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【見学】キッコーマンもの知りしょうゆ館(千葉・野田) - しょうゆにはリンゴやバラの香りがある!?

しょうゆメーカーの最大手、キッコーマン(株)の野田工場を見学しました。パネル展示やガイドさんの説明がとてもわかりやすく、しょうゆの基礎を学ぶのにとても役立ちました。また、しょうゆにはワインや吟醸酒と同じ香り成分が含まれており、その表現方法がワインのテイスティング用語と似ていることが興味深かったです。


日時:2016年8月7日(日) 14:00~15:00
場所:キッコーマンもの知りしょうゆ館(千葉県野田市野田110。キッコーマン食品野田工場内)
料金:無料
内容:工場見学


★アクセス
160807 (2)野田市駅ホーム
最寄駅は東武野田線(アーバンパークライン)の野田市駅。JR常磐線の柏駅から約20分です(7駅、運賃247円)。
160807 (3)野田市駅
野田市駅の改札口は、柏駅寄りの1箇所です。
160807 (4)野田市駅周辺図
野田市駅の周辺案内図。「キッコーマンもの知りしょうゆ館」(見学者の集合場所)までは約200-300mです。
160807 (107)野田市駅_駅舎とコンビニ
野田市駅の駅舎。近くにはコンビニのミニストップがあります。
160807 (8)キッコーマン野田工場_工場外壁
駅から工場の外壁沿いに歩くとすぐに目的地にたどり着けます。


★キッコーマンもの知りしょうゆ館
160807 (12)キッコーマンもの知りしょうゆ館_入口
「もの知りしょうゆ館」の入口。
160807 (101)キッコーマンもの知りしょうゆ館_工場見学
工場見学は、9:00~15:00の1時間毎にスタートします(12:00を除く)。内容は映像視聴15分と工場内見学45分(合計約60分)で、料金は無料、事前予約が必要です。見学受入は2名からですが、1名でも対応して頂けました(他に参加者がいれば可能?)。


★キッコーマンについて
160807 (10)ものしり醤油館入口と屋外タンク
キッコーマン(株)の前身の野田醤油(株)の設立は1917年(大正6年)。野田におけるしょうゆの醸造開始は1661年(寛文元年)にまでさかのぼります。
「亀甲萬」の商標は、(千葉県香取市の亀甲山[かめがせやま]と呼ばれる丘陵上に鎮座する)香取神社の『亀甲』に『(鶴は千年、)亀は萬年』をかけたとされています。
キッコーマン(株)は、2009年に純粋持株会社に移行し、3つの事業子会社(キッコーマン食品、キッコーマン飲料、キッコーマンビジネスサービス)を設立しています。


★映像視聴
160807 (37)キッコーマン野田工場_映像ルーム
最初に15分の映像を観ました。しょうゆの原料や造り方、微生物の働きなどがわかりやすくまとめられていました。

映像視聴の後は、ガイドさんが工場内を案内してくれました。


★しょうゆの原料
160807 (39)キッコーマン野田工場_醤油の原料2
マンパック1本(1L入りペットボトル)の濃口しょうゆをつくるために必要な原料は、
・大豆:約180g(豆腐約2丁分)
・小麦:約180g(食パン約0.8斤分)
・食塩:約165g(海水約5L分)
です。

160807 (40)キッコーマン野田工場_大豆と小麦のアップ2
大豆は米国産(国産よりも小粒)、小麦は米国産とカナダ産、塩は国産(一部メキシコ産)が主に使われています。

160807 (24)キッコーマン野田工場_丸大豆と脱脂大豆
大豆には丸大豆(油分18-20%)と脱脂加工大豆(油分1%以下)があり、前者は素材の風味を活かしたい時に、後者は素材のクセを抑えたい時に使い分けるとよいそうです。

160807 (28)キッコーマン野田工場_減塩醤油
塩分濃度は濃口しょうゆで約16%、淡口しょうゆで約18%と高めです。これより低いと微生物の働きが活発になり過ぎて、香味のバランスが崩れたり、有害な微生物が優勢になったりするそうです。
塩分濃度が約8%の「減塩しょうゆ」はふつうの濃口しょうゆを造ってから(電気透析法という脱塩装置などにより)食塩分だけを取り除きます。手間がかかるため、価格は高めになります。また、塩分が低いため冷蔵庫で保管するのが無難です。キッコーマンの減塩醤油は、「保健しょうゆ」として1965年にはじめて発売されました。


★しょうゆを造る微生物
160807 (36)キッコーマン野田工場_キッコーマン菌
しょうゆ造りで活躍するのは、麹菌、乳酸菌、酵母菌という3つの微生物。”麹菌”の酵素は、主に大豆のタンパク質をアミノ酸に、小麦のデンプン質をブドウ糖に分解します。キッコーマンでは、しょうゆ造り専門の麹菌「キッコーマン菌」を(江戸時代から?)大切に守り育ててきたそうです。乳酸菌は主にブドウ糖を乳酸に変え、しょうゆの味を引き締めます。酵母菌はアルコールやエステル類などしょうゆ独特の香味となる成分を生成します。


★製麹[せいきく]
160807 (41)キッコーマン野田工場_製麹装置
蒸した大豆と炒った小麦を細かくしたものにキッコーマン菌を植え付け、しょうゆ麹を造ります。これらの原料はまず、ベルトコンベアーでステンレス製の大きな丸い部屋(麹室。撮影不可)に送られます。麹室の床(円盤)の細かい穴からは熱く湿った空気が送りこまれ、約3日間かけてしょうゆ麹が造られます。しょうゆ麹は熱を持ちすぎたり固まったりしないよう、ターナーで1日1回かき混ぜられます。
160807 (44)キッコーマン野田工場_醤油麹3種2
1日目、2日目、3日目のしょうゆ麹のサンプルの展示。
160807 (47)キッコーマン野田工場_1日目の麹2
1日目の麹。しょうゆ麹は茶色くて粉っぽく、清酒用の米麹(粒状で真っ白)とはずいぶんと外観が異なっていました。

160807 (48)キッコーマン野田工場_麹蓋
昔のしょうゆ麹造りに使われていた麹蓋[こうじぶた]は、酒造りのものと同じような外観でした。積み方には、煉瓦積、すぎなり積、すきばい積、棒積など色々あるようです。


★仕込み(分解、発酵、熟成)
しょうゆ麹に塩水を加えて諸味[もろみ]を仕込みます。諸味の中では麹菌、乳酸菌、酵母菌らが活躍し、約6か月かけてしょうゆの香味成分などがつくられていきます。しょうゆ造りに向かない微生物は塩分に負けて当初の1週間くらいで消えていきます。
160807 (54)キッコーマン野田工場_仕込み工程2
仕込みたて、2-3か月後、4-6か月後の3段階の諸味のサンプルが展示されていました。諸味の色合いは、発酵・熟成が進むにつれて褐色化していきます。

160807 (65)キッコーマン野田工場_諸味の香りコーナー
続いて、諸味の香りが確認できるコーナーへ。
160807 (59)キッコーマン野田工場_諸味の香り確認(初期)
初期(1か月後)、発酵期(2-3か月後)、熟成期(4-6か月後)の3段階の香りを実際に確認することができます。

160807 (60)キッコーマン野田工場_諸味の香り確認(初期)拡大2
初期(1か月後)の諸味。
160807 (62)キッコーマン野田工場_諸味の香り確認(発酵期)拡大2
発酵期(2-3か月後)の諸味。
160807 (64)キッコーマン野田工場_諸味の香り確認(熟成期)拡大2
熟成期(4-6か月後)の諸味。


★仕込みタンク
160807 (66)キッコーマン野田工場_屋外タンクの見学コーナー
続いて、通路から屋外の仕込みタンクを見学しました。工場内には大小約600本のタンクがあり、最大のもので約360klの容量があるそうです。
160807 (96)キッコーマン野田工場_屋外タンクの半径
通路に描かれたオレンジ色の半円は、最大タンクの直径(7m)をあらわしています。


★圧搾
熟成した諸味は圧搾装置で搾られます。工場内には世界最大の圧搾装置(撮影不可)が置かれていました。1日にマンパック約30万本分もの処理が行えるそうです。
160807 (72)キッコーマン野田工場_ナイロン製のろ布
ナイロン製の「ろ布」のサンプル。実際に使われているものは”長さ2,800m×幅3m”もあり、それを700段に折りたたんで、その中に諸味を入れて搾ります。ナイロン製のろ布は丈夫なので5-6年は繰り返して使えるそうです。最初に自然に流れ出てくる液体は「一番しぼり」という贈答商品として年に1度だけ販売されるそうです。その後、圧搾装置で圧力をかけながら、諸味はおよそ1日かけてゆっくり搾られます。
160807 (75)キッコーマン野田工場_しょうゆ粕アップ2
搾り終わった後の”しょうゆ粕”は、細かく砕いて家畜の飼料や、燃料、便箋・封筒などに再利用されます。
160807 (74)キッコーマン野田工場_しょうゆ油と醤油粕
原料に丸大豆を使った場合に出る”しょうゆ油”も、機械油や石鹸の材料として再利用されます。


★火入れ
搾りたてのしょうゆ=生揚げ[きあげ]しょうゆは、プレートヒーターを通して加熱し、色や香味を整えたり、微生物の働きを止めて品質を安定化させます。この工程を「火入れ」と呼びます。
160807 (82)キッコーマン野田工場_生揚げしょうゆ
火入れ前の生揚げしょうゆは、淡い赤褐色で、穏やかな香り。
160807 (83)キッコーマン野田工場_火入れ後のしょうゆ
火入れをすると、カラメルのような色調が濃くなり、香りは華やかになります。

<生[なま]しょうゆと生[き]じょうゆ>
160807 (27)キッコーマン野田工場_生醤油、生醤油、火入れ醤油
日本酒の世界では、火入れをしていない酒を生酒[なまざけ]、混じりけの無い酒(ひとつの製造場だけで醸造した純米酒)を生一本[きいっぽん]と呼びます。しょうゆの世界でも、”生”という漢字が”なま”なら火入れをしていないもの、”き”なら混じりけのないものを指していました。

・生揚げしょうゆ:搾りたてのしょうゆ。
・生しょうゆ:生揚げしょうゆをろ過したもの。火入れ前。
・火入れしょうゆ:火入れをしたしょうゆ。
・生じょうゆ:だしや調味料などが入っていないしょうゆ。


★パッケージング
160807 (85)キッコーマン野田工場_敷地略図
しょうゆを容器に詰めるパッケージング工程は、東武線の線路を挟んだ向こう側の工場で行われます。しょうゆはなんと、線路の下を通っているパイプで輸送されているそうです。

160807 (90)キッコーマン野田工場_容器の歴史、世界のしょうゆ
むかしの容器と世界のしょうゆの展示コーナー。 


★お土産
160807 (92)キッコーマン野田工場_お土産2
最後に「しぼりたて生しょうゆ」と、うちのごはんシリーズ「豚バラ黒酢煮」のお土産をいただきました。


★しょうゆのパネル展示
<3種類の造り方>
160807 (29)キッコーマン野田工場_本醸造、混合、混合醸造
①本醸造方式:原料を微生物のチカラで分解・発酵・熟成させる方式。
②混合醸造方式:発酵・熟成の過程でアミノ酸液などを加える方式。
③混合方式:生揚げしょうゆにアミノ酸液などを加える方式。
日本のしょうゆは約85%が本醸造方式(キッコーマンしょうゆはすべて本醸造しょうゆ)です。

<しょうゆの色>
160807 (17)キッコーマン野田工場_しょうゆの色度
しょうゆの色はあざやかな赤橙色[せきとうしょく]。この色調はメラノイジン(醸造している間や火入れによってできる物質)によるものです。

<しょうゆの香り>
160807 (18)キッコーマン野田_しょうゆの香り - コピー
しょうゆには300種類以上の香り成分が含まれています。
【エステル類】リンゴ(吉草酸エチル、カプロン酸エチル)、パイナップル(酢酸メチル)、モモ(ギ酸メチル)、洋なし(酢酸イソアミル)
【アルデヒド類・ケトン類】バニラ(バニリン)、シナモン(シンナムアルデヒド)、バター(アセトイン)、アーモンド(ベンズアルデヒド)
【アルデヒド類・エステル類など】ヒヤシンス(ベンズアセトアルデヒド)、ゼラニウム(デカン酸エチル)、バラ(2-フェニルエタノール)
【アルコール類・含硫化合物】マツタケ(マツタケオール)、キュウリ(5-ノネナール)、肉(メチオナール)、青海苔(ジメチルスルフィド)
【ラクトン類・フラノン類】甘いカラメル/醸造醤油の特徴香(HEMF)、焼き栗(HMMF)、メープルシロップ(シクロテン)、糖蜜・黒砂糖(HDF)

160807 (21)キッコーマン野田工場_しょうゆの香り確認
開栓直後と数か月後のしょうゆの色や香りの違いを確認できるコーナーもありました。

<しょうゆの味>
160807 (19)キッコーマン野田工場_しょうゆの味わい
1:甘味(ブドウ糖、アミノ酸など)
2:旨味(アミノ酸。グルタミン酸など)
3:塩味(食塩)
4:酸味(有機酸。乳酸、酢酸など)
5:苦味(アミノ酸、ペプチド)
6:こく・深み(ペプチド、メラノイジン)

<しょうゆの産地>
160807 (15)キッコーマン野田工場_しょうゆの産地
日本には1,400軒以上のしょうゆ工場があり、県別では福岡県97軒、広島県67軒、石川県65軒が上位3位を占めます。一方で生産量のランキングでは、千葉県34%(18軒)、兵庫県15%(43軒)、愛知県7%(39軒)となり、大きく順位が入れ替わります。千葉県にはキッコーマンの他にも、上位5社にはいるヤマサ醬油、ヒゲタ醤油(ともに銚子市)があります。
野田がしょうゆの一大産地になれた背景には、2つの大きな川(利根川と江戸川)が原料や製品の輸送で重要な役割を果たしたことが挙げられます。野田市には白しょうゆを造るキノエネ醤油(株)もあります。


★樽づくり
160807 (32)キッコーマン野田工場_樽づくり職人
この日は、売店の横のスペースで、木樽づくりの実演がありました。


★わくわくしょうゆ体験「まめカフェ」
160807 (94)キッコーマン野田工場_まめカフェ
売店の奥には、軽食を楽しめる「まめカフェ」があります。入口の券売機で食券を購入し、奥のカウンターで商品を受け取るシステムです。
160807 (103)しょうゆソフトクリーム(ハーフ)
ハーフサイズのしょうゆソフトクリーム180円。ほのかに醤油の甘辛さとコクが感じられ、食べ飽きのしない美味しさでした。他にも、生しょうゆうどん(180円)、特製もろみ豚汁(180円)、せんべい焼き体験(1組3枚。250円)などのメニューがありました。
160807 (102)しょうゆの味見コーナー
カウンターには、「しょうゆの味見コーナー」も。


★売店
160807 (105)しょうゆの不思議と御用醤油
売店で購入した「しょうゆの不思議」(日本醤油協会。税込1,080円)と、宮内庁に納められている「御用醤油」(税込542円)。


★御用醤油と御用蔵
160807 (89)キッコーマン野田工場_キッコーマン野田工場_御用蔵醤油
「御用醤油」は野田工場内の御用醤油醸造所(通称、御用蔵)で造られています。
160807 (11)キッコーマン野田工場_御用蔵
御用蔵は宮内省(現宮内庁)に納める醤油の専用醸造所として、1939年(昭和14年)に建設されました。当初は江戸川沿い(千葉県野田市中野台)にありましたが、老朽化に伴い、2011年(平成23年)に野田工場内に移築されています。しょうゆを仕込む木桶、屋根の小屋組み、屋根瓦、石垣、門などは移築前のものを使用し、原形に近い形で再現されています。現在でも宮内省に納める醤油が造られており、蔵内にはむかしの醸造道具などが展示されています。平日は御用蔵の中も公開されていますが、この日は日曜日だったので見学できませんでした。


★感想など
白しょうゆメーカーに続いて濃口しょうゆの工場を見学し、複雑なしょうゆ造りの流れをようやくイメージできるようになりました。特に今回のパネル展示は様々なトピックスについてわかりやすくまとめられていて、とても勉強になりました(小学生の社会科見学でも訪問したはずですが、諸味の強烈な臭い以外はほとんど記憶に残っていませんでした...)。
同じ醸造モノである日本酒との共通点も多く見られましたが、生(なま)と生(き)という言葉の使い分けが共通している点が特に興味深かったです。また、しょうゆの香りにはワインや吟醸酒と同じ成分が数多く含まれることを学んだので、的確に表現できるようになりたいと思いました(しょうゆの香りをワインと同じようにリンゴやバラ、ゼラニウムなどであらわすとは思いませんでした...)。

それにしても日本の発酵文化は奥が深くておもしろい...


(初稿)2017.1.2

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テーマ : しょうゆ工場見学
ジャンル : グルメ

プロフィール

Nomura Seiji

Author:Nomura Seiji
・お酒と薬膳理論の入門講座、飲酒教育
 nomuras.jimdo.com
・JSAワイン検定講師
・JSAワインエキスパート
・1971年生
・東京在住

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