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【見学】山川醸造(岐阜・岐阜市)- 長良川の伏流水と杉桶で仕込む東海三県の地醤油「たまり醤油」の蔵元

たまり醤油の蔵元、山川醸造を見学しました。これまでに見学した白醤油、濃口醤油とは原料や造り方が異なり、むしろ八丁味噌と似ている点が興味深かったです。最初にポイントをクイズ形式で整理して頂いたので、他の醤油との違いがよくわかりました。小学生の見学者が楽しみながら学んでいる姿が印象的でした。

日時:2016年9月3日(土) 13:30~14:10頃
場所:山川醸造(株)(岐阜県岐阜市長良葵町1-9)
内容:見学(ガイド付き)、試食
料金:無料

★アクセス
160903 (45)名鉄岐阜駅
山川醸造はJR岐阜駅、名鉄岐阜駅の5kmほど北側(やや東寄り)にあります。この日は名鉄岐阜駅から岐阜バスを利用しました。
160903 (48)岐阜バス4番乗り場
名鉄岐阜駅バス停の4番乗り場。ここから、岐阜高富線に乗車します(名鉄岐阜駅12:46→長良北町13:02、運賃210円)。 
160903 (108)長良川と岐阜城(車窓)
バスの車窓。山の上には小さく岐阜城が写っています。橋の下を流れるのは鵜飼いで有名な長良川。木曽川、揖斐川とあわせて木曽三川に数えられています。
160903 (53)長良北町停留所
160903 (54)山川醸造たまり醤油_たまりや裏側
最寄りの長良北町[ながらきたまち]停留所。目的地までは約200mです。

★見学受付
160903 (56)山川醸造たまり醤油_外観(たまりや)
売店「たまりや」で見学の受付を行います。この日の見学者は計5名。案内をしてくださったのは、なんと山川社長でした。

★醤油のクイズ
160903 (55)山川醸造たまり醤油_外観(下見板張り)
160903 (63)山川醸造たまり醤油_一号蔵 - コピー
はじめに木桶が並ぶ一号蔵内のベンチに座り、4問の醤油クイズが出されました。

【Q1】醤油は何種類?
【A1】5種類(濃口、淡口[うすくち]、たまり、白[しろ]、再仕込み)
”濃口”がいわゆるふつうの醤油で、全体の約85%を占めます。最大手はキッコーマン(千葉県野田市)で、ヤマサ醤油、ヒゲタ醤油(ともに千葉県銚子市)などの大手メーカーも同じ千葉県にあります。”淡口”は主に関西で使われ、最大手はヒガシマル醤油(兵庫県たつの市)。”たまり”は東海三県の地醤油ですが、さしみ用と答える人が多いそうです。”白”は愛知県碧南市の(小麦主体でつくられる)うすい色の醤油。”再仕込み”は山口県柳井市で造られる(麹を醤油で発酵させる)ぜいたくな造りの醤油です。

【Q2】醤油の香りは何種類(三択:20/150/300)?
【A2】300種以上
バラ、ヒヤシンス、バナナ、パイン、リンゴ、バニラなどの香りがありますが、機械で調べないとわからない程度のものが多いそうです。
日本酒の吟醸香(リンゴ=カプロン酸エチル、バナナ=酢酸イソアミル)やワインのテイスティング用語(バニラ=木樽のバニリン由来)に通じるものがあり、興味深かったです。

【Q3】醤油の原料は?
【A3】大豆、小麦、塩(、淡口はさらに米)。大豆は醤油の原料として必ず使われます(JAS法)。濃口には大豆と小麦をおよそ半々ずつ使いますが、たまりは殆どが大豆、逆に白は殆どが小麦を原料として造られます。
小学生が「麹!」と答えましたが(漫画『もやしもん』の影響?)、最終製品に残っていないため原材料にはならないそうです。水も当然使われていますが、原材料に表記されるのはミネラルウォーターだけとのことでした。

【Q4】醤油は何色?
【A4】赤色
社長が持ってきた醤油のサンプルをペンライトでかざして見ると、なんと赤色でした。小学生も「え?赤?」と驚いていました。
見慣れている醤油が黒っぽいのは「酸化」による褐変化で、色の濃いたまり醤油でも、搾りたては赤い色をしているそうです。

★たまり醤油のつくり方
<原料処理、製麹>
蒸した大豆に少量の小麦をまぜて種麹をつけ、約3日かけて”醤油麹”をつくります。大豆は主にうま味、小麦は香りの元になるそうです。

<仕込み>
大きな木桶に醤油麹と塩と水を入れて、足で踏み固めて諸味[もろみ]を仕込みます。麹1に対する水の割合は、濃口で約1.5ですが、たまりは0.5~1.0と少なめ。濃口の諸味は櫂で撹拌できますが、たまりの諸味は水分が少なくて固いため、かき混ぜることができません。そこで、諸味を均等に発酵させるために以下のような工夫が行われています。

160903 (72)山川醸造たまり醤油_木桶の内部
あらかじめ煙突のような筒を桶内に入れてから諸味を仕込んでいきます。
160903 (71)山川醸造たまり醤油_木桶内部(管の穴)
筒の下部には2,3㎝くらいの穴がたくさん開いています。筒の内部には、この穴から浸みこんできた諸味のエキスが徐々に溜まっていくので、それを大きな柄杓ですくって諸味の上からかけてあげます(汲みかけ)。このような作業を週に1,2回ほど、2年間繰り返して行うそうです。

160903 (66)山川醸造たまり醤油_板を再利用した椅子 - コピー
クイズの時に座っていたベンチは、木桶の上に渡して通路にしていた板を再利用したものでした。

160903 (80)山川醸造たまり醤油_一号蔵の木桶
木桶の寿命は約200年と言われており、蔵内には江戸時代から昭和初期頃につくられたものが約100本もあるそうです。杉製の板を竹のタガで締め付けた桶を作れる会社は(八丁味噌蔵でも指摘があったように)国内に殆ど残っていないそうです。
160903 (75)山川醸造たまり醤油_木桶の内板
桶内の表面の白っぽく見える物質は大豆の成分。梅雨時などで湿度が上がってくると、醤油が浸み出してきて桶内が茶色くなるそうです。内部が見れるようにくり抜かれた桶は強度が低下しているので、「危険!手を触れないで」の注意書きが貼られていました。

<圧搾>
160903 (73)山川醸造たまり醤油_ - コピー木桶株の蛇口とバケツ
まず、木桶の諸味から(上に積まれた石の重みで)自然に流れ出てくる醤油をおよそ半年かけて集めます。桶内に残った諸味はスコップで掘り出し、次に圧搾台で搾ります。

160903 (97)山川醸造たまり醤油_圧搾場_布 - コピー
諸味をほぐして圧搾用の布の上にちりばめる機械。
160903 (87)山川醸造たまり醤油_もろみをスコップで投入するところ
スコップで機械の上部に諸味を投入し、、、
160903 (88)山川醸造たまり醤油_圧搾場(作業中)
160903 (102)山川醸造たまり醤油_諸味を入れた袋 - コピー
下の台に広げた布の上に落ちてくる諸味をほぐして、布を長方形に畳んでいきます。
160903 (92)山川醸造たまり醤油_醤油もろみ
醤油の諸味。味噌のように見えますが、塩分濃度が低いため、これで味噌汁を作っても美味しくないそうです。味噌と醤油は塩分濃度が大きく異なるため(味噌は約10%、醤油は約15%)、両方を造っている醸造蔵は全国でも稀なのだそうです。

160903 (100)山川醸造たまり醤油_圧搾機
諸味の入った長方形の布を圧搾台に積み重ね、上からプレスをして残りの醤油を搾ります。強く押すと諸味がはみ出るので、およそ2日かけてゆっくりプレスしていきます。
160903 (95)山川醸造たまり醤油_圧搾機(拡大)
たまり醤油は出来上がるまでに約2年、さらに桶1本分から醤油を搾り取るまでにもう1年(計3年)もかかります。約6カ月でできる大手の濃口醤油と比べて、4-6倍もの時間がかかっています。

160903 (104)山川醸造たまり醤油_しぼりたてのたまり醤油
搾りたてのたまり醤油を試飲させて頂きました。黒くてドロッとしているのは水分が少なく、かつ、熟成期間が長いため。しかし、見た目から想像するほど塩辛さは感じず、複雑でまろやかな味わいでした。

160903 (101)山川醸造たまり醤油_しょうゆ粕
しょうゆ粕は機械で細かく砕いて、牛の飼料や金魚のエサとして再利用されています。

★丸大豆と脱脂加工大豆
160903 (105)山川醸造たまり醤油_丸大豆と脱脂大豆
丸大豆(左)と脱脂加工大豆(右)。大豆の油分は醤油造りには不要ですが、サラダ油メーカーにとっては逆に油分だけが必要となります。そこで、大豆から油分を搾った後の脱脂加工大豆が、醤油の原料として広く使われています。業務用シェアの大きい同社では主に脱脂加工大豆が使われていますが、手間をかけてじっくり熟成させることで十分に美味しい醤油ができるそうです。丸大豆醤油は全体の2割、うち国産丸大豆を使用したものは2%程度しか造られていないそうです。
同社では伝統製法を残すために、岐阜県産大豆を木桶で仕込んだ商品を1年に1、2桶分造り続けているそうです。

★味噌
160903 (83)山川醸造たまり醤油_みそ全国マップ
山川醸造では(少量ですが)味噌も造っているそうです。醤油と同様に、味噌の種類にも地域性があって興味深かったです(一般的な米味噌に対し、東海地方の豆味噌、九州地方の麦みそなど)。

★試食
160903 (107)山川醸造たまり醤油_試食(素麺)
最後に試食をさせて頂きました。たまり醤油がベースのめんつゆとごま素麺。
160903 (106)山川醸造たまり醤油_試食(田楽、トースト)
こんにゃくの味噌田楽と「はちみつ醤油バター」を塗ったトースト。同社では「アイスクリームにかける醤油」などのスイーツ商品も数多く手掛けています。

★たまりや(売店)
160903 (203)みのびとパンフレット
見学の後は、売店で本醸造のたまり醤油「みのび」(税込583円/300ml)を購入しました。
160903 (200)みのび(原材料など)
原材料は大豆、小麦、塩、アルコール。杉桶で2年以上熟成し、火入れをしていない生醤油です。複雑で熟成感のある濃厚な香味の醤油でした。

★感想など
醤油を勉強する前は「すごく濃いのがたまり醤油?」という程度の漠然とした(かつ誤った)イメージしか持っていませんでしたが、ふつうの濃口醤油とたまり醤油は全く別物であることを強く感じました。前者は大豆と小麦を半々ずつ使うのに対して後者はほぼ大豆だけで造られ、さらに杉桶で長期間熟成させるため、【大豆由来の熟成した香味】が強く個性としてあらわれていました。たまり醤油をそのまま使うとクセが強すぎることもありますが、(濃厚な甘みを持つスイーツを含む)濃い味付けの料理に隠し味として使うと奥行きのある深い味わいになると感じられました。

”醤油”と一口にいっても様々なバリエーションがあり、一括りにできないことを改めて感じました。

(初稿)2017.1.3

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テーマ : しょうゆ工場見学
ジャンル : グルメ

プロフィール

Nomura Seiji

Author:Nomura Seiji
・お酒と薬膳理論の入門講座、飲酒教育
 nomuras.jimdo.com
・JSAワイン検定講師
・JSAワインエキスパート
・1971年生
・東京在住

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