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【見学】愛友酒造(茨城・潮来) - 岩手の南部杜氏が関東の水郷で醸す酒

茨城県・潮来市[いたこし]の愛友酒造を見学しました。潮来は霞ヶ浦と北浦に挟まれた”水郷のまち”で、江戸時代には利根川水運の港町として栄えていました。毎年6月には”あやめ祭り”が行われ、多くの観光客でにぎわいます。

日時:2016年4月28日(木) 13:40頃~14:30頃
場所:愛友酒造(茨城県潮来市辻205)
内容:見学、試飲(ガイド付き)
料金:無料

★アクセス
160427 (75)愛友酒造_外観
最寄り駅はJR鹿島線の潮来駅。駅から酒蔵までは約1.4kmです。この日は千葉県佐原市の東薫酒造から車で訪れました(約15km、車で約25分)。

★愛友酒造について
160427 (74)愛友酒造_
もとは江戸時代から「糀友[こうとも]」の屋号で親しまれた糀屋[こうじや]。糀づくりで培った技をもとに、初代・兼平常七[かねひら つねしち]氏が文化元年(1804年)に愛友酒造を創業しました。愛友には、”友を愛し相睦み肝胆相照らす”という意味が込められています。
現当主は七代目の兼平紀子[かねひら みちこ]氏。生産石数は、およそ4,000石(1升瓶で40万本)です。

★見学受付
160427 (70)愛友酒造_酒工房
見学受付は、売店がある”酒工房”で行います。予約なしで訪れましたが、若い女性ガイドがすぐに対応してくれました。

★製造場の見学
160427 (71)愛友酒造_製造場
見学は、写真右奥の煙突の下のスペースからスタートしました。最初の見学箇所の①洗米、浸漬、蒸米のスペースは、蔵の屋外の屋根があるだけの場所でした。

①洗米、浸漬、蒸米
160427 (41)愛友酒造_洗米
洗米:精米時に米に付いたぬかを洗い落とします。通常は機械で洗いますが、吟醸酒などの高級酒は、写真の手前のスペースで手洗いされます。

160427 (44)愛友酒造_浸漬タンク
浸漬:洗米した米は30~60分ほど水に漬けて水分を吸収させ、水から上げて一晩おかれます。写真の3つの銀色のタンクが、浸漬タンクです。

160427 (45)愛友酒造_甑
蒸米:手前の大きな釜(甑[こしき])を奥のもうひとつの釜にうめこみ、蒸し機として使います。2トンの米がおよそ50分で蒸し上がります。

160427 (42)愛友酒造_酒造の神様
続いて、蔵の中へ移動しました。入口の上部には酒造の神様(松尾神社の分社)がまつられていました。

②放冷:
160427 (47)愛友酒造_放冷機
蒸し上がった米は、放冷機で冷まします。高級酒の場合はムシロの上に蒸米を置いて機械を使わずに冷まします。写真左のシャッターの向こう側が、先程の蒸し機のある場所です。

③製麹、仕込み(酒母・もろみ)
160427 (53)愛友酒造_仕込み_通し柱
冷ました蒸米は2階の麹室に運ばれます。一般酒用の蒸米は写真右の筒の中を機械の風力によって運びますが、高級酒用の米は蔵人が背中にかついで運びます。
米麹:蒸米に種麹を付け、約2日かけて造られます。
酒母:出来上がった米麹に、酵母菌・蒸米・水を加えて造られます。
もろみ:出来上がった酒母に、蒸米・米麹・水を3度に分けて投入して造られます。

2階まで通っているひのきの1本柱は「通し柱」といい、現在では非常に貴重な構造物です。

④上槽
160427 (50)愛友酒造_上槽_圧搾機
発酵が終了したもろみを圧搾機で搾り、清酒と酒粕に分けます。白米総量の約25%が酒粕になります。

160427 (52c)愛友酒造_槽
高級酒は、槽[ふね]で時間をかけてゆっくりと搾られます。

⑤貯蔵、火入れ、加水、瓶詰
160427 (49)愛友酒造_貯蔵タンク
搾った酒は熱処理(火入れ)により殺菌され、タンクで貯蔵されます。火入れをしないものは”生酒”となります。貯蔵タンクに入っているのは加水をしていない”原酒”で、アルコール度数が20度近くあります。原酒はホースによって塀の向こう側にある瓶詰工場に送られ、瓶詰の直前に加水が行われます。

蔵内のタンクは、大小あわせて125個あるそうです。

160427 (69)愛友酒造_調合用タンク
各タンクの酒は品質を均一化するため、屋外の大きなタンク(約23,000ℓ)で調合されます。

★試飲
160427 (67c)愛友酒造_試飲
見学の後は、酒工房に戻って試飲をさせて頂きました。試飲のラインナップや提供の順番は、愛友酒造の酒の多様性がわかるように配慮されていると感じました。

<試飲アイテム> 価格は税別・720ml
①「愛友」大吟醸、山田錦(兵庫県産)、精米38%、Alc.16-17%、3,880円
②「友寿」純米吟醸酒、五百万石(茨城県潮来産)、Alc.15-16%、1,940円
③「水郷潮来 あやめまつり」純米酒、美山錦、精米60%、1,203円
④「酒蔵の粋」普通酒(米・米麹・醸造アルコール・糖類・酸味料)、1升瓶で千円程度
⑤「純米しぼりたて本生原酒」純米、生原酒、限定品、H27.2より販売、1,300円
⑥「ピュア茨城 しずく」特別純米、生酒、ひたち錦(茨城県産)と茨城の酵母使用、精米55%、Alc.16-17%、1,600円
⑦「(ラベル白紙)」蔵出し吟醸原酒、2,600円
⑧「鹿嶋 神の道」純米酒、原酒、日本晴(鹿嶋市谷津田産の無農薬栽培米)
⑨うめ酒

まず①と②の2つの吟醸系を利くことで、アル添で華やかな香りを引き出した”大吟醸”と、米のふくよかな旨みを感じる”純米吟醸”の違いがよくわかりました。さらに、③吟醸系ではない”純米酒”、④糖類・酸味料を使って価格を抑えた”普通酒”と続き、添加物の有無による酒質の違いを感じることができました。生酒では、⑦タンクから直接注がれた吟醸原酒のほかに、直近酒造年度の⓹最初に搾った酒と、⑥最後に搾った酒がありました。また、②⑥⑧は地元の米(⑧は無農薬栽培)、③⑥は地元で研究開発された酵母で造られたものでした。

どの酒にもそれぞれの個性があり、価格帯も様々でした。酒のタイプを知り、自分の好みと懐具合に応じて酒を自由に選べるようになれば、楽しみ方が大きく広がると改めて感じました。

ガイドさんは説明の中で度々、「お酒の好みは人それぞれなので、”値段の高い酒(大吟醸)”や”生酒”が必ずしも好まれるわけではない」ことに触れていました。それぞれのお酒ときちんと向き合って好き嫌いを判断してほしいという想いが伝わってきました。

★地元の米、酵母
愛友酒造では、茨城県産の酒米や酵母を使った酒造りにも積極的に取り組んでいます。
酒米では、「純米吟醸 友寿」に地元・潮来産の”五百万石”を使用しています。また、茨城県初の酒造好適米”ひたち錦”や、茨城県の鹿行・県南地域で”あきたこまち”に代わる極早生品種として研究開発された”一番星”などが使われています。その他、「鹿嶋 神の道」は、“蛍の里”とよばれる鹿嶋市・谷津田で無農薬栽培された“日本晴”が使用されています。

酵母では、平成21年6月に潮来のあやめの花から抽出に成功した”あやめ酵母”が、「水郷潮来 あやめまつり」に使われています。

★水
潮来市の大生神社[おおうじんじゃ]の”思井戸[おもいど]”は名水として知られています。この地域の水脈は、酒づくりに最適なミネラル分を含む”中硬水”。愛友酒造では、この水脈の水を井戸からくみ上げて仕込み水としています。
地元出身の女性ガイドさんも、むかしから井戸水に親しんできたそうで、この辺りが水に恵まれた環境であることが伝わってきました。

★杜氏・蔵人
現杜氏の多田一郎氏、前任の阿部昭一氏は、ともに岩手県の南部杜氏。毎年10月後半に岩手県からやって来て、蔵に寝泊まりしながら酒造りを行い、翌年の4月上旬(今年は4/1)にふるさとに帰ります。同蔵ではおよそ30年に渡り、南部杜氏による酒造りが行われているそうです(その前は新潟県の越後杜氏)。現在の多田杜氏は同蔵で3年目。前杜氏が退任する際は南部杜氏協会に後任の紹介を依頼したそうです。
現在の酒造りは5-6人(岩手から訪れる2人と、蔵の社員3-4人)で行っているそうです。10年ほど前は、まかないのおばさんもあわせて岩手から5人来ていたそうです。

★鹿島神宮の御神酒[おみき]
酒蔵のおよそ8kmほど東側に、全国の鹿島神社の総本社である鹿島神宮があります。同社の御神酒には、愛友酒造の「霰降[あられふり]」が選ばれています。

★関東の水郷にいまも生きる季節労働の杜氏文化
杜氏が蔵人を率いて冬の間だけ出稼ぎにでる文化は、もう消滅していると思い込んでいました。過去の酒蔵見学でも、造り手は(寒仕込みだけの蔵でも)年間雇用契約をした地元の社員が中心でした。
ところが、愛友酒造だけでなく、同日訪れた千葉県佐原の東薫酒造でも、杜氏を冬季のみ岩手県から招聘して酒造りを行っていました。地元の関東で一昔前の杜氏文化がいまも生き続けていたことに新鮮な感動を覚えました。

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【見学】東薫酒造(千葉・佐原) - 岩手の南部杜氏協会の元会長が千葉で冬場に仕込む酒。関東の水郷のまちに今も残る季節労働の杜氏文化

水郷のまち・佐原の東薫酒造[とうくん-]を見学しました。街中を流れる小野川が利根川に通じているため、佐原はかつて水運の要所として栄えていました。「小江戸」と呼ばれ、今も歴史的な街並みが残されている佐原の酒蔵では、なんと岩手県の南部杜氏が冬場だけ訪れて酒造りを行っていました。

日時:2016年4月28日(木) 10:00~10:30
場所:東薫酒造(千葉県香取市佐原イ627)
内容:見学、試飲(ガイド付き)
料金:無料

★アクセス
最寄り駅はJR成田線の佐原駅。駅から酒蔵までは約700mです。この日は自宅付近から車で連れて行ってもらいました。

★東薫酒造
160427 (1)東薫酒造_外観
創業は文政8年(1825年)。創業者の石毛卯兵衛が、酒造家の伊能家(全国の測量を行い、正確な日本地図を完成させた伊能忠敬の婿入り先)で修行をした後に独立したと伝えられています。現在の当主は8代目を数えるそうです。
160427 (39)東薫酒造_外観
入口から敷地内を写したもの。

★見学受付
160427 (3)東薫酒造_待合場所
ガイド付きの見学ツアーは10:00~15:30のほぼ30分おきにスタートします。予約なしでも大丈夫でしたが、団体さんと被ることもあるので事前予約をするのが無難だと思います。
160427 (4)東薫酒造_売店
入口のわきにある売店。suicaも使えるそうです。

★工場見学
この回は、シニアの男性ガイドさんが蔵内を案内してくれました。10:00の回に参加しましたが、小雨もぱらつく平日だったせいか、見学者は私たち3名だけでした。観光シーズンや、毎年7月と10月に行われる”佐原の大祭”の頃には、多くの観光客が訪れるそうです。歴史上の偉人の人形を乗せた山車が曳き回される”佐原の大祭”は、”川越氷川祭”、”常陸國總社宮大祭”とともに”関東三大祭り”の一つとされています。

<神棚>
160427 (26)東薫酒造_松尾様
蔵の入口の近くには、”松尾様”をまつる神棚がありました。

<酒造に恵まれた環境>
佐原には、”利根川の舟(船)便”、”水郷地帯の良質の早場米”、”良質な水”と、酒造に適した条件が揃っていたそうです。かつては35の酒蔵があったそうですが、現在は東薫酒造と(隣にある)馬場本店酒造の2軒にまで減ってしまったそうです。

<及川恒男杜氏>
160427 (8c)東薫酒造_賞状
杜氏の及川恒男氏は全国新酒鑑評会で金賞を15回も受賞しています(県内最多)。岩手県の南部杜氏協会の会長(現名誉会長)をつとめる大ベテランで、冬場のみ岩手から千葉にやって来て酒造りを行っているそうです。南部杜氏は越後・丹波・但馬と並ぶ日本4大杜氏のひとつです(丹波または但馬のかわりに能登を加える場合もあります)。及川氏は20歳の時に杜氏を志し、宮城県石巻市の酒造会社で13年間修業を積まれました。その時に「浦霞」の平野佐五郎杜氏の薫陶を受け、その後は富山県の蔵で6年を過ごし、この間に仙台国税局が実施した杜氏選考試験に合格したそうです。東薫酒造には39歳のときに入社されています。
東薫酒造のHPによると、及川杜氏にとって良い酒とは「花でたとえるなら桜のような馥郁たる香りの酒.....」とのことです。
及川杜氏は、「及川式醪冷却装置」を考案、実用化されています。

<原料処理:1階→3階>
160427 (28)東薫酒造_洗米
洗米・浸漬工程を経た原料米は蔵の3階に運ばれ、蒸きょう(蒸米)、製麹(麹づくり)、酒母づくりが行われます(洗米・浸漬も3階だったかもしれません...)。

<仕込み:2階→1階>
160427 (9)東薫酒造_仕込タンク
醪(もろみ)の仕込みは2階で行われます。蔵内には鯉のぼりが飾られていました。
160427 (11)東薫酒造_仕込みタンク上部
木製の蓋を外すと、醪を仕込むタンクの上部が顔を出します。1階に設置されている大きなタンクの中に、2階から原料を投入します。
160427 (17)東薫酒造_冷却装置
1階のタンク。温度調整用の管が巻かれているのが「及川式醪冷却装置」(だと思われます...)。

<上槽:1階>
160427 (21)東薫酒造_圧搾機
発酵を終えた醪は、1階の槽場で搾られて、酒になります。写真はメインで使われている圧搾機(ヤブタ式?)。
160427 (23c)東薫酒造_槽
槽[ふね]と呼ばれる、佐瀬式の圧搾機。

<貯蔵・熟成:1階>
160427 (6)東薫酒造_貯蔵タンク
写真のタンク1本の容量は6,681ℓ。1升瓶に換算して3,710本、金額にして742万円にもなるそうです。

東薫酒造での酒造りは、3階建ての蔵内を階上から階下へ原料を送るかたちで行われていました。

★試飲
蔵内を見学した後は、中庭の売店で試飲をさせて頂きました。
160427 (29)東薫酒造_甘酒
最初に甘酒(ノンアルコール)を頂きました。麹のやさしい甘さが口の中に広がりました。

160427 (35)東薫酒造_どぶろく
こちらの「十富禄酒(どぶろく酒)」はアルコール度が6%と低め。やさしい甘味と心地よい酸味の後にアルコールのほどよい辛味が感じられ、女性に喜ばれそうなお酒でした。

160427 (37)東薫酒造_試飲
清酒の試飲のラインナップ。大吟醸酒の「叶」は、1杯300円となります。

・「大吟醸 叶」。
・「夢とまぼろしの物語」大吟醸。
・「吟醸 二人静」十二単ラベル。吟。
・「卯兵衛 純米大吟醸」赤文字。総の舞(香取市佐原北地区で生産)、精米歩合50%。
・「卯兵衛 純米吟醸」緑文字。
・「原酒」。
・「本格辛口清酒」本醸造。
・「梅酒」。
・「柚子酒」。

★中庭の売店
160427 (34c)東薫酒造_売店
試飲コーナーは中庭の売店の一角にありました。ここでは東薫酒造の酒類の他に、千葉県の名産品なども販売されていました。

★ボイラーの蒸気
帰り際に「シューッ」という音がしたので振り返ると、蒸気が一面に立ち込めていました。
160427 (38)東薫酒造_蒸気
ガイドさんに質問したら、ボイラーの蒸気を抜いているとのことでした。
160427 (31)東薫酒造_蒸気前
蒸気が立ち込める前はこんな感じでした。

★感想など
昨年から酒蔵見学を始めましたが、日本酒の産地は寒い地方だろうとの先入観から越後、東北、北陸をメインに回っていました。地元の関東で”季節労働の杜氏文化”がいまだに残されているとは思ってもいなかったので、新鮮な驚きと感動を覚えました。

東薫酒造の後は、同じく水郷のまちにある茨城県・潮来の愛友酒造を訪ねました。
こちらの蔵でも、岩手の南部杜氏が冬場だけ酒造りに訪れていました。

(初稿)2016.8.23

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【見学】ヤマシン醸造(愛知・碧南市) - 白醤油

白醤油のヤマシン醸造を見学しました。
白醤油は三河地方で主につくられる琥珀色の醤油です。

日時:2016年4月8日(金) 14:30~
場所:ヤマシン醸造(愛知県碧南市西山町3-36)
内容:見学(ガイド付き、約1時間)
料金:無料
交通:名鉄三河線(北新川駅→刈谷駅ほか)、18きっぷ(刈谷駅→東京ほか。1日あたり2,370円)
URL:http://www.yamashin-shoyu.co.jp/

★アクセス・外観
160408ヤマシン醸造 (2)
最寄り駅は名鉄三河線の北新川駅。駅から工場までは約600mです。社名を記した木製看板と古い型の郵便ポストが良い感じでした。
160408ヤマシン醸造 (外観)
最初に左側の事務所で男性スタッフの方が社史や白醤油の概要などについて説明してくださいました。

★白醤油の始まり
大正時代末期(1920年頃)、新川町の内藤弥作氏が現在の”金山寺味噌に似た味噌から浸み出すたれ”にヒントを得て、このたれの製法を鳥居商店(現在のヤマシン醸造)に教えたのが白醤油の始まり。鳥居家は江戸時代後期の享和2(1802)年より醸造業を始め、味噌・溜・味醂などを作っていたそうです。

★白醤油の製造工程
160408ヤマシン醸造 (白醤油の製造工程)

①原料処理
通常の醤油の原料は小麦5:大豆5ですが、白醤油は小麦9:大豆1。小麦を多く使うことで、色が淡く、甘味が強い醤油が作られます。原料置き場には、小麦が山のように積まれている一方で、大豆の袋はわずかしか置かれていませんでした。
160408ヤマシン醸造 (原料_小麦)c
小麦は”精麦”したものを使用。精麦といってもビールやウイスキー(の大麦)の”製麦”と違って発芽はさせません。原料の小麦には国産と米国産がありますが、白醤油には米国産の方が適しているそうです。理由は、国産よりも柔らかく、アミノ酸(うま味成分)のもととなるたんぱく質が国産よりも多く含まれるため。通常の醤油は、小麦のでんぷん(アミラーゼ酵素でブドウ糖などに分解)から主に甘味成分、大豆のたんぱく質(プロテアーゼ酵素でアミノ酸に分解)から主にうまみ成分を引き出しますが、小麦が原料の9割を占める白醤油では、小麦のたんぱく質含有量がうま味を引き出すうえで軽視できないそうです。

160408ヤマシン醸造 (原料_大豆)
大豆はNon-GMO(Non-Genetically Modified Organisms。非遺伝子組み換え)のものを”焙煎”して使用。他の醤油(濃口・薄口・たまり・再仕込)は”炒った小麦と蒸した大豆”を使いますが、白醤油の場合は”炒った大豆と精麦した小麦を共に蒸して”使います。

②洗浄・浸漬
160408ヤマシン醸造 (洗浄)
原料を洗浄する機械。洗浄した原料は浸漬の工程で適度な水分を吸収させます。
160408ヤマシン醸造 (洗浄後の小麦)c
洗浄したての小麦を手に取って見せてくださいました。お願いして試食させて頂きましたが、ビール工場で試食したモルトと違って、甘味や香ばしさは感じられませんでした。

③蒸煮[じょうしゃ]
160408ヤマシン醸造 (蒸煮)
原料が機械の中を右から左にむかって移動している間に、常圧のもと95℃位で約40分ほど蒸されます。

④放冷
160408ヤマシン醸造 (放冷)
蒸した原料を冷まします。

⑤製麹
160408ヤマシン醸造 (製麹)
緑のパイプの中を原料が通過しているところに、機械で自動的に種麹(黄こうじ)をふりかけます。黄こうじにも色々な性質のものがあるようですが、白醤油の原料は小麦の割合が多いため、”糖化力がつよいもの”を選んで使用しているそうです。種麹は(自社培養ではなく、)専門メーカーから購入してくるそうです。

160408ヤマシン醸造 (麹室)
種麹のついた原料をポンプで麹室に送ります。麹室は直径7.5mの円盤型で、1度に6トンの麹がつくれるそうです。麹の出来不出来は”酵素量の問題”であり、見ためではわからないため、温度を少しずつ変えたりするなどの試行錯誤を重ねているそうです。
160408ヤマシン醸造 (麹室内部)c
麹室の中。2日かけて原料を麹にします。訪問時は原料を入れたばかりの状態でしたが、破精が進むにつれて独特の麦麹の香りがしてくるそうです。

⑥塩水混合
麹ができたら、麹室の下のタンクに落として塩水と混ぜ、ポンプで仕込・熟成蔵へ送ります。同社の敷地は2,500坪あり、麹室のある建物から仕込・熟成庫までは少し歩きました。

⑦仕込・熟成
160408ヤマシン醸造 (熟成庫)
仕込・熟成庫。庫内には杉の木桶やタンクが並んでいます。木桶では2回、タンクでは1回の仕込みを行うそうです。

160408ヤマシン醸造 (木桶)
木桶の仕込みは”2回”。下にワラを敷いてもろみを入れ、暫くして麹が浮いて来たら、シートをして置き石をします。3カ月くらい熟成した後に桶の下から引いたものが”一番汁”で、甘みをうま味も強く濃厚。この時点でまだ桶内に麹が残っているため、再び塩水を入れて2-3カ月熟成させて(今度は引かずに)圧搾機でしぼったものが”二番汁”で一番汁に比べたら薄め。通常は一番汁と二番汁をブレンドしますが、一番汁の割合が多いものはJASの特級品となるそうです。ビールの製造工程でも”一番搾り麦汁”と”二番搾り麦汁”を通常は混ぜて使用するので、似ている点が面白いと感じました。ちなみに「キリン一番搾り」は一番搾り麦汁だけを使用した濃厚でリッチな味わいのビールです。

160408ヤマシン醸造 (仕込タンク)
タンクの仕込みは”1回”。木桶よりも温度を高めにして発酵を促し、短期間で熟成。タンクは2重構造で、水や湯を通して内部の温度をコントロールできるそうです。

⑧圧搾
160408ヤマシン醸造 (圧搾機)
愛知県常滑市に本社がある(株)マキノの圧搾機。日本酒のヤブタ式と同じ考え方に基づいた圧搾機とのこと。昔は縦型の機械を使い布で絞っていたそうですが、粕が崩れやすいため、研究してマキノの横型に変更したそうです。
160408ヤマシン醸造 (粕)c
白醤油粕。粕には塩分が8%くらいあり、以前は一部をぬか床などに再利用していたこともあるそうですが、現在はほとんどが廃棄されるそうです。

⑨ろ過
珪藻土を利用したろ過器で菌などを取り除きます。白醤油は着色を防ぐために加熱殺菌処理を行わないため、酵素は生きたまま残ります。

★お土産
最期に2種類の白醤油を頂きました。
160408ヤマシン醸造 (25)
左は「ヤマシン白醤油」。”木桶仕込み”で、熟成は2-3カ月。麹の香りと木桶の杉の香りが感じられる複雑で独特な香味。
右は「金完熟白醤油」、”タンク仕込み”で、熟成は約1カ月。癖がなく、使いやすいもの。

★白醤油の利用
料理の味だけでなく色も重要視されるようになり、白醤油の利用範囲が広がっているそうです。
和食では主に魚介類のだしと合わせて、お吸い物や鍋料理、うどんやそばのつゆ、茶わん蒸し、だし巻き卵などに。白身魚を漬け焼きにすると、塩焼きよりもうま味が増し、身も柔らかくなるそうです。また、中華ではラーメンのスープにも使われているほか、チーズやホワイトソースとの相性も良いため、パスタソースやグラタンなどの洋食にも用いられているそうです。同社では、白醤油にオリーブ油やハーブ類などをブレンドした”オリーブ白醤油”を発売しています。

オリーブ白醤油の原材料:食用オリーブオイル、白しょう油、果糖ぶどう糖液、ガーリック、こしょう、食塩、バジル、オニオン、セロリ、タイム、オレガノ、マジョラム、増粘多糖類(原材料の一部に小麦、大豆を含む)

★碧南の多様な発酵文化
碧南市には白醤油、たまり醤油、味噌、みりん、日本酒など多くの醸造メーカーがあります。醤油ひとつをとっても、"濃色のたまり”と”淡色の白"が同じ地方に存在しており、その多様性が伺えます。醸造業が盛んになった背景には、①醸造に適した矢作川の水、②矢作川流域の穀倉地帯、③海運の拠点であったこと(知多湾につながる衣浦港に面している)などが挙げられています。

★その他、メモ
・全国の白醤油の生産量は年間約6千㎘(6,000,000ℓ)。うち、同社のシェアは1/6の約1千㎘(白醤油ではトップ)で、加工品はその倍くらい作っているそうです。
・薄口醤油は大豆、小麦の他に米を使用し、最後に甘酒が入るため、白醤油とは香味が異なるそうです。

★感想など
昨夏の”和食とワイン”のセミナーで、田崎真也さんが「ソムリエ・コンクールで”醤油の種類5つを答えよ”という出題をした」と言及されました。日本人として、また、和食への注目度が高まりつつある中で、醤油をきちんと理解しておきたいと思い、今回の見学につながりました。
かなり昔に醤油の仕組みを勉強しようとした時には難しすぎて挫折していましたが、ワイン(シンプルなアルコール発酵)、日本酒(麹菌による糖化とアルコール発酵)、ビール(発芽による糖化とアルコール発酵、小麦を多用した白ビール)などを勉強していたおかげで、醤油の製造工程を少しは理解できるようになっていました。シンプルな基礎から段階を追って学ぶことの重要性を実感しました。


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【見学】七福醸造・ありがとうの里(愛知・碧南市) - 白だしの元祖

白だし(白醤油にだしを入れたもの)を開発した七福醸造を見学しました。
当日予約にも関わらず、とても丁寧に案内して頂きました。

日時:2016年4月8日(金) 13:00~
場所:七福醸造・ありがとうの里(愛知県碧南市山神町2-7)
内容:見学、試飲・試食(ガイド付き)
料金:無料
交通:名鉄三河線(北新川駅→刈谷駅ほか)、18きっぷ(刈谷駅→東京ほか。1日あたり2,370円)

★アクセス・外観
160408七福醸造 (外観)
最寄り駅は名鉄三河線の北新川駅。工場までは約1.0km。写真の右側にある売店で見学の受付を済ますと、男性スタッフが迎えにきてくれました。見学は左奥の建物から始まりました。

★”ありがとう”を大切にする会社
160408七福醸造 (比較)
最初に”6年前のごはん”が入った2つの瓶を見せて頂きました。2010年6月より保存されているもので、左側には「ありがとう」と語り続け、右側には「ばかやろう」と声をかけ続けたそうです。右側の方が明らかに痛みが激しくなっていました。感謝の気持ちが美味しい商品をつくるというのが同社のポリシー。感謝の気持ちを忘れないよう、工場や機械、ラベルの裏など、いたる所に”ありがとう”の文字が記されているそうです。

★白だしの元祖
160408七福醸造 (白だし)
1978(昭和53)年に同社が発売した「料亭白だし」は、日本初の白だし。飛騨高山の料理人から「茶わん蒸しを作るのにだしを作って冷ましていたら間に合わない。簡単に作れるよう白醤油にだしを入れたものを作れないか」という依頼を受けたのが開発のきっかけ。白醤油しか扱っていなかった同社は試行錯誤を重ね、良い材料を厳選し、4年の歳月をかけて料理人の舌を納得させるものを完成させたそうです。

★白醤油の原料
(1)塩(塩水)
160408七福醸造 (天日塩)
白醤油の原料の一つである塩水には、写真右側の”天日塩”を使用。左側の食塩は塩化ナトリウム99%以上ですが、天日塩には塩化ナトリウム以外にカルシウム、マグネシウム、鉄、カリウム等が豊富に含まれています。天日塩は加熱処理などを加えずに太陽光だけで乾燥させて作られる塩で、体にも優しい塩です。

(2)小麦、大豆
160408七福醸造 (白醤油の原料)
通常の醤油は”小麦5:大豆5”ですが、白醤油は”小麦9:大豆1”という割合で作られるそうです。小麦は”精麦”されたものが工場に届くそうですが、ウイスキーやビール造りの(大麦の)製麦とは異なり、発芽させてモルトにすることはないそうです。同社では小麦、大豆ともに”有機JAS認定原料”を使用し、認定機関FVOより”オーガニック白醤油認定工場”の指定を受けています。
160408七福醸造 (こうじ)
丸大豆の麹。以前は炒った半割りの大豆を使っていたそうです。白醤油に使う麹菌は、”色をなるべく出さないもの"、”小麦のでんぷんの糖化力が強いもの”をメインに3-5種類を配合しているそうです。日本酒の工場見学で、白くて小さい米麹を見慣れていたせいか、大豆の麹はずいぶん大きく感じられました。

★白醤油の製造工程(会社案内「ありがとう」より抜粋)
①小麦・大豆を洗う

②水にひたす

③蒸す=蒸煮[じょうしゃ]
160408七福醸造 (蒸煮缶)
写真は”蒸煮(NK)缶”。小麦、大豆を蒸す圧力釜。

④冷却する=放冷
160408七福醸造 (放冷機)
写真は”放冷機”。蒸煮管で蒸した原料に下から空気を当てて冷ます機械。原料が熱いままだと酸化して色が濃くなってしまうため、急速に冷まして色が付かないようにするそうです。

⑤種麹混合
160408七福醸造 (麹室)パネル写真
”麹室”のパネル写真。2日かけて麹を育てるそうです。温度は35度位から始めて、最高38度付近まで上げてから冷ますそうです。日本酒は原料米の約2割を麹にして残りは蒸米のままで仕込みますが、白醤油は全量を麹にするそうです。

⑥食塩水混合
160408七福醸造 (塩溶場)
塩水をつくる”塩溶場[しおときば]”。塩水をためるタンクの材質はFRP(Fiber-Reinforced Plastics。繊維強化プラスチック)。

⑦熟成(約3カ月)
160408七福醸造 (発酵タンク)
深層発酵タンク(仕込タンク)。麹と塩水を仕込み、温度20度付近(15-25度)で約3カ月熟成させるそうです。50㎘(50,000ℓ)のタンクが4本。すべてに”ありがとう”の文字が記されていました。

⑧ろ過
160408七福醸造 (ろ過)
ろ過は珪藻土を利用。紙を何重かにしてはさみ、液と珪藻土をまぜて通すことで、琥珀色の白醤油になるそうです。白醤油は加熱殺菌せずに生で出荷しているそうです。

★白醤油の試飲
160408七福醸造 (白醤油の試飲)
タンクからとった生醤油の試飲をさせて頂きました。原液なのでやや濁りがありますが、明るめな琥珀色の液体でした。味わいは小麦由来の糖分の甘さに、塩気とうま味などが複雑に重なりあって、ふだん使っている濃口醤油とはずいぶん違うと感じました。

★だしの原料(白醤油と調合)
160408七福醸造 (だし原料)
だしに使われるのは、厚削りの”本枯れ節”(九州枕崎産の三度カビ付けした鰹節。今も一本一本手作りのものを使用)、北海道産の"昆布”、国産の肉厚椎茸”どんこ”など。見るからに良質な材料だと感じられました。他にも宗田ガツオ、ムロアジ、シビ(マグロ)などを商品毎に使い分けてブレンドしているそうです。

★洗瓶・火入れ殺菌・瓶詰
160408七福醸造 (20)
DVDによる説明を受けた後に、ガラス越しに機械などを見学しました。

★昔の醸造道具など
160408七福醸造 (麹蓋など)
麹をつくる麹蓋は日本酒の酒蔵にあるものと同じように見えました。
160408七福醸造 (とうみ)
唐箕[とうみ]。風力を起して穀物を精選するための農具。今は不良品やゴミが除かれた原料が工場に届くそうです。
160408七福醸造 (木桶)c
年に1回だけ木桶で仕込む商品を今でも作っているそうです。化学物質過敏症や末期がんの方にも安心して召し上がって頂けるよう、自然栽培の原料、天然水、昔ながらの製法で作ってほしいとの依頼を受け、そのために”木の室[ムロ]”も新設したそうです。

★試食
工場見学の後に、白だしを使った料理を試食させて頂きました。
160408七福醸造 (試食・玉子スープ)
かきたまのお吸い物。ホットプレートで沸かしたお湯に白だしを入れ、溶き卵を少しづつ投入して作ってくださいました。とても簡単なのに、だしの旨みが口の中一杯に広がる本格的な味が楽しめました。
160408七福醸造 (試食・だし玉子と浅漬け)
白だしを使った玉子焼きと浅漬けにした胡瓜。後者はジッパー付きのビニール袋に胡瓜と白だしを入れて15分ほどで出来上がり。色が淡い白醤油がベースなので、美味しいだけでなく、素材の色をきれいに活かせると感じました。

★マスコットキャラクター
160408七福醸造 (白だっしー2号)
七福醸造の2代目の白だしマスコット・キャラクター、”白だっしー2号”。

★特選料亭白だしシリーズ(価格は税込み、360ml、訪問日現在)
・特選料亭白だし:626円
・特選料亭白だし・四季の彩:734円
・特選料亭白だし・四季の彩・減塩タイプ:734円
・無添加・料亭白だし・四季の恵:950円、など

★感想など
「ありがとうの里」という施設名が表す通り、感謝の気持ちをとても大切にしている会社でした。また、工場の清掃が行き届いており、機械がまるで新品のように磨かれていることが印象的でした。


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テーマ : しょうゆ工場見学
ジャンル : グルメ

【見学】九重味淋(愛知・碧南) - 最古のみりん醸造元

日本最古のみりん醸造元(現存ベース)、九重味淋[ここのえみりん]を見学しました。
社名の漢字は”味醂”ではなく”味淋”です。

日時:2016年4月8日(金) 11:00~
場所:九重味淋(愛知県碧南市浜寺町2丁目11番地)
内容:見学(ガイド付き)
料金:無料
交通:名鉄三河線(碧南駅⇔刈谷駅)、18きっぷ(刈谷駅→東京ほか。1日あたり2,370円)
URL:http://kokonoe.co.jp/meet01

★アクセス
160408 (41)碧南駅
最寄り駅は名鉄三河線の碧南[へきなん]駅。前日に宿泊した岐阜県の大垣からJR新快速(大垣駅9:11→刈谷駅10:05、18きっぷ)と、名鉄三河線(刈谷駅10:09→碧南駅10:37、片道400円)を乗り継いで行きました。

★最寄り駅
160408 (42)
碧南駅は名鉄三河線の終着駅。九重味淋までは駅から徒歩約5分です。

★敷地案内図
160408 (39)九重味淋_案内図
碧南駅は図の北東(右上)方面。見学の受付は本社事務所で行います。見どころのひとつ”大蔵”は研究管理課・食堂と道路を挟んだ南側にあります。

★大蔵
160408九重味淋 (3)大蔵
宝永3年(1706年)に建築され、天明7年(1787年)に現在の場所に移築された「大蔵」。黒塗総下見板張の土蔵造りで、柱や梁には太く頑丈な木材が使われています。現在もみりんの熟成庫として利用されています。この大蔵は、国の登録有形文化財建造物として登録されています(碧南市で初)。

★見学受付(本社事務所)
160408九重味淋 (11)外観
見学の受付は、写真の左側にある本社事務所で行います。受付を済ますと、男性スタッフが迎えにきてくれました。見学できる施設は正面の建物2階にある”九重みりん時代館(以下、時代館)”のみで、製造場所の見学はできませんでした。

★DVDによる説明
160408九重味淋 (14)DVD
最初に時代館の2階で、同社の歴史やみりんの製造工程などを紹介したDVDを見せて頂きました。

★「九重味淋」の歴史
創始者は廻船問屋を営んでいた石川八郎右衛門信敦氏。安永元年(1772年)からみりんをつくり始めており、三河みりんの元祖とされています。

★みりんの原料(本格本みりん)
(a)もち米
(b)米麹(うるち米+種麹)
(c)米焼酎(清酒粕を蒸溜した粕とり焼酎)

★みりんの製造工程(本格本みりん)
①米麹づくり:
うるち米に種麹をつけ、二昼夜かけて米麹をつくります。

②蒸米・放冷:
もち米を蒸します。蒸した米は放冷機で適温に冷まされます。

③仕込み(糖化熟成)【約2カ月】:
蒸したもち米、米麹に米焼酎を合わせて撹拌し、糖化熟成を行います。その間、もろみが均一に熟成するよう、竹の棒によりかきまぜる”櫂入れ”が行われます。仕込み蔵の中の室温は18~20度。床板を張り、もろみが入ったタンクを半地下の状態にすることで蔵内の温度を安定させています。

④圧搾【2日間】:
もろみを酒袋に詰め、槽[ふね]と呼ばれる圧搾機で搾ります。はじめはもろみ自身の重みだけで、みりんがじんわりしみだすのを待ち、その後上から徐々に圧力を加え、2日間かけてゆっくりと搾ります。一気に圧力をかければ搾られる量は増えますが、 余分な雑味が混ざってしまうため、伝統的な”佐瀬式圧搾機”を用いて時間をかけてゆっくり搾っています。

160408 (38)九重味淋_佐瀬式圧搾機
<佐瀬式圧搾機>現在では製造されていない昔ながらの圧搾機。佐瀬式圧搾機で搾ると、”みりん粕”もやわらかく上質なものとなります。このみりん糟は漬け物用として品薄になるほどの人気があるそうです。

⑤貯蔵熟成【約1年】:
搾った本みりんは、半年から一年の間、大蔵でゆっくりとねかせます。熟成したら、微妙に異なる風味を均一にするため、大きなタンクの中で混ぜ合わせます。

⑥ろ過:
熟成した本みりんはろ過により不純物などを取り除かれます。

★むかしの道具
160408 (26)九重味淋
時代館には九重味淋の祖・石川家に伝わる古い道具や古文書などが展示されています。

160408 (35c)九重味淋_足踏み精米機
明治の頃の足踏み式精米機。

160408 (22c)九重味淋_酒袋とかすり
<右:かすり>タンクの中のもろみを最後まで取り切るための道具。
<左:酒袋>もろみを搾るための袋。昔は綿に柿渋[かきしぶ]を塗っていました。
(参考)柿渋:渋柿の未熟な果実を粉砕、圧搾して得られた汁液を発酵・熟成させて得られる、赤褐色で半透明の液体。柿タンニンを多量に含み、平安時代より様々な用途に用いられて来た日本固有の材料。発酵によって生じた酢酸や酪酸等を原因とする悪臭を有するが、20世紀末には新しい製法により精製され、悪臭が完全に取り除かれた無臭柿渋も誕生。ウィキペディアより。

★『和漢三才圖會[わかんさんさいずえ]』
160408 (32)九重味淋_和漢三才図絵
1712年(正徳2年)頃に出版されたといわれる日本の百科事典。中国の『三才図会』を手本とし、和漢古今に渡る事象を105部門(天文、土地、山水など)に分けて、図、漢名、和名などが記されています。みりんについては、室町時代頃から女性が飲んでいたことや製造法などが書かれています。同社で当時のみりんを再現したところ、今のみりんの半分ぐらいの甘さだったそうです。

160408 (31c)九重味淋_古文書
「按美淋酎近事多造之其味甚甘而下戸人及婦女子喜飲之」と記されており、みりんは下戸や婦人に好まれて飲まれていたことが伺えます。

★1936年(昭和11年)のみりん
160408九重味淋 (29)1936年の九重櫻
戦争中に防空壕の中に置き忘れられていたみりんも展示されています。濃口醤油のような真っ黒な色合いですが、腐ってはいないそうです。ガイドさんも味わったことはないそうですが、HPによると紹興酒のようなにおいがするそうです。
1977年の分析によると、アルコール度は5.9%、ボーメ度は18.6。
ボーメ度は”日本酒度”と同じく液体の比重を表す数値で、ボーメ度1=日本酒度-10です。日本酒造りの品質管理では、ボーメ度は主にもろみの初期段階、日本酒度はそれ以降に使用されています。日本酒度は愛飲家が甘口・辛口を判断する目安(数値がプラスになるほど辛口)にもなっています。
みりんでも日本酒と同様に消費者向けの数値(日本酒度、酸度、アミノ酸度などに該当するもの)を示しているのか質問したところ、計測したとしても分析用であり、消費者にそれらを示すことはないとのこと。そもそもみりん(本みりん)を飲用としているケースは少なく、酒税法上もアルコール度がほぼ14%(規定では15%未満)、エキス分が40%以上の甘口におさまるため、数値を示す必要性が乏しいようです。

★唯一の”名誉大賞”
160408 (28)_九重味淋_名誉大賞
大正から昭和にかけての全国酒類品評会で、同社の『九重櫻』は唯一、最高の「名誉大賞」を受賞(1924(大正13)年)しています。優等賞を3回獲得で名誉賞、名誉賞を3回獲得で名誉大賞にいたるそうです。
160408 (29)九重味淋_モンドセレクション最高金賞
同社のみりんは海外でも高い評価を得ており、モンドセレクションでは最高金賞(金賞のGold MedalではなくGrand Gold Medal)を受賞しています。

★みりんの種類(課税)
酒税法上はすべて”みりん”ですが、業界では以下の区別をしているそうです。
(a)「本格本みりん」:
原料は、もち米、米麹、米焼酎(乙類)のみ。伝統的な製法で造られるもの。
(b)「本みりん」:
原料は、もち米、米麹、醸造アルコール、糖類など。製法は、糖化熟成。

★みりん類似調味料(非課税)
酒税法がかからない、食品扱いの”みりんではないみりん”。
(a)「発酵調味料」(塩みりんなど):
加塩などの不可飲処理をしたもの。5-14%程度のアルコールを含みます。原料は、米、米こうじ、糖類、アルコール、食塩など。
(b)「みりん風調味料」(新みりんなど):
アルコールをほとんど含まないもの(酒税のかからない1%未満)。みりんの風味に似せてうま味調味料や水飴等の糖分などが添加されています。腐敗しやすいため酸味料なども加えられています。

★みりん関連法規
(a)酒税法:第三条(その他の用語の定義)
十一 みりん 次に掲げる酒類でアルコール分が15度未満のもの(エキス分が40度以上のものその他政令で定めるものに限る。)をいう。
イ 米及び米こうじにしようちゆう又はアルコールを加えて、こしたもの
ロ 米、米こうじ及びしようちゆう又はアルコールにみりんその他政令で定める物品を加えて、こしたもの
ハ みりんにしようちゆう又はアルコールを加えたもの
ニ みりんにみりんかすを加えて、こしたもの

(b)酒税法施行令:第五条(みりんの原料等)
法第三条第十一号 に規定する政令で定める酒類は、次の各号のいずれにも該当するものとする。
一  原料中ぶどう糖及び水あめ(次号において「原料ぶどう糖等」という。)の重量の合計が米(こうじ米を含む。)の重量の二・五倍以下であること。
二  温度十五度の時における原容量百立方センチメートル当たりの原料として使用された原料ぶどう糖等の固形分の重量が温度十五度の時における原容量百立方センチメートル中に含有する不揮発性成分の重量の百分の八十以下であること。
2  法第三条第十一号 ロに規定するみりんの原料として政令で定める物品は、水のほか、次に掲げるものとする。
一  とうもろこし、ぶどう糖、水あめ、たんぱく質物分解物、有機酸、アミノ酸塩、清酒かす又はみりんかす
二  米又は米こうじに清酒、しようちゆう、みりん若しくはアルコールを加え、又はこれにさらに水を加えて、すりつぶしたもの

(c)酒税法:第八条の二(みりんに類似する酒類)
法第三条第二十一号 に規定するその性状がみりんに類似する酒類として政令で定めるものは、米及び米こうじを原料の一部として発酵させた酒類と木灰(木灰を原料の一部として製造した物品の原料となつた木灰を含む。第一号において同じ。)を原料の一部とした酒類(アルコール分が十五度未満でエキス分が十六度以上のものに限る。)で、次の各号のいずれにも該当するものとする。
一  当該酒類の原料となつた木灰の重量が当該酒類一キロリットルにつき一キログラム以上であること。
二  水素イオン指数が五・五以上であること。
三  財務省令で定める方法により測定した場合における光を吸収する度合が〇・二以上であること。

★みりん(のもろみ)のアルコール度数は”仕込み”によって下がっていく!?
日本酒は、蒸米と米麹を”水”で仕込みます。仕込みの主な目的は”アルコール発酵(と糖化)”であり、酵母菌が原料に含まれる糖分をアルコール(エタノール)に変えていくため、もろみのアルコール度数は徐々に上がっていきます。一方のみりんは、蒸米と米麹を”40度近いアルコール”で仕込みます。仕込みの主な目的は”糖化(と熟成)”であり、時間が経つと米が溶けた水分で薄まるため、もろみのアルコール度数は徐々に下がっていきます(そもそも酵母菌はアルコール度数が20度を上回ってくると生存が困難になります)。
「仕込みの過程でアルコール度数は上がっていくもの」と思い込んでいたため、この説明を聞いた当初は混乱してしまいました。

★”飲むお酒”としてのみりん
漫画『バーテンダー』のGlass29「バーの隠し味」で、フランス料理の一流シェフになった日本人がブラインド・テイスティングをする場面が描かれていました。彼が「10年の熟成を経たオロロソ(シェリー)」と答えたものは、なんと「本みりん」。このエピソードでみりんがお酒として飲めることを知り、デザート酒のひとつとしてみりんのロックやソーダ割を個人的に楽しむようになりました。
ちなみに、飲用にするため”みりんに焼酎を加えたもの”を、柳蔭[やなぎかげ]、本直し[ほんなおし]といいます。

★注目度が高まるみりん
今年2月に行われた「田崎真也によるソムリエのサービスセミナー」で出された飲み物5種は、すべて(ワインではなく)日本のお酒でした。日本酒4種の後に出された最後の1杯は、なんと”みりん”(佐賀県・小松酒造の「のみりんこ 本みりん」)。同日の日本ソムリエ協会の総会で会長に選ばれた田崎真也さんは「日本酒にも注力する」と宣言されましたが、その中にはみりんも含まれるようでした。過去に参加した日本酒のイベントでも、試飲のラインナップにみりんを入れている酒蔵がいくつかありました。日本酒への注目度が高まる中、みりんを”飲むお酒”として楽しむ人も徐々に増えてくるように思えました。

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テーマ : みりん工場見学
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【見学】宮崎本店(三重・四日市) - キンミヤ焼酎が関東で人気があるのはなぜ?

三重県の宮崎本店を見学しました。
東京下町の大衆酒場でおなじみの「キンミヤ焼酎(亀甲宮焼酎)」の蔵元で、人情味溢れるエピソードが伺えました。
見学は主に日本酒「宮の雪」の製造工程でした。

日時:2016年4月7日(木) 13:00~
場所:宮崎本店(三重県四日市市楠町南五味塚972)
内容:見学、試飲(ガイド付き、約1時間)
料金:無料
交通:18きっぷ(東京→名古屋駅ほか。1日あたり2,370円)、近鉄名古屋線

★アクセス
160407 (9)近鉄四日市
最寄駅は近鉄名古屋線の楠[くす]駅。近鉄名古屋駅11:41発、楠駅12:34着(片道690円)。酒蔵までは徒歩約10分。写真は近鉄四日市駅での乗り換え時に撮影したものです。

★蔵の外観
160407 (37)宮崎本店外観
国の登録有形文化財にも指定されている趣のある建物。黒壁に白いキンミヤのロゴが映えていてとても印象的でした。
160407 (12)
敷地が広かったので、受付を探すのに少し迷いました。近隣の酒蔵の土地を買い取り、今や7,300坪にわたるそうです。ただし、公道を挟んでいるので使い勝手は良くないとか...
160407 (16)宮崎本店外観
見学は、この建物の対面にある資料館からスタートしました。
ガイドは総務部長のMさん。とても丁寧に説明してくださいました。

★蔵の歴史と概要
160407 (34)
創業は弘化3(1846)年。もとは近隣で採れた芋を焼酎にしており、楠の港から関東へ出荷していたそうです。以前は周囲に30以上の酒蔵が存在していたそうですが、現在残っているのは同社のみです。
160407 (35)宮崎本店資料館
資料館内には昔の酒造りの道具が展示されていました。鉄分が増えると酒が濁るので木製の道具を使用していたそうです。

★総合酒類メーカー
同社は(ビールとブランデーを除く、)焼酎、日本酒、ウイスキー、みりんなどを手掛ける三重県下最大の総合酒類メーカー。出荷量は1升瓶換算で年間約340万本で、うち7割はキンミヤ焼酎、そのうち9割が関東向けに出荷されているそうです。いかにキンミヤが主力商品であるかが伺えます。日本酒は約1割強、海外への輸出はごく一部とのことでした。

★日本酒の造り手と酒質
当初は越後杜氏、後に但馬杜氏、そして5年程前までは南部杜氏を招いていましたが、今は15、6名の社員が造りを行っているそうです。杜氏にあたる製造部醸造課長は40代。南部杜氏を採用していた理由は、同社の求める酒質に合っていたことに加え、社員に技術を継承してくれたからだそうです。
「宮の雪」の酒質は”淡麗”。酒米は主に富山県産の五百万石(吟醸系は三重県伊賀上野産の山田錦)を使用し、仕込水は軟水、そして南部杜氏の技のすべてが淡麗な酒質に表れているそうです。

★日本酒の製造工程
資料館の後は、平成7年より稼働している工場内を案内して頂きました。
160407 (18)宮崎本店_酒米の袋 - コピー
酒米を入れる袋。精米は自社で行っているそうです。
160407 (19)宮崎本店_洗米
酒米をポンプで2階に送り、”洗米”の工程へ。
160407 (22)宮崎本店_浸漬
米に水分を吸収させる”浸漬”の機械。
160407 (20)宮崎本店_蒸鏹
蒸鏹機。蒸米は放冷機を経て、約2割が麹米として自動製麹機へ運ばれます。
160407 (23)自動製麹
製麹機。写真の容器(ガラス製のロート)から自動的に種麹をふりかけるそうです。
160407 (25)麹室
2つの麹室。手前の小さい部屋は麹をクールダウンさせる出麹[でこうじ]用。
160407 (29)宮崎本店_仕込みタンク(1fより)
仕込みタンクは33,000ℓ×6本。1階から見上げるとかなり大きく感じます。
酵母は701、1501などを使用し、約3週間かけて仕込むそうです
160407 (24)宮崎本店_仕込みタンク
仕込みタンクを上部から覗いたところ。もろみはモーターシャフトで自動的にかきまぜているそうです。
160407 (27)宮崎本店_吟醸用タンク
吟醸系は小さめのタンクで仕込み、洗米や製麹なども手作りで行っているそうです。
160407 (30)宮崎本店_ヤブタ
上槽はヤブタを使用。約3日かけて徐々に圧をかけてもろみを搾るそうです。

★試飲
工場見学の後は再び資料館に戻り試飲をさせて頂きました。
160407 (31)宮崎本店_試飲
<試飲アイテム・宮の雪>
①本醸造酒
②純米酒
③山廃仕込 特別純米酒
④純米吟醸酒
⑤大吟醸酒
160407 (32)_宮崎本店_みりん梅酒
⑥純米みりん仕込み梅酒「三乃三[さんのさん]」、Alc.8.0%。三重県産の米、同県産の米焼酎のみで造ったみりん、三重県南紀産の南高梅から造った梅酒。

★単式蒸溜機(旧乙類焼酎用)
160407 (28)_宮崎本店_単式蒸留器
旧乙類焼酎(本格焼酎)を蒸溜する機械。冬場は日本酒造りで忙しいため、焼酎は主に夏場に造るそうです。同社では麦、米、酒粕、ごぼうなどから本格焼酎をつくっています。
ウイスキーも手掛けていますが、自社で蒸溜したものではなく、輸入モルト原酒とグレーン原酒を自社でブレンドしているそうです。

★連続式蒸溜機(旧甲類焼酎用)と仕込み水
現在は連続式蒸溜機を保有していないため、近隣の工場に蒸溜を委託し、自社で調合(加水)しているそうです。国内メーカーの旧甲類焼酎はほとんどが原料アルコールを海外から輸入し、国内で精製したものを使用しているとか。25度の焼酎だと7割以上が水となるため”仕込み水の違い”が味わいに与える影響はとても大きいようです。同じ町内で同じ原料アルコールを使用していても、同社と蒸溜委託先の焼酎の味わいは異なるそうで、酒造の奥深さが感じられました。
同社の仕込み水は鈴鹿山系の伏流水で非常にやわらかい軟水。キンミヤ焼酎にはなぜか甘みを感じるというお客様が多いそうですが、確かに”ほんのりとしたやわらかい甘み”を余韻に感じました。水は敷地内の2本の井戸(深さ150m)から採取。仕込み水の商品化は行っていないそうです(地盤沈下などを防ぐための取水制限、酒と比べて水は規制が強いなどの理由から)。

★なぜ、関東でキンミヤ焼酎が人気なのか?
三重県の酒蔵なのに、なぜ東京下町を中心に人気があるのか不思議に思っていました。質問したところ、人情的なお答えが返ってきて納得しました。大正12年の関東大震災の際、他の酒蔵は売掛金の回収に走る一方で、宮崎本店は自社運搬船に救援物資を積み込んで現地に向かったそうです。その心遣いに感激した問屋などが現在に至るまで同社を贔屓にするようになったそうです。

★下町酎ハイ・ワークショップ
160324 (9)
見学に先立ち、3月後半に「東京下町酎ハイの謎に迫る!?」というワークショップを開きました。キンミヤ焼酎とウイスキーをベースに天羽飲料の5種のエキスを用意し、参加者が自由に組み合わせて好みの酎ハイを見つけてもらうという内容です。キンミヤ焼酎への思い入れが強い参加者もいらっしゃったので、今回の訪問で得たものを今後の講座などで紹介していきたいと思いました。

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テーマ : 日本酒の酒蔵見学
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【見学】小澤酒造(東京・沢井) - これが東京都内?自然豊かな多摩川上流のほとりにある「澤乃井」の蔵元

「澤乃井[さわのい]」の小澤酒造を見学しました。
東京都内とは思えないほど、自然豊かな環境にある蔵でした。

日時:2016年4月5日(火) 11:00~
場所:小澤酒造(東京都青梅市沢井2-770)
内容:見学(ガイド付き)、試飲
料金:無料(見学、試飲)、有料試飲
交通:18きっぷ(東京⇔沢井駅ほか。1日あたり2,370円)

★アクセス
160405 (35)沢井駅
最寄駅はJR青梅線の沢井駅。
9:02に新宿駅を出て、10:28に到着しました(立川駅、青梅駅で乗り換え)。
酒蔵までは徒歩約3分です。
160405 (1)小澤酒造_外観
駅前の坂を下るとタンクが見えてきます。写真は坂の下から撮影したもの。
160405 (4)小澤酒造_外観
青梅街道を挟んで駅側に酒蔵、多摩川側(川のほとり)にレストランや売店などがあります。

★見学受付
160405 (7)小澤酒造_売店(見学受付)
売店で受付を済ませ、地下道をくぐって待合室の”酒々小屋”へ向かいます。
この回の見学者は10名でした。

★酒々小屋
160405 (11)小澤酒造_酒々小屋
最初に女性ガイドが蔵の歴史などを説明してくれました。

創業は、赤穂浪士の討ち入りと同じ元禄15(1702)年。
当時の古文書に”さけあらため(酒税を徴収する役人。漢字不明)”の記載があることから、同年を創業としたそうです。実際にはもっと前から酒が造られていただろうとのこと。なお、同書には「役人に馬を貸したところ病気になって返ってきて困っている」旨が書かれているそうです。

室内には酒器類なども展示されていました。
160405 (13)小澤酒造_びん洗浄機
[昔の洗ビン機]一升瓶を入れると水が出て、瓶の中を洗浄。

160405 (12)小澤酒造_使い徳利
[使い徳利]昔の酒蔵が顧客にレンタルした量り売り用の容器。写真は『大菩薩峠』の著者・中里介山氏が沢井に住んでいた際に使用したもの。


★元禄蔵
160405 (10)小澤酒造_元禄蔵入口jpg
元禄時代に建てられた貴重な”土蔵造り”の蔵。
入口では毎朝、従業員が2礼2拍手1礼をしているそうです。
160405 (15)小澤酒造_元禄蔵
外気温を通しにくい構造。昼夜・四季の寒暖差が少なく、エアコンは非設置。現在は主に貯酒用に利用されているそうです。
160405 (14)小澤酒造_元禄蔵タンク
写真はホーロー製のタンク、新しいものはステンレス製を導入。
タンクの上部には識別番号(ex.214)と内容量(ex.8,101。酒税の管理上、1ℓ単位)が記されています。
同蔵では約230本(200ℓ~54,000ℓ)のタンクを所有しているそうです。
160405 (24)小澤酒造_蔵守
蔵内には古酒も貯蔵されていました。

★酒米とぬか
160405 (19)小澤酒造_ぬか
酒米(山田錦とコシヒカリ)の他に、ぬかも展示されていました。
赤ぬかは主に家畜のエサに、白ぬかは菓子用(せんべい、団子など)などに再利用されているそうです。
同蔵では、白ぬかで米焼酎も蒸溜しているそうです。ちなみに、酒粕の蒸溜は行っていないそうです。

★搾り
160405 (18)小澤酒造_ヤブタ
上槽は主に機械を使用(ヤブタでなく永田式?)。一部、袋搾りも行っているそうです。
160405 (20)小澤酒造_酒粕パネルjpg
酒粕をはがしているところを写したパネルも展示されていました。

★明治蔵
160405 (22)小澤酒造_明治蔵
明治期に建てられた蔵。元禄蔵と同様、主に貯酒用に利用されているそうです。
昔は急な階段を蒸米をかついで昇り、二階から米などを容器に投入していたそうです。
現在の酒造りは、平成4年に完成した平成蔵で行っているそうです。

★仕込み水
軟水と中硬水の2種類。大部分は軟水を利用しているそうです。
160405 (26)小澤酒造_仕込水説明
[山の井戸]酒蔵から約4㎞離れた山奥にある井戸。約20年前に発見。穏やかな軟水。
[蔵の井戸]170年前に蔵の裏に掘られた140mの横井戸。ミネラル分が多い中硬水。高水山を源とし、秩父古生層の厚い岩盤から湧き出る岩清水。
160405 (28)小澤酒造_蔵の井戸内部
”蔵の井戸”の内部。

★無料試飲
160405 (31)小澤酒造_無料試飲
「澤乃井 本地酒 純米」、精米歩合65%、Alc.15度以上16度未満。ワイングラスでおいしい日本酒アワード2016で金賞受賞。
おちょこにセルフサービスで注いで試飲できます。こくのあるしっかりとした味わいで燗酒にしても美味しそうでした。

★有料試飲(唎酒処)
160405 (8)小澤酒造_利き酒処
5勺(90ml)の利き猪口で、十数種類の試飲(有料)ができます。
160405 (6)小澤酒造_利き酒メニュー
利き酒のメニュー。1杯200円からで、おかわりは100円引き。猪口は持ち帰りできます。
160405 (33)小澤酒造_有料試飲(蔵守ほか)
①「蔵守[くらもり] 純米 2009年醸造」、7年古酒、精米歩合65%、Alc.16度以上17度未満、200円。
②「彩は[いろは] 生酛純米 木桶仕込み」、精米歩合65%、Alc.15度以上16度未満、200円。

どちらもしっかりとした山吹色。⑦は古酒らしい力強いコクと複雑味、⑧はほんのりとした杉の香りが楽しめました。
水質のせいか、どの酒もまろやかで柔らかい印象でした。


★その他、メモ
・「澤乃井」の名称は、沢井(村)に由来。沢井は”豊かな名水が沢となって流れる”ことから名付けられた地名。
・蔵人は12名、杜氏は田中充郎氏。昔は越後杜氏を招いていたが、今は全員が社員。
・酒造りは9月から翌年4月までと寒造りにしては長め。
・酵母は自社育成酵母の他に、18号・9号・7号系を使用。
・杉玉は社員が作成。杉の葉は近隣の山から採取し、金属の芯に差し込んだ後に、バリカンで丸く整形。杉玉は奈良県桜井市の大神神社[おおみわ-]に由来。

午後は、多満自慢の石川酒造を訪れました。

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テーマ : 日本酒の酒蔵見学
ジャンル : グルメ

[JSA]まだ知らないソーテルヌの魅力(東京・神田) - セミヨンが生み出す対極の香味、極甘口の貴腐ワインと辛口のボルドー・ブラン。プルミエ・クリュ「シガラ・ラボー」のこだわり

日本ソムリエ協会(JSA)の分科会に参加しました。同じブドウ品種から対極の香味を持つワインが生まれることを再確認する良い機会となりました。また、貴腐ワインが単なる甘口ワインではなく貴腐菌由来の独特の香味を持つワインであることを学びました。

テーマ:まだ知らないソーテルヌの魅力
種 別:JSA関東支部 分科会セミナー
協 賛:中央葡萄酒(株)
日 時:2016年4月4日(月) 14:30~16:30
会 場:日本ソムリエ協会ビル3F(東京都千代田区神田東松下町17-3)
講 師:ジャン・コンペイロ氏(Château Sigalas-Rabaud/シャトー・シガラ・ラボー)
通 訳:三澤彩奈氏(中央葡萄酒)
料 金:1,000円(JSA会員価格)

★会場
160404 (2)日本ソムリエ協会ビル
会場の日本ソムリエ協会ビルは、都営地下鉄新宿線の岩本町駅から約300mです。この日はJR秋葉原駅から約700mの道のりを歩きました。

★講師&通訳
160404 (5)JSAソーテルヌ_会場
講師のジャン・コンペイロ氏は、シガラ・ラボーの現オーナー(Laure de Lambert Compeyrot氏)のご子息で醸造も担当されています。シガラ・ラボーはボルドー地方のソーテルヌ&バルサック地区に11あるプルミエ・クリュの1つです。
通訳の三澤彩奈氏はボルドー大学ワイン醸造学部DUAD(公認ワインテイスター)コースを卒業され、2007年にご実家の中央葡萄酒に入社されて以来、醸造家として活躍されています。中央葡萄酒は山梨県に勝沼・グレイスワイナリー(甲州市)と、明野・ミサワワイナリー(北杜市)を所有しています。2014年には「キュヴェ三澤 明野甲州2013」がデキャンター・ワールド・ワイン・アワード (DAWA) で金賞を受賞しています。

★ソーテルヌ
160404 (10)JSAソーテルヌ_
フランスのソーテルヌは、ドイツのトロッケンベーレンアウスレーゼ、ハンガリーのトカイと並び、世界三大貴腐ワインと称されています。貴腐ワインは、貴腐ブドウから造られる甘口の白ワイン。ソーテルヌ&バルサック地区では、水温が冷たいシロン川がガロンヌ川と合流し、2つの河川の水温の違いからブドウ畑に霧が発生します。この霧によってブドウにカビ(ボトリティス・シネレア菌)が付着し、菌糸が果皮のろう成分を溶かすことで果肉の水分が蒸発します。こうして甘みが凝縮された貴腐ブドウができあがります。

ボルドー地方の面積は約11.5万haですが、ソーテルヌ&バルサック地区はわずか2%(2,000ha)ほどの小さなA.O.C.です。同地区には、ソーテルヌ、ボンム、プレニャック、ファルグ、バルサックの5つのコミューン=村があります。バルサックは、ソーテルヌとバルサックのどちらのA.O.C.を名乗ることもできます。

1855年のパリ万博の際、メドック地区の赤ワインとともに、ソーテルヌ&バルサック地区の貴腐ワインにも格付けが行われました。唯一のプルミエ・クリュ・シュペリュール(特別第1級)の「シャトー・ディケム(Château d’Yquem)」を筆頭に、11のプルミエ・クリュ、15のドゥジエム・クリュが格付けされ、現在に至るまで変更は行われていません。シガラ・ラボーはプルミエ・クリュに格付けされています。

★シガラ・ラボー
160404 (6)JSAソーテルヌ_テイスティングアイテム(ボトル)
ボンム村にあるシガラ・ラボーは、クリュ・クラスの中で最も小さなシャトーです。”シガラ”はファミリーネーム、”ラボー”はシャトーがある丘に由来します。
企業買収が進み、ソーテルヌに残る家族経営のシャトーはシガラ・ラボーとラボー・プロミの2軒のみ。両者は元は同じシャトーでしたが、シガラ・ラボーが「シガラの宝石(仏:le bijou de Sigalas、英:the jewel of Sigalas)」とよばれる南向きの14haの畑だけを残して他の大部分の畑を売却し、それを購入して設立されたのがラボー・プロミです。

シガラ・ラボーはソーテルヌの中で最もバルサックに近い所にあり、前者の骨格がある複雑な味わいと、後者のフレッシュな味わいの両者の良い部分を兼ねそろえています。土壌は、(ぶどうにフレッシュな味わいをもたらす)粘土質の表面をグラーヴ(小石)が覆っており、南向きの畑でぶどうは良く熟すそうです。畑に植えられているのはセミヨンが85%でソーヴィニヨン・ブランが15%。前者はソーテルヌに複雑さを、後者はフレッシュさを与えるとされています。

<貴腐ぶどうの収穫はクレイジー!?>
グラス1杯のワインを造るのに、赤ワインなら1房で十分な場合もある一方で、貴腐ワインには1株の樹が必要となる場合もあります。貴腐菌は少しずつ付着するため、1本の樹の収穫が最大7回に及ぶこともあるそうです。貴腐かタダのカビかの見極めも重要であり、見た目で分からないときは香りで判別し、それでも不安な時はブドウを食べてみて、貴腐の味わいのあるものだけを収穫しているそうです。収穫時の貴腐ブドウの糖度は高く、潜在アルコールが21~23%にもなるそうです。
1.カビの生えたぶどうを収穫する、2.お金にならない作業をしている、という理由から、貴腐ブドウの収穫はクレイジーとも言われているそうです。

<醸造>
テロワールへのリスペクトから、酵母は(天然酵母ではなく、)ニュートラルな乾燥酵母を使っているそうです。発酵を止めるタイミングも難しく、アルコールと糖と酸のバランスを考えながら見極めているそうです。プレス機は3種保有しており、ヴァーティカルのものでゆっくり搾るのが良いそうです。絞ったものはタンクで一晩ねかせ、滓を沈めてから上澄みを使用するそうです。

<熟成>
糖度も酸度も高い貴腐ワインは長期熟成が可能であり、ソーテルヌでは60~70年寝かせることも当たり前だそうです(長くねかせれば良いというものではないとの指摘もありました)。シガラ・ラボーが所有する最古のヴィンテージは1910年、売り物では1975年。コンペイロ氏は、1881年のワインをテイスティングしたことがあるそうですが、味がしっかりのった素晴らしいワインだったそうです。

★テイスティング・アイテム
160404 (9)JSAソーテルヌ_テイスティングアイテム3種
①辛口2014:Alc.13.7%、総酸度4.9g/l。セミヨン。
②貴腐2013:Alc.13.4%、残糖度130g/l、総酸度3.69g/l。セミヨン。
③貴腐2001:Alc.13.5%、142g/l、総酸度4.05g/l。セミヨン85%、ソーヴィニヨン・ブラン15%。

160404 (7)JSAソーテルヌ_セミヨン2014辛口
①Sigalas-Rabaud La Semillante de Sigalas 2014

辛口の白は、現オーナーが2009年に導入したそうです。甘口ワインが売れにくくなってきていることから、辛口のソーテルヌを造っていきたいという動きがある一方で、今までにソーテルヌが築いてきた甘口の地位が薄れるのではというジレンマも抱えているそうです。

160404 (11)JSAソーテルヌ_シガラ・ラボー2013
②Château Sigalas-Rabaud 2013

160404 (8)JSAソーテルヌ_シガラ・ラボー2001
③Château Sigalas-Rabaud 2001

①最初にセミヨン種のドライ・タイプをテイスティングしました。色調は緑がかった淡いイエローで、黄色い柑橘類を中心とした華やかな果実香がありました。溌剌とした酸味が心地よく、微かにミネラルが感じられ、フレッシュで爽やかな味わいのワインでした。

②続いて、同じセミヨン種を使用したソーテルヌ2013年を利きました。色調は輝きのある濃いイエローで、熟したアプリコットや洋梨、微かに丁子やナツメグなどのスパイスの香りが感じられました。ハチミツのような凝縮した甘味があり、柑橘類のような程よい酸味が後味を引き締めてくれるバランスの良い貴腐ワインでした。

③さらにソーテルヌ2001年を利きました。外観はウイスキーのような琥珀色。果物の香りはドライフルーツのように変化しており、白檀や清涼感のあるお香のようなエキゾチックな香りも加わって、より複雑さを増していました。味わいにもシェリーのような熟成感が感じられました。2001年は非常によいヴィンテージで生産量も多かったそうです。

コンペイロ氏は、貴腐ワインには”サフランのような香り”や”スモーキーな香り”と”後味に残るほのかな苦味”があることを指摘されました。よく利いてみると確かにそのような香味が感じられました。これらは貴腐菌に由来する香りだそうです。貴腐ワインを(凍結果実や干しブドウを使用した)他の極甘口ワインと同じタイプと考えていましたが、この微生物由来の香味こそが貴腐ワインを特徴づける大切な要素であることを学ぶことができました。

ソーテルヌはフォワグラのような濃厚な料理と合わせるのがセオリーとされていますが、フランス南西部ではアペリティフからデザートまでソーテルヌで通すこともあるそうです。若いソーテルヌと熟成したソーテルヌの香味の違いを知っていれば、確かにそのような楽しみ方もできるのだと感じました。特に古いソーテルヌは、ウイスキーのように食後に単独で楽しみたいと思いました。

★ビオの認証をあえて取得しないこだわり
シガラ・ラボーではフェロモンを利用した害虫退治や除草剤を極力使用しない等、自然環境に配慮したブドウ作りを心がけています。しかし、ビオの定義がフランスではあいまいであるため、ビオの認証はあえて取得していないそうです。例えばボルドー液(硫酸銅と消石灰の混合溶液)を使用していてもビオの認定は可能ですが、長年にわたり畑に蓄積していく銅の悪影響が本当にないのかどうかはわからない等の疑問を持たれているそうです。「自分の庭のように、自分の子供のようにブドウを育てることが大切」というコンペイロ氏の言葉が強く印象に残りました。

★TGV延伸で、ソーテルヌ消滅の危機!?
フランスの高速鉄道TGV(テジェヴェ)が、2027年にボルドーから南方の街・ダクス(Dax)まで延伸する予定です。新線はソーテルヌのブドウ畑を横断するわけではありませんが、シロン渓谷を通る計画になっています。そのため、ソーテルヌ地区のテロワール(特に、霧の発生要因のひとつであるシロン川の水温)に影響を与え、貴腐ブドウが作れなくなることが懸念されています。
フランス鉄道線路事業公社(RFF)は「(ワイン生産環境に関する)影響調査は実施した」と主張していますが、地元のワイン生産者たちを納得させるには至らないようです。反対派は、TGV計画について調査するよう要求し、欧州司法裁判所(European Court of Justice)への提訴も辞さない構えを見せているそうです。『貴腐ワイン「ソーテルヌ」産地をおびやかす高速鉄道計画、仏(2015年01月02日 AFP)』より

★感想など
同じセミヨン種を使用したドライ・タイプと貴腐タイプの2種のワインをテイスティングすることで、全く違う香味を生み出す醸造の神秘を感じることができました。また、今まで貴腐ワインはただの甘口ワインと考えていましたが、「サフランやスモークのような独特の貴腐菌由来の香り」を知ることができ、とても有意義な体験となりました。

(初稿)2016.11.25

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テーマ : ワイン
ジャンル : グルメ

【見学】サドヤ・ワイナリー(山梨・甲府) - 巨大な地下セラー、一升瓶熟成、ブドウは兵器!?

石和温泉の山梨マルスワイナリーに続いて、甲府のサドヤ・ワイナリーを見学しました。個性的な商品、施設、歴史を持つワイナリーで見どころ満載でした。

日 時:2016年4月3日(日) 15:00~
場 所:サドヤ・ワイナリー(山梨県甲府市北口3-3-24)
内 容:ツアー見学(ガイド付き、約30分)、試飲
料 金:500円
交 通:18きっぷ(東京⇔甲府駅ほか。1日あたり2,370円)
URL:http://www.sadoya.co.jp/winery.html

★アクセス
160403 (49)
最寄り駅のJR甲府駅からワイナリーまでは徒歩約5分。駅の北口を出て正面の1つめの交差点を右折し、まっすぐ進むと左側にワイナリーが見えてきます。

★外観
160403 (91)サドヤ外観
南ヨーロッパをイメージしたというおしゃれな外観。正面のチャペルでは結婚式が行われていました。

★ツアーの待合室(ワインショップ)
160403 (52)待合室
ワインショップのレジでツアーの受付を済ませた後に、シニアの男性ガイドが迎えに来てくれました。この回の見学者は4名でした。

★ぶどうの樹
160403 (55) - ブドウ樹
垣根仕立てのカベルネ・ソーヴィニヨン。樹齢は約10年。樹高はコントロールできるそうですが、こんなに低い樹ははじめてみました。

★地下セラーへの入口
160403 (57)ワイナリー入り口
続いて地下セラーへ。屋根の下には、昔の商標「甲鐵[こうてつ]」のロゴが掲げられていました。地下セラーは約700坪もあり、内部は想像していた以上に暗く、ひんやりとした空気が漂っていました。

★貯蔵用タンク内部(展示室)
160403 (61) - 地下セラーコピー
白いタイル貼りの地下室は、かつてはワインの貯蔵用タンクだったそうです。天井にはワインを導くホース口や出入口の跡がありました。現在は展示室として使われており、昔の醸造器具などが置かれています。

★破砕・圧搾機
160403 (63)圧搾機
昔の破砕・圧搾機。
160403 (62)圧搾機中
破砕・圧搾機の内部。ローラーの溝は、ブドウの種をつぶさないためにつけられているそうです。

★コルクスクリュー
160403 (73)コルクスクリュー
色々なコルクスクリューも展示されていました。
160403 (71) - コルクスクリュー針コピー
エアポンプ式のオープナー。針をコルクに刺し、瓶内に空気を送り込んで空気圧により栓を抜きます。

★樽貯蔵庫(地下セラー内)
160403 (77)樽貯蔵庫
229ℓ(フルボトル約300本分)の木樽が並ぶ樽貯蔵庫。貯蔵中にワインが少しずつ蒸発(エンジェルズ・シェア=天使の分け前)し、そのままにしておくとワインの酸化が進んで劣化してしまうため、目減り分を補充する必要があります。補充作業がしやすいよう、樽は横一列に並べられています。ウイスキーは目減り分を補充しないため、樽を縦に何段にも積んでおけるそうです。

★試飲
樽貯蔵庫の奥のスペースで3種のワインを試飲しました。
160403 (79) -サドヤ試飲JPG
<試飲アイテム>
①白:オルロージュ(甲州、ソーヴィニヨン・ブラン)辛口、税別1,800円/720ml
②赤:オルロージュ(マスカット・ベーリーA、サドヤ農場産カベルネ・ソーヴィニヨン)辛口、税別1,800円/720ml
③赤:シャトーブリヤン・ミュール(サドヤ農場産カベルネ・ソーヴィニヨン)辛口、税別2,500円/750ml

①②の商品名「オルロージュ」はフランス語で時計の意味、③は同社のフラッグシップワイン「シャトーブリヤン」のセカンド・ラベルです。テイスティング・シートは5%割引券になっていました。

①は緑がかったイエロー。甲州の穏やかな香味を主体に、ソーヴィニヨン・ブランの爽やかなハーブ香が余韻に心地よく残りました。
②は紫がかったルビー色。甘いキャンディ香、時間が経つとイチゴ・ジャムの香りも。酸味の後に甘みが広がり、余韻にわずかに渋味。ガイドさんの”サツマイモを焦がしたときの香り”という表現が印象的でした。
③はガーネット色。ブルーベリーやカシス・ジャム、樽由来のバニラの香り。樽をうんと焦がすとコーヒーの香りになるそうです。

★ぶどうは兵器!?
160403 (80)ロッシェル塩
ぶどうに含まれる酒石酸から作られるロッシェル塩は、(潜水艦や魚雷の発する音波をキャッチする)水中聴音機の素材となるため、戦時中に海軍からの需要が急速に高まりました。また、海水から真水を作る脱塩剤の主原料にもなったので、陸軍からも大量の注文がありました。
当時のサドヤ醸造所は、ロッシェル塩の製造が可能な全国で唯一の施設であったため、国内のワイン醸造所から粗酒石が集められていたそうです。そのため、昭和20年の甲府空襲では標的とされてしまい、醸造所は全焼してしまったそうです(ただし、翌年には醸造を再開しています)。

以下、国税庁HPからの引用。
"採取した粗酒石に加里ソーダを化合させると、酒石酸加里ソーダという少し大きな結晶体が精製されます。これがロッシェル塩と呼ばれるもので、山梨県に所在の「サドヤ醸造場」が国内で唯一、製造が可能でした。"
"昭和18年初頭から、海軍は全国のワイン醸造場に粗酒石の採取を働きかけ、粗酒石は山梨県の「サドヤ醸造場」に集めロッシェル塩を精製し、精製品は東芝などの大電機メーカに依頼して、対潜水艦用の水中聴音機の量産態勢を構築しました。"

★一升瓶熟成
160403 (58)一升瓶
オーク樽で貯蔵した後に一升瓶(1,800ml)で熟成させるのが、サドヤ独自のワイン育成法。大きな瓶で熟成するほど、香りのピークは豊かに、ワインの寿命はゆるやかになるそうです。販売する際は、ワインを1回タンクに入れて澱を除いてから、再び瓶に詰めて出荷します。
サドヤのフラッグシップ・ワイン「シャトー・ブリヤン」は、オーク樽で貯蔵(白は1年、赤は2年)した後に、一升瓶で最低2年熟成させてから出荷されます。

★SADOYAの歴史
・もとは江戸時代より続く、油「佐渡屋」
・1909(明治42)年、「サドヤ洋酒店」(洋酒ビールなどの代理店)に転業
・1917(大正6)年、ワイン醸造販売を手掛ける「サドヤ」を創業
・農場を開墾するまでの間、勝沼産ブドウから造る「甲鐵印葡萄酒(甲鐵天然葡萄酒)」を醸造・販売
・1936年、フランスより導入した苗木によるブドウ栽培に成功
・1945年、戦火により醸造所が全焼。翌年には醸造再開
・1950年、フラッグシップ・ワイン「シャトーブリヤン1946」命名


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テーマ : ワイナリー見学
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【見学】山梨マルスワイナリー(山梨・石和温泉) - 2種の圧搾機と無料試飲マシーン

本坊酒造(株)の山梨マルスワイナリーを見学しました。

日 時:2016年4月3日(日) 11:30頃~
場 所:山梨マルスワイナリー(山梨県笛吹市石和町山崎126)
内 容:自由見学、試飲
料 金:無料
交 通:18きっぷ(東京⇔石和温泉駅ほか。1日あたり2,370円)
URL:http://www.hombo.co.jp/factory/yamanashi.html

★アクセス
160403 (3)ホリデービューやまなし
最寄り駅はJR中央本線の石和温泉駅。9:02新宿駅→11:05石和温泉駅のホリデー快速ビューやまなし号を利用しました。自由席なら18きっぷだけで乗車できます。指定席は追加料金が別途必要になります。
160403 (4)マルス外観
駅からワイナリーまでは徒歩約10分です。

★外観
160403 (40)山梨マルスワイナリー外観
駅側の入口から撮影。右奥の売店の手前に”工場見学案内図”が掲げられています。ワイナリーのパンフレットは売店に置かれています。

★工場見学案内図
160403 (6)見学案内図 - コピー
自由見学は、地下貯蔵庫からスタートします。

★地下貯蔵庫
160403 (23)地下貯蔵庫
地下通路の壁にはワインの歴史などを説明したパネルが展示されていました。
160403 (29c)山梨マルスワイナリー_地下貯蔵庫
通路脇の部屋には、木樽の他に”熟成用のかめ”も置かれていました。

★ワイン醸造場
屋外の醸造所には、2種類の圧搾機が展示されています。
160403 (31)圧搾機ブーハー
<ブーハー型>空気の力でタンク内の風船をふくらませることにより圧搾します。ぶどう果実をソフトに圧搾できるので、きめの細かいジュースを搾汁できます。
160403 (32)圧搾機バスラン
<バスラン型>ゆっくりと回転しながら徐々にドラム内の圧力を上昇させることによりブドウ果実を搾汁します。フランスで古くから使われている圧搾機です。

★低温貯蔵庫
160403 (34) - コピー低温貯蔵庫
貯酒をゆっくり熟成させるため、年間を通して温度10~13度、湿度70~75%に保たれています。

160403 (39) - コピーグラスライニングタンク
<グラスライニングタンク>琺瑯[ほうろう]製のタンク。鉄板の表面に特殊な耐食性ガラスを被覆した複合素材を使用。品質・香味・色調に影響を及ぼさず酒類の貯蔵に適しています。

★一階瓶詰工場
160403 (42)瓶詰
ガラス越しに瓶詰工程の機械などが見学できます。

★試飲(売店)
160403 (21)山梨マルス試飲
試飲会場は売店と同じ建物内にあります。
入口でプラスチックカップを受け取り、マシーンから好きなものを注ぎます。

<試飲アイテム>
①白:マルスワイン甲州辛口、Alc.12%、税込1,486円/750ml
②白:Mars Rich Tasteナイアガラ、Alc.10%、税込1,512円/500ml【限定】
③白:甲州スィートセレクション(甲州主体)、Alc.10%、税込1,906円/750ml【限定】
④赤:御坂マスカット・ベリーA、Alc.12%、税込1,566円/720ml
⑤ロゼ:春のわいん 巨峰&ピーチ、Alc.6%、税込1,077円/720ml
⑥酒精強化:ヴィニョ・デ・マルス、Alc.20%、税込1,836円/500ml【限定】
⑦グレープジュース(2倍に薄めて提供):笛吹川、果汁30%、税込839円/720ml

160403 (10)試飲機
銀のレバーを手前にセットするとワインが注がれます。

160403 (19)ヴィニョ・デ・マルス試飲
ヴィニョ・デ・マルスの試飲。年号を冠したヴィンテージ・ワインにブランデーとスピリッツを加えて甕で熟成したもの。色合いは濃いアンバー。ドライプルーンのようなしっかりとした甘味と酸味、アルコールの力強さが調和したデザートワインでした。

160403 (43) - ヴィニョ・デ・マルス
ヴィニョ・デ・マルスのヴィンテージ・リスト。完売・欠品を除いて、最高値は1961年の42,120円(500ml)。価格は熟成年数が増えるに従って上昇しており、ヴィンテージ毎のブドウの出来具合による価格の凹凸はついていないようでした。ベースのワインはほとんどが赤ですが、4ビンテージだけ白になっていたのが気になりました(長期熟成に適したブドウが出来なかった?)。

午後は、甲府のサドヤ・ワイナリーを訪れました。


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Nomura Seiji

Author:Nomura Seiji
・お酒と薬膳理論の入門講座、飲酒教育
 nomuras.jimdo.com
・JSAワイン検定講師
・JSAワインエキスパート
・1971年生
・東京在住

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