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第6回 飲酒と健康に関する講演会(東京・国立がん研究センター)- ①アルコール健康障害対策基本法施行後の動き等、②アルコール健康障害対策推進基本計画、③女性と飲酒、④アルコールと肝臓

(公社)アルコール健康医学協会が主催する講演会に参加しました。過去に「女子とお酒と東洋医学と」という講座を行ったことがあるので、「女性と飲酒」の講演が特に興味深かったです。

テーマ:第6回 飲酒と健康に関する講演会
日 時:2016年10月31日(月) 13:00~16:45
場 所:国立がん研究センター内・国際研究交流会館(東京都中央区築地5-1-1)
料 金:無料(事前登録制)
主 催:(公社)アルコール健康医学協会
後 援:厚生労働省、国税庁、(公財)日本学校保健会、健康日本21推進全国連絡協議会

★会場
161031 (4)第6回飲酒と健康に関する講演会(国立がん研究センター)会場入口
国立がん研究センター・国際研究交流会館は、都営地下鉄・大江戸線の築地市場駅(A3出口)から徒歩3分です。この日は地下鉄の東銀座駅から歩きました(約850m、徒歩11分)。事前予約者に郵送される”受付票”を担当者に渡して入場します。

★プログラム
161031 (6)第6回飲酒と健康に関する講演会(国立がん研究センター)レジュメ
主催者あいさつ(10分)
【1】アルコール健康障害対策基本法施行後の動き等(30分)
【2】アルコール健康障害対策推進基本計画(55分)
【3】女性と飲酒(55分)
【4】アルコールと肝臓(55分)

★講演
161031 (5)第6回飲酒と健康に関する講演会(国立がん研究センター)会場内
(公社)アルコール健康医学協会の田中慶司理事長の開会あいさつに続いて、4本の講演が行われました。


【1】アルコール健康障害対策基本法施行後の動き等
講師:吉見 逸郎氏(厚生労働省 健康局 たばこ対策専門官)
※同局の正林督章氏(健康課長)が急遽欠席されたため代役

<抄録より>
・厚生労働省では平成25年度から”健康日本21(第二次)”を中心に、飲酒に関する正しい知識の普及啓発や未成年者の飲酒防止対策等の取組みを行っている。

・第63回WHO総会で「アルコールの有害な使用を軽減するための世界戦略」が採択された(平成22年5月)。国際的な流れを追い風に国内でも法整備を求める声が高まり、「アルコール健康障害対策基本法」が平成25年12月に成立、平成26年6月1日より施行されている。

・”アルコール健康障害対策推進基本計画”は、14回の関係者会議を経て、平成28年5月に公表された。

《基本計画の基本理念》
①発生・進行・再発の各段階での防止対策/当事者やその家族が日常生活及び社会生活を円滑に営むための支援
②アルコール健康障害に関連して生ずる飲酒運転、暴力、虐待、自殺等の問題に関する施策との有機的な連携への配慮

《基本計画の基本的な方向》
①正しい知識の普及及び不適切な飲酒を防止する社会づくり
②誰もが相談できる相談場所と、必要な支援につなげる相談支援体制づくり
③医療における質の向上と連携の促進
④アルコール依存症者が円滑に回復、社会復帰するための社会づくり

《健康日本21(第二次)から引用した目標設定》
①生活習慣病のリスクを高める量を飲酒している者(1日当たりの純アルコール摂取量が男性40g以上、女性20g以上の者)の割合の減少(目標:男性13.0%、女性6.4%)
②未成年者の飲酒をなくす
③妊娠中の飲酒をなくす
基本計画は平成32年度までであり目標達成時期を2年間前倒ししている。

・同省では、国民一人一人が自ら健康づくりに取り組むことのできる社会環境の整備を含めて、関係者各位と連携し、健康づくり施策を推進していく意向。


【2】アルコール健康障害対策推進基本計画(55分)
講師:杠 岳文[ゆずりは・たけふみ]氏(肥前精神医療センター 院長)

<抄録より>
(1)わが国のアルコール健康障害対策の課題
・アルコール専門医療が久里浜医療センターで始まってから半世紀が過ぎるも、なお多くの課題。

・アルコール依存症患者数107万人(推計)のうち、専門医療機関を依存症の病名で受診している者は4万人程度と少ない。
→専門医療機関の整備とともに、一般医療機関(患者の8割以上が過去1年間に受診している)での”過量飲酒”への積極介入と専門医療機関との連携強化が求められる。

・これまでは重症の依存症患者に対する断酒治療が中心で、軽度の依存症や(1千万人にも及ぶとされる)依存症の手前の段階にある者への介入が行われていない。さらに(学校教育等でアルコール健康障害が取り扱われるも)一般住民のみならず保健医療従事者の理解も不十分。飲酒運転事故は未だ止まず、アルコール依存症への偏見も根強く残る。
→”不適切な飲酒が様々な健康障害や事故を招く”ことや、”過量飲酒を続ければ誰でもアルコール依存症になり得る”ことの再啓発、保健医療従事者に対する研修強化が必要。

・トラブルを抱える家族の相談窓口が周知されておらず、身近に整備もされていない。
(参考)基本法第1条「不適切な飲酒はアルコール健康障害の原因となり、アルコール健康障害は、本人の健康の問題であるのみならず、その家族への深刻な影響や重大な社会問題を生じさせる」

(2)推進基本計画に掲げられた対策
・基本計画で示された2つの重点課題
①「飲酒に伴うリスクに関する知識の普及を徹底し、将来にわたるアルコール健康障害の発生を予防」
→数値目標を設定(生活習慣病のリスクを高める量を飲酒している者を男性13.0%、女性6.4%まで減少させる。未成年者の飲酒をなくす。妊娠中の飲酒をなくす。)
②「アルコール健康障害に関する予防、相談から治療、回復支援に至る切れ目ない支援体制の整備」
→目標を設定(都道府県における”地域の相談拠点”と”アルコール依存症に対する専門医療機関”をそれぞれ1箇所以上定める)

・これまでアルコール健康障害の早期介入、二次予防についての取組みがなかったが、今回の基本計画では(早期介入の手法として)ブリーフインターベンションの調査研究、早期発見や早期介入のための研修プログラムや人材育成に触れられている。


【3】女性と飲酒(55分)
講師:真栄里 仁[まえさと・ひとし]氏(久里浜医療センター 教育情報部長)

<抄録より>
・女性の飲酒は、増加傾向(経済成長や女性の社会進出)。
・一方で女性は男性と比べてアルコールに脆弱。様々な問題が生じやすい。

《急性アルコール中毒》男性よりも体格が小さく、水分量も少ないため、血中アルコール濃度が高くなりやすい。肝臓も小さいためアルコール代謝速度も低い。
《肝障害》男性の半分程度の飲酒から肝障害をきたす可能性あり。脂肪肝に至る期間も短い。
《乳がん》飲酒量に比して増加することが明らかになっている。
《骨粗鬆症》大量飲酒は骨密度を低下させる。
《胎児への影響》低体重、顔面等の奇形、精神発達遅滞などが生じる胎児性アルコール症候群。
《精神科領域》女性アルコール依存症が近年増加。若年発症、他の精神疾患(摂食障害など)の合併が多い等の傾向。

・女性の飲酒問題については男性以上に予防が重要(上記の健康障害に加え、社会的偏見も強いため)。また、男性とは異なるアプローチが望ましい(自責感の強さ、対人緊張の高さ、家族の非協力などの特徴)。

・健康日本21(第二次)の数値目標
①中学3年女子11.7%、高校3年女子19.9%の月飲酒率を0%に。
②生活習慣病のリスクを上げる飲酒(男性40g/日、女性20g/日)をしている者の割合を女性では7.4%から6.3%に。
③妊娠中の飲酒を平成22年の8.7%から0%にする。

・女性の飲酒問題への認識はまだまだ不十分。健康日本21やアルコール健康医学協会等の各種取組が、社会的な認知度を高めるきっかけとなることを期待。


【4】アルコールと肝臓(55分)
講師:坪内 博仁氏(鹿児島市立病院長)

<抄録より>
・肝がんの原因:B型やC型肝炎ウイルスが大部分→非B非Cの肝がんが20%超まで増加。
・(肝がんの背景となる)肝硬変では非B非Cが26%、うちアルコール性は半数以上。

《アルコールの代謝》
・アルコールの大部分は小腸(一部は胃)から速やかに吸収され、肝臓に運ばれて分解される。
・アルコールは主に肝細胞のアルコール脱水素酵素(ADH)の働きで、まずアセトアルデヒド(毒性が強く、悪酔いの原因になると考えられている)に分解される。
・アセトアルデヒドは主に2型アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)の働きで酢酸に分解され、筋肉などで炭酸ガスと水になる。

《アルコールに強い人と飲めない人》
・ALDH2の活性は、遺伝的に決まっている(ALDH2活性が高い=アセトアルデヒドの分解が早い=お酒に強い)。
・ALDH2の活性は、517個のアミノ酸のうち504番目(以前は487番目)のアミノ酸が”野生型(グルタミン酸)”か”変異型(リジン)”かにより規定されている。

(*1/*1)野生型ホモ接合体→活性が高い。日本人の50%強。
(*1/*2)ヘテロ接合体→活性が低い。日本人の40%弱。
(*2/*2)変異型ホモ接合体→ほとんど活性がない。日本人の約5%。

・この遺伝子多型はがんの発生や薬の効果とも関連する。また、ADHにも遺伝子多型があることがわかってきている。

《アルコール性肝障害》
・長期(5年以上)の過剰の飲酒(1日平均純アルコール60g以上)により生じる肝臓の病気。脂肪肝、肝繊維症、肝炎、肝硬変、肝がん。
・女性やALDH2活性欠損者はこれより少ない飲酒量で肝障害が起きるので要注意。

・アルコール性肝障害の年齢調整死亡率は、男女とも高く(特に女性が高く)なっている。
・重症型アルコール性肝炎(常習飲酒者が大量に連続飲酒をして発症する)は生存率約60%と重篤な病気。
・肝硬変(アルコール性肝障害の末期像)は最近高齢化している。肝がんの発生リスクも高い。

・アルコール性肝障害の治療は、まず断酒。アルコール依存症に対しては、ALDH2を阻害する薬や、最近は飲酒欲求を抑制する薬も使用できるようになってきている。


★日本の酒情報館(東京都港区西新橋1-1-21)
講演会の後は、内幸町の「日本の酒情報館」で利き酒を楽しみました。
161031 (20)日本の酒情報館_大吟醸セット
大吟醸セット3種(税込500円)。
①大吟醸「正雪」神沢川酒造場(静岡県清水市)
②大吟醸「王者」三宅本店(広島県呉市)
③純米大吟醸「花美蔵」白扇酒造(岐阜県川辺町)

華やかな吟醸香と芳醇な味わいが、長時間の聴講の疲れを癒してくれました。
30ml×3杯なので、十分に適正飲酒の範囲内です。

(初稿)2016.10.31

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テーマ : お酒と上手につきあう
ジャンル : ヘルス・ダイエット

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Nomura Seiji

Author:Nomura Seiji
・お酒と薬膳理論の入門講座、飲酒教育
 nomuras.jimdo.com
・JSAワイン検定講師
・JSAワインエキスパート
・1971年生
・東京在住

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