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【見学】東北銘醸・蔵探訪館(山形・酒田) - 生酛造りにこだわる『初孫』の蔵元。充実の利き酒コーナー

東北銘醸の酒造資料館「蔵探訪館」を見学しました。伝統的な生酛[きもと]造りにこだわる『初孫[はつまご]』の蔵元です。


日時:2016年8月26日(金) 15:30~16:30
場所:東北銘醸[とうほくめいじょう](酒田市十里塚字村東山125-3)
内容:自由見学、試飲
料金:無料


★アクセス
160826 (220)東北銘醸・蔵探訪館_工場
東北銘醸は、JR酒田駅から約7kmのところにあります。


★東北銘醸
160826 (219)東北銘醸・蔵探訪館_外看板(初孫)
回船問屋を営んでいた初代・佐藤久吉氏が庄内藩の酒井家より酒造技術を学び、1893年(明治26年)に酒造会社を興しました。代表銘柄は『初孫』。当初の酒銘は『金久[きんきゅう]』でしたが、当家に長男が生まれたのを機に、皆に愛され喜ばれるような酒にしたいとの願いを込めて、昭和のはじめに改名したそうです。シンボルマークの「やぶこうじ」は、秋から冬にかけて赤い実をつける縁起の良い植物です。


★蔵探訪館
160826 (222)東北銘醸・蔵探訪館_外観
同蔵では、酒造りの工程などが学べる資料館「蔵探訪館」が一般向けに開放されています(製造工程の見学はできません)。充実した利き酒コーナーもあります。
160826 (228)東北銘醸・蔵探訪館_全景図
蔵探訪館は、平成6年より稼働している新工場の敷地の一角にあります。創業時は酒田市中心部の本町に蔵がありましたが、設備拡張とより良い水を求めて、この地に新工場を建設したそうです。


★エントランスと志るしの杉玉
160826 (223)東北銘醸・蔵探訪館_エントランス
エントランスには米俵や菰樽[こもだる]などが飾られています。向かって右側に展示室、左側に利き酒コーナーと売店があります。
160826 (226)東北銘醸・蔵探訪館_志るしの杉玉
造り酒屋の軒先に吊るされている杉玉は、「酒ばやし(酒林)」、「三輪ばやし」、「志るしの杉玉」とも呼ばれています。奈良県の大神神社[おおみわじんじゃ]のご神木である杉にあやかってつくられたもので、酒造りの安全や商売繁昌、子孫繁栄などを祈る「奇す玉」として、鄭重に祀られています。
160826 (224)東北銘醸・蔵探訪館_神棚
事務スペースの上部には祭壇がありました。酒神といえば京都の松尾大社が有名ですが、こちらでは大神神社の三輪明神が祀られているそうです。


★展示室
160826 (227)東北銘醸・蔵探訪館_展示室
酒造工程のパネルや原料のサンプル、酒器、初孫の輝かしい受賞歴などが展示されている展示室。

<稲のサンプル>
160826 (245)東北銘醸・蔵探訪館_稲 - コピー
山形県農業試験所から提供された稲のサンプル。
160826 (246)東北銘醸・蔵探訪館_稲のラベル
山形県のオリジナル酒米も展示されていました。
・出羽燦々(山形酒49号)、育成年:H6、♀美山錦×♂青系97号「華吹雪」。
・出羽の里(山形酒86号)、育成年:H13、♀滋系酒56号「吟吹雪」×♂「出羽燦々」。

<麹菌>
160826 (235)東北銘醸・蔵探訪館_種麹2種(拡大) - コピー
種こうじのサンプル。左は大吟醸用。

<酒造器具の写真や酒造工程のパネル>
160826 (233)東北銘醸・蔵探訪館_精米機(写真) - コピー
精米機の写真。平成3年(1991年)に精米工場が新築され、5台の全自動精米機が導入されたそうです。
160826 (238)東北銘醸・蔵探訪館_ろ過機の型
ろ過機の構造。一般的な日本酒の本にはここまで詳細に記載されていないので参考になりました。
160826 (237)東北銘醸・蔵探訪館_醪の標準的な品温経過
醪の標準的な品温経過のグラフ。酒造りがいかに繊細で緻密な作業を必要とするかがわかります。


★受賞歴
160826 (241)東北銘醸・蔵探訪館_賞状の数々
数々のコンクール等で獲得した賞状などの展示コーナー。
160826 (250)東北銘醸・蔵探訪館_全国新酒鑑評会の賞状(金賞)
第98回の全国新酒鑑評会(平成22年)にて金賞を受賞した際の賞状。


★生酛造りの資料
160826 (235)_東北銘醸・蔵探訪館_生酛造りの資料
同蔵がこだわる「生酛造り」や日本酒のしくみについてわかりやすく説明したオリジナルの資料もあります。

<生酛造り>
アルコールをつくる酵母菌は(雑菌が苦手とする)酸に強いため、酒母を造る際に”乳酸を活用”して原料を酸性にします。市販の乳酸を添加する簡易な方法が「速醸系酒母」、空気中の乳酸菌に乳酸をつくらせる手間も時間もかかる方法が「生酛系酒母」です。

生酛系酒母と速醸系酒母(カッコ内が速醸系)
仕込温度:6-7℃(20℃)
製造日数:20-30日(7-15日)
アミノ酸:5-8(2-3)
酸度:10(7)

★利き酒コーナー
160826 (258)東北銘醸・蔵探訪館_試飲コーナー
利き酒コーナーには8種類のお酒が用意されていました。小さなプラスチックカップを受け取り、自由に試飲ができるスタイルです。

①『初孫 生酛純米吟醸 旬香』Alc.15.5%、出羽燦々(精米歩合60%)、日本酒度+4、酸度1.4、1,458円/720ml
②『初孫 生酛純米吟醸 いなほ』Alc.15.5%、美山錦(精米歩合55%)、日本酒度+4、酸度1.4、1,458円/720ml
③『初孫 辛口本醸造 峰の雪渓』Alc.15.5%、美山錦(精米歩合60%)、日本酒度+4、酸度1.3、1,134円/720ml
④『初孫 生酛純米』Alc.15.3%、美山錦(精米歩合60%)、日本酒度+3、酸度1.4、1,172円/720ml
⑤『初孫 純米本辛口 魔斬』Alc.15.5%、美山錦(精米歩合55%)、日本酒度+8、酸度1.5、1,323円/720ml
⑥『初孫 生酛純米大吟醸 祥瑞』Alc.16.5%、日本酒度+3、酸度1.4、2,808円/720ml
⑦『初孫 大吟醸』Alc.16.5%、山田錦(精米歩合40%)、日本酒度+2、酸度1.2、3,348円/720ml
⑧『初孫 生酛特別本醸造原酒 古酒三歳』Alc.18.0%、日本酒度+2、酸度1.6、2,268円/720ml

④『初孫 生酛純米酒』
160826 (266)東北銘醸・蔵探訪館_初孫_生酛純米酒
初孫の代表作品。飲み飽きのしない定番酒。ぬる燗にしても美味しそうでした。

①『初孫 生酛純米吟醸 旬香[しゅんか]』
160826 (260)東北銘醸・蔵探訪館_試飲_旬香
出羽燦々を100%使用し、搾ったままの酒を氷温で貯槽した純米吟醸。上立ち香は上品でフレッシュ、純米ならではのふくよかさと旨味があり、余韻にスッキリとしたキレが感じられました。季節限定商品。

⑤『初孫 純米本辛口 魔斬[まきり]』
160826 (268)東北銘醸・蔵探訪館_試飲_魔斬
魔斬とは、酒田に伝わる切れ味の鋭い小刀(主に漁師が使用)。魔を斬ることから、魔除けの縁起物とされています。日本酒度は+8で、名前の通りスッキリとした辛口の酒でした。

⑧『古酒三歳』
160826 (275)東北銘醸・蔵探訪館_試飲_古酒三歳
3年以上熟成させた生酛造りの特別本醸造。外観はほんのりと琥珀色。熟成による複雑な香りとまろやかな口当たりが楽しめました。


★売店
160826 (279)東北銘醸・蔵探訪館_売店
利き酒コーナーの一角には、お酒や特産品などの売店コーナーがあります。
160826 (280)東北銘醸・蔵探訪館_商品ケース - コピー
旅のお伴用に『旬香』の4合瓶を購入しました。

160826 (276)東北銘醸・蔵探訪館_鉄釜
売店の外に展示されていた釜。

★杜氏
東北銘醸の杜氏は、後藤英之[ごとうひでゆき]氏。昭和55年に東京農業大学・農学部醸造学科を卒業され、翌年に初孫本店(現、東北銘醸)に入社し、29歳で杜氏に就任されています。


(初稿)2017.9.1

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テーマ : 日本酒の酒蔵見学
ジャンル : グルメ

【見学】オードヴィ庄内(山形・酒田) - 庄内の自然の恵みで”命の水”を醸す蔵。米、梨、メロン、そしてこんなものまでも...。造り手の方の酒造歴は「まだ40(年)」。

亀ノ尾の里資料館、熊谷神社に続き、酒田市のオードヴィ庄内を見学しました。
前日の電話予約にもかかわらず、快くご対応してくださいました。

日時:2016年8月26日(金) 14:00~
場所:オードヴィ庄内(山形県酒田市浜中乙123)
内容:見学(ガイド付き)、試飲
料金:無料

★アクセス
160826 (170)オードヴィ庄内_外観
酒蔵は、庄内空港から2.2km、酒田駅から約13kmのところにあります。この日は車で連れて行ってもらいました。
160826 (218)オードヴィ庄内_蔵の煙突
蔵の煙突。雰囲気があります。

★オードヴィ庄内
160826 (171)オードヴィ庄内_入口
明治8年(1875年)に醤油・味噌の麹醸造業から衣替えして創業。代表銘柄の「清泉川[きよいずみがわ]」は、付近より湧き出る泉の水を用いて仕込みを行った事に由来するそうです。酒蔵は日本海に面する庄内砂丘の近くにあり、一帯には庄内空港、湯の浜温泉、土門拳記念館、庄内夕日の丘オートキャンプ場、山居倉庫などがあります。清酒以外にも地元の果物を使ったワインなどを造るようになったため、1991年の庄内空港の開港を機に、社名を清泉川酒造(ある雑誌では、佐藤酒造場)からオードヴィ庄内に変更しています。現在の当主は6代目の佐藤晴之氏。酒造りのモットーは「酒に手のぬくもりを伝える」こと。

★蔵見学
最初に、蔵の中を案内して頂きました。

<神棚>
160826 (186)オードヴィ庄内_松尾様
酒造の神・松尾様をまつる神棚。

<蒸きょう、放冷>
160826 (173)オードヴィ庄内_鉄釜 - コピー
米を蒸すのはなんと鉄釜!大小2つの釜は米の量によって使い分けているそうです。この釜に甑[こしき]をはめて米を蒸します。
160826 (175)オードヴィ庄内_ボイラー - コピー
蒸気を発生させるボイラー。
160826 (172)オードヴィ庄内_放冷機
蒸し上がった米は放冷機で冷まします。
160826 (176)オードヴィ庄内_蒸米を運ぶパイプ
冷やした米はポンプで仕込み用のタンクに運びます。麹米や酒母用の蒸米は、別途、人の手で運ぶそうです。

<麹室>
160826 (184)オードヴィ庄内_麹室の入口
麹室の入口。煉瓦造りの佇まいが歴史を感じさせます。扉にも松尾大社の御守がありました。
160826 (180)オードヴィ庄内_麹室の中
麹室の中。吟醸系の麹は手作り(蓋麹)で行うそうです。
160826 (182)オードヴィ庄内_麹を砕く機械
固まっている麹を砕く機械。

高温・多湿の室の中での製麹作業はただでさえ過酷なものですが、あらゆる作業を手で行っていた時代は本当に大変だったそうです。案内してくれた方が「昔はぜんぶ手でやって泣いた記憶がある。」と仰ったので酒造歴を伺ったところ、少し考えられた後のお答えが、

「まだ40(年)前後じゃないかな...」

「天の無い酒造り」という言葉がありますが、技を究めようとする方の謙虚かつ真摯な姿勢に心を打たれました。

<仕込み>
160826 (178)オードヴィ庄内_タンク
仕込み用のタンク。

<上槽・火入れ>
160826 (187)オードヴィ庄内_槽
上槽は写真の槽[ふね]で行い、ヤブタ式の圧搾機は(保有はしているものの)使わないそうです。ヤブタ臭とよばれる匂いやゴム臭が入らないよう(加えて、その匂いを消すために炭を使いすぎることがないよう)、敢えて手間のかかる圧搾法にこだわり、火入れも一本一本、人の手で行っているそうです(ろ過はSFフィルターという非常に目の細かいフィルターを使用)。

少ない人数で作業をしているため、造りは秋口から翌年の5~6月までかかるそうです。蔵のモットーにも掲げられている通り、手間を惜しまず手造りを貫くこだわりが感じられました。

★酒造り
米は基本的に山形県・庄内産の「出羽燦々」、「美山錦」、「出羽の里」などを中心に使い、水は”鳥海山の伏流水(地下水)”で仕込んでいるそうです。酵母菌も山形酵母(の中にも色々と種類があるそうです)がほとんどで、麹菌も山形産(オリーゼ山形?)を使うものがあり、”オール山形”へのこだわりが感じられました。酒質としては、香りが高いものよりも、味がしっかりしたものを目指しており、食事の邪魔をしない”究極の食中酒”を理想としているそうです。

★試飲
160826 (191)オードヴィ庄内_試飲カップ
蔵見学を終えると、社長が直々に試飲のご対応をしてくださいました。テーブルにご用意頂いたのは3つのカップとやわらぎ水。カップ数から試飲は3種だろうと思っていたら、なんと4種も出して頂きました(そして、これがオードヴィの物語のまだ”第1章:Chapter1”であることに、この時点では全く気付きませんでした...)。

<Chapter1~山形米の純米編>酒米と一般米、吟醸造りの違い
160826 (193)オードヴィ庄内_試飲4種_雪女神 - コピー
最初は酒造好適米を使った①「出羽の里(酒米)の”純米”」と②「出羽燦々(酒米)の”純米吟醸”」の比較試飲。どちらもやわらかな米のうま味があり、②にはやさしい吟醸香が感じられました。続いて、③は酒米ではない「つや姫(一般米)の”純米”」。やや甘口で、心地よい酸味も感じられました。
これで終わりだろうと思っていたら、なんと④「大吟醸用の酒造好適米「山形酒104号」を使った”純米大吟醸”」を出して頂きました。登録名が「雪女神」に決まったばかりだそうですが、純潔で気品のある名前通りの、エレガントできれいな酒でした。手に入りにくい米なので、使っているのは10社程度しかないそうです。

(参考)山形酒104号(農研機構HPより):大吟醸酒用酒造好適米の育成を目標に、短稈で心白発現が極良の「庄酒2560,出羽の里」を母、高度精米での砕米率が低い「蔵の華」を父として、2001年に人工交配し、その後代から育成した品種。【長所】①玄米千粒重が大きい、②玄米粗タンパク質含有率が低い、③大吟醸酒としての醸造適性が良好。【短所】①葉いもち圃場抵抗性が”やや弱”、②耐冷性が”中”。

①「清泉川」純米、Alc.15.0%、出羽の里100%(精米歩合60%)、山形酵母、日本酒度+4、酸度1.4、1,296円/720ml。
②「清泉川・銀の蔵」純米吟醸、Alc.15.0%、出羽燦々100%(精米歩合50%)、山形酵母、日本酒度+4、酸度1.4、1,512円/720ml。
③「清泉川・つや姫様」純米、Alc.15.0%、つや姫(精米歩合70%)、明利酵母、日本酒度-2、酸度1.4、1,132円/720ml。
④「清泉川・山形酒壱〇四号」純米大吟醸、Alc.16.0%、山形酒104号(精米歩合40%)。

<Chapter2~日本酒のバリエーション編>王道の大吟醸、辛口と甘口の対極。
4種も利かせて頂いて満足!と思っていたら、なんとさらに4種も出して頂きました(しかも、すべて新しいカップです)。
160826 (201)オードヴィ庄内_試飲8種 - コピー
①~④までが山形米の純米系であったのに対し、⑤は「山田錦(兵庫原産の酒米の王様)の”大吟醸”」。純米大吟醸とは異なる、アル添で引き出された華やかな吟醸香とスッキリとしたキレが楽しめました。
続いて辛口の2種へ。⑥は「出羽きらり(酒米)の”純米吟醸”」で、日本酒度は+8、⑦は「麹米が出羽の里(酒米)の”原酒”」で、日本酒度は+10。後者は酒好きにはたまらない”アルコール度数が19度のガツンとくる酒”でした。
”辛口の階段”を上りきったら、今度は⑧の「つや姫(一般米)の”にごり酒”」で、甘口の世界へストーンと落とされます。あぁ、この組み立てがたまらない...

⑤「清泉川・金の蔵」大吟醸、Alc.15.0%、山田錦(精米歩合35%)、山形酵母、日本酒度+5、酸度1.2、2,268円/720ml。
⑥「清泉川・夏の辛口酒」純米吟醸、出羽きらり、日本酒度+8。
⑦「占飲」極辛原酒、Alc.19.0%、麹/掛:出羽の里/酒造用米(精米歩合70%、酒母55%)、きょうかい9号酵母、日本酒度+10、酸度1.3、1,134円/720ml。
⑧「つや姫 にごり酒」Alc.11.0%、つや姫(精米歩合70%)。

<Chapter3~日本酒のクライマックス編>円熟の極み。
160826 (218)オードヴィ庄内_古酒
160826 (218)オードヴィ庄内_古酒(説明書)
さらにお出し頂いたのが、なんとタンクで25年も寝かせた純米原酒。これだけの年数を経ているのに色合いは輝きのあるゴールドを保っています。ナッツやシェリー酒(アモンティリャード)のような複雑な香りで、まろやかな甘味と果物のような酸味があり、カラメルのニュアンスも感じられました。ワインの世界ではヴィンテージものが高い価値のひとつとされていますが、”穀物酒の古酒”には、果実酒の古酒とは違った良さがあり、日本酒の古酒もワインと同様に高い評価を得られる(べきである)ことを再認識しました。

⑨「清泉川・長期熟成酒25年・純米原酒」Alc.17.0%、雪化粧、今野種麹(秋田今野?)、きょうかい9号酵母、日本酒度±0、酸度1.8。

<Chapter4~果物の恵み編>フルーツの華やかな香味をワインとリキュールに
160826 (202)オードヴィ庄内_梨のミューズ - コピー
さらに物語は続きます。次にお出し頂いたのは、山形県・刈屋の梨で醸したワイン。和梨だけでは狙いの香味が出せないため、なんと洋梨(ラ・フランス)もブレンドしたそうです。白ワインに果汁を混ぜたものではなく、梨の果汁を酵母菌で発酵させた”本物の梨ワイン”。華やかな梨の香りと、極上のはちみつのような気品のある甘さが印象的でした。ミューズ(ギリシア神話の女神、「ムーサ」の英語名・複数形)という酒銘も洒落ています。
160826 (204)オードヴィ庄内_メロンリキュール
さらに、メロンのワインをベースにしたリキュールも利かせて頂きました。同社ではメロンのワインも造っていますが、リキュールにすることで、ワインとは違う魅力~凝縮した甘味と香りに、アルコールの力強さが加わり、甘口ながらもしっかりとした酒質~が感じられました。ワイン(果物の醸造酒)が”ぶどうの独壇場”であるのはもったいないとあらためて思いました。

⑩「梨のミューズ」ワイン、Alc.10.0%、刈屋の梨(和梨・洋梨)、1,440円/720ml。
⑪「メロンリキュール」リキュール、Alc.7.0%、メロンワイン・醸造アルコール・香料・糖類、410円/300ml。

<Chapter5~謎のリキュール?編>
満足感のダメ押しに次ぐダメ押しに酔いしれていたら(←利き酒なのに...)、次の一杯は、

「何の酒か当ててみてください。」

枯れた青草のような香りがしたので、ハーブ系(もしくは笹?)かと思い考え込んでいたら、答えはなんと、

「松」

アカマツの新芽を砂糖水に溶かして一升瓶の中で発酵させたものを原液としたリキュールでした。これはさすがに思いつきません。松ならではの清涼感のある香りがあり、体の中がスーッときれいになっていく感じがしました。成分的にも、約30種のアミノ酸やテルペン酸(精油)、葉緑素などを含んでおり、「薬酒」のひとつとしても期待できそうでした。ちなみに、「松酒」は酒田市西荒瀬地区の住民によって伝承されてきたそうです。商品の共同企画者は、山形県環境アドバイザーの守屋元志氏、リーフレットの内容の問い合わせ先はNPO法人庄内海岸のクロマツをたたえる会(蔵の近くの庄内砂丘は”白砂青松”の景勝地としても有名ですが、海岸線の松林はアカマツではなくクロマツだそうです)。

(参考)アカマツとクロマツの違い:アカマツは”雌松[めまつ]”とも呼ばれ、”雄松[おまつ]”と呼ばれるクロマツよりも葉がやや細くて柔らかく、手で触れてもクロマツほど痛くない。アカマツのほうが目に触れる機会が多く、樹皮は赤褐色(クロマツは比較して黒っぽい樹皮)。クロマツとアカマツの交じっている林では、稀に雑種の間黒松[あいぐろまつ]が生じる。

⑫「森のセラピー」リキュール、Alc.15.0%、松葉・清酒・スピリッツ・砂糖、2,100円/500ml。

<Chapter6~〆のデザート・カクテル編>柿と日本酒のマリアージュ
160826 (216)オードヴィ庄内_試飲(ワイン、リキュール) - コピー
最後(←本当にラスト)はやはり甘口のデザート酒。濃厚な甘みの”庄内柿の果汁”と、米麹のやさしい甘さを持つ”日本酒”を使ったカクテル(リキュール)。日本酒を介在させることで、アルコールと柿の果汁がよりまろやかに(しかも和のテイストに)まとまるのかなと感じました。あぁ、日本人に生まれて良かった...

⑬「柿滴カクテル」リキュール、Alc.7.0%、庄内柿・日本酒・醸造アルコール、1,028円/360ml。

160826 (217)オードヴィ庄内_試飲13種
結局、13種もの唎き酒をさせて頂きましたが、数の多さ以上に、その”物語の組み立て”に感動と興奮を覚えました。

★感想など
殆ど予備知識がない状態で訪れましたが、蔵の持つ”世界観”に圧倒されました。酒造りへのこだわりは言うまでもないことですが、社名のみならず、商品名にも洗練された響きがあり、ボトルの形状からパッケージに至るまで、あらゆる面へのこだわりが感じられました(社長さんの服装もシックでおしゃれでした)。13種すべての試飲に新しいカップをご用意くださり、運転手にも「香りだけでも」とすべてのお酒を注いでくださいました。細やかなお心遣いの数々にも感激しました。

山形の自然の恵みを余すことなく”命の水”に変える蔵。
数々の貴重な体験をさせて頂き、心身ともに心地よい酔いを感じながら酒蔵を後にしました。

(初稿)2016.8.31

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【見学】鳴海醸造店(青森・黒石) - 津軽のローカル線・弘南鉄道に乗って「菊乃井」の蔵元へ

津軽のローカル線・弘南鉄道弘南線に乗って江戸時代の面影を残すまち黒石へ。
中村亀吉酒造店に続き、「菊乃井」の蔵元の鳴海醸造店を訪ねました。

日時:2015年4月18日(土) 15:20頃~
場所:鳴海醸造店(青森県黒石市中町1−1 )
内容:自由見学、試飲
料金:無料

★アクセス
150418 (68)弘南鉄道_弘前駅
最寄駅は弘南鉄道弘南線の黒石駅。弘前駅14:30→黒石駅14:59の列車に乗って目的地へ向かいました。運賃は片道460円です。
150418 (72)弘南鉄道_田んぼアート
黒石駅の3つ手前の”田んぼアート駅”。様々な色の稲を植えて田んぼに巨大な絵を描く”田んぼアート”の第2会場の最寄駅です。この駅は12月1日から3月31日までの冬期間は列車が通過します。
150418 (74)弘南鉄道_さかいまつ
黒石駅の1つ手前の”境松駅”。
150418 (152)黒石駅
終着駅の黒石駅に到着。駅から酒蔵までは約1kmです。

★中町こみせ通り
150418 (83)中村亀吉酒造店_こみせ通り
酒蔵は”日本の道百選”にも選ばれている”中町こみせ通り”沿いにあります。道路の向こう側の建物は日本一と言われる酒林のある中村亀吉酒造店です。
150418 (84)中村亀吉酒造店_こみせ通りのひさし
中町こみせ通りの特徴は、アーケード状の通路です。道路側に並ぶ木柱の上に、冬の積雪や夏の陽射しを遮る”板張り天井のひさし状の屋根”がかかっています。江戸時代の趣を残す風情のある通りです。

★鳴海醸造店について
150418 (111)鳴海醸造店_外観
創業は文化三年(1806年)。七代目当主の鳴海信宏氏は、杜氏もつとめています。代表銘柄には「菊乃井」や、屋号の“稲村屋”と当主が代々継いできた“文四郎”の名を合わせた「稲村屋文四郎」などがあります。
150418 (109)鳴海醸造店_菊乃井の看板
「菊乃井」の名は、二代目が吟醸の搾りの際に、槽口に菊の枝を置いて成功したことに始まります。彼は菊の花を愛し、この芳香を酒に取り入れれば酒の楽しみもまた一段と増し、御得意先にも喜ばれると考えたそうです。
150418 (112)鳴海醸造店_外観
仕込み蔵は大正の初めに作られた土蔵蔵。夏は涼しく、冬は暖かいというように季節の温度変化が少なく、もろみの温度管理がしやすいそうです。

★店内
150418 (92)鳴海醸造店_売店
ゆったりとした売店のスペース。
150418 (105)鳴海醸造店_酒林
写真の左上は小さな酒林。のれんの奥が製造場ですが、この日は見学できませんでした。
150418 (103)鳴海醸造店_古道具類
昔の帳簿まわりの道具類も展示されています。
150418 (104)鳴海醸造店_酒袋
吟醸酒を搾った酒袋も販売されていました。

★鳴海氏庭園
150418 (101)鳴海醸造店_庭園
150418 (100)鳴海醸造店_庭園
敷地内には当主である鳴海氏の庭園もあります。
150418 (102)鳴海醸造店_庭園
この庭園は貴重な文化財として文化庁の登録記念物に指定されています。

★鳴海醸造店の酒造り
(a)杜氏
平成19年より杜氏をつとめる7代目当主の鳴海信宏氏は、東京農業大学を卒業後、酒類問屋で3年務め、平成5年に鳴海醸造店に入社しました。平成21年には全国新酒鑑評会で金賞を受賞し、平成22年には青森県清酒鑑評会にて知事賞を受賞しています。

(b)米
地元の酒造好適米(華吹雪・華想い・華さやか)を主に使用しています。

(c)仕込水
南八甲田の伏流水から湧き出た敷地内の井戸水を使用しています。

(d)酵母
“まほろば華”など、青森県のオリジナル酵母を中心に使用しています。

★試飲
150418 (106)鳴海醸造店_試飲

見学の後は試飲をさせて頂きました。

<試飲アイテム>
・「稲村屋文四郎」純米大吟醸
・「津軽の吟」大吟醸
・「稲村屋文四郎」大吟醸
・「こみせ」純米大吟醸
・「菊乃井」純米吟醸、かすみにごり酒、生原酒、精米歩合50%、使用酵母:まほろば吟・醇、Alc.17.5%、日本酒度-2.0、酸度1.5。
・「久○[きゅうまる]」純米吟醸初しぼり生原酒、中汲み、精米歩合50%、Alc.17.5%、日本酒度-0.5、酸度1.5。
・「菊乃井」純米吟醸、華吹雪100%使用、精米歩合50%、Alc.15-16%。
・「津軽の吟」純米吟醸、精米歩合60%、Alc.15-16%、

どのお酒も心地よい吟醸香とふくよかな味わいが楽しめました。特に生原酒はしっかりとした麹の甘味を感じつつも後味のキレがよく、飲み飽きのしないお酒でした。
青森県の米・水・酵母を使った”地酒”へのこだわりも感じられ、青森の肴で酒を楽しむ会にはぜひ使いたいと思いました。
東京では飯田橋にある青森県のアンテナショップ”あおもり北彩館”で鳴海醸造店のお酒が買えるそうです。

★青森県の代表的な酒造好適米(農研機構HP「すっきりとした酒が製成できる酒造好適米新品種「華さやか」の育成」より)
(a)「華さやか」について:
黒1900(♀)と岩南酒13号(♂。吟ぎんが)の交配品種。華吹雪、華想いに比べて(日本酒の雑味成分の元となる)アミノ酸度が低くすっきりした酒質となる。

(b)代表3種の比較(醸造小仕込み試験。2007年、青森産技センター弘前地域研。70%精白米80gを使用)
左から日本酒度-アルコール度数-酸度(ml)-アミノ酸度(ml)
・華さやか:+6.8-17.2%-2.3-0.4
・華吹雪 :+2.0-17.4%-2.0-0.8
・華想い :+4.6-18.3%-2.1-1.0

★帰路
150418 (158)黒石駅車両
帰路は17:20黒石駅→17:49弘前駅の列車に乗りました。
150418 (154)黒石駅案内板
ラッシュ時以外の改札は発車の5分前から行われます。それまではホームに入れません。
150418 (165)弘南鉄道の車窓からの風景
車窓からはのどかな夕景が楽しめました。
150418 (174)弘前駅
弘前駅に到着。この後は青森駅に向かいました。

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【見学】中村亀吉酒造(青森・黒石) - 日本一大きな酒林(杉玉) と 津軽百年食堂

日本でいちばん大きいといわれる酒林(杉玉)がある中村亀吉酒造店を訪ねました。

日時:2015年4月18日(土) 15:10頃~
場所:中村亀吉酒造店(青森県黒石市中町12)
内容:自由見学(外観のみ)
料金:無料

★アクセス
150418 (69)弘南鉄道_弘前駅ホーム
最寄駅は弘南鉄道弘南線の黒石駅。弘前駅14:30→黒石駅14:59の列車に乗って目的地へ向かいました。運賃は片道460円です。
150418 (72)弘南鉄道_田んぼアート
黒石駅の3つ手前の”田んぼアート駅”。様々な色の稲を植えて田んぼに巨大な絵を描く”田んぼアート”の第2会場の最寄駅です。この駅は12月1日から3月31日までの冬期間は列車が通過します。
150418 (79)弘南鉄道_黒石駅
終着駅の黒石駅に到着。駅から酒蔵までは約850mです。

★中町こみせ通り
150418 (83)中村亀吉酒造店_こみせ通り
酒蔵は”日本の道百選”にも選ばれている”中町こみせ通り”沿いにあります。
150418 (84)中村亀吉酒造店_こみせ通りのひさし
中町こみせ通りの特徴は、アーケード状の通路です。道路側に並ぶ木柱の上に、冬の積雪や夏の陽射しを遮る”板張り天井のひさし状の屋根”がかかっています。江戸時代の趣を残す風情のある通りです。

★中村亀吉酒造店について
150418 (86)中村亀吉酒造店_外観
創業は大正2年(1923年)。代表銘柄には「玉垂[たまだれ]」や創業者・中村亀吉の名前を冠した「亀吉」などがあります。代表取締役は中村和佳子氏。1986年1月5日から12月14日にNHKで放送された大河ドラマ『いのち』(原作:橋田壽賀子、主演:三田佳子)の舞台となった造り酒屋です。
150418 (85)中村亀吉酒造店_杉玉正面
インパクト十分の巨大な酒林。平成5年2月付の説明書きによると、酒林の直径は2.1m(1.1間)で、重さは1,500kg(400貫目)、創作は対馬義昭杜氏によるそうです。
150418 (88)中村亀吉酒造店_説明書き
同じく説明書きによると、酒林は”元禄3年(1690年)に刊行された『人倫訓蒙図彙[じんりんきんもうずい]』によると、杉の葉を束ねて酒屋の店先に吊して看板にその年の新酒が出来たことを知らせる印とした。球状になったのは寛政9年(1797年)頃だと云う。古典には酒神を祭る奈良県桜井市の大神[おおみわ]神社のある三輪山[みわやま]の御神木の杉で造ったとある。酒蔵では酒神の依代として御加護を願うための御守にした”そうです。
150418 (87)中村亀吉酒造店_杉玉
切妻造りの屋根は棟梁・村上英治氏によるものです。

★津軽杜氏・対馬義昭氏
杜氏の対馬義昭氏は昭和28年10月4日生まれ。昭和60年に1級酒造(清酒製造作業)の資格をとり、平成元年より杜氏をつとめています。平成20年度あおもりマイスターにも認定されています。
津軽地方には”津軽杜氏”という流派があり、以前は津軽杜氏組合も組織されていました。しかし、蔵の減少等により、同組合は解散してしまい、津軽杜氏は数少なくなったと言われています。

まるごと青森2008.3.25付の記事には、以下のように紹介されていました。
”(対馬義昭氏は)津軽杜氏組合で酒造りを学んだ生粋の津軽杜氏です。(略)。農業を行いながら、冬は酒造りを行う伝統的な杜氏であり、これは段々と少なくなっている日本の文化の一つです。”

★津軽百年食堂と黒石つゆ焼きそば
150418 (85)須郷食堂_外観
遅めのランチは、黒石駅前のロータリー近くにある須郷食堂[すごう-]で、黒石のご当地B級グルメのつゆやきそばを楽しみました。お店は大正元年創業の老舗で、写真右側の傾いた屋根が名物(?)のレトロな建物です。
150418 (87)須郷食堂_入口
青森県では三代、約100年続く大衆食堂を百年食堂と名付け、観光の目玉の一つとしています。同名の小説(森沢明夫著)やそれを原作とした映画(2011年)もうまれています。
150418 (84)須郷食堂_店内
昔懐かしい雰囲気の漂う店内。
150418 (140)黒石つゆ焼きそば
つゆやきそば700円。黒石つゆやきそばの特徴は、麺が太平麺[ふとひらめん]で、ソースはウスター系。豚ばら肉、たまねぎ、キャベツ、にんじんなどの具材を炒めたソースやきそばに和風のだし汁をかけ、 トッピングに揚げ玉とねぎをのせるのが一般的です。今までに経験のない不思議な味わいでした。
150418 (86)須郷食堂_つゆヤキソバン
地元の高校生が構想を練ってうまれたゆるキャラも...

中村亀吉酒造店を見学した後は、およそ170m離れた鳴海醸造店を訪れました。同じく中町こみせ通りにあります。

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【見学】浦霞の蔵元・佐浦(宮城県・塩釜) - ”うらがすみ”ではなく”うらかすみ”。きょうかい12号酵母のふるさと。

「浦霞」の蔵元、佐浦[さうら]を見学しました。「きょうかい12号酵母」のふるさとであり、全国的に有名な「浦霞」の由来も知ることができて、とても有意義な蔵見学でした。

日時:2015年3月4日(水) 11:00~
場所:(株)佐浦(宮城県塩竈市本町2-19)
内容:見学(ガイド付き、無料)、試飲(有料)

★アクセス
150304 (2)本塩釜駅
最寄駅はJR仙石線の本塩釜駅。駅から酒蔵までは約400mです。
150304 (3)本塩釜駅_案内板
この日は駅から1.2kmのところにある鹽竈神社[しおがま-じんじゃ]を経由して徒歩で向かいました。

★鹽竈神社
150304 (5)鹽竈神社_表参道 - コピー
150304 (7)鹽竈神社 - コピー
鹽竈神社は、全国にある鹽竈(鹽竃・塩竈・塩竃・塩釜・塩釡)神社の総本社です。陸奥国の一宮[いちのみや]で、地域の中で最も社格の高い神社とされています。

鹽竈神社を参拝した後に、佐浦までの900mの道のりを歩いて向いました。

★見学受付
150304 (12)佐浦(浦霞)事務所・売店
佐浦の「蔵ガイド」は事前予約制で、11時と14時の1日2回(各15分程度)。料金は無料ですが、利き酒は有料(300円)です。売店で見学の予約をしている旨を伝えると、男性のガイドさんが迎えに来てくれました。この回の見学者は私ひとりでした。

★蔵見学
蔵ガイドでは、酒蔵の外観を見ながら、佐浦の歴史や建物などについて説明してくれます。製造工程の説明や工場の見学はありません。

<歴史>
150304 (13)佐浦(浦霞)外観
佐浦は”鹽竈神社の御神酒酒屋”として、享保9年(1724年)に創業しました。現在の当主・佐浦弘一氏で13代目を数えます。鹽竈神社の立派な社殿を観た直後だったため、伝統の重みを感じました。

<「浦霞」の由来>
150304 (14)佐浦(浦霞)外観(タテ)
「浦霞」の酒銘は、源実朝(鎌倉時代の武将で歌人)の詠んだ詩より命名されたそうです。
『金槐和歌集』の中に「塩竃の 浦の松風 霞むなり 八十島[やそしま]かけて 春や立つらむ」という詩があり、そこから”浦”と”霞”の一字を引用したそうです。
なお、「浦霞」の読み方は、「うらかすみ」で「うらがすみ」ではありません。酒が濁るのは良くないため、縁起をかついで酒銘も濁らないそうです。

(参考)詩の大意:塩釜の海岸を吹く風も、霞を含んでいるかのようにやさしく吹きわたる。数多くの島はいっせいに立春を迎えたのであろうか。

<製造場>
150304 (11)佐浦(浦霞)享保蔵
佐浦では、塩釜市の「本社蔵」と、東松島市の「矢本蔵」で酒造を行っています。本社蔵には江戸末期から明治初期にかけて建てられたと言われる「享保蔵」(写真)の他に、「大正蔵」と「平成蔵」があります。「享保蔵」は風通しまで考えて設計されており、北側の扉から冷気を取り入れて南側の天窓から熱気を逃すことで室温を調節しているそうです。「大正蔵」は大正から昭和にかけて建てられ、固くて風化に強い”秋保石[あきう-]”を土台として、その上には火に強い「野蒜石[のびる-]」が使われています。大正蔵では「純米吟醸 浦霞禅」が造られています。
150304 (16)佐浦(浦霞)酒林
享保蔵の北側には酒林が吊るされていました。

<2人の名杜氏>
佐浦ではかつて、平野佐五郎氏と平野重一氏という全国に名を知られる2人の名杜氏が酒を醸していました(ともに岩手県の南部杜氏。重一氏は現在、佐浦の名誉杜氏に就任されています)。佐浦は全国新酒鑑評会において昭和6年の2位入賞以来、受賞から遠ざかっていました。ところが、佐五郎氏が酒造りを始めてからは、昭和27年の首席、翌年の2位、翌々年は入賞を逃すも、昭和30年には3位と次々と入賞を果たすようになったそうです。順位制ではなくなった昭和31年からは8年連続で金賞を受賞し、平成20年までに本社蔵で31回、矢本蔵(平成6年11月より稼働)で8回の金賞受賞を果たしています。

<きょうかい12号酵母>
浦霞の醪から採取された酵母は、日本醸造協会の「きょうかい12号酵母」として昭和60年(1965年)から平成7年(1995年)まで頒布されていました。

佐浦のHPには以下のエピソードが紹介されています。
”吟醸酒の香りは通常は、リンゴや梨のような香りがする。それがイチゴのような香りがしたと言う。「浦霞でイチゴのような香りを出した」という話を聞き、何か香りの成分を付け足したのではないかと国税庁の醸造試験場で調べに来たこともあったと言う。当然、何かを付け足すということは無く、それは吟醸酒の醸し出す自然の香りだった。”

これがきっかけとなって平野杜氏の評判が広がり、灘や伏見を含む全国の酒蔵から見学に来たいとの申し出があったそうです。
彼らは国税局を通して依頼したため、断り切れなかった佐浦には大勢の酒造関係者が訪れたそうです。これでは仕事にならないと、蔵元も杜氏も困り果てていたと言われています。

評判の高かった浦霞の酵母は、宮城県酒造組合の醸造試験所によって分離・培養され、県内の酒造場や平野杜氏の弟子たちに配布されていました。「平野酵母」と呼ばれたその酵母の使用者が鑑評会などで好成績を残していたため、噂を聞きつけた日本醸造協会が協会酵母として使わせてほしいと依頼をしたそうです。こうして、「きょうかい12号酵母」が誕生しました。
しかし、この酵母は後に”酸が多く出てしまう酵母に変異”してしまい、吟醸酒造りには向かなくなったため、頒布が中止されました。現在、佐浦では「きょうかい12号酵母」の流れを汲む酵母を自家培養して使用しているそうです。

<東日本大震災>
2011年3月11日に発生した東日本大震災では、震度6強の強い揺れと津波が塩釜市を襲いました。佐浦では建物の外壁崩落、浸水による機械の故障に加えて、お酒が3万本も破損するという被害を受けたそうです。壁が崩壊した蔵の様子を写真で見せて頂きましたが、とても心が痛みました。幸いなことに社員の方は全員ご無事だったそうで、比較的被害が軽微だった矢本蔵は2011年4月に再稼働し、本社蔵も同年9月には酒造りを再開できたそうです。

★利き酒 
蔵見学の後は売店のカウンターで利き酒をしました。料金は3種(+1種)で300円です。スマイルマーク付きのお猪口は、お土産に持ち帰れます。
150304 (19)佐浦(浦霞)試飲
①『辛口 浦霞』本醸造酒、まなむすめ(精米65%)、alc.15-16度、1,040円/720ml。
②『浦霞禅』純米吟醸酒、トヨニシキ・山田錦(精米50%)、alc.15-16度、2,160円/720ml。
③『しぼりたて 浦霞』純米酒生酒、まなむすめ(精米65%)、alc.17-18度、1,300円/720ml。
④『浦霞 本格焼酎につけた梅酒』リキュール、alc.12-13度、1,800円/720ml。

梅酒に使われている焼酎は、震災時の特例で清酒もろみを蒸溜したものを使用しているそうです。

150304 (18)佐浦(浦霞)原料米 - コピー
利き酒カウンターには、原料米のサンプルが展示されていました。

★すし哲(宮城県塩竈市海岸通2-22)
150304 (20)すし哲(塩釜)外観
150304 (22)すし哲(塩釜)
蔵見学の後は、 仙台エスパルにも支店がある人気の寿司店でランチをとりました。佐浦と本塩釜駅のちょうど中間くらいにあるお店です。

この後は、松島海岸を経て、キリンビール仙台工場を見学しました。

(初稿)2016.8.25

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プロフィール

Nomura Seiji

Author:Nomura Seiji
・お酒と薬膳理論の入門講座、飲酒教育
 nomuras.jimdo.com
・JSAワイン検定講師
・JSAワインエキスパート
・1971年生
・東京在住

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