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【見学】梅宮大社(京都・右京区) - 日本最古の酒「天甜酒」を醸したのは、絶世の美女の酒解子神?その父の酒解神?

日本最古の酒造神をまつる梅宮大社[うめのみやたいしゃ]を見学しました。同じく酒造の神として有名な松尾大社[まつのおたいしゃ]から徒歩圏のところにあります。

日時:2016年9月25日(日) 15:00~
場所:梅宮大社(京都府京都市右京区梅津フケノ川町30)
料金:無料

★アクセス
160925 (22)松尾大社駅
最寄駅は阪急電鉄・嵐山線の松尾大社駅です。この日は四条河原町方面から訪れました(河原町駅13:40→13:47桂駅14:00→14:04松尾大社駅。運賃220円)。最寄駅から梅宮大社までは約850mです。

160925 (24)松尾橋
改札口を出て右手に進み、踏切を渡って、松尾橋がかかる道を直進します。
160925 (25)松尾橋
松尾橋からの桂川の眺め。少し北に行くと有名な観光地の嵐山があります。

160925 (29)梅宮大社_案内板
松尾橋を渡って更に直進し、この看板のあるT字路を左折すると梅宮大社です。

★鳥居から楼門[ろうもん]まで
160925 (31)梅宮大社_一の鳥居
一の鳥居。
160925 (32)梅宮大社_鳥居
赤い鳥居。
160925 (33)梅宮大社_随身門 - コピー
楼門の”随身門”。2階には酒造会社から寄贈された(はずの)菰樽[こもだる]が積まれています。

160925 (34)梅宮大社_石碑 - コピー
楼門の脇の石碑。「梅宮日本第一 酒造之祖神 安産守護神」と刻まれています。

★境内
160925 (38)梅宮大社_菰樽 - コピー
御手洗[みたらい]の脇にも菰樽が積み上げられていました。
160925 (36)梅宮大社_拝殿
拝殿。
160925 (39)梅宮大社_本殿 - コピー
本殿。
160925 (44)梅宮大社_百度石 - コピー
お百度参りのための百度石。
160925 (46)梅宮大社_見切石の説明書きとベンチ
境内のベンチには、様々な酒造会社のステッカーが貼られていました。

他にも、本殿の横には、またぐと子宝に恵まれるといわれる”またげ石”があります。
また、梅宮大社はその名の通り、梅の花の名所としても知られてます。

★梅宮大社の祭神
160925 (35)梅宮大社_説明書き
梅宮大社の本殿には、「父-娘-娘婿-その子供」の4柱が祭られています。

【父】酒解神[さかとけのかみ]=大山祇神[おおやまづみのかみ]
【娘】酒解子神[さかとけこのかみ]=木花咲耶姫命[このはなのさくやひめのみこと]
【娘婿】大若子神[おおわくこのかみ]=瓊々杵尊[ににぎのみこと]
【子】小若子神[こわくこのかみ]=彦火火出見尊[ひこほほでみのみこと]

娘の”木花咲耶姫命”は、絶世の美女といわれており、夫との一夜の契りで身ごもったことから”安産の神”とされています。また、この懐妊を喜んで(日本最古の酒といわれる)「天甜酒」が造られたため、”酒造の神”ともされています。ただし、この酒を造ったのが、出典によって娘であったり父であったりするため、どちらが(もしくは共同で?)造ったのかを正確に調べきれませんでした...

ちなみに、境内の案内板では造酒の主語が娘でしたが、梅宮大社由緒略記では、主語が父でした。

<境内の案内板より>
”酒解神の御子・酒解子神は大若子神との一夜の契りで小若子神が生まれたことから、歓喜して、狭名田の稲をとって天甜酒を造り、これを飲んだという神話から、古くから安産と造酒の神として有名である”

<梅宮大社由緒略記の”酒造の祖神”より>
”大山祇神は、 木花咲耶姫命が彦火々出見尊を御安産になったのを非常に喜び給い、狭名田の茂穂を以て「天甜酒」を造ってお祝いなされたと日本書紀に載って居りますが、是が穀物を以て酒を醸した始まりであります”

★社務所
160925 (40)梅宮大社_社務所 - コピー
社務所で御神酒と梅酒を購入しました。
160925 (41)梅宮大社_社務所のネコ
社務所のカウンターで優雅に寝そべるネコ。梅宮大社は”ネコ詣で”でも人気の神社だそうです。

★御神酒
160925 (70)梅宮大社_御神酒一式
社務所で購入した御神酒と梅酒。
160925 (72)梅宮大社_御神酒(聚楽第)
御神酒(800円/300ml)は「聚楽第」の純米吟醸酒(精米歩合60%、アルコール分15度)でした。醸造元は、京都市上京区の佐々木酒造です。過去に購入した他社の御神酒はすべて醸造用アルコールを添加した”本醸造酒”だったので、”純米”かつ”吟醸づくり”の御神酒は新鮮に感じられました。
160925 (73)梅宮大社_梅酒
チョーヤの梅酒。アルコール分14度。梅の実が2つ入っていました。

★松尾大社(再々訪)
160925 (61)松尾大社
帰りに松尾大社にも立ち寄りました。「平成の御遷宮」による修復作業がすでに始まっており、駅から2番目の鳥居は白いカバーで覆われていました。
160925 (55)松尾大社_たぬき - コピー
お酒の資料館の前のたぬきの親子。資料館の展示物の配置が、7月12日に訪れた時から少し変わっていました。
160925 (58)松尾大社(加工)
亀の井の近くの天狗岩。前回訪問した時は肉眼で確認できませんでしたが、今回は見付けることができました。

<参考>松尾大社の”亀の井”(2016年7月8日のブログ)

★帰路
160925 (28)松尾橋バス停
帰りは京都駅まで市バスを利用しました(71系統、松尾橋15:35→京都駅八条口16:18、運賃230円)。停留所は松尾橋の近く(梅宮大社側)にあります。始発の停留所なので座れる可能性が高く、時間に余裕がある方にはおすすめです。
160925 (26)松尾橋バス停
160925 (27)松尾橋バス停
バスの時刻表。
160925 (64)京都市営バス71系統_東寺東門前付近
71系統の市バスは、東寺の五重塔の近くを通ります。

★感想など
松尾大社、大神神社に続いて梅宮大社を訪れ、お酒が神道と深く関わっていることをあらためて実感しました。日本の神々は、名称が似ているもの(梅宮大社の”大山祇神”と松尾大社の”大山咋神”など)や、漢字表記・読み仮名が出典によって異なるケースが多々あるように見受けられるため、混同しないように少しずつ勉強していきたいと思います。
天甜酒を醸したのが酒解神か酒解子神のいずれか(または両方か)は、歴史に詳しい方に質問できる機会を待つか、少し時間をおいて文献などにあたってみたいと思います。

(初稿)2016.10.2

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平成28年度「灘の生一本 2016」特別先行試飲会(兵庫・神戸) - 9銘柄を同時にテイスティングできる贅沢なイベントに初参加

灘の生一本[なだのきいっぽん]の特別先行試飲会に参加しました。灘の生一本とは、”灘五郷の単一の製造場のみで醸造した純米酒”を指し、灘酒研究会に加盟するメーカーが統一ラベルのもとで2011年より発売しています。今年度は灘五郷酒造組合員(28社)のうち、9社より9銘柄が、9月26日に一斉発売されています(大関・菊正宗・剣菱・櫻正宗・沢の鶴・道灌・日本盛・白鹿・白鶴)。

日時:2016年9月24日(土) 10:30~12:30
場所:北野工房のまち 3階大会議室(兵庫県神戸市中央区中山手通3-17-1)
定員:120名(2名連記 60組)
料金:無料
内容:
(1)発売9社からの「灘の生一本」の紹介
(2)「灘の生一本」の試飲会
(3)9社との懇親会(軽食付)

★申込み
160924灘の生一本特別選考試飲会(はがき)
今年の先行試飲会の告知は、灘酒研究会のHPにて9月1日に行われました。参加申込みは2名1組で、同研究会のHPより行います。応募が多数の場合は抽選となり、当選者には後日、参加票のはがきが送られてきます。

★アクセス
160924 (1)東京駅のぞみ1号
東京駅始発の東海道新幹線「のぞみ1号」に乗車し、(宿泊先の)京都駅で新快速に乗り継いで神戸方面に向かいました(東京駅6:00→8:08京都駅8:14→9:07三ノ宮駅)。会場の「北野工房のまち」は、JR東海道線の三ノ宮駅または元町駅から各800mほどです。

160924 (2)スターバックス神戸北野異人館_外観 - コピー
早めに現地に着いたので、「スターバックス神戸北野異人館店」でお茶をしました。JR三ノ宮駅から約900m、北野工房のまちから約700mのところにあります。
160924 (5)スターバックス神戸北野異人館_2階 - コピー
この建物はもともと1907年(明治40年)に北野町1丁目に建築されたコロニアルスタイルの西洋館で、NHK朝の連続テレビ小説『風見鶏』の主人公のモデル(ドイツパン職人のハインリヒ・ブルクマイヤー氏)がオーナーだったこともあります。1995年(平成7年)の阪神・淡路大震災で全壊認定を受けたため取り壊される予定でしたが、神戸市が建物の寄贈を受けた上で解体・部材保管し、2001年(平成13年)に現在地に再建・移築されました。2009年(平成21年)からスターバックスの店舗として利用されています。
160924 (9)スターバックス神戸北野異人館_2階
入館料などは不要で、メニューの料金も通常のスタバと同じです。スタバのWi-Fiも使えます(登録無料)。館内には複数の部屋があり、それぞれに趣きが異なるので、来るたびに違った雰囲気が楽しめます。

★会場
160924 (17)北野工房のまち_案内図 - コピー
160924 (14)北野工房のまち
試飲会が開かれる「北野工房のまち」は、旧北野小学校の校舎をリニューアルして1998年にオープンした複合施設です。3階建てで、館内には神戸ブランドの飲食店や雑貨屋などおよそ20店舗が入居しています。
160924 (20)灘の生一本・特別試飲会_会場入口
試飲会の会場は、旧小学校の講堂を利用した3階の大会議室でした。
160924 (18)灘の生一本・特別試飲会_会場内
会場内のようす。正面にステージがあり、両側に各社のブースが並んでいます。

★受付
160924 (21)灘の生一本・特別試飲会_プログラム
160924 (22)灘の生一本・特別試飲会_パンフレット
参加票のはがきを受付に渡し、資料一式と懇親会の席次(Cテーブル)を記したストラップを受け取ります。

★プログラム
(1)10:30~11:00
・来賓挨拶(神戸市経済観光局局長・山本猛氏)
・主催者挨拶(灘酒研究会酒質審査委員会・明石貴裕氏)
・【9社の商品説明】
(2)11:00~11:40
・【利き酒会】
(3)11:50~12:30
・【懇親会】
・挨拶(広報需要開発委員長・巽良彦氏)
・乾杯(兵庫県産業労働部産業振興局長・竹村英樹氏)
・閉会挨拶(広報需要開発委員・春山裕二氏)

★9社の商品説明
160924 (25)灘の生一本・特別試飲会_ボトル
来賓・主賓挨拶に続いて、各社につき2分間の商品説明がありました。関西の会社らしく(?)、ユーモアたっぷりでわかりやすいプレゼンが多かったです。

①「大関」:大関独自育成米「いにしえの舞」を使用。純米酒らしいふくらみと適度な酸味が調和した酒。独特な香りとコクがあるけど飲みやすい。生酛系酒母を使い、あえて滓下げをしていない。酒質は毎年変えている。
②「菊正宗」:「うまいものを見ると辛口のキクマサがほしくなる」というCMの通り、「辛口」にこだわる。飲み飽きせず、料理の味を引き立てる酒をめざしている。酒米は(山田錦よりも味に広がりと深みがある)「兵庫恋錦」を使い、生酛造りでコク、キレ、押し味を実現。
③「剣菱」:剣菱は辛口と言われがちだが、実際はコクと熟成感のある”中口”。じっくりと丁寧に熟成させた香りと黄金色、濃醇な旨みとコクの調和が特長。
④「櫻正宗」:淡麗でキレの良さを持ちながら、純米酒のふくらみもある。食事と合わせて飲んでいると気が付いたらなくなっているというような酒を目指している。
⑤「沢の鶴」:他社と大きく違うのは、加水をしない“原酒”であること(alc.18.5度)。灘の酒は男酒といわれるが、うちの灘の生一本は「男の中の男酒」。
⑥「道灌」太田酒造:酒米は6年前から「フクノハナ」を使用。おだやかな香りで、ふくよかな酒。今年の生一本は“完成形”と自負している。「今年の道灌はおいしいよ。略して“KDO”」。社長は江戸城築城の太田道灌から19代目を数える。名前を覚えてほしい。
⑦「日本盛」:酒米は「兵庫夢錦」を使用。爽やかな香り、程よい酸味。きれいでキレの良い酒。創業は明治期で、スタート時から株式会社。もとは西宮酒造(株)。
⑧「黒松白鹿」辰馬本家酒造:旨みと適度な甘みがあり、飲みごたえのある酒。辛口でも甘口でもない「旨口」。いつも辛口を注文する人に試してほしい。
⑨「白鶴」:白鶴独自開発米「白鶴錦」(山田錦の兄弟品種)を使用。芳醇な香りとキレの良さ、きれいですっきりとした後味が特長。

各社が造る灘の生一本は、「灘酒研究会の酒質審査委員会」によって厳しく審査され、酒質の評価には(各社まちまちの表現ではなく)”統一用語”が使われています。例えば、”甘辛”、”味わい”、”香り”の評価には同一の5段階スケールが使われており、消費者が各社の酒質を比較しやすくなっています。

・甘 辛:(5)辛口-(4)やや辛口-(3)中-(2)やや甘口-(1)甘口
・香 り:(5)熟成-(4)やや熟成-(3)おだやか-(2)やや華やか-(1)華やか
・味わい:(5)コク-(4)ややコク-(3)中-(2)ややすっきり-(1)すっきり

もっとも辛口は「菊正宗」(5)、もっとも甘口は「黒松白鹿」(1)。
もっとも熟成は「剣菱」(5)、華やかは「白鶴」(1)。
もっともコクがあるのは「剣菱」(5)、すっきり(1)は該当なし。

<各社の灘の生一本>
①「大関」:alc.16度+、いにしえの舞(精米歩合70%)。コクがある・豊かな味わい・適度な酸味・ふくらみがある・おだやかな香り。
②「菊正宗」:alc.16度、兵庫恋錦(精米歩合70%)。ふくらみがある・キレ良い・おだやかな香り・淡麗・辛口。
③「剣菱」:alc.17.5度、精米歩合70%。熟成香・濃醇・旨みある・コクがある。
④「櫻正宗」:alc.15度+、山田錦(精米歩合70%)。淡麗・キレ良い・ふくらみがある。
⑤「沢の鶴」:alc.18.5度、山田錦(精米歩合:麹米65%、掛米75%)。おだやかな香り・濃醇・旨みある・ふくらみがある・キレ良い。
⑥「道灌」太田酒造:alc.15度+、フクノハナ(精米歩合60%)。旨みある・おだやかな香り・ふくらみがある。
⑦「日本盛」:alc.15度+、兵庫夢錦(精米歩合60%)。爽やかな香り・適度な酸味・きれい・キレ良い。
⑧「黒松白鹿」辰馬本家酒造:alc.16度+、山田錦(精米歩合70%)。まろやか・旨みある・適度な甘味・飲みごたえのある。
⑨「白鶴」:alc.15度+、白鶴錦(精米歩合50%)。芳醇な香り・キレ良い・きれい・後味すっきり。

・720ml瓶の価格(税別)は、剣菱のみ1,500円、他は1,170円です。

★利き酒会(40分間)
160924 (24)灘の生一本・特別試飲会_プラスチックカップ
商品説明の後は、各社のブースを自由にめぐって利き酒をしました。写真右側の剣菱は他と比べて濃い山吹色をしており、他社の担当者が一目見ただけで「剣菱ですね」とわかるほどでした。

160924 (27)灘の酒蔵通り
利き酒会の後は、懇親会の会場設営のため、参加者は10分ほど退場を求められます。その間に館内のウインドウ・ショッピングを楽しみました。写真は1階にある灘酒のアンテナショップ「灘の酒蔵通り」の看板。灘の名酒が販売されており、灘の酒を紹介するパンフレットも置いていました。

★懇親会(40分間)
160924 (34)灘の生一本・特別試飲会_懇親会テーブル - コピー
懇親会は立食形式で、各テーブルには灘の生一本9銘柄と軽食が用意されていました。各テーブルには酒造メーカーの方がついてくださるので、いろいろな質問をすることもできました。参加者同士の酒談義も弾み、「東京オリンピック(に伴う和食と日本酒)のPRで樽廻船を造って運行してほしい!」や、「その船に杉樽の酒を乗せて、江戸時代の下り酒の熟成感を再現してほしい!」などの希望や夢(ヨタ話)を楽しく語り合いました。

★赤萬 元町店(神戸餃子)
160924 (37)赤萬_焼餃子
試飲会で日本酒を堪能した後は、「赤萬 元町店」で焼餃子とビールを楽しみました。メニューは餃子とビールのみで、料金は餃子1人前7個が290円、ビールは大500円、小350円です。土日祝はひとり2皿からの注文で、追加オーダーはできません。
160924 (39)赤萬_焼餃子
神戸餃子のタレは味噌がベースです。赤萬は白味噌ですが、もうひとつの人気店「瓢たん」は赤味噌です。両店とも三ノ宮と元町にお店があるので、食べ比べがおすすめです。

★感想など
同じ「灘の生一本」でも各社によって酒質がまったく異なることが印象的でした。特に興味深かったのが「原料米のバリエーションの豊かさ」でした。”県レベル”で独自の原料米を開発する取り組みは多々見られますが、”個別企業レベル”でも独自開発米に注力しているメーカーが複数あるところに、”日本一の酒どころ”である灘の底力を感じました。一方で、灘の生一本に使う酵母菌は、生酛系酒母を除くと、オーソドックスなきょうかい酵母(701や901)を使うところが多いようでした。酵母菌のバリエーションが広がる吟醸酒の世界と比べて、原料米へのこだわりがが田んぼレベルで深化していく灘の酒は、(テロワールに強くこだわる)ワイン造りに通じるものを感じました。

灘の生一本は、各社が試行錯誤を重ねながら毎年酒質を変えているようなので、来年以降もヴィンテージの確認のために全銘柄の飲み比べをしていきたいと思います。秋の楽しみがまた一つ増えました。

★「灘の生一本」のテイスティング会
この感動を地元の愛好家にも楽しんでもらいたいと思い、10/23にテイスティング会を企画しました。
16107灘の生一本 (3) - コピー
東京で9銘柄を揃えるのはしんどかったです...
161023灘の生一本2016
9銘柄を利き直してみて、新たな発見が多々ありました。来年もぜひ、全銘柄のテイスティング会を開きたいと思います。

(初稿)2016.10.9

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【見学】うすくち龍野醤油資料館(兵庫・たつの市) - ヒガシマル醬油の旧本社を活用した日本初の醤油資料館

うすくち醤油のトップ・メーカー、ヒガシマル醬油の「うすくち龍野醤油資料館」を見学しました。うすくち醤油は、こいくち、たまり、しろ、さいしこみと並んで、5種類の醤油のひとつに数えられています(JAS法)。

日時:2016年9月15日(木) 11:10~12:10頃
場所:うすくち龍野醤油資料館(兵庫県たつの市龍野町大手54-1)
内容:自由見学
料金:10円

★アクセス
うすくち龍野醤油資料館は、JR姫新線[ひめしんせん]の本竜野駅から約1.5km、徒歩約20分です(姫路駅から本竜野駅までは4駅、約20分、運賃240円)。
この日は但馬杜氏のふるさと・湯村温泉(兵庫県美方郡)から約130km(2時間10分)の道のりを車で連れてきてもらいました。

★ヒガシマル醤油の第一工場と揖保川[いぼがわ]
160915 (90)ヒガシマル醤油工場_外観
駅から資料館へ向かう途中に、ヒガシマル醤油の第一工場があります。工場見学もできますが、この日(と前日)は予約が埋まっていて見学できませんでした。
160915 (89)揖保川
工場のそばを流れる揖保川。手延べそうめんの「揖保乃糸[いぼのいと]」は、たつの市を含む揖保川中流域の名産品です。

★うすくち龍野醤油資料館(本館)
160915 (16)うすくち龍野醤油資料館_入口
ヒガシマル醬油の旧・本社屋を活用した同資料館(本館)は、全国初の醤油資料館として1979年(昭和54年)に開館しました。少し離れたところに別館があります。
160915 (83)うすくち龍野醤油資料館__外観
本館、別館ともに国の登録有形文化財に指定されています。

★ヒガシマル醤油㈱の歴史
1942年に菊一醤油、浅井醤油が合併して龍野醤油(株)が誕生し、1964年にヒガシマル醤油㈱に改称されました。創業は天正年間(1580年頃)にさかのぼります。龍野にうすくち醤油が誕生したのは1666年頃といわれています。
160915 (77)うすくち龍野醤油資料館_菊一醤油造合資会社の木製看板
160915 (78)うすくち龍野醤油資料館_菊一の看板と菊花紋 - コピー
菊一醤油の前身の幾久屋は、文禄年間(1592~1596年)に宮中から「菊屋」の屋号と菊花紋を賜りました。

★ライブラリー・コーナー(映像鑑賞)
160915 (17)うすくち龍野醤油資料館_映像ライブラリー
館内のライブラリー・コーナーでは、「昔と今の醤油造り」(約17分)の映像を鑑賞できます。

★うすくち醤油(淡口-、薄口-)
160915 (19)うすくち龍野醤油資料館_ヒガシマル醤油のできるまで
こいくち醤油は、蒸した”大豆”と炒った”小麦”に種麹をつけて、”塩水”で仕込みます。
うすくち醤油はさらに、仕込みの終盤に”(米麹から造った)甘酒”を加えてから搾ります。また、小麦を浅めに炒る、塩水の割合を増やす(約1割)、仕込み期間を短めにする(約3割)等の色を淡くする工夫がなされています。

★うすくち醤油の原料
館内の組合資料室には様々な大豆、小麦、塩のサンプルが展示されていました。素材の違いが、醤油の香味にどのような影響を与えるかが気になりました。
160915 (37)うすくち龍野醤油資料館_大豆サンプル - コピー
大豆のサンプル。
160915 (38)うすくち龍野醤油資料館_小麦サンプル - コピー
小麦のサンプル。
160915 (39)うすくち龍野醤油資料館__塩のサンプル
塩のサンプル。

揖保川の水や播州の穀物、赤穂の塩などの良質の原料が、うすくち醬油や揖保乃糸などの地場産業を育んだそうです。

★醤油をかもす微生物
160915 (33)うすくち龍野醤油資料館_醤油をかもす微生物 - コピー
醤油造りで主に活躍する微生物は麹菌、酵母菌、乳酸菌です。

★昔の醤油造り
<ボイラー>
160915 (65)うすくち龍野醤油資料館_コルニッシュ・ボイラー(横型丸ボイラー)大正11年 - コピー
蒸気を発生させるためのコルニッシュ・ボイラー(横型丸ボイラー)。
160915 (64)うすくち龍野醤油資料館_ボイラーの銘
”AUGUST 1922”(大正11年8月)の銘が記されていました。

<井戸水>
160915 (21)うすくち龍野醤油資料館_井戸地下水 - コピー
地下水を汲み上げる井戸。揖保川の水は”全国まれにみる鉄分の少ない軟水”で、色が淡く香味が良いうすくち醤油づくりに欠かせない原料の一つです。

<原料処理場>
160915 (23)うすくち龍野醤油資料館_原料処理場の地釜 - コピー
地面に埋められた”地釜”。左の釜で大豆をたき(蒸し?)、右の釜で米が蒸されていました。龍野地方では大豆の処理を煮熟[しゃじゅく](別名、地獄だき)と呼んでいたそうです。

160915 (69)うすくち龍野醤油資料館_唐箕
風を送って小麦とゴミを選び分ける装置(唐箕[とうみ])。
160915 (26)うすくち龍野醤油資料館_麦炒機 - コピー
160915 (27)うすくち龍野醤油資料館_麦炒釜 - コピー
麦炒機(上)と麦炒釜(下)。麦を炒る目的は、ひき割りやすくすることと、でんぷんを麹菌が消化しやすいように変化させることです。うすくち醤油の場合は、色が濃くなり過ぎないように浅めに炒ります。

<麹室>
160915 (41)うすくち龍野醤油資料館_麹室
レンガ造りの麹室。藁室、土蔵室などもありますが、この地方ではレンガ室が多かったそうです。室の出入り口と窓は二重になっており、天井には温度調節のための天窓が設けられています。また、保温材としてもみがらが使用されていました。
160915 (45)うすくち龍野醤油資料館__麹室の説明書き - コピー
麹室のレンガは長手積み。説明書きの横には、現在の麹室の写真が貼られています。
160915 (42)うすくち龍野醤油資料館_麹蓋
室内の麹蓋。大豆と小麦に種麹をつけ、麹蓋に盛って室内で麹菌を繁殖させて醤油麹をつくります。甘酒用の米麹も同じように、蒸した米に種麹をつけて麹蓋に盛り、麹室のなかでつくられます。
160915 (40)うすくち龍野醤油資料館_麹蓋の積みかた2
4通りの麹蓋の積み方(棒積、すぎなり積、めんどり積、すきばい積)。

<仕込み蔵>
160915 (43)うすくち龍野醤油資料館_仕込み桶
醤油麹と塩水を合わせて諸味[もろみ]を仕込みます。昔は空調設備がなかったため、発酵熟成におよそ1年もかかったそうです。

160915 (44)うすくち龍野醤油資料館_仕込み蔵の天井 - コピー
仕込み蔵の天井。

<圧搾場>
160915 (50)うすくち龍野醤油資料館_圧搾場
醤油の諸味を搾る圧搾機。

160915 (52)うすくち龍野醤油資料館_棒締式圧搾機
天井近くまで"はね棒"が伸びた巨大な「棒締式圧搾機」もありました。
160915 (47)うすくち龍野醤油資料館_阿弥陀車
天井の阿弥陀車。

160915 (57)うすくち龍野醤油資料館_垽桶
垽桶[おりおけ]。しぼった醤油の中の垽(沈殿物)を分離するための桶(江戸~昭和初期)。

<醤油の色>
160915 (35)うすくち龍野醤油資料館_色時計
資料室の色度計。一番右は、搾りたての醤油の色「赤(褐)色」のようでした。

<出荷>
160915 (62)うすくち龍野醤油資料館_青い竹のタガ(映像)
出荷用の樽を作っているようす(館内映像)。仕込み桶と同様に、秋田杉でつくられた容器に”竹のタガ”を巻いています。

<運搬船と醸造道具>
160915 (29)うすくち龍野醤油資料館_浅井丸
醤油を運んでいた「浅井丸」。浅瀬でも航行できうように船底が平らになっている高瀬舟(小型の木造船)です。
160915 (28)うすくち龍野醤油資料館_醸造道具の展示
160915 (30)うすくち龍野醤油資料館_醸造道具の展示
昔の醸造道具の展示。

<帳場>
160915 (60)うすくち龍野醤油資料館_帳場
明治時代の醤油蔵の帳場を再現したコーナー。主に番頭さんが帳面を付けたり、お金の授受をしていました。

★北王子魯山人が語るうすくち醬油
160915 (73)うすくち龍野醤油資料館__ - コピー
160915 (74)うすくち龍野醤油資料館__ - コピー
北王子魯山人が、料理を作るときにうすくち醤油を使うことを薦めていました。彼はこいくち醤油に対して批判的ですが、各々の特長を活かした使い分けをする方が、より楽しみ方が広がると思いました(好みに合わないものを”こき下ろす”ような文調は、個人的には少し苦手です...)
昨夏の「和食とワイン」セミナーでの、「うすくち醤油とこいくち醤油はまったく使い方が違う。前者は最後の方に使ってスパイスのように香りを付け、後者はフォンドヴォーのように素材にしっかり味をつける」という指摘を思い出しました。

★その他
160915 (72)うすくち龍野醤油資料館_中庭の神社
中庭には神社がまつられていました。
160915 (58)うすくち龍野醤油資料館__館内の半円窓からの景色
半円窓からの、風情のある眺め。
160915 (85)龍野・資料館周辺
資料館周辺のようす。

★感想など
充実した展示物や映像を通して、うすくち醤油の複雑な製造工程をイメージすることができました。昔の酒造道具と同じつくりのものも多く見られ、とても興味深かったです。

160915 (96)姫路駅の新幹線ホーム
資料館を見学した後は、法事に出席するために山口県に向かいました。写真は姫路駅に入線するのぞみ107号(姫路駅13:55→14:53広島駅)。
翌16日にはさいしこみ醤油の資料館を見学し、5種類の醤油の関連施設を一通り訪ねることができました。

(初稿)2016.12.19

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【見学】但馬杜氏の郷・杜氏館(兵庫・美方郡) - 日本一の源泉温度を誇る湯村温泉で、元杜氏の方の貴重なお話を伺う

岩手県の南部杜氏、新潟県の越後杜氏、兵庫県の丹波杜氏とあわせて日本四大杜氏に数えられる但馬杜氏[たじまとじ]のふるさとを訪ねました(但馬杜氏の代わりに、石川県の能登杜氏を数える場合もあります)。杜氏館は湯村温泉の中心地にあり、この辺り(旧・温泉町[おんせんちょう])を出身とする杜氏は「温泉杜氏」と呼ばれていたそうです。

日時:2016年9月14日(水) 15:00~16:20頃
場所:但馬杜氏の郷・杜氏館(兵庫県美方郡新温泉町湯98-3)
料金:無料

★アクセス
160914 (13)但馬杜氏の郷・杜氏館_外観
山陰の名湯・湯村温泉の中心地に但馬杜氏の郷・杜氏館があります。この日はJR姫路駅から約126kmの道のりを車で連れて来てもらいました。所要時間は約2時間です(播但連絡有料道路、山陰道、国道9号線経由)。東京都内から姫路駅までは東海道新幹線を利用しました(ひかり461号。東京駅7:03→10:50姫路駅)。

★杜氏館
160914 (15)但馬杜氏の郷・杜氏館_外観
杜氏館は湯村温泉の観光案内所(観光協会)と同じ建物にあります。
160914 (44)但馬杜氏の郷・杜氏館_注意書き - コピー
開館時間は10:00~17:00、お酒の販売と試飲は行っていません。入場は無料です。

★湯~たん
160914 (16)但馬杜氏の郷・杜氏館_湯〜たん
入口では湯村温泉のマスコット・キャラクター「湯~たん」がお出迎えしてくれます。湯村温泉の源泉「荒湯」から生まれた精霊で、夜な夜な寝ている人の布団の中に「湯たんぽ」をしのばせるそうです(うちにも来てほしい...)。湯村温泉のPR活動と、ピンクのタオル収集がマイブームだそうです。

★館内
160914 (19)但馬杜氏の郷・杜氏館_館内 - コピー
160914 (55)但馬杜氏の郷・杜氏館_半切など
杜氏館の館内には昔の酒造道具などが展示されています。元・杜氏の方が常駐されており、希望者にはガイドをしてくれます(5人の方が持ち回りで担当しているそうです)。

★但馬杜氏の就業先
160914 (22)但馬杜氏の郷・杜氏館_一覧1 - コピー
但馬杜氏の就業先。地元の兵庫県が多いようです。
160914 (23)但馬杜氏の郷・杜氏館_一覧2 - コピー
西日本が中心で山口県や四国の酒蔵で酒造を行う方もいらっしゃいました。
160914 (20)但馬杜氏の郷・杜氏館_三谷藤夫ボトル - コピー
但馬杜氏の名を冠した松竹梅・白壁蔵の「三谷藤夫」(宝酒造)のサンプル・ボトル。精米歩合60%の五百万石を使用した山廃純米酒です。松竹梅を醸す宝酒造(本社:京都市伏見区)は、兵庫県の銘醸地・東灘区にも蔵(白壁蔵)を構えており、今も吟醸酒など一部の酒を手造りで行っています。三谷杜氏は現役を引退して顧問についておられるそうですが、その名を冠した酒が今も造られています。三谷杜氏は、平成23年に厚生労働省の「卓越した技能者(通称:現代の名工)」に選出され、平成25年度(春の褒章)には「業務に精励し衆民の模範である者」を対象とする黄綬褒章を受賞されています。

★元・但馬杜氏にガイドをして頂くという贅沢
160914 (74)但馬杜氏の郷・杜氏館_ささらの実演
ガイドをしてくださったNさんは現在83歳。数多くの質問にも、長い時間をかけて丁寧に答えてくださいました。写真は「ささら」の使い方を実演してくださっているところです。Nさんは20歳くらいの時に(三谷杜氏と同じ)白壁蔵に2年つとめ、続く4年間は京都・伏見(大手筋)の蔵で製麹の主任を任され、42歳のときに石川県・加賀市の橋本酒造(大日盛の蔵元)で杜氏に就かれました(取引先の関係でご縁があったそうです。石川県の蔵には能登杜氏が派遣されるものだと思っていました...)。普段は地元で牛を飼い田んぼをつくる生活を送り、雪に閉ざされる冬の間は季節労働に出ていたそうです。家庭のご事情で50歳を前にして酒造界から退かれた後は、地元で農業一本の生活を送られてきたそうです。

★出稼ぎは酒造りに限らなかった!?
Nさんの最初の出稼ぎ先は、造り酒屋ではありませんでした。当初の2年間は、大和(奈良県)の豆腐屋で凍り豆腐を作る手伝いをしていたそうです。しかし、三谷藤夫さんなど酒蔵に行った人たちの、「酒は飲める、金は良い」、という話を聞き、酒蔵への出稼ぎに変わったそうです(杜氏の郷とよばれるところは皆が酒造りに行くものと思い込んでいました...)。終戦後の景気回復や、政府による酒造りの推進(酒税がほしい)などを背景に、まじめについていった人は次から次へと杜氏になっていったそうです。温泉杜氏は当初はそれほど多くなかったそうですが、Nさんの現役時代には130人くらいに増えていたそうです。
但馬杜氏が醸す酒の特徴について質問したところ、(但馬杜氏に固有の酒質があるというよりは、)国税局が毎年8月半ばに行う酒造講習で習ったことを基準に造っていたそうです。他にも、冬用の長靴の配給のお話(1クラスに3足が配られ、くじ引き?などで当たらなければ藁靴で過ごすことになる)など、昔の但馬の生活が目に浮かぶような貴重なお話を伺えました。

★昭和初期の杜氏名簿
160914 (50)但馬杜氏の郷・杜氏館_杜氏名簿
館内には過去の「杜氏就業先名簿」が残されていました。一番上に綴じられている(おそらく一番古い)ものは、なんと昭和17年度のものでした。これは、すごく歴史的価値のある資料では...
160914 (70)但馬杜氏の郷・杜氏館_名簿(地方別一覧) - コピー
杜氏の出身地と就業先の一覧。旧字体が使われていて趣きがあります。この年度は280名の方が、奈良県(86)、京都府(52)、大阪府、和歌山県(各45)などの酒蔵に就業されていたようです。
160914 (59)但馬杜氏の郷・杜氏館_S45就業先名簿
昭和45年の名簿には、案内をしてくださったNさんのお名前が掲載されていました。

★昔の広告(昭和40年代ごろ)
杜氏名簿には、昔の広告も掲載されていました。
160914 (63)但馬杜氏の郷・杜氏館_ムサシノ乳酸広告
「ムサシノ乳酸」(武蔵野商事、東京都中央区)
160914 (65)但馬杜氏の郷・杜氏館_種麹の広告
「丸福種麹」(日本醸造工業、東京都文京区)
「ヒグチモヤシ」(樋口松之助商店、大阪市)
160914 (66)但馬杜氏の郷・杜氏館_秋田今野ほか
「今井式簡易自動製麹装置」「自動あんか酛ヒーター」(佐々木本店、大阪市)
「秋田今野モヤシ」「コンパール石綿」(秋田今野商店)
160914 (67)但馬杜氏の郷・杜氏館_原野産業、川北工業所
ハラノの「特許H.L.D.(粉飴)」「水飴」「酵素ブドー糖」「葡萄糖」「結晶ブドー糖」(原野産業、愛知県)
「酒造用活性炭素」(川北化学工業所、大和高田市)
160914 (68)但馬杜氏の郷・杜氏館_菱六、上田
「菱六もやし」(菱六、京都市東山区)
「上田もやし」(上田伊兵衛商店、大阪市住吉区)
160914 (69)但馬杜氏の郷・杜氏館_今野モヤシ
醸造機器資材、公認酒類仲介(箕面崎商店、大阪市北区)
「今野モヤシ」(今野もやし、神戸市東灘区)

Nさんは、ヒグチ、コンノ、ヒシロクなどをよく使っていたと語られていました。

★但馬杜氏の信念と覚悟
160914 (62)但馬杜氏の郷・杜氏館_但馬杜氏の覚悟
杜氏名簿の裏表紙には但馬杜氏の信念と覚悟が記されていました。

『但馬杜氏の信念』
1.信用第一で責任を重んじたい
2.精勤できまりを正しくしたい
3.正直でまちがいをなくしたい
4.質素でむだづかいをやめたい
5.協力的で互助心をふかめたい
6.計画的で研究心をたかめたい
7.実行的で改良心をつよめたい

『但馬杜氏の覚悟』
私は私自身の信念で働きたい
私は私自身の良心で働きたい
  そこに本当の希望がわき
  本当の計画がたち
  本当の研究がすすみ
  本当の働きがうまれる
しかも明けても暮れても
お互全体が懸命の協力をうちこむとき
  愈々[いよいよ]能率があがり
  銘酒ができ
  信用が高まり
よろこびと感謝のうちに
ひとりで前身の途がひらけ
  勤続と昇進昇給のむくいをうける
たしかに但馬杜氏の生命力は
  信用第一の働きそれ一つのうちに生きて
これが但馬杜氏の覚悟であり
これが但馬杜氏の人生である

Nさんに「なぜ、この地が杜氏の郷になったのか」と質問したところ、「この辺で農業をする人は辛抱強い」というご回答でした。日本酒や焼酎の輸出推進をめざす『國酒プロジェクト』に、「(日本酒は)日本人の忍耐強さ・丁寧さ・繊細さを象徴」すると記されていますが、それはまさに杜氏や蔵人に求められる資質であることを強く感じました。

(参考)「國酒等の輸出促進プログラム」平成24年9月4日
”日本の「國酒」である日本酒・焼酎(泡盛を含む)は、米、水など日本を代表する産物を原料とするのみならず、日本の気候風土、日本人の忍耐強さ・丁寧さ・繊細さを象徴した、いわば「日本らしさの結晶」である。”(ENJOY JAPANESE KOKUSHU(國酒を愉しもう)推進協議会より)

★酒造り唄
160914 (32)但馬杜氏の郷・杜氏館_酒造り唄 - コピー
作業時に口ずさむ「酒造り唄」は、故郷を離れて厳しい仕事に励む杜氏や蔵人にとって、一種の心の支えでもあったそうです。温泉町の杜氏組合は、平成10年に酒造り唄保存会を結成し、伝統文化を後世に伝える活動をされています。
160914 (34)但馬杜氏の郷・杜氏館_米研ぎ唄 - コピー
米研ぎ唄。
160914 (33)但馬杜氏の郷・杜氏館_秋洗い唄 - コピー
秋洗い唄。

★昔の酒造道具など
<こしき>
160914 (47)但馬杜氏の郷・杜氏館_こしき
米を蒸す際に使われたこしき。

<蛇管[じゃかん]>
160914 (76)但馬杜氏の郷・杜氏館_蛇管
火入れ(加熱殺菌)に使われていた蛇管。お湯の入ったタンクの中に蛇管を入れ、管の中に酒を通して加熱殺菌を行っていたそうです。

160914 (48)但馬杜氏の郷・杜氏館_一斗瓶
一斗瓶。

<浜坂醸造の提灯>
160914 (54)但馬杜氏の郷・杜氏館_浜坂酒造の提灯

★原料米
160914 (53)但馬杜氏の郷・杜氏館_酒米の穂 - コピー
兵庫北錦(酒米)、五百万石(酒米)、コシヒカリ(食味米)の穂。
160915 (11)但馬杜氏の郷・杜氏館_亀ノ尾8分3厘磨き
漫画「夏子の酒」に登場する幻の米「龍錦」のモデルとなった「亀ノ尾」。精米歩合はなんと8.3%!?
160915 (12)但馬杜氏の郷・杜氏館_亀ノ尾2割3分と8分3厘の比較
左は精米歩合23%の亀ノ尾。重量精米歩合だと思われるので、見た目の違いはよくわかりませんでした。Nさんは「こんなことをされても処理に困る。砕米[さいまい]みたいなもの。(精米歩合は麹米と掛米の平均値となるので、)ここまで磨くと掛米をだいぶ黒くしないと」と仰っていました。吟醸造りに適した麹はやはり「突き破精」(針でちょっと突いたくらいの点々が米の芯まで届いたもの)で、細かい米だと粒全体が真っ白になる「ベタ破精」になってしまい、良い香りがでにくいそうです。「(ベタ破精は)甘酒にはよいだろうけど...」というお言葉がすとんと腑に落ちました。

★但馬杜氏の碑(薬師湯)
160915 (10)但馬杜氏の碑_但馬杜氏の郷碑(薬師湯)全景 - コピー
杜氏館から約200mのところにある薬師湯には、”但馬杜氏の郷”の碑があります。
160915 (5)但馬杜氏の碑__但馬杜氏の郷碑(薬師湯)正面 - コピー
160915 (9)但馬杜氏の碑__但馬杜氏の郷碑(薬師湯)碑文 - コピー

★湯村温泉
湯村温泉は、平安時代(848年)に開湯した歴史ある湯治湯です。町名は「新温泉町」(2005年に温泉町と浜坂町が合併して誕生)で、杜氏館を含む地域の地名はズバリ「湯」。町内には、”温泉小学校”や”湯交番”という名称の公共施設があります。
160914 (79)湯村温泉_荒湯 - コピー
杜氏館のすぐ近くにある「荒湯」の源泉温度は98℃(日本一)で、湧出量は毎分470L。荒湯では温泉卵をつくることもできます。
160914 (86)_湯村温泉_山上の夢
湯村温泉は1981年にNHKドラマ「夢千代日記」(吉永小百合主演)のロケ地となり、以来「夢千代の里」とも呼ばれています。母親の胎内で被爆し、余命2年を宣告された主人公の夢千代を演じたのは、女優の吉永小百合さんです。
160914 (87)湯村温泉_三好屋
ミシュランガイド兵庫2016特別版に掲載された三好屋。湯村温泉にある宿泊施設は24軒程度ですが、定員500名クラスの大型ホテルが2軒あるため、大きな温泉街の部類に入るそうです(Wikipediaより)。

(初稿)2016.11.18

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【見学】山川醸造(岐阜・岐阜市)- 長良川の伏流水と杉桶で仕込む東海三県の地醤油「たまり醤油」の蔵元

たまり醤油の蔵元、山川醸造を見学しました。これまでに見学した白醤油、濃口醤油とは原料や造り方が異なり、むしろ八丁味噌と似ている点が興味深かったです。最初にポイントをクイズ形式で整理して頂いたので、他の醤油との違いがよくわかりました。小学生の見学者が楽しみながら学んでいる姿が印象的でした。

日時:2016年9月3日(土) 13:30~14:10頃
場所:山川醸造(株)(岐阜県岐阜市長良葵町1-9)
内容:見学(ガイド付き)、試食
料金:無料

★アクセス
160903 (45)名鉄岐阜駅
山川醸造はJR岐阜駅、名鉄岐阜駅の5kmほど北側(やや東寄り)にあります。この日は名鉄岐阜駅から岐阜バスを利用しました。
160903 (48)岐阜バス4番乗り場
名鉄岐阜駅バス停の4番乗り場。ここから、岐阜高富線に乗車します(名鉄岐阜駅12:46→長良北町13:02、運賃210円)。 
160903 (108)長良川と岐阜城(車窓)
バスの車窓。山の上には小さく岐阜城が写っています。橋の下を流れるのは鵜飼いで有名な長良川。木曽川、揖斐川とあわせて木曽三川に数えられています。
160903 (53)長良北町停留所
160903 (54)山川醸造たまり醤油_たまりや裏側
最寄りの長良北町[ながらきたまち]停留所。目的地までは約200mです。

★見学受付
160903 (56)山川醸造たまり醤油_外観(たまりや)
売店「たまりや」で見学の受付を行います。この日の見学者は計5名。案内をしてくださったのは、なんと山川社長でした。

★醤油のクイズ
160903 (55)山川醸造たまり醤油_外観(下見板張り)
160903 (63)山川醸造たまり醤油_一号蔵 - コピー
はじめに木桶が並ぶ一号蔵内のベンチに座り、4問の醤油クイズが出されました。

【Q1】醤油は何種類?
【A1】5種類(濃口、淡口[うすくち]、たまり、白[しろ]、再仕込み)
”濃口”がいわゆるふつうの醤油で、全体の約85%を占めます。最大手はキッコーマン(千葉県野田市)で、ヤマサ醤油、ヒゲタ醤油(ともに千葉県銚子市)などの大手メーカーも同じ千葉県にあります。”淡口”は主に関西で使われ、最大手はヒガシマル醤油(兵庫県たつの市)。”たまり”は東海三県の地醤油ですが、さしみ用と答える人が多いそうです。”白”は愛知県碧南市の(小麦主体でつくられる)うすい色の醤油。”再仕込み”は山口県柳井市で造られる(麹を醤油で発酵させる)ぜいたくな造りの醤油です。

【Q2】醤油の香りは何種類(三択:20/150/300)?
【A2】300種以上
バラ、ヒヤシンス、バナナ、パイン、リンゴ、バニラなどの香りがありますが、機械で調べないとわからない程度のものが多いそうです。
日本酒の吟醸香(リンゴ=カプロン酸エチル、バナナ=酢酸イソアミル)やワインのテイスティング用語(バニラ=木樽のバニリン由来)に通じるものがあり、興味深かったです。

【Q3】醤油の原料は?
【A3】大豆、小麦、塩(、淡口はさらに米)。大豆は醤油の原料として必ず使われます(JAS法)。濃口には大豆と小麦をおよそ半々ずつ使いますが、たまりは殆どが大豆、逆に白は殆どが小麦を原料として造られます。
小学生が「麹!」と答えましたが(漫画『もやしもん』の影響?)、最終製品に残っていないため原材料にはならないそうです。水も当然使われていますが、原材料に表記されるのはミネラルウォーターだけとのことでした。

【Q4】醤油は何色?
【A4】赤色
社長が持ってきた醤油のサンプルをペンライトでかざして見ると、なんと赤色でした。小学生も「え?赤?」と驚いていました。
見慣れている醤油が黒っぽいのは「酸化」による褐変化で、色の濃いたまり醤油でも、搾りたては赤い色をしているそうです。

★たまり醤油のつくり方
<原料処理、製麹>
蒸した大豆に少量の小麦をまぜて種麹をつけ、約3日かけて”醤油麹”をつくります。大豆は主にうま味、小麦は香りの元になるそうです。

<仕込み>
大きな木桶に醤油麹と塩と水を入れて、足で踏み固めて諸味[もろみ]を仕込みます。麹1に対する水の割合は、濃口で約1.5ですが、たまりは0.5~1.0と少なめ。濃口の諸味は櫂で撹拌できますが、たまりの諸味は水分が少なくて固いため、かき混ぜることができません。そこで、諸味を均等に発酵させるために以下のような工夫が行われています。

160903 (72)山川醸造たまり醤油_木桶の内部
あらかじめ煙突のような筒を桶内に入れてから諸味を仕込んでいきます。
160903 (71)山川醸造たまり醤油_木桶内部(管の穴)
筒の下部には2,3㎝くらいの穴がたくさん開いています。筒の内部には、この穴から浸みこんできた諸味のエキスが徐々に溜まっていくので、それを大きな柄杓ですくって諸味の上からかけてあげます(汲みかけ)。このような作業を週に1,2回ほど、2年間繰り返して行うそうです。

160903 (66)山川醸造たまり醤油_板を再利用した椅子 - コピー
クイズの時に座っていたベンチは、木桶の上に渡して通路にしていた板を再利用したものでした。

160903 (80)山川醸造たまり醤油_一号蔵の木桶
木桶の寿命は約200年と言われており、蔵内には江戸時代から昭和初期頃につくられたものが約100本もあるそうです。杉製の板を竹のタガで締め付けた桶を作れる会社は(八丁味噌蔵でも指摘があったように)国内に殆ど残っていないそうです。
160903 (75)山川醸造たまり醤油_木桶の内板
桶内の表面の白っぽく見える物質は大豆の成分。梅雨時などで湿度が上がってくると、醤油が浸み出してきて桶内が茶色くなるそうです。内部が見れるようにくり抜かれた桶は強度が低下しているので、「危険!手を触れないで」の注意書きが貼られていました。

<圧搾>
160903 (73)山川醸造たまり醤油_ - コピー木桶株の蛇口とバケツ
まず、木桶の諸味から(上に積まれた石の重みで)自然に流れ出てくる醤油をおよそ半年かけて集めます。桶内に残った諸味はスコップで掘り出し、次に圧搾台で搾ります。

160903 (97)山川醸造たまり醤油_圧搾場_布 - コピー
諸味をほぐして圧搾用の布の上にちりばめる機械。
160903 (87)山川醸造たまり醤油_もろみをスコップで投入するところ
スコップで機械の上部に諸味を投入し、、、
160903 (88)山川醸造たまり醤油_圧搾場(作業中)
160903 (102)山川醸造たまり醤油_諸味を入れた袋 - コピー
下の台に広げた布の上に落ちてくる諸味をほぐして、布を長方形に畳んでいきます。
160903 (92)山川醸造たまり醤油_醤油もろみ
醤油の諸味。味噌のように見えますが、塩分濃度が低いため、これで味噌汁を作っても美味しくないそうです。味噌と醤油は塩分濃度が大きく異なるため(味噌は約10%、醤油は約15%)、両方を造っている醸造蔵は全国でも稀なのだそうです。

160903 (100)山川醸造たまり醤油_圧搾機
諸味の入った長方形の布を圧搾台に積み重ね、上からプレスをして残りの醤油を搾ります。強く押すと諸味がはみ出るので、およそ2日かけてゆっくりプレスしていきます。
160903 (95)山川醸造たまり醤油_圧搾機(拡大)
たまり醤油は出来上がるまでに約2年、さらに桶1本分から醤油を搾り取るまでにもう1年(計3年)もかかります。約6カ月でできる大手の濃口醤油と比べて、4-6倍もの時間がかかっています。

160903 (104)山川醸造たまり醤油_しぼりたてのたまり醤油
搾りたてのたまり醤油を試飲させて頂きました。黒くてドロッとしているのは水分が少なく、かつ、熟成期間が長いため。しかし、見た目から想像するほど塩辛さは感じず、複雑でまろやかな味わいでした。

160903 (101)山川醸造たまり醤油_しょうゆ粕
しょうゆ粕は機械で細かく砕いて、牛の飼料や金魚のエサとして再利用されています。

★丸大豆と脱脂加工大豆
160903 (105)山川醸造たまり醤油_丸大豆と脱脂大豆
丸大豆(左)と脱脂加工大豆(右)。大豆の油分は醤油造りには不要ですが、サラダ油メーカーにとっては逆に油分だけが必要となります。そこで、大豆から油分を搾った後の脱脂加工大豆が、醤油の原料として広く使われています。業務用シェアの大きい同社では主に脱脂加工大豆が使われていますが、手間をかけてじっくり熟成させることで十分に美味しい醤油ができるそうです。丸大豆醤油は全体の2割、うち国産丸大豆を使用したものは2%程度しか造られていないそうです。
同社では伝統製法を残すために、岐阜県産大豆を木桶で仕込んだ商品を1年に1、2桶分造り続けているそうです。

★味噌
160903 (83)山川醸造たまり醤油_みそ全国マップ
山川醸造では(少量ですが)味噌も造っているそうです。醤油と同様に、味噌の種類にも地域性があって興味深かったです(一般的な米味噌に対し、東海地方の豆味噌、九州地方の麦みそなど)。

★試食
160903 (107)山川醸造たまり醤油_試食(素麺)
最後に試食をさせて頂きました。たまり醤油がベースのめんつゆとごま素麺。
160903 (106)山川醸造たまり醤油_試食(田楽、トースト)
こんにゃくの味噌田楽と「はちみつ醤油バター」を塗ったトースト。同社では「アイスクリームにかける醤油」などのスイーツ商品も数多く手掛けています。

★たまりや(売店)
160903 (203)みのびとパンフレット
見学の後は、売店で本醸造のたまり醤油「みのび」(税込583円/300ml)を購入しました。
160903 (200)みのび(原材料など)
原材料は大豆、小麦、塩、アルコール。杉桶で2年以上熟成し、火入れをしていない生醤油です。複雑で熟成感のある濃厚な香味の醤油でした。

★感想など
醤油を勉強する前は「すごく濃いのがたまり醤油?」という程度の漠然とした(かつ誤った)イメージしか持っていませんでしたが、ふつうの濃口醤油とたまり醤油は全く別物であることを強く感じました。前者は大豆と小麦を半々ずつ使うのに対して後者はほぼ大豆だけで造られ、さらに杉桶で長期間熟成させるため、【大豆由来の熟成した香味】が強く個性としてあらわれていました。たまり醤油をそのまま使うとクセが強すぎることもありますが、(濃厚な甘みを持つスイーツを含む)濃い味付けの料理に隠し味として使うと奥行きのある深い味わいになると感じられました。

”醤油”と一口にいっても様々なバリエーションがあり、一括りにできないことを改めて感じました。

(初稿)2017.1.3

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【見学】アサヒビール名古屋工場(愛知・守山) - ミニ缶をつくるアサヒ唯一の工場。アーリータイムズ3種の比較試飲と9種のボイラー・メーカー。

知多半島のミツカン・ミュージアムに続き、アサヒビール名古屋工場を見学しました。思いがけず「アーリータイムズ」(バーボン・ウィスキー。以下、バーボン)の試飲もできたため、様々な「ボイラー・メーカー」(ビールとバーボンのカクテル)を試すことができました。

日時:2016年9月2日(金) 15:00~16:15(75分)
場所:アサヒビール名古屋工場(愛知県名古屋市守山区西川原町318)
内容:見学(ガイド付き)、試飲
料金:無料

★アクセス
160902 (157)新守山駅
最寄駅はJR中央本線の新守山駅。駅から工場までは約1.0km、徒歩約15分です。名古屋駅から新守山駅までは普通列車で約17分(5駅、240円)です。

★工場入口
160902 (160)アサヒビール名古屋工場_外観 - コピー
写真の看板の左脇から敷地内に入り、右手に進むと守衛所があります。
160902 (162)アサヒビール名古屋工場_守衛所
守衛所で氏名と見学に来た旨を伝えると、ゲストハウスの場所を教えてくれます。
160902 (161)アサヒビール名古屋工場_守衛所からゲストハウスへ1
守衛所の右側の通路をまっすぐ進み、右折します。
160902 (163)アサヒビール名古屋工場守衛所からゲストハウスへ2 - コピー
この写真の右奥の角を左折すると正面にゲストハウスが見えます。
160902 (165)アサヒビール名古屋工場_ゲストハウス
赤茶色の建物がゲストハウスです。
160902 (164)アサヒビール名古屋工場_屋外タンク - コピー
ゲストハウスに向かう途中に、迫力ある大きな屋外発酵・熟成タンク(以下、屋外タンク)が立ち並んでいるようすが楽しめます。

★見学受付(ゲストハウス)
160902 (166)アサヒビール名古屋工場_ゲストハウス入口
ゲストハウス入口の案内板。
160902 (170)アサヒビール名古屋工場_ゲストハウスのカウンター
カウンターで予約をしている旨を伝え、受付表に氏名などを記入します。
160902 (169)アサヒビール名古屋工場_パンフレットなど - コピー
受付を終えると、パンフレットと試飲会場での座席番号札が配られます。小さい札は大きな荷物を預かってもらった場合の番号札です。
160902 (168)アサヒビール名古屋工場_ゲストハウス(待合室)
ゲストハウスの待合室。この回の見学者は11名でした。

★工場見学(ルート)
160902 (202)アサヒビール名古屋工場_工場案内図 - コピー
工場見学は、赤い矢印のルートにそって進められました。残念ながら、製造ライン(醸造棟、装製棟)の写真撮影は禁止でした。

★工場見学(屋外タンクと八角堂)
160902 (177)アサヒビール名古屋工場_屋外タンクと通路
女性ガイドさんの案内で、屋外タンクのすぐそばの小道を歩いて工場に向かいます。
160902 (176)アサヒビール名古屋工場_屋外タンク
屋外タンク(直径約7m、高さ約20m)の容量は350mlの缶ビールでなんと約60万本分!名古屋工場では、1日に屋外タンク約3本分のビールが出荷されるそうです。出荷先は中部8県(東海3県、北陸3県、長野県、静岡県)。屋外タンクを間近に見ることができるのは、アサヒビールの8工場のうち名古屋工場だけだそうです。
160902 (175)アサヒビール名古屋工場_八角堂
醸造棟の入口にある”八角堂”に到着。
160902 (181)アサヒビール名古屋工場_八角堂(道内) - コピー
八角堂の1階のホールの壁には、中世ヨーロッパのビールづくりの様子が描かれています。陶芸家の鈴木青々[すずき せいせい]氏の作品で、約1,000枚もの陶板が使われているそうです。

★工場見学(製造ライン)【撮影禁止】
製造ラインでは、見学通路からガラス窓越しに機器などを見学します。名古屋工場では、アサヒビールが現在製造している約40銘柄のうち8銘柄が製造されています。

<ビールの原料>
・ビールの主原料は麦芽、ホップ、水。スーパードライには他に副原料(米、コーン、スターチ)が使われています。恒例の麦芽の試食とホップに触れるコーナーがありました。
・仕込水は”木曽川水系”の水を使用していますが、ビールの味わいを均一に保つため、事前に浄化し、ミネラル分の調整などを行っているそうです。

<仕込み>
・仕込室では、麦芽などのデンプンを糖に変え(糖化)、ホップを加えて煮沸をして"麦汁"を造る工程を行います。麦汁は完熟メロンやマンゴーと同じくらいの糖度(甘さ)になるそうです。
・仕込みに使われるのは、仕込釜、仕込槽、麦汁濾過槽、煮沸釜、ワールプールの5種。
・見学通路から見て奥の部屋が発泡酒用、手前がビール用のライン。
・仕込みの状況は、コントロール室で社員が24時間・3交代制で厳しくチェック。

<発酵・熟成>
・映像でビール酵母が麦汁を発酵させていくようすを見学します。
・約1週間で若ビールと呼ばれる状態になり、その後屋外タンクで数十日かけて熟成されます。

<ろ過>
・熟成させたビールはろ過器を通してビール酵母を取り除きます。
・ろ過器の中には500本ものフィルターが入っているそうです。

<パッケージング>
・できあがったビールは、缶・瓶・樽などの容器に充てんされます。円盤型の缶詰機は、1分間に約1,500本分ものビールを充てんできるそうです(1秒間でおよそビール1ケース=24本分)。

<ミニ缶の製造ライン>
・通常の缶詰機がある製造ラインに続いて、135mlのミニ缶専用のラインも見学できました。ミニ缶の缶詰機は、通常よりも一回り小さなサイズでした。135mlのミニ缶と、2ℓと3ℓのミニ樽を造っているのは、アサヒビール8工場のうち名古屋工場だけだそうです。

<主役は機械ではない!?>
・すべて機械化・自動化されているように見えるラインでも、1時間に1度は機械を止めて、品質チェックやメンテナンスなどの作業を人間が行っているそうです。

<品質管理室・官能検査>
・ビールの状態は選抜試験に合格した”パネリスト”によって検査されます(官能検査)。中には”スーパードライの製造日がわかる”ほどの味覚の持ち主もいるそうです。検査は1日1回、五感がもっとも鋭くなる16時から1時間かけて行われます。検査対象は、自社の完成品だけでなく、他工場のビールや仕掛品にも及び、1回につき多くて20~40種、最大で1ℓのビールを検査します。ワインや日本酒と違い、ビールは”のどごし”のチェックを行うため、お酒は吐き出さずに飲み込みます。よく羨ましいと言われるそうですが、車や自転車通勤ができないなどの制約があり、パネリストは大変なお仕事なのだそうです(体調管理にも相当気を遣う必要があると思いました)。

<ノンフロン設備>
・屋外の大型空調機(温水冷水を発生させて工場内の冷暖房を行う装置)をガラス窓越しに見学しました。アサヒビール名古屋工場は、国内の産業界で最初に完全ノンフロン化を実現したそうです。

<リサイクルへの取り組み>
・アサヒビールの工場ではリサイクル率100%を達成しています。廃棄物の約8割を占める”麦の殻”は家畜のえさに、役目を終えた酵母菌はエビオス錠などに、そしてペットボトルは従業員の制服などにリサイクルされています。

★工場見学(屋外からゲストハウスへ)
160902 (182)アサヒビール名古屋工場_2種の屋外タンク
屋外に出ると再び撮影ができるようになります。通路からは2種類の屋外タンクが見えました。小さい方は”アサヒタンク”と呼ばれる旧式のもので、発酵のみ(大きいタンクは発酵・熟成)を行うそうです。

★試飲
160902 (187)アサヒビール名古屋工場_ゲストハウス - コピー
工場見学の後はゲストハウスに戻り、試飲をさせて頂きました。
160902 (188)アサヒビール名古屋工場_試飲会場
試飲会場。適正飲酒の観点から、1人につき3杯までとなります。
160902 (200)アサヒビール名古屋工場_試飲会場のカウンター
カウンターで1杯目を受け取って、あらかじめ渡されている番号の席につきます。
160902 (193)アサヒビール名古屋工場_試飲(スーパードライ)
1杯目は全員が「アサヒスーパードライ」。暑い日には特にスッキリとしたキレが爽やかに感じられました。
160902 (197)アサヒビール名古屋工場_試飲(アサヒドライプレミアム豊醸)
2杯目は「アサヒスーパードライプレミアム豊醸」。
160902 (198)アサヒビール名古屋工場_試飲(アサヒスーパードライ・ドライブラック)
3杯目は「アサヒスーパードライ・ドライブラック」。

★試飲(アーリータイムズ)
160902 (194)アサヒビール名古屋工場_アーリータイムズのボトル
この日は特別に、アサヒビールが取り扱うバーボン「アーリータイムズ」の試飲もできました。

(参考)バーボン:
・1789年(合衆国発足の年)、エライジャ・クレイグ牧師によって作られ始めたのが最初といわれています。
・バーボンという名前は、アメリカ独立戦争の際にアメリカ側に味方したフランスの「ブルボン朝」に由来します。トーマス・ジェファーソン(後の合衆国大統領)が感謝の意をこめてケンタッキー州の郡のひとつを「バーボン郡」と名づけ、それが同地方で生産されるウィスキーの名前となり定着したそうです。
・主原料はトウモロコシ(51%以上80%未満。80%以上のトウモロコシを含むものは「コーン・ウィスキー」と呼ばれて区別される)、ライ麦、小麦、大麦など。これらを糖化・アルコール発酵させた後に、連続式蒸溜機でアルコール度数が80%(160プルーフ)以下となるように蒸溜します。その後アルコール度数62.5%(125プルーフ)以下に加水調整し、内側を焼き焦がしたホワイトオーク製の”新樽”に詰めて、2年以上貯蔵・熟成します。出荷の際に加水を行う場合、アルコール度数は40%(80プルーフ)以上でなければいけません。
・熟成の際に樽の内側を焦がす理由は定かではなく、”クレイグ牧師が樽を置いていた鶏小屋が火事に遭い偶然にできた”、”最初から内側が焦げていた樽を偶然使用していた”、”魚が詰めてあった樽の生臭さを消すために仕方なく内側を焦がした”など様々な説あります。

160902 (196)アサヒビール名古屋工場_アーリータイムズ3種
左から、
①「アーリータイムズ イエローラベル」Alc.40%
②「アーリータイムズ ブラウンラベル」Alc.40%
③「アーリータイムズ ブラインドアーチャー」Alc.33%

②は日本市場向けに1996年につくられたもので、原料のとうもろこしの比率がイエローラベルの71%に対して79%と高め(モルトの風味が相対的に低くなる?)。さらに、チャコールフィルターを2重にかけて滑らかな味わいに仕上げられています。
③はアーリータイムズのウィスキーをベースにしたスピリッツに、青リンゴのフレーバーを添加したフレーバード・ウィスキー(税法上はリキュールに分類)です。ブラインドアーチャー(Blind Archer)とは”目隠しをした弓矢使い”という意味で、弓の名手とされる伝説の英雄ウィリアム・テルが、目隠しをして息子の頭上のリンゴを射抜いたという話に由来しています。日本での発売は2015年3月3日です。

<アーリータイムズについて>
・1860年ケンタッキー州のバーボン郡、アーリータイムズ村で生まれたウィスキー。
・アメリカの禁酒法時代(1920~1933年)に、「医療用ウィスキー」の表示を行うことで法律の適用が免除されたことで広く知られるように。そこに目をつけたブラウン=フォーマン社によって買収され、それ以降はケンタッキー州西部の都市ルイビル(Louisville)のダウンタウン蒸溜製造所で生産されています。
・現在、アメリカ国内で販売されているアーリータイムズは、”再利用の焦がしオーク樽”で熟成したウィスキーが20%を占めるため、バーボン・ウィスキーではなく、ラベルには「ケンタッキー・ウィスキー」と表示されています。逆に輸出用のアーリータイムズは、”焦がしオークの新樽”で完熟されたアルコール度数(Abv.)40%の本物のバーボンです。日本ではサントリー酒類が扱っていましたが、ブラウン=フォーマン社がアサヒビールと国内販売契約を結んだのに伴い、2013年から同社が輸入販売を行っています。

<ボイラー・メーカー>
160902 (199)アサヒビール名古屋工場_ボイラーメーカー
バーボンとビールを使ったカクテル「ボイラー・メーカー」をいろんなパターンで試すことができました。ビールとバーボンのタイプによって、全く香味の異なるカクテルができるので、合わせる食事や気分によってバリエーションを選べる楽しみを再認識しました。個人的には、甘い樽香のきいたブラウンラベルのバーボンに、コクのある豊醸やドライブラックを合わせたものが好みでした。また、ブラインドアーチャーとドライブラックの組み合わせもツボでした。

★和食麺処サガミ(愛知県名古屋市守山区大永寺町229)
160902 (205)サガミ(外観)
小腹(?)がすいたのでガイドさんにおすすめのお店を聞いた所、「サガミ 守山大永寺店」を紹介してくれました。チェーン店ですが、名古屋らしいメニュー(いわゆる、”名古屋めし”)も揃っているとのこと。工場にはお店までの地図も用意されていました。工場からお店までは約600mです。
160902 (210)サガミ(みそカツ丼) - コピー
名古屋めしといえば、やっぱりみそかつ丼(税込1,015円)。
160902 (207)サガミ(大吟醸)
昼間に訪れたミツカンと同系の中埜酒造[なかの-]の日本酒もありました。サガミ用につくられた「國盛」の大吟醸(税込529円)。

★感想など
工場内の撮影ができないのは残念でしたが、ミニ缶の製造ラインが見学できたことや、アーリータイムズの比較試飲ができたことは大収穫でした。また、バーボンについて調べ直す良い機会にもなりました。
ガイドさんは工場内も含めて、ほとんどの時間を”後ろ歩き(参加者に背を向けない体勢)”で説明をしてくれました。特に訓練をするわけではなく、つまずいたこともないそうですが、一度だけ”生きたセミ”を踏んでしまったことがあるそうです(それはびっくりするだろうなぁ...)。説明もとてもわかりやすく、今日もガイドさんの”プロ意識”を感じ、良い刺激になりました。

(初稿)2016.9.9

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テーマ : ビール工場見学
ジャンル : グルメ

【見学】MIZKAN MUSEUM(愛知・半田)- ミツカン・ミュージアム(MIM。旧・博物館「酢の里」) - 江戸の握り寿司ブームに火をつけた粕酢(赤酢)

日本で唯一の酢の総合博物館、ミツカン・ミュージアム(略称MIM。旧・博物館「酢の里」)を見学しました。酢は酒(アルコール)を酢酸発酵して造られるため、酒造りの工程や歴史などとの関連が深く、とても興味深かったです。

日時:2016年9月2日(金) 12:00~13:30
場所:MIZKAN MUSEUM(愛知県半田市中村町2-6)
料金:300円
内容:ガイド付きツアー(70分)+光の庭体験エリア(20分)
交通:18きっぷ(JR線。1日あたり2,370円)、名古屋鉄道(600円)

★アクセス
160902 (2)大府駅_JR武豊線
最寄駅はJR武豊線[たけとよせん]の半田駅。東京都内から18きっぷで普通列車を乗り継いで向かいました(東京駅5:20→7:27沼津駅7:31→8:29静岡駅8:30→9:41浜松駅9:43→10:57大府駅[おおぶ-]11:21→11:44半田駅。通常運賃6,260円)。写真は大府駅に停車中のJR武豊線。
160902 (7)JR半田駅_こ線橋
160902 (5)JR半田駅の跨線橋
明治43年11月に完成したJR半田駅の跨線橋(こせんきょう。橋の一種で、鉄道線路をまたぐもの)。JRでは最古の橋だそうです。
160902 (13)ミツカン本社ビル
JR半田駅から目的地までは約350m、徒歩約5分です。手前には平成2年に建てられたミツカン本社ビルがあります。
160902 (144)MiM_案内板
ミツカン・ミュージアム(MIM)の入口は、大通りの裏手になります。
160902 (142)MiM_入口
MiMの入口。

★受付
160902 (22)MiM_入館証
受付で事前予約をしている旨を伝え、料金(300円)を支払うと、入館証とパンフレットが渡されます。
160902 (21)MiM_ロッカー
無料のコインロッカー。お寿司のイラストが描かれていました。
160902 (25)MiM_待合室
待合室。

★ガイド付きツアー
ツアーでは、館内の5つのゾーン(大地の蔵、風の回廊、時の蔵、水のシアター、光の庭)を案内してくれます。所要時間は90分。この日のガイドは女性のKさんでした。
160902 (26)MiM_案内DVD
最初に、ミツカンの紹介や館内での注意事項などについて説明がありました。
ミツカンの創業は1804年(文化元年)。酒造りを行っていた初代・中埜[なかの]又左衛門が本家から分家独立して、酒粕を原料とした酢(粕酢)造りを始めました。MIMは1986年に「博物館・酢の里」として開館し、2015年11月にリニューアル・オープンして現在の施設になりました。


【ゾーン1】大地の蔵~江戸時代と現在のお酢のつくり方

<昔の酢造り>
室内には昔の酢造りの様子が再現されていました。

初代・中埜又左衛門は、酒造りで余った酒粕を何とか活用できないかと考えて”粕酢”造りを始めました。酒造家が酢を造るのは大変なリスクでしたが(酒に酢酸菌が入るとすべて酢になってしまうため)、大胆なチャレンジに見事成功し、粕酢は江戸で評判となりました。当時流行していた「早ずし」(現在の握りずしの原型)には、甘みと旨みが強い粕酢が良く合い、米酢よりも安価であったため、江戸の庶民に寿司が広まるきっかけのひとつにもなりました。江戸に運ばれる酒(上方の灘五郷の酒など)が過当競争に陥っていたことも、酢造りへの転換の背景にあったそうです。

160902 (30)MiM_新粕と三年粕
昔の粕酢の原料には、3年寝かせた酒粕が使われていました(写真の左が新粕、右が3年粕)。現・愛知県岡崎市で造られる八丁味噌も、約3年間(二夏二冬)熟成させており、三河地方では発酵ものを3年間熟成させることが一般的だったようです。
160902 (28)MiM_粕熟成
大きな桶で3年間熟成させることで、酒粕はあめ色に変わり、甘みと旨みが増します。熟成した酒粕は別の桶に移され、水を加えてかき混ぜると、約1週間でもろみができあがります。もろみをつくる工程を「ひやかし」といいます。

160902 (47)MiM_圧搾(ふな場)
もろみを酢袋(茶色い袋)に入れて木の箱の中に重ね、テコの原理を使った木製の大きな装置(槽=ふね)で搾ります。搾り出された液体(日本酒=酒)が酢酛[すもと]です。

160902 (35)MiM_⑤仕込
酢酛の半分を大きな鉄釜で温め(沸かし)、残りの半分と合わせて2階にある仕込み桶に移します(温めた酢酛を「沸かし汁」、もとの温めない酢酛を「澄まし汁」といいます)。仕込み桶には、種酢(前回の酢造りでできた酢)が半分残されており、種酢の中の酢酸菌の働きによって、仕込み桶の中の酢酸発酵が進みます。酢酛は約1カ月で酢に変わります。その後、味をまろやかにするために2-3カ月かけて熟成させます。

160902 (43)MiM_ろ過
仕込み、熟成を終えた酢は、「灰ごし桶」でろ過され、不純物が取り除かれます。
160902 (45)MiM_ろ過(灰ごし)
「灰ごし桶」の中は、砂の層の上に藁灰[わらばい]が塗られています。この上から酢を通してろ過を行います。

160902 (52)MiM_木槌 - コピー
ろ過された酢は、樽に入れられます(詰め口)。樽の中の酢の量は目視で確認できないため、職人が樽の天面を木槌でたたき、その音を聞くことで中の量を推測します。
160902 (34)MiM_詰め口、荷造り
樽の満量まで酢を注ぎ足し、樽を縄で縛って出荷となります。江戸時代の粕酢造りは、9つの工程を約3年半もかけて行われていました。

<昔の酢造り・まとめ>
(1)粕熟成:酒粕(酢の原料)を大きな桶に入れ、長期間寝かせて熟成させる。熟成することで、酒粕の甘みと旨みが増す。
(2)もろみ造り(ひやかし):熟成した酒粕を桶に移し、水を加えてかき混ぜると、約1週間でもろみができる。
(3)圧搾(ふな場):もろみを酢袋に入れ、槽で圧搾して「酢酛」を搾り出す。
(4)沸かし:できた酢酛の半分を大きな鉄釜で温め、「わかし汁」をつくる。
(5)仕込み:わかし汁と残り半分の酢酛を、2階にある仕込み桶に移す。仕込み桶には、前回発酵した酢が「種酢」として半分残っており、種酢の中の酢酸菌が働くことで、約1カ月かけて酢酛が酢に変わる。
(6)貯蔵:できあがった酢の半分を1階の貯蔵桶に移し、味をまろやかにするために、2-3カ月ほど寝かせて熟成させる。仕込み桶に残した酢は、種酢として次の仕込みに使われる。
(7)ろ過(灰ごし):細かい砂の層の上に藁灰[わらばい]を塗りつけた「灰ごし桶」に、熟成された酢を通して不純物を取り除く。
(8)詰め口:ろ過された酢を、柄杓[ひしゃく]と樽詰漏斗を使って樽に入れる。酢の量は、樽の天面を木槌でたたき、その音を聞くことで確認する。
(9)荷造り:出荷前に樽の満量まで酢を注ぎ足し、樽を縄で縛る。

<現代の酢造り>
160902 (58)MiM_大地の蔵中央の桶の中
続いて、中央部の桶の周りに集まるように指示されました。
160902 (53)MiM_1階の粕酢づくり設備
女性ガイドさんの掛け声で、桶の底がパッと透明になりました。MIMの1階では、今も粕酢造りが(少量ですが)行われています。ガラス越しに、圧搾・ろ過機、沸かしタンク、もろみ作りタンク、引き卸しタンクを見学できました。ろ過機は、酢を横から通してフィルターで不純物を取り除きます。

160902 (62)MiM_静置醗酵室
続いて、静置発酵室へ。静置発酵(表面発酵)とは、空気に触れている”酢酛(酒)の表面だけ”が酢酸発酵することをいいます。
160902 (63)MiM_酢酸菌の菌膜
酢酸菌は表面に膜(菌膜[きんまく])をはりながら、約1週間で酢酛を酢に変えます。空気と酒が大好きな酢酸菌は、菌膜の下の酒を食べては酢に変えていきます。発酵槽(タンク)に空気を送り込み、よくかき混ぜながら効率的に酢を生産することを、「深部発酵[しんぶはっこう]」といいます。
160902 (66)MiM_三ツ判山吹
創業時の粕酢(赤酢)を再現した「三ツ判山吹」。「山吹」という名は同社のブランド第1号で、この酢で酢飯をつくると御飯が山吹色になることから名付けられました。「三ツ判」の称号は、特に上質なものに与えられたそうです。3年粕を使うこの酢は、濃いあめ色をしています。甘みと旨みが強いため、塩や砂糖を控えめにしても美味しい酢飯がつくれるそうです。価格は900mlが税込1,080円、首都圏限定販売の500mlが税込756円です。製造量が非常に少ないため入手困難と聞き、今後の講座用に1本購入して帰りました。
160902 (140)MiM_三年熟成・千夜
三ツ判山吹をさらに3年間熟成した「千夜」。文字通り、千夜熟成させることから名付けられた名前です。まろやかでコクの深い赤酢(純酒粕酢)で、価格は税込2,920円(333ml)。MIMで年間千本程度を数回に分けて販売していますが、今年度分はすでに完売しているそうです。インターネットや他店舗での販売は行っていないそうです。

石川県・農口酒造の渡辺杜氏が「衝撃を受けた」と語られていた酢は、この「三ツ判山吹」か「千夜」のことだろうか...
次回お会いする機会があれば、ぜひ、質問してみたいと思います。

<桶・樽をつくる道具>
160902 (68)MiM_桶・樽をつくる道具
続いて、木の樽や桶をつくる道具の展示コーナーへ。
160902 (70)MiM_正直かんな
写真は「正直かんなの刃」。正直かんなは、板同士を合わせる面を削る時に使われます。木曽材木工芸品・さわら桶を作る職人の伊藤今朝雄さんによると、「『正直』というくらいで、正直にちゃんと型どおりにやらないと、(樽や桶のように円形に仕上げるための木材を)丸くした時にどちらかがすいてしまう」そうです。愛知県岡崎市の合資会社八丁味噌(カクキュー)の資料館に展示されていた、大きな正直かんなを思い出しました。

<江戸時代の水道>
160902 (72)MiM_江戸時代の水道
酢や酒造りには良質な水が必要です。又左衛門は、文政期と嘉永期の2度にわたり、私設の水道を設ける工事を行いました。特に後者(1850年~)は1,350mにもおよぶ大掛かりなものだったそうです。船大工(水漏れ防止の技術を持つ)や樽屋、黒鍬(くろくわ。土木工事を担う人)らが知多半島一帯から集められ、大きな雇用をも生み出しました。このような公共事業のような工事を(藩ではなく)私企業が行うことは極めて珍しいことだったそうです。館内には、本社ビル建設時に発掘された水道管も展示されていました。

<酢の蔵人の職制>
親方(蔵の長)を筆頭とする酢造りの職制。杜氏を筆頭とする日本酒造りの職制との違いが興味深かったです。
160902 (76)MiM_蔵の職制
酢造りの場合、親方の下に、「人足回し[にんそくまわし]」→「ホチ(小僧)」と、「二階方[にかいかた]」→「若い衆」という2系統があります。

・人足回し:親方の補佐役。蔵の生産計画を立てたり労務管理を行う。
・ホチ(小僧):蔵に入ったばかりの少年。早朝から仕事場の掃き掃除や炊事の手伝いなどの雑用を行う。
・二階方:仕込作業の責任者。名称は、仕事の持ち場が2階であることに由来。
・若い衆:蔵に入って数年経つ者。酢づくりの手伝いや荷造り作業などの力仕事を行う。

160902 (77)MiM_仕事着
職人の仕事着。

<体感コーナー>
160902 (94)MiM_体感コーナー
このコーナーでは、見学者が興味のあるところを自由に見て回ります。

160902 (98)MiM_いろいろなお酢
いろいろなお酢の展示コーナー(粕酢、穀物酢、純米酢、純玄米黒酢、純りんご酢、白ワインビネガー)。
160902 (97)MiM_香りのひきだし
パネルの下の「香りのひきだし」を開けると、それぞれのお酢の香りを確認できます。

160902 (88)MiM_いない桶
酢を運ぶ「いない桶」と「いない棒」。いない桶2つ(約15kg)で、一度に40-50ℓの酢を運べたそうです。他にも、酒粕の重さを量る「竿ばかり」(片方に分銅、もう片方に酒粕をのせて使用する)や、樽の天面を木槌でたたいて中身の酢の量をはかるコーナーがありました。

160902 (82)MiM_酢酸菌の拡大写真
酢酸菌の拡大写真。酢酸菌にはいろんな種類あり、酢のタイプによって使い分けられています。季節によって変えることもあるそうです。昔の酢造りは(江戸時代後半の日本酒造りのように)冬場だけだったのか質問したところ、夏場の2-3カ月は造りを行っていなかったそうです(品温がすぐに上がってしまい、発酵しにくいため)。


【ゾーン2】風の回廊~半田の情景を懐かしい写真で
このゾーンには、明治から昭和初期の半田の様子が展示されています。
160902 (102)MiM_半田だし祭りの法被
長い直線廊下の両側には、半田山車祭りの法被[はっぴ]をモチーフにしたのれんが飾られています。31台の山車が登場するこのお祭りは、5年に一度(西暦の下一桁が2、もしくは7の年)、10月第1週の日曜日とその前日の土曜日に行われます。

160902 (96)MiM_煙突の風景
中庭越しの「煙突の風景」。現在は煙突を利用して、館内(時の蔵)の自然換気を行っているそうです。太陽熱を利用して煙突内で空気の上昇を促すことで、半田運河を通った冷たい風を1階の壁面の足元から引き込み、煙突から排気をします。

160902 (107)MiM_半田運河
江戸時代中頃に開かれた半田運河。ここから酢などが船積みされて、江戸や各地へ運ばれていました。昭和30年代前半まで、実際に使われていたそうです。

160902 (143)MiM_外壁
風の回廊の運河沿いの壁(写真は館外で撮影したもの)は、季節に応じて太陽熱をうまく活用できる二重構造(トロンベウォールシステム)。春や秋には自然換気を促し、夏は壁の中の暑い空気を外に逃がし、冬は壁の中で温められた空気を室内に送り込みます。内壁材には、かつて工場の外壁に使用されていた杉板が利用されています。

160902 (109)MiM_昔の工場(瓶詰ライン)
昭和30年代前半頃の半田工場の映像。瓶詰作業が機械化されていたのは、当時では珍しかったそうです。


【ゾーン3】時の蔵~弁才船に乗って半田から江戸までの航海へ!
160902 (111)MiM_時の蔵(暗闇)
階段で2階から1階へ降りて、時の蔵へ。扉が開き中へ入ると、室内は真っ暗でした。
160902 (113)MiM_弁才船_富士宮丸
照明がつくと、大きな弁才船[べざいせん]の姿があらわになりました。文政・天保期に半田運河から江戸まで酢を運んでいた「富士宮丸」を実寸で再現したもので、全長約20m、重さ約20トンもあります。この船は310石積ですが、弁才船の中では小型だったそうです。弁才船は日本で独自に発達した船で、1枚の大きな帆(に受ける風)を唯一の動力としていました。従って5-6名という小人数の乗組員で航行でき、小型船であったため積み荷の処理もスピーディーに行えたそうです。
160902 (129)MiM_弁才船(前方部)
弁才船の船体は板を継ぎ合わせて造られており、外国船のような(側面の板を打ち付けるための)骨格はありません。すべて(底や側面部)の板を船体に合うように曲げて、船首に突き出した水押(みおし)といわれる材に接合しています。
160902 (128)MiM_弁才船の甲板シアター
甲板[かんぱん]部分では、CGで江戸時代(文化元年=1804年)の疑似航海が楽しめます。半田から江戸までの所要日数は、順調であれば10日前後だったそうです。一往復には(船のメンテナンスなども含めて)約1カ月半から2カ月かかり、通常は年間で5往復くらいしていたそうです。

160902 (114)MiM_時の蔵
ミツカンの歴史についての展示コーナー。

160902 (121)MiM_商標改正報告 - コピー
1884年(明治17年)に商標条例が施行され、商標の専有には登録が必要になりました。同社が使っていたまるかん印(勘の字を〇で囲んだもの)は、名古屋の酢屋(笹田伝左衛門)が3日前に登録済みであったため、中埜家の家紋(三の字を〇で囲んだもの)をアレンジした三ツ環(後の、ミツカン)が考案されました。この商標は1887年(明治20年)5月に登録が認可されました。商標の3本線は、酢の3要素である、「味」、「利き」、「香り」を表しています。


【ゾーン4】水のシアター~食といのちのつながりを映像に乗せて
続いて、シアタールームで映像を観ました。ミツカンのコーポレート・スローガンは「やがて、いのちに変わるもの。」。美しい日本の四季の映像を通して、食といのちのつながりの大切さが伝わる内容でした。


【ゾーン5】光の庭~おすし、お鍋をテーマに食の魅力を体験!
160902 (135)MiM_光の庭
最後のゾーン、光の庭へ。

160902 (132)MiM_試飲
お酢ドリンクバーで、「ブルーベリー黒酢」と「まろやかりんご酢」の試飲をしました。この後は、自由にゾーン内を見学して解散となります。

160902 (137)MiM_味ぽん販売機
味ぽんの自動販売機(200円)。自分の写真を撮影してオリジナルの「マイ味ぽん」が作ることもできます。味ぽんは今年で発売から52年目になるそうです。

160902 (138)MiM_すし大陸
たくさんの寿司のレプリカが並ぶ「すし大陸」。すし職人の衣装を着て、紙粘土のシャリとシリコン製のネタで握りずしをつくる「なりきり寿司屋さん」のコーナーもあります。

160902 (141)MiM_おみやげ
おみやげのペーパークラフト。


★感想など
展示物やアトラクションが充実していて、大人から子供まで楽しめるミュージアムでした。パネルの説明書きやガイドさんの案内がとてもわかりやすく、酢の造り方や歴史などを効率よく学ぶことができました。次回はぜひ、近くにある中埜酒造の酒の文化館と併せて見学したいと思います。


★知多半田駅からアサヒビール名古屋工場
160902 (151)名鉄河和線特急_知多半田駅
MIMの見学を終え、名古屋鉄道の知多半田駅まで歩きました(約800m、徒歩10分)。ここから名鉄河和線[-こうわせん]とJR中央本線を乗り継いで、アサヒビール名古屋工場の最寄駅・新守山駅に向かいました(知多半田駅13:43→14:08金山駅14:13→14:24新守山駅。各600円、200円)。
160902 (153)名鉄河和線特急の車内
名鉄特急の車内。
160902 (152)名鉄河和線_切符
特急料金はかかりませんでした。


(初稿)2016.11.4

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Nomura Seiji

Author:Nomura Seiji
・お酒と薬膳理論の入門講座、飲酒教育
 nomuras.jimdo.com
・JSAワイン検定講師
・JSAワインエキスパート
・1971年生
・東京在住

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