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【見学】福光屋(石川・金沢) - 白山の百年水で仕込む「黒帯」、「加賀鳶」の蔵元

『黒帯』や『加賀鳶』などを製造する福光屋[ふくみつや]を見学しました。金沢に現存する最古の造り酒屋で、(四季醸造ではなく)冬場だけの寒造りを行っています。ちょうど酒造時期だったので、酒母や醪の製造風景を見学することができました。

日時:2016年3月18日(土) 15:00~16:30頃
場所:福光屋(石川県金沢市石引2丁目8番3号)
内容:映像鑑賞、蔵見学、試飲(ガイド付き)
料金:500円(蔵内コース)

★アクセス
160318 (45)福光屋_外観
金沢駅から北鉄バス(錦町方面行)に乗車し、小立野[こだつの]停留所で下車します(約20分、運賃220円)。バスの進行方向に向かって停留所から1分ほど歩くと、右側に福光屋があります。

★見学受付
160318 (10)福光屋_SAKESHOP
福光屋本社1階のアンテナショップ「SAKE SHOP福光屋」で受付をします。酒蔵見学(蔵内コース)は定員10名で事前予約制です。お店の一角にはスイーツを楽しめるコーナーがありました。

★映像鑑賞
160318 (11)福光屋_映像鑑賞、試飲会場
最初に映像を鑑賞しました。内容は福光屋の紹介と日本酒の原料や造りの流れなどです。
机にはパンフレットと工場見学用の帽子などが置かれていました。

<創業>
創業は寛永二年(1625年)。安永年間(1772年~1780年)に、六代目・塩屋太助が石引町(現在地)にある寛永二年創業の酒蔵を買い取り、七代目の太助が「塩屋」の屋号を越中・福光町(先代の出身地)にちなんで「福光屋」と改めました。金沢で最も長い歴史を誇る酒蔵です。

<純米蔵>
160318 (44)福光屋_純米酒
同社は2001年から全量純米づくりに切り替えています。生産高万石単位の酒蔵では唯一の純米蔵だそうです。醸造用アルコール等を使用しないため、原材料に占める米の割合が高くなっています(写真の右側のボトル)。

<原料>
160318 (40)福光屋_酒米
福光屋では生産農家と契約栽培することによって、高品質の酒造好適米を安定確保しています。
・山田錦(兵庫県中町。昭和35年~。同社初の契約栽培)
・金紋錦(長野県木島平)
・フクノハナ(兵庫県出石)
・五百万石(富山県福光町)

<調質[ちょうしつ]>
福光屋独自の酒造工程。精米後の米に二昼夜にわたって細かい霧を降りかけることで、米本来の自然な水分を取り戻します。米の性質にあわせて蒸米の吸水率を調整することで、常に最適な蒸米ができるそうです。

<蔵人>
酒造りに携わる蔵人は約15名。杜氏の板谷氏は40代後半の生え抜きの社員杜氏。今年で4造りめになるそうです。

★百年水(仕込み水)
160318 (33)福光屋_百年水 - コピー
映像鑑賞の後は、福光屋の仕込み水「百年水」の井戸を見学しました。
「(白山に)一世紀前に降った雨が地中深く浸み込み、幾重にも重なった貝殻層をくぐり抜け、カルシウムやマグネシウムなど酒造りには欠かせない成分をゆっくり溶け込ませて、蔵に辿り着いている」ことが金沢大学理学部の調査で裏付けられています。
水質は“やや硬め”であるため、アルコール発酵がしっかりと進み、辛口の酒を醸します。
この水は誰でも無料で取水できるため、見学時にも数人の方が水を汲みに来ていました。中には大量の水を汲むために軽トラで来る人もいるそうです。ただし、ろ過や加熱殺菌などを行っていないため、水質の管理は自己責任となります。
福光屋の百年水は「酒蔵の水」としてペットボトルでも販売されています。

★壽蔵[ことぶきぐら]の見学
160318 (14)福光屋_寿蔵 - コピー
続いて4階建ての壽蔵[ことぶきぐら]を見学しました。同社には壽蔵の他に、光蔵[ひかりぐら]、禄蔵[みどりぐら]、福蔵[ふくぐら]という計4つの酒蔵があります。1階で洗米を終えた原料はポンプで壽蔵の4階に運ばれ、蒸米、製麹、酛立て、発酵の順に階下の作業場におろされて処理され、1階で醪が搾られます。
衛生管理のため、見学者は帽子・白衣・靴カバーを着用して蔵内に入ります。

<麹>
160318 (15)福光屋_麹
4階の麹室は衛生管理のため見学できませんでした。製麹は酒造りで最も気を使う工程であり、特に納豆菌の侵入には気を付けているそうです。100℃の熱でも死なない納豆菌には煮沸が効かないため、薬剤散布で対応します。しかし、薬のにおいがついてしまうため、とにかく菌を持ち込まないことが大切なのだそうです。
3階の階段の踊り場で試食した”出来立ての麹”は、白っぽい外観で優しい甘みがありました。

<酛立て(酒母づくり)>
160318 (17)福光屋_酛立て
続いて3階の酒母タンクを見学しました。酛立ては酵母を大量培養するための工程で、蒸米に麹、水、酵母菌を投入して酒母をつくります。タンクに貼られた紙に「酵母菌:F6B」と書かれていたので質問したところ、Fは福光屋の頭文字を表しているそうです。同社では(きょうかい酵母ではなく)厳選された約200種類のオリジナル酵母を主に使用しているそうです。
160318 (19)福光屋_櫂入れ
酒母をかき混ぜる「櫂入れ」の作業は、品温を均一化させることが目的。仕込んだ直後は櫂が刺さらないほどカチカチですが、酒母を軟らかくするのは(人力ではなく)、あくまでも糖化酵素のチカラに任せるそうです。酛立てにかかる日数は、速醸で約15日、山廃で約30日です。
160318 (18)福光屋_暖気
経過日数の異なる酒母の状態を確認できて、とても参考になりました。

160318 (26)福光屋_木桶
福光屋では木桶仕込みの酒も販売しています。杉桶の表面には腐敗防止のため柿渋が塗られています。柿渋は非常にクサいため、桶に塗るのは新入社員の仕事となるそうです。

<発酵室>
160318 (27)福光屋_発酵室入口
続いて、メインの発酵室を見学しました。アルコール発酵時には炭酸ガスが発生するため、室内は「酸素欠乏危険作業主任者(国家資格)」により管理されています。
160318 (28)福光屋_発酵室内
発酵室内。1日にタンク2~3本分の酒を搾っているそうです。醪の仕込みは初・仲・留の三段仕込みで、通常は約20日間(15℃)、吟醸だと約30日間(10℃)かかります。
160318 (31)福光屋_仕込みタンク(落下防止器具) - コピー
タンクの口には、落下防止用の「十字の器具」が置かれていました。大量の炭酸ガスを吸うと気を失ってしまう為、誤ってタンクに落ちた場合は助けが来るまで呼吸をしてはいけないそうです。

<上槽室>
160318 (34)福光屋_上槽 - コピー
続いて、1階で醪を搾る器具を見学しました。
160318 (36)福光屋_槽、原酒
白いテーブルの上の山吹色の液体は搾りたての酒です。通常は活性炭でろ過を行うため、酒の色は透明に近づきます。福光屋の酒が少し黄色い色をしているのは、純米酒の風味が落ちないよう、極力炭を使わないためだそうです。

★旧精米工場
160318 (39)福光屋_旧精米工場
壽蔵から試飲会場に移動する途中で旧精米工場を通りました。現在は外部に精米を委託していますが、以前は8台の大型精米機で9t(150俵)分の処理を行っていたそうです。

★試飲
160318 (42)福光屋_試飲(福正宗)
映像を鑑賞した部屋に戻り、試飲をさせて頂きました。写真の『福正宗』の他にも、『黒帯』や『加賀鳶』をプラスチックカップに自由に注いで利くことができました。
160318 (43)福光屋_試飲(みりん)
「福みりん」は、もち米(石川県産)、米麹、米焼酎(自家製)でつくられる三年熟成の純米本みりん。原料米には兵庫県産のフクノハナを使用しています。麹の濃厚な甘さと強めのアルコール度数(13.5~14.5度)を持つみりんは、デザート酒として楽しみたいと思いました。

★JR金沢駅周辺
酒蔵見学の後はバスで金沢駅に戻り、夜行バスの出発時刻まで散策や利き酒などを楽しみました。

<北鉄金沢駅>
160318 (47)北陸鉄道浅野川線
JR金沢駅前の地下道を歩いていると、懐かしい車両が目に飛び込んできました。北陸鉄道・浅野川線の8000系車両は、昔の京王電鉄・井の頭線の3000系車両が使われています。北鉄金沢駅の構内は壁で遮断されていないため、入札しなくてもホームの様子を見ることができました。

<金沢地酒蔵の利き酒セット>
160318 (48)金沢地酒蔵
JR金沢駅ビル1階の百番街あんとには、石川県の地酒を気軽にテイスティングできる利き酒カウンターがあります。3種のお試しセットはおつまみ付きで税込864円(吟醸セットは1,620円)。地酒の購入もできる駅近の便利なお店です。

★移動と宿泊
東京⇔金沢の往復には、さくら観光の夜行高速バスを利用しました。
【往路】3/14 22:40→翌7:15 新宿ワシントンホテル本館1階→金沢駅西口 3,780円
【復路】3/18 21:30→翌7:00 金沢駅西口→新宿駅 4,940円

【宿泊】R&Bホテル金沢駅西口(3泊。税込15,100円)

(初稿)2016.12.13

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【見学】農口酒造(石川・能美) - 新生・農口、”人が”醸す酒の魅力。「俺は日本一の酢をつくるために、日本一の酒を造りたいんだ」

思いがけず、農口酒造を見学する機会に恵まれました。伝説の名杜氏、農口尚彦[のぐちなおひこ]氏は既に引退(再引退)されていましたが、後任の渡辺忠杜氏が快く蔵内を案内してくださいました。数々の拙い素人質問にも丁寧にご回答くださり、頼れる親分肌のお人柄に触れて、「酒の魅力は醸す人にある」ことを再認識しました。

日時:2016年3月17日(金) 13:50頃~
場所:農口酒造(石川県能美[のみ]市末寺町イ42)
内容:見学(ガイド付き)、試飲
料金:無料
URL:http://www.noguchisyuzohonke.com/

★突然の出会い
160317 (8)農口酒造_外観
高知県の病院でお世話になった友人と5年ぶりに会う為に、石川県の能美市を初めて訪れました。愛媛県から来た友人の車の助手席で車窓の景色を眺めていると、突然、この風景が目に飛び込んできました。
160317 (10)農口酒造_外観2
能登杜氏四天王のひとり、農口尚彦氏の名を冠した酒蔵、”農口酒造”。
なぜ、こんなところに!!(私が知らなかっただけですが...)

農口山廃純米
農口尚彦氏(1932生)は「菊姫」や「常きげん」の蔵で活躍した伝説の名杜氏で、全国新酒鑑評会では金賞を27回(12年連続)も受賞しています。80歳を迎えるにあたって一度は杜氏を引退しましたが、自分には酒造りしかないと思い直し、2013年の秋に現役復帰されました。その際に身を置かれた蔵がこの農口酒造です。
150928 (4)寺島なす餃子講座_奥戸
農口杜氏が醸す山廃純米は個人的に好きなお酒のひとつです。今年初には四合瓶を6本ほど買い込み、ちびちび楽しみながら、自身の講座でも紹介してきました(写真は、東京都墨田区の伝統野菜”寺島なす”を使った餃子を楽しむ会で使ったテイスティング・アイテム。同区に本社があるアサヒビールが取扱う海外ビールに加え、餃子の個性に負けない日本酒などを選びました)。
みちば_農口
農口の山廃純米は、母の誕生日会に銀座の「懐食みちば」で飲んだ思い出の酒でもあります(この見た目にも涼しげなサービスにより、濃醇な無濾過生原酒をキリッと爽やかに楽しむことができました)。

「もしかしたら農口杜氏に会えるかもしれない。この機を逃したら二度とチャンスは訪れないかもしれない」と思い、友人に無理をお願いして時間を取ってもらい、酒蔵の門をたたきました。

160317 (13)農口酒造_事務所
事務所らしき建物へ赴くと、貫禄のある男性が対応をしてくれました。
早速、農口杜氏の所在を伺うと、彼は昨酒造年度でふたたび引退したとのことでした...

伝説の杜氏に会えるかもという期待が膨らんでいただけに、この瞬間は正直、がっかりしました。
しかし、応対してくれた男性が蔵を快く案内してくださり、数々のお話を伺ううちに、すっかり「新生・農口」の虜になりました。
この方こそ、農口酒造を立ち上げた時の社長であり、農口杜氏とともに酒造りを行い、彼の引退後に蔵の指揮をとっている渡辺忠杜氏でした(農口杜氏に復帰を呼びかけ、休眠していた山本酒造を取得して農口酒造を立ち上げました)。

★良質の原料を仕入れる力
160317 (27)農口酒造_山田錦
160317 (26)農口酒造_愛山
「良い酒造りは、良質な米を選ぶところから始まる」
当たり前のようですが、誰もが良質な米を入手できる伝手を持っているわけではありません。
農口酒造では、酒米の王様”山田錦”や、剣菱が隠し味で使っていた幻の米”愛山”を、兵庫県の特A地区から入手していました。どの世界でも人脈は大切ですが、渡辺杜氏は昔やんちゃをしていたころに培った人間関係をつくる力で、強力なコネをもっておられるようでした。
160317 (15)農口酒造_愛山の心白
渡辺杜氏は”これから伸びる米”として、愛山に強い期待を抱いていました。米粒をみせて頂きましたが、山田錦よりも大粒で心白も大きく、存在感のある外観でした。心白を確認するために”爪切り”を使用していたことがとても印象的でした。
160317 (17)農口酒造_稲
田んぼの土壌の違いや等外米の話なども伺うことができ、とても参考になりました。

★蔵内の見学
160317 (11)農口酒造_仕込み蔵入口
160317 (21)農口酒造_酒造場
続いて、仕込み蔵の中を案内して頂きました。まだ造りを行っていたので、一面にフレッシュな醪の馥郁とした香りが漂っていました。

160317 (22)農口酒造_もろみ
山廃純米のもろみ。通常は20日程度で搾れますが、山廃純米は28-29日程度かかるそうです。


160317 (20)農口酒造_酵母
酵母菌も見せて頂きました。日本醸造協会の14号系、7号系や秋田今野などを使用しているそうです。泡なし酵母(末尾が01)は本当に泡が立たないのかという質問をしたら、純粋培養して濃度を高めているため、泡がまったく立たないことはないとのことでした。

この後は、人生初の”酒造期間中の酒母室の中”も見学させて頂きました。
衛生管理に特に気を使うと思われる場所だけにいたく恐縮しましたが、酛立てという重要な工程で起きていることを実際に体感でき、とても感激しました。

続いて圧搾室や分析室などを案内して頂き、数々の貴重な体験をさせて頂きました。

渡辺杜氏は、どんな素人質問にも丁寧に答えてくださり、田んぼの土壌、原料米の流通経路、食事と酒の相性など、その範囲は日本酒造りに留まりませんでした。中学理科レベルの基礎知識から本に書いていない実務レベルの話まで、私の足りない知識をピンポイントで補ってくれるかのように、長い時間をかけて様々な角度から説明をしてくれました。多方面に造詣が深い方だと感じていたら、後に驚きのキャリアを歩まれていたことがわかりました。

★「俺は、日本一の酢をつくりたいんだ」
渡辺杜氏は、もとは東京の銀座で寿司を握られていました(経営もしていたと思われます)。良い酒を造るけど売れなくて苦労をしている酒蔵に発注を続けるなどして、厳しい時期のサポートや人間関係づくりもしてきたそうです。

渡辺杜氏が寿司屋をやめるきっかけとなったのは、300年前の江戸をテーマとしたNHKの番組でした。愛知県の知多半島にある江戸時代の寿司を再現した寿司屋(酢のメーカー?)を訪ねてその酢をなめたときに、衝撃を受けて「寿司屋をやめよう」と思ったそうです。そして、日本一の酢をつくりたいと思い、そのためには日本一の酒を造る必要があると考え、酒造界に身を転じられたそうです(米酢をつくるには、一度日本酒を造ってから、その酒に酢酸菌をはやして酢にする必要があります)。
 
このような経緯で杜氏になった人がいるとは夢にも思いませんでした。
お話を伺うほどに、その気風の良さに惹かれ、「この方が醸す酒を飲んでみたい」という想いが高まりました。

★渡辺杜氏の酒
事務所に戻り、最後に利き酒をさせて頂きました。

渡辺杜氏が求める酒質は「ストーン、カーン」。
口の中で待っていられない、喉の奥にストーンと入ってしまってさわやかっ!というような酒を狙って造っているそうです。

杜氏が1年目の時に醸した”会心の出来の山廃”を利かせて頂きましたが、まさにその表現通りの酒でした。

濃醇で端麗(淡麗ではありません)
力強いのに、きれいで爽やか

なんて美味いんだろう...

2本しか残ってないうちの貴重な1本を開けてくださり、そのお心遣いに感動しながらの利き酒でした。

渡辺杜氏は、良い酒をお手頃な価格で提供する事へもこだわりをもっていました。
(飲み手にとってはありがたいことです)。

四合瓶で1,350円の愛山純米(と山田錦の純米)・無濾過生原酒を購入して帰京し、酒好きが集まる席でふるまったところ、皆がその味わいに感激していました。

ブランドや知名度で選ぶ酒にもそれなりの楽しみがありますが、
造り手を知り、その魅力に惹かれて味わう酒には別格の満足感があります。

酒って”人が”醸すんだなぁ...

貴重な体験をさせて頂き、多大な感謝と心身ともに爽やかな酔いを感じながら、酒蔵を後にしました。

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【見学】宗玄酒造(石川・珠洲) - 能登杜氏四天王・波瀬正吉氏に師事した坂口幸夫杜氏の酒に魅せられて奥能登の”恋路”へ...

能登杜氏四天王・波瀬正吉氏に師事した坂口幸夫氏が杜氏をつとめる宗玄酒造を訪れました。全国新酒鑑評会の公開利き酒会でその味わいが強く印象に残り、映画「一献の系譜」を観て、より興味を深めました。インターネット(公式HP以外)で蔵見学は応相談とあったので電話で問い合わせたところ、内部見学は不可、試飲は可とのこと。蔵内が見れないのは残念でしたが、能登杜氏の聖地・珠洲[すず]をこの目で見てみたいとの思いも強く、訪れることを決めました。

日時:2016年3月16日(木) 11:10頃~
場所:宗玄酒造(石川県珠洲市宝立町宗玄24-22)
内容:見学(外観のみ)、試飲
料金:無料

★アクセス:
160316 (27)北陸奥能登バス_金沢駅
金沢駅東口8:00発→恋路浜11:00着の北陸奥能登バス(宇出津真脇特急線[うしつ・まわき-])を利用しました。珠洲市だから珠洲特急線かと思って調べていたら、それよりも良い路線がありました。念のためバス会社に問い合わてみて良かった...
160316 (23)北陸奥能登バス_切符
バスが発車する1番乗り場の近くの窓口で往復割引券を買いました。往復で4,670円です。
160316 (28)北陸奥能登バス_志雄
のと里山海道の”志雄パーキングエリア”で途中休憩があります。
160316 (29)北陸奥能登バス_車窓
車窓の風景。
160316 (32)北陸奥能登バス_車内
最後は貸切り状態でした...
160316 (35)宗玄_恋路浜停留所
最寄りの恋路浜停留所に到着。バス会社に問い合わせて、このような場所があることをはじめて知りました。
160316 (80)宗玄_恋路浜停留所(アップ)
なんてロマンチック...(注:男の一人旅です)

160316 (65)宗玄_珠洲市看板
恋路浜停留所は能登町の北端にあります。ここから目的地までは、一本道で約500m。いざ、能登杜氏の聖地・珠洲市へ...

★宗玄酒造
160316 (48)宗玄_外観
創業は1768年。創業一族は、能登国守護の一族、畠山義春氏の末裔です。天正五年(1577年)、七尾城主を務めた彼の一族は、上杉謙信の城攻めに遭い、珠洲に逃れて宗玄と改称しました。そして、明和五年(1768年)に宗玄忠五郎氏が酒蔵を興しました。現在の形態は株式会社で、オーナーの個人会社ではありません。
160316 (46)宗玄_明和蔵
正面奥に見えるのが、創業時に建てられた「明和蔵」。
160316 (45)宗玄_平成蔵
平成10年に完成した「平成蔵」。
160316 (38)宗玄_売店
売店のある建物。

★試飲
160316 (59)宗玄_売店
はじめに、売店で試飲をさせて頂きました。
160316 (39)宗玄_試飲

<試飲アイテム>
①「宗玄 純米大吟醸・初しぼり」、兵庫県産山田錦100%、精米歩合50%、17度、米・米こうじ
②「宗玄 純米・八反錦」、広島県産八反錦100%、精米歩合55%、17度、米・米こうじ
③「宗玄 純米・石川門」、石川県産石川門100%、精米歩合65%、17度、米・米こうじ
④「宗玄 特別純米・純酔無垢」、兵庫県産山田錦100%、精米歩合55%、15度、米・米こうじ
⑤「宗玄 隧道蔵・トンネル貯蔵」、兵庫県産山田錦100%、精米歩合55%、15度、米・米こうじ
⑥「艶やか宗玄 雲のあはひ 純米吟醸」、兵庫県産山田錦 100%、精米歩合(麹)50%、(掛)55%、16度、米・米こうじ  

どの酒もふくよかでうま味があるのに、味切れが良くすっきりと感じられました。
①は華やかなフルーツの香りが印象的な純米大吟醸。②はなんと、広島県の酒米・八反錦!独特のコクのある香味。③は石川県のオリジナル米・石川門を使った純米酒で濃醇な味わい。②③④は米の違いが楽しめて、利き酒会で紹介したら楽しいだろうなぁと思いました。⑤は蔵の裏にあるトンネル貯蔵庫(後述)で貯蔵熟成した純米酒で、口当たりが非常にやわらか、⑥(青い瓶だったのでHPで確認してこの銘柄だと思うのですが...)はグレープフルーツのような爽やかな柑橘類の香りが楽しめる気品のある純米吟醸でした。

酵母は主に「金沢酵母」を使用しているそうです。

(参考)石川県の酒造好適米「石川門(石川酒52号)」について~”酒米・石川門の会”のHPより
(a)石川門の系譜
♀:予236(石川県育成系統。五百万石×フクヒカリ)
♂:新潟酒28号(一本〆。五百万石×豊盃)
(b)石川門の特徴
1.石川県での栽培に適している。
2.早生品種/短棹で倒伏しにくい。
3 .吟醸酒向きの品質を有している。
4.粒が大きい(五百万石よりも大粒)/心白が大きく、心白発現率が高い。

石川県産の米としては、他に「能登ひかり」などがあるそうです。

160316 (42)宗玄_仕込水
瓶入りの仕込水。奥能登の黒峰山系の伏流水を使用しているそうです。残念ながら販売はしておらず、蔵元のみで味わえるものでした。

★隧道蔵[ずいどうぐら]
160316 (62)宗玄_隧道蔵
平成蔵の裏手にある「隧道蔵」を案内して頂きました。
160316 (43)宗玄_隧道蔵の入口
160316 (44)宗玄_隧道蔵内部
宗玄は、北陸初の「トンネル貯蔵酒」を手掛けています。平成17年に廃線となった”のと鉄道能登線”が走っていた「宗玄トンネル」(全長130m、幅4m、高さ5m)のうち、中央部の80mを利用して『隧道蔵(ずいどうぐら)』を築きました。蔵内の温度は年間を通して10℃台前半で一定しており、日本酒の貯蔵・熟成に理想的な環境を保っています。カビの付着を防ぐため、熟成時にはビンをPET樹脂でラッピングしておくそうです。

<隧道蔵オーナー倶楽部>
宗玄トンネル貯蔵酒を6本以上購入し、名前が入った専用棚で好きな期間熟成させることができます。年間維持管理費は税込1,080円。オーナーはいつでも無料で蔵内を見学できます。

★坂口幸夫杜氏
坂口杜氏の酒造りのキャリアは、15、16歳の時に滋賀県の蔵に出た時に始まり、以降、石川県加賀の「菊姫」に2年、輪島の清水酒造に杜氏として6年つとめ、平成6年から宗玄酒造に在籍されています。

<一献の系譜 ~ 能登杜氏のドキュメンタリー映画より>
パンフレットの中で坂口杜氏は”永遠の挑戦者”として紹介され、”酒造歴50年の間には、左手の指先二本を切断する事故も起きた”ことや、”夏は野菜と飯米を育て、海でサザエ漁やイカ漁をして過ごす(半漁半農)”生活を送られていることなどが記されています。映画の中で、同じく蔵につとめる息子さんのインタビューがありました。迂闊に杜氏を継ぐとは言えないと重々しく発言しており、実の父に畏敬の念を感じているお姿が強く印象に残りました。

能登杜氏物語~坂口杜氏のインタビューより>
坂口杜氏:"農口杜氏と波瀬杜氏は同級生でライバル。酒の造り方も180°違う。俺はやっぱり波瀬さんのところで育ったせいかな。たとえば山廃は造らん。俺と波瀬さん二人で、「山廃造らんでも、しっかりした味の酒を造れば、山廃に負けん」と、そういう意気込みでやってきた。俺は波瀬杜氏と農口杜氏と両方自分で見てるからね、それが一番恵まれとると思う。
 波瀬さんに対しても好きなこと言ってきたけど、波瀬さんに向かって好きなこと言えたのなんて、俺だけでないかな。何回か(鑑評会で)負かいたこともあるけど、「10回まで二人して(賞を)もろうげぞ」て言うとったのに亡くなられて。俺も困っとるんや。「我れ(=お前)しかおらんがや」と言われて頑張ってきたんやから。"

坂口杜氏は”能登杜氏四天王全員を師に持つ”と言われていますが、やはり波瀬正吉氏への想いが一段と強いようです。また、「大吟醸は店の看板。純米酒は自分の酒。俺はそういうつもりでやってる。」と語られています。その他にも、同インタビューでは、杜氏が蔵人をとても大切にしていることや、酒造りに対する真摯なお気持ちが伺えます。

★見附島[みつけじま]
160316 (51)宗玄_見附島
酒蔵の北側約3.3kmのところにある”見附島”。蔵のスタッフに教えて頂き、折角だから訪れようとしたところ、親切にも車で送ってくださいました。
160316 (50)宗玄_軍艦島
見附島は、当地方に広く分布している新第三紀珪藻泥岩からなる白亜の島で、周囲400メートル、面積1,147平方メートル、標高は28メートルです。見附島という島名は、空海(弘法大師)が佐渡島から当地方に渡った際、最初に見付けた島であることに由来します。島の形が軍艦に似ていることから、軍艦島とも呼ばれています。
160316 (52)宗玄_見附茶屋_サザエごはんセット
近くにある休憩所「見附茶屋」でランチ。さざえごはんセット(1,000円)。

★見附島から恋路海岸へ
160316 (55)宗玄_奥能登の町並み
帰りは恋路浜停留所まで約3.8kmの道のりを歩きました。黒い屋根瓦(能登瓦)と下見板張り[したみいたばり]の伝統的な住居が立ち並び、奥能登らしい風景を楽しむことができました。
(参考)下見板張り:建物の外壁に、長い板材を横に用いて、板の下端がその下の板の上端に少し重なるように張ること。また、その外壁。
160316 (57)宗玄_宗玄停留所
酒蔵のすぐ北側にあった路線バスの”宗玄”停留所。やっぱり歩いてよかった...
160316 (58)宗玄_宗玄停留所(遠景)
停留所の建物も奥能登の雰囲気を醸し出しています。
160316 (63)宗玄_能登瓦
宗玄酒造の建物の脇に積まれていた黒い”能登瓦”。
160316 (66)宗玄_トロッコ恋路駅
奥のとトロッコ鉄道(愛称:のトロ)の”恋路駅”。事前予約をすれば、宗玄駅(宗玄トンネル入口)との往復600mの乗車を楽しめます。
160316 (70)宗玄_恋路物語の像
恋路海岸の地名の由来である”恋路物語”の像。かつて、この地に鍋乃と助三郎という愛し合う2人がいました。助三郎は夜ごと鍋乃が焚く火を目印に逢瀬を重ねていましたが、ある晩、助三郎の恋仇が別の場所に火を焚き、おびき寄せられた助三郎は海の深みに身を取られて命を落としてしまいました。鍋乃はその悲しみから海へ身を投げ、2人は生きているうちに結ばれることなく、命を落としてしまったそうです。
160316 (71)宗玄_恋路観音像
恋路観音像。奥に見えるのは弁天島。
160316 (68)宗玄_恋路海岸の奇岩
迫力のある奇岩。
160316 (67)宗玄_恋路海岸モニュメント
恋路海岸の少し北側にあるハート型のモニュメント。カップルが2人で鐘を鳴らすと恋の願いが叶うそうです。見附島から恋路海岸までの海岸線は、「えんむすビーチ」と言われています。毎年7月の海の日の前日には「恋路の火祭り」が行われ、大松明が夜の海を赤く染めるそうです。
160316 (74)宗玄_酒粕と宗玄の酒と恋路浜
購入したミニボトルとお土産に頂いた酒粕を並べて...見附島に送ってくださった地元に長く住む女性は、宗玄の酒粕の美味しさをしみじみと語っていました。他所で酒粕を食べた時に、いかに宗玄の酒粕が美味しいかを思い知ったそうです。

★帰路
160316 (78)宗玄_恋路浜停留所(遠景)
帰りは、恋路浜15:08発→金沢駅西口18:14着の特急バスを利用しました。
160316バス時刻表
1日2本しかない路線なので、乗り遅れたらえげつないことになります...
160316 (87)宗玄_帰路
途中で夕暮れ時の海岸沿いを走りました。

★シャトーシノン(金沢市内のワインバー。金沢市片町1-1-18)
160316 (25)シャトーシノン
夜は前日のソムリエ協会のセミナーでお会いしたYさんがつとめている金沢市内のワインバーにお邪魔しました。Yさんは有名な酒蔵「菊姫」が一般公募した”酒マイスター”の一期生。この制度は、菊姫が杜氏制度の先行きを懸念して”酒造りができる社員”を育てるために導入したそうです。
160316 (29)シャトーシノン_シェリー
ワインアドバイザー&ベネンシアドールのYさんおすすめのシェリー(オロロソ)。深い...
160316 (27)シャトーシノン_なつめとブルーチーズ
なつめとブルーチーズ。ドライフルーツの濃厚な甘みに、ブルーチーズの塩味とうま味、青かびの心地よい刺激がとてもよく合っていました。
160316 (28)シャトーシノン_パテ
フレッシュ感と濃厚なコクの両立が楽しめたパテ。添えられているマスタードも絶品でした。

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テーマ : 日本酒の酒蔵見学
ジャンル : グルメ

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Nomura Seiji

Author:Nomura Seiji
・お酒と薬膳理論の入門講座、飲酒教育
 nomuras.jimdo.com
・JSAワイン検定講師
・JSAワインエキスパート
・1971年生
・東京在住

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