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[JSA]まだ知らないソーテルヌの魅力(東京・神田) - セミヨンが生み出す対極の香味、極甘口の貴腐ワインと辛口のボルドー・ブラン。プルミエ・クリュ「シガラ・ラボー」のこだわり

日本ソムリエ協会(JSA)の分科会に参加しました。同じブドウ品種から対極の香味を持つワインが生まれることを再確認する良い機会となりました。また、貴腐ワインが単なる甘口ワインではなく貴腐菌由来の独特の香味を持つワインであることを学びました。

テーマ:まだ知らないソーテルヌの魅力
種 別:JSA関東支部 分科会セミナー
協 賛:中央葡萄酒(株)
日 時:2016年4月4日(月) 14:30~16:30
会 場:日本ソムリエ協会ビル3F(東京都千代田区神田東松下町17-3)
講 師:ジャン・コンペイロ氏(Château Sigalas-Rabaud/シャトー・シガラ・ラボー)
通 訳:三澤彩奈氏(中央葡萄酒)
料 金:1,000円(JSA会員価格)

★会場
160404 (2)日本ソムリエ協会ビル
会場の日本ソムリエ協会ビルは、都営地下鉄新宿線の岩本町駅から約300mです。この日はJR秋葉原駅から約700mの道のりを歩きました。

★講師&通訳
160404 (5)JSAソーテルヌ_会場
講師のジャン・コンペイロ氏は、シガラ・ラボーの現オーナー(Laure de Lambert Compeyrot氏)のご子息で醸造も担当されています。シガラ・ラボーはボルドー地方のソーテルヌ&バルサック地区に11あるプルミエ・クリュの1つです。
通訳の三澤彩奈氏はボルドー大学ワイン醸造学部DUAD(公認ワインテイスター)コースを卒業され、2007年にご実家の中央葡萄酒に入社されて以来、醸造家として活躍されています。中央葡萄酒は山梨県に勝沼・グレイスワイナリー(甲州市)と、明野・ミサワワイナリー(北杜市)を所有しています。2014年には「キュヴェ三澤 明野甲州2013」がデキャンター・ワールド・ワイン・アワード (DAWA) で金賞を受賞しています。

★ソーテルヌ
160404 (10)JSAソーテルヌ_
フランスのソーテルヌは、ドイツのトロッケンベーレンアウスレーゼ、ハンガリーのトカイと並び、世界三大貴腐ワインと称されています。貴腐ワインは、貴腐ブドウから造られる甘口の白ワイン。ソーテルヌ&バルサック地区では、水温が冷たいシロン川がガロンヌ川と合流し、2つの河川の水温の違いからブドウ畑に霧が発生します。この霧によってブドウにカビ(ボトリティス・シネレア菌)が付着し、菌糸が果皮のろう成分を溶かすことで果肉の水分が蒸発します。こうして甘みが凝縮された貴腐ブドウができあがります。

ボルドー地方の面積は約11.5万haですが、ソーテルヌ&バルサック地区はわずか2%(2,000ha)ほどの小さなA.O.C.です。同地区には、ソーテルヌ、ボンム、プレニャック、ファルグ、バルサックの5つのコミューン=村があります。バルサックは、ソーテルヌとバルサックのどちらのA.O.C.を名乗ることもできます。

1855年のパリ万博の際、メドック地区の赤ワインとともに、ソーテルヌ&バルサック地区の貴腐ワインにも格付けが行われました。唯一のプルミエ・クリュ・シュペリュール(特別第1級)の「シャトー・ディケム(Château d’Yquem)」を筆頭に、11のプルミエ・クリュ、15のドゥジエム・クリュが格付けされ、現在に至るまで変更は行われていません。シガラ・ラボーはプルミエ・クリュに格付けされています。

★シガラ・ラボー
160404 (6)JSAソーテルヌ_テイスティングアイテム(ボトル)
ボンム村にあるシガラ・ラボーは、クリュ・クラスの中で最も小さなシャトーです。”シガラ”はファミリーネーム、”ラボー”はシャトーがある丘に由来します。
企業買収が進み、ソーテルヌに残る家族経営のシャトーはシガラ・ラボーとラボー・プロミの2軒のみ。両者は元は同じシャトーでしたが、シガラ・ラボーが「シガラの宝石(仏:le bijou de Sigalas、英:the jewel of Sigalas)」とよばれる南向きの14haの畑だけを残して他の大部分の畑を売却し、それを購入して設立されたのがラボー・プロミです。

シガラ・ラボーはソーテルヌの中で最もバルサックに近い所にあり、前者の骨格がある複雑な味わいと、後者のフレッシュな味わいの両者の良い部分を兼ねそろえています。土壌は、(ぶどうにフレッシュな味わいをもたらす)粘土質の表面をグラーヴ(小石)が覆っており、南向きの畑でぶどうは良く熟すそうです。畑に植えられているのはセミヨンが85%でソーヴィニヨン・ブランが15%。前者はソーテルヌに複雑さを、後者はフレッシュさを与えるとされています。

<貴腐ぶどうの収穫はクレイジー!?>
グラス1杯のワインを造るのに、赤ワインなら1房で十分な場合もある一方で、貴腐ワインには1株の樹が必要となる場合もあります。貴腐菌は少しずつ付着するため、1本の樹の収穫が最大7回に及ぶこともあるそうです。貴腐かタダのカビかの見極めも重要であり、見た目で分からないときは香りで判別し、それでも不安な時はブドウを食べてみて、貴腐の味わいのあるものだけを収穫しているそうです。収穫時の貴腐ブドウの糖度は高く、潜在アルコールが21~23%にもなるそうです。
1.カビの生えたぶどうを収穫する、2.お金にならない作業をしている、という理由から、貴腐ブドウの収穫はクレイジーとも言われているそうです。

<醸造>
テロワールへのリスペクトから、酵母は(天然酵母ではなく、)ニュートラルな乾燥酵母を使っているそうです。発酵を止めるタイミングも難しく、アルコールと糖と酸のバランスを考えながら見極めているそうです。プレス機は3種保有しており、ヴァーティカルのものでゆっくり搾るのが良いそうです。絞ったものはタンクで一晩ねかせ、滓を沈めてから上澄みを使用するそうです。

<熟成>
糖度も酸度も高い貴腐ワインは長期熟成が可能であり、ソーテルヌでは60~70年寝かせることも当たり前だそうです(長くねかせれば良いというものではないとの指摘もありました)。シガラ・ラボーが所有する最古のヴィンテージは1910年、売り物では1975年。コンペイロ氏は、1881年のワインをテイスティングしたことがあるそうですが、味がしっかりのった素晴らしいワインだったそうです。

★テイスティング・アイテム
160404 (9)JSAソーテルヌ_テイスティングアイテム3種
①辛口2014:Alc.13.7%、総酸度4.9g/l。セミヨン。
②貴腐2013:Alc.13.4%、残糖度130g/l、総酸度3.69g/l。セミヨン。
③貴腐2001:Alc.13.5%、142g/l、総酸度4.05g/l。セミヨン85%、ソーヴィニヨン・ブラン15%。

160404 (7)JSAソーテルヌ_セミヨン2014辛口
①Sigalas-Rabaud La Semillante de Sigalas 2014

辛口の白は、現オーナーが2009年に導入したそうです。甘口ワインが売れにくくなってきていることから、辛口のソーテルヌを造っていきたいという動きがある一方で、今までにソーテルヌが築いてきた甘口の地位が薄れるのではというジレンマも抱えているそうです。

160404 (11)JSAソーテルヌ_シガラ・ラボー2013
②Château Sigalas-Rabaud 2013

160404 (8)JSAソーテルヌ_シガラ・ラボー2001
③Château Sigalas-Rabaud 2001

①最初にセミヨン種のドライ・タイプをテイスティングしました。色調は緑がかった淡いイエローで、黄色い柑橘類を中心とした華やかな果実香がありました。溌剌とした酸味が心地よく、微かにミネラルが感じられ、フレッシュで爽やかな味わいのワインでした。

②続いて、同じセミヨン種を使用したソーテルヌ2013年を利きました。色調は輝きのある濃いイエローで、熟したアプリコットや洋梨、微かに丁子やナツメグなどのスパイスの香りが感じられました。ハチミツのような凝縮した甘味があり、柑橘類のような程よい酸味が後味を引き締めてくれるバランスの良い貴腐ワインでした。

③さらにソーテルヌ2001年を利きました。外観はウイスキーのような琥珀色。果物の香りはドライフルーツのように変化しており、白檀や清涼感のあるお香のようなエキゾチックな香りも加わって、より複雑さを増していました。味わいにもシェリーのような熟成感が感じられました。2001年は非常によいヴィンテージで生産量も多かったそうです。

コンペイロ氏は、貴腐ワインには”サフランのような香り”や”スモーキーな香り”と”後味に残るほのかな苦味”があることを指摘されました。よく利いてみると確かにそのような香味が感じられました。これらは貴腐菌に由来する香りだそうです。貴腐ワインを(凍結果実や干しブドウを使用した)他の極甘口ワインと同じタイプと考えていましたが、この微生物由来の香味こそが貴腐ワインを特徴づける大切な要素であることを学ぶことができました。

ソーテルヌはフォワグラのような濃厚な料理と合わせるのがセオリーとされていますが、フランス南西部ではアペリティフからデザートまでソーテルヌで通すこともあるそうです。若いソーテルヌと熟成したソーテルヌの香味の違いを知っていれば、確かにそのような楽しみ方もできるのだと感じました。特に古いソーテルヌは、ウイスキーのように食後に単独で楽しみたいと思いました。

★ビオの認証をあえて取得しないこだわり
シガラ・ラボーではフェロモンを利用した害虫退治や除草剤を極力使用しない等、自然環境に配慮したブドウ作りを心がけています。しかし、ビオの定義がフランスではあいまいであるため、ビオの認証はあえて取得していないそうです。例えばボルドー液(硫酸銅と消石灰の混合溶液)を使用していてもビオの認定は可能ですが、長年にわたり畑に蓄積していく銅の悪影響が本当にないのかどうかはわからない等の疑問を持たれているそうです。「自分の庭のように、自分の子供のようにブドウを育てることが大切」というコンペイロ氏の言葉が強く印象に残りました。

★TGV延伸で、ソーテルヌ消滅の危機!?
フランスの高速鉄道TGV(テジェヴェ)が、2027年にボルドーから南方の街・ダクス(Dax)まで延伸する予定です。新線はソーテルヌのブドウ畑を横断するわけではありませんが、シロン渓谷を通る計画になっています。そのため、ソーテルヌ地区のテロワール(特に、霧の発生要因のひとつであるシロン川の水温)に影響を与え、貴腐ブドウが作れなくなることが懸念されています。
フランス鉄道線路事業公社(RFF)は「(ワイン生産環境に関する)影響調査は実施した」と主張していますが、地元のワイン生産者たちを納得させるには至らないようです。反対派は、TGV計画について調査するよう要求し、欧州司法裁判所(European Court of Justice)への提訴も辞さない構えを見せているそうです。『貴腐ワイン「ソーテルヌ」産地をおびやかす高速鉄道計画、仏(2015年01月02日 AFP)』より

★感想など
同じセミヨン種を使用したドライ・タイプと貴腐タイプの2種のワインをテイスティングすることで、全く違う香味を生み出す醸造の神秘を感じることができました。また、今まで貴腐ワインはただの甘口ワインと考えていましたが、「サフランやスモークのような独特の貴腐菌由来の香り」を知ることができ、とても有意義な体験となりました。

(初稿)2016.11.25

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ジャンル : グルメ

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Nomura Seiji

Author:Nomura Seiji
・お酒と薬膳理論の入門講座、飲酒教育
 nomuras.jimdo.com
・JSAワイン検定講師
・JSAワインエキスパート
・1971年生
・東京在住

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