日本酒にも注力する」と宣言されましたが、その中にはみりんも含まれるようでした。過去に参加した日本酒のイベントでも、試飲のラインナップにみりんを入れている酒蔵がいくつかありました。日本酒への注目度が高まる中、みりんを”飲むお酒”として楽しむ人も徐々に増えてくるように思えました。

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テーマ : みりん工場見学
ジャンル : グルメ

プロフィール

Nomura Seiji

Author:Nomura Seiji
・お酒と薬膳理論の入門講座、飲酒教育
 nomuras.jimdo.com
・JSAワイン検定講師
・JSAワインエキスパート
・1971年生
・東京在住

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