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【見学】赤レンガ酒造工場(東京・滝野川) - 明治の三大建築家・妻木頼黄氏の傑作。全国新酒鑑評会や醸造講習を担ってきた日本酒の聖地

旧・大蔵省の醸造試験所・第一工場を見学しました。通称は「赤レンガ酒造工場」で、2014年12月10日に国の重要文化財に指定されています。

テーマ:旧醸造試験所 第一工場(赤レンガ酒造工場)施設公開
日 時:2015年4月4日(土) 10:00~16:00(入場は15:30まで)
場 所:(独)酒類総合研究所 東京事務所(東京都北区滝野川2-6-30)
料 金:無料
内 容:自由見学、ミニ講座、試飲

★アクセス
150404 (42)王子駅_都電荒川線
赤レンガ酒造工場は、王子駅(JR京浜東北線、都電荒川線)から約650m、徒歩8分です。
150404 (3)音無親水公園
JR王子駅の西側にある音無親水公園を通りました。この時期はお花見が楽しめます。自然の川を模して造られた公園で、日本の都市公園百選に選定されています。
150404 (4)赤レンガ酒造工場_醸造試験所跡地公園
醸造試験所跡地公園。向こう側に赤レンガ酒造工場が見えます。
150404 (7)赤レンガ酒造工場_入口
赤レンガ酒造工場は、(独)酒類総合研究所の東京事務所の敷地内にあります。1904年(明治37年)に設立された旧大蔵省の醸造試験所が2001年に独立行政法人に移行し、現在の酒類総合研究所になりました。本部機能は1995年に広島県東広島市に移転しています。赤レンガ酒造工場は、旧・醸造試験所の第一工場として、1903年に竣工。旧・醸造試験所では、1905年より醸造技術者むけの講習が行われており、1911年には第1回の全国新酒鑑評会が開催されています。

★見学概要(特別公開)
150404 (6)赤レンガ酒造工場_施設公開看板
赤レンガ酒造工場の見学は、通常、1週間前までに予約する必要があります(5~20名の団体向け。土日祝、年末年始、5-6月と8-10月の清酒製造技術講習の期間を除く)。この日は特別に、事前予約なしで施設公開が行われていました。見学箇所は1階部分のみで、工場内では旧ボイラー室、原料処理室、旧麹室の順に見学コースが設定されていました。
150404 (8)赤レンガ酒造工場_敷地案内図
敷地内には、東京国税局鑑定官室や日本醸造協会の建物もあります。

★赤レンガ酒造工場と日本のレンガ建築(ミニ講座)
はじめに旧ボイラー室でミニ講座を受講しました。赤レンガ酒造工場の見どころや日本のレンガ建築の歴史などについてわかりやすく説明して頂きました。
150404 (37)赤レンガ酒造工場_全景 - コピー
赤レンガ酒造工場を設計したのは、明治時代の三大建築家と称される妻木頼黄[つまき・よりなか]氏。(冬場だけでなく)四季を通して日本酒造りが行えるよう、ドイツのビール工場を参考にして設計したと伝えられています。ドイツから輸入した冷却機などの醸造用機械を備えた最新鋭の酒造工場だったそうです。
150404 (32)赤レンガ酒造工場_廊下・出口 - コピー
建築面積は923.30㎡。仕込部(2階建)、階段部(3階建、地下1階、一部平屋建)、製麹部(平屋建)、機械部(平屋建)から成ります。

<明治時代の三大建築家>
【英式】アカデミーの辰野金吾[たつの・きんご]
 ~日本銀行本店、東京駅丸の内本屋
【仏式】宮殿建築の片山東熊[かたやま・とうくま]
 ~迎賓館(赤坂離宮)、グランドプリンスホテル高輪来賓館(旧竹田宮邸宅)
【独式】官庁営繕の妻木頼黄
 ~横浜赤レンガ倉庫、半田赤レンガ建物など

<日本のレンガ建築の歴史>
長崎の海軍伝習所(1855年(安政2年)に開所)で日本の建物用煉瓦の生産が始まり、このレンガが1861年(文久元年)落成の長崎鎔鉄所(現・三菱重工業長崎造船所)の建設に使われたとされています。現在のものより薄い形状で「こんにゃく煉瓦」と呼ばれていたそうです。
その後のレンガ建造物の需要増加を受け、実業家の渋沢栄一は日本煉瓦製造㈱を立上げ、現在の埼玉県深谷市に本格的な工場を建設しました。深谷駅から工場までの約4.2kmの区間には専用鉄道まで敷かれました(現在はその跡地が遊歩道「あかね通り」として残されています)。
日本の多くのレンガ建築物は明治30年(1898年)代以降に造られていますが、1923年(大正12年)の関東大震災で大きな被害を受けて以降は、小規模な建築物にとどまっています。

★旧ボイラー室
150404 (12)赤レンガ酒造工場_旧ボイラー室
ミニ講座が行われた旧ボイラー室。
150404 (9)赤レンガ酒造工場_ボイラーの銘板
ボイラーの石炭投入口を利用した銘板(FUKAGAWA IRON WORKS CO. LTD)。ボイラーで作られた蒸気は米を蒸す工程などに使われます。平成7年に小型高性能ボイラーに役目を譲るまで実際に使われていたものです。

★原料処理室
150404 (16)赤レンガ酒造工場_洗米機
洗米機。
150404 (17)赤レンガ酒造工場_甑
甑。
150404 (15)赤レンガ酒造工場_半切桶、蒸米放冷箱、蒸溜装置
半切り桶、蒸米放冷箱、蒸留装置。

<精米>
150404 (24)赤レンガ酒造工場_精米
精米歩合(%)は、「白米重量÷玄米重量×100」で求めらます(重量精米歩合)。外側を10%磨くと(精米歩合90%)、玄米の外側に多く含まれる脂質やミネラルは60-65%も減少してしまいます。大吟醸酒並みの精米歩合50%まで磨くと、脂質は殆ど残らず、ミネラルも2割程度、タンパク質も6割程度しか残らないことがわかります。デンプン以外の成分は雑味のもとになりやすいとされているため、高級酒ほど精米歩合を低く(精白度を高く)する傾向があります。

<種麹のサンプル>
150404 (18)赤レンガ酒造工場_黄麹・白麹・黒麹
米のデンプンを糖に変える糖化工程に使われる麹菌。清酒用には通常、黄麹を用います。他にも、焼酎用の白麹、泡盛用の黒麹が展示されていました。

★旧麹室(白煉瓦)
150404 (21)赤レンガ酒造工場_旧麹室 - コピー
表面のみ白色で施釉された白煉瓦で造られた旧・麹室。水分調整が利かないため、麹室としては使用されなくなりました。同じタイプの白煉瓦が日本銀行の地下金庫にも使用されています。
150404 (22)赤レンガ酒造工場_旧麹室の白煉瓦
白いタイルのように見えますが、レンガです。

★アーチ構造と円形の窓枠
150404 (20)赤レンガ酒造工場_アーチ部分 - コピー
見た目も美しく強度も強いBonded arch。レンガを台形状に焼き上げるなど、とても手間がかかる工事となります。
150404 (23)赤レンガ酒造工場_旧麹室のアーチ部分
赤レンガ酒造工場に使われている台形レンガは、全部で38種もあるそうです。
150404 (30)赤レンガ酒造工場_窓 - コピー
円形の窓枠。耐熱性、耐震性、防犯性を高めるために小さめの窓となっています。

★耐火床
150404赤レンガ酒造工場(耐火床)レジュメ写真
1階の天井と2階の床が一体化した「耐火床」。写真はミニ講座で配布されたレジュメの一部です。
150404 (28)赤レンガ酒造工場_耐火床説明書き
耐火床とは、両側の壁の上にI型鋼の小梁[こばり]を架け渡し、その間をレンガアーチで埋める床面構法です。鉄骨は入っておらず、上からの荷重をアーチの形状によってうまく伝達させています。

★その他の展示物
見学コースには、(独)酒類総合研究所の紹介パネルや、北区税務団体協議会コーナーもありました。

<醸造研究の始まり>
150404 (10)赤レンガ酒造工場_醸造研究の夜明け
150404 (11)赤レンガ酒造工場_醸造研究の夜明け
お酒ができる仕組みが科学的に解明されていなかった頃の酒造りは、ほとんど”運任せ”でした。明治時代には「微生物研究」が進められ、糖化を担う”麹菌”やアルコール発酵を行う”清酒酵母”の分離に成功しました。さらに、醪の中での酵母の純粋培養を可能とする”山廃酒母”や”速醸酒母”が開発され、清酒の安定かつ大量生産ができるようになりました。
はじめて清酒造りの科学的研究を行ったのは英国より招聘されたアトキンソン氏と伝えられています(1881年著『The Chemistry Of Sake-brewing』 など)。

1876年(明治09年):東京医学校の御雇教師アールブルグ氏が麹菌を分離
1895年(明治28年):矢部規矩治[やべ・きくじ]博士が清酒酵母を分離
1909年(明治42年):嘉儀金一郎[かぎ・きんいちろう]博士が「山廃酒母」を開発
1910年(明治43年):江田鎌次郎[えだ・かまじろう]博士が「速醸酒母」を開発

<酒税>
お酒の種類ごとの税負担率。(酒税額+消費税額)÷税込の販売価格。
150404 (13)赤レンガ酒造工場_酒税
焼酎31.9%、清酒15.9%、瓶ビール46.5%。
150404 (14)赤レンガ酒造工場_酒税
缶ビール42.1%、発泡酒35.4%、ワイン16.4%、ウイスキー24.0%。

ビールの税率の高さがよく指摘されていますが、たしかに飛び抜けていることがわかります。ビールはアルコール度数が相対的に低く、麦芽100%のものならミネラル類などの栄養分も比較的多く含まれています。ビールの税率を下げて消費拡大につなげた方が、結果的に企業利益の増加、税収増、かつ、飲酒者の健康障害リスクの低減にもつながると思うのですが...

★試飲とお土産
(独)酒類総合研究所の技術支援部門が醸したお酒の無料試飲コーナー。
150404 (26)赤レンガ酒造工場_試飲(大吟醸)
大吟醸酒。きょうかい1401号酵母(金沢酵母から分離)を使用。
150404 (25)赤レンガ酒造工場_試飲(山廃)
山廃仕込み。きょうかい7号酵母(長野県・宮坂醸造「真澄」から分離)を使用。
150404 (29)赤レンガ酒造工場_塩こうじ - コピー
建物の出口近くでは、麴のお土産も頂きました。

★レンガの積み方
日本のレンガの寸法(全形)は、210 x 100 x 60(単位:mm)です。
レンガを積んだ際に壁面となる側面のうち、長い長方形(210×60)を「長手」(ながて。長い方の意味。反対語は短手。みじかて)」、短い長方形(100×60)を「小口」(こぐち。切り口や切断面の意味)と言います。

<長手積みと小口積み(ドイツ積み)>
レンガ(長手積み)
レンガの長手が壁面となるように積まれた「長手積み」。
レンガ(小口積み)
レンガの小口が壁面となるように積まれた「小口積み」。別名、「ドイツ積み」。

<イギリス積みとフランドル積み>
レンガ(イギリス式) - コピー
長手の列と小口の列を交互に重ねた「イギリス積み」。
レンガ(フランドル式) - コピー
一列の中に長手と小口を交互に並べた「フランドル積み」。フランドルはベルギー全土からフランス東北部の地域をさす地名です。日本では明治期に「フランス積み」と誤訳されたため、そのように表記されている場合があります。

150404 (35)赤レンガ酒造工場_胸像含む - コピー
赤レンガ酒造工場の壁は「イギリス積み」ですが、いちばん外側の「化粧レンガの部分だけはドイツ積み」が採用されています。また、イギリス積みの内部には、所々に断熱用の空間が設けられています。
写真の左下には、清酒酵母を発見した矢部規矩治博士の胸像が写っています。麹菌(胞子)がアルコールを造ると唱える人々もいる中で、清酒酵母の存在を信じて研究を続けらた功績が讃えらえています。
150419 (257)函館_金森赤レンガ倉庫
小口積み以外のサンプル写真は、函館の金森赤レンガ倉庫のものです(2015.4.19撮影)。

★錐台(きりだい。砲身の穴あけ機)
150404 (31)赤レンガ酒造工場_錐台 - コピー
元治元年(1864年)に、江戸幕府が大砲鋳造の用地としてこの地を買い上げ、反射炉と錐台を置きました。醸造試験所はこの用地の一部にあたります。敷地内には、錐台の一部が残されています。

(初稿)2016.11.27

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テーマ : 日本酒
ジャンル : グルメ

プロフィール

Nomura Seiji

Author:Nomura Seiji
・お酒と薬膳理論の入門講座、飲酒教育
 nomuras.jimdo.com
・JSAワイン検定講師
・JSAワインエキスパート
・1971年生
・東京在住

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