FC2ブログ

【見学】京都町家麦酒醸造所(京都・中京区) - 京都御所の近くの名水で醸す地ビール

京都御所の近くにある地ビールの醸造所を訪ねました。この醸造所では清酒「キンシ正宗」の創業地に湧く名水を仕込み水として使用しています。少人数での見学は通常不可ですが、この日は他の団体客のツアーに混ぜてもらえました。

日時:2016年7月8日(金) 15:40頃~
場所:京都町家麦酒醸造所(京都市中京区堺町通二条上ル亀屋町173)
内容:見学、試飲(ガイド付き)
料金:300円(キンシ正宗・堀野記念館の入館料)

★アクセス
160708 (199)三条大橋
最寄駅の丸太町駅(京都市営地下鉄・烏丸線)から醸造所までは約700m。地下鉄東西線の烏丸御池駅(烏丸線も停車)、京都市役所駅からは各800m、900mです。この日は京阪電鉄の三条駅から約1.5kmの道のりを歩きました。写真は三条大橋からの鴨川の眺め。

★外観
160708 京都町家麦酒醸造所 (0)_外観
京都町家麦酒醸造所の外観。清酒「キンシ正宗」の創業地にある堀野記念館と同じ敷地内です。地ビールの製造はキンシ正宗(株)のグループ会社のマツヤ(株)が行っています。

★名水・桃の井
160708堀野記念館(29)桃の井
堀野記念館にある”桃の井”の井戸。京の名水“染井の水”と同じ水脈に属しており、キンシ正宗が創業した天明元年(1781年)より酒造に適した水を供給し続けています(清酒の酒造拠点は明治13年(1880年)に伏見に移転しています)。水温は年間を通じて16℃、水量は毎時3トン。若い板前さんらしき人がお店で使う水をポリタンクに汲みにきていました。

★工場見学
160708 京都町家麦酒醸造所 (2)麦汁ろ過槽・煮沸釜
衛生管理のため入室前に靴にカバーをかけ、ヘッドキャップをかぶります。こじんまりとした工場なので一度に入れるのは10人程度。器具と器具の間の通路に入り込んでガイドさんの説明を聞きました。案内してくれたのは女性の造り手のMさん。ビール造りは2人で行っているそうです。
160708 京都町家麦酒醸造所 (01)屋内
建物上部の小窓は特に使われていないそうです。

★ビールの製造工程
①仕込み:
160708 京都町家麦酒醸造所 (1)仕込釜
仕込釜。麦芽と水(桃の井の井戸水)を入れて煮込み、麦芽の糖化力ででんぷん質を糖分に変えます。この工程で甘い麦汁ができます。

②麦汁濾過:
160708 京都町家麦酒醸造所 (2)麦汁ろ過槽
麦汁濾過槽。仕込釜でできた麦汁から麦芽粕を取り除き、純粋な麦汁を抽出します。

③煮沸:
160708 京都町家麦酒醸造所 (3)煮沸釜
煮沸釜。麦汁にビールの苦味と芳香を決定づけるホップを加えて煮沸、殺菌します。ホップの香りを強く引き出すIPAというタイプの場合、アロマホップを最後の方に入れることで香りが飛ばないようにしているそうです。

④濾過:
160708 京都町家麦酒醸造所 (4)ワールプール
ワールプール。煮沸によって発生したたんぱく質やホップ粕などを遠心分離の力でタンクの真ん中に集めて取り除きます。

⑤冷却:加熱によって無菌状態になった麦汁(約90度)を冷却機に通し、熱を取り除きます。

⑥発酵:
160708 京都町家麦酒醸造所 (5)醗酵槽
四角い縦長の発酵タンク×3基。
160708 京都町家麦酒醸造所 (5)醗酵槽下部
発酵タンクに移した麦汁に酵母を加えて主発酵を行います。酵母は麦汁に含まれる糖分をアルコールと炭酸ガスに分解し、約1週間で若ビール(日本酒だとどぶろくという説明)と呼ばれるものができあがります。発酵温度はおよそ20度。酵母はレギュラー商品4銘柄すべてに同じものを使用しているそうですが、その時々によりできあがるビールの香味は異なるそうです。

⑦熟成:完成したビールを別のタンク(カーボネーション・タンク?)に移し、約1℃の低温で1週間ほど熟成させます。この時に、ガスの量が足りなければ注入し、多ければ抜きます。炭酸ガスは酵母が生成するものに加えて、人工的にも注入しているそうです(安全管理などのため。大手ビール会社に以前確認した際は概ね天然の炭酸ガスだけを利用しているとの回答でした)。アルコール発酵の役割を終えた酵母はタンクの下にしずむため、濁りがとれてきれいなビールになります。同社のビールは熱処理もフィルター濾過も行わないため、酵母が入った状態で瓶詰・出荷されます。

こうして約2週間かけて同社のビールが完成します。

1回の仕込量は約1,000kl(330ml瓶で約3,000本分)で、年間で50,000kl(50仕込み)くらい行うそうです。新商品を開発する際の”お試し”仕込みは最低500ℓ以上。つまり、それ以上のロットなら顧客が希望するオリジナル・ビールを造ることも検討できるようです。

★試飲
工場見学の後は、堀野記念館に戻って試飲をさせて頂きました。
160708 京都町家麦酒醸造所_試飲 (1)
左はケルシュ・タイプの『町家・かるおす』、右がアルト・タイプの『花街・まったり』。ともに上面発酵(エール)型。
160708 京都町家麦酒醸造所_試飲 (2)
”かるおす”はフルーティーな香りと心地よい酸味、”まったり”は濃厚なコクが楽しめました。

★同社の主要銘柄
①ケルシュ(爽やかタイプ):『京都町家麦酒“かるおす”』、Alc.5%、IBU25。京都弁では“かるおす”と称されるような軽い飲み口のスッキリタイプ。
②アルト(コクのあるタイプ):『京都花街麦酒“まったり”』、Alc.5%、IBU33。香ばしいカラメル麦芽をふんだんに使ったほろ苦い味わい。
③黒ビール(上面発酵だからスタウト?):『京都平安麦酒“くろおす”』、Alc.5%。ロースト麦芽の苦味と香ばしさを存分に楽しめるビール通のためのビール。
④京都はんなりIPA(苦味の強いタイプ)【季節限定麦酒】: Alc.6%、IBU64。ホップを通常の1.5倍使用。フルーツのようなホップ香が楽しめる柔らかなIPA。使用ホップはケントゴールディングス・ナゲット・カスケード。

ホップの主な種類と特徴は、”ベルギービール博物館”さまのHPにわかりやすくまとめられています。

IBU(International Bitterness Units)はビールの苦味の程度を測る”国際苦味単位”。ビールの苦味成分の中でもっとも苦くかつ量の多いホップ由来のイソフムロンの割合(ppm単位)として定義されます。麦芽(モルト)を多く使用しているビールでは苦味の効果はあまり目立たないので、重いビールでは、風味とのバランスを取るために、高いIBUの値が必要となります。軽いアメリカン・ラガーのIBUはおおよそ5以下、バーレーワインでは100を超えることもあります。

★感想など
京都の老舗酒蔵の創業地に湧く名水で醸すクラフト・ビールは、とても贅沢な”京都の地ビール”だと思いました。
前日の電話照会にも関わらず親切に対応してくださったスタッフの皆さまに感謝しながら、またこのビールを愉しみたいと思います。

醸造所見学の後は、阪急京都線の烏丸駅まで歩き(約1.5km)、お酒の神様・松尾大社へ向かいました。

[Link]Indexページに戻る
[Link]Nomura Seijiの公式HP
[Link]ご意見・お問い合わせはこちらから
スポンサーサイト



テーマ : ビール工場見学
ジャンル : グルメ

キザクラカッパカントリー・黄桜記念館 - 京都・伏見に湧く名水「伏水」と京都で最初の地ビール

伏見[ふしみ]の地名の由来を冠した名水・伏水[ふしみず]の井戸がある黄桜記念館を訪ねました。「灘の男酒、伏見の女酒」という有名な言葉は、仕込水の水質が”灘は硬水、伏見は軟水(中硬水?)”という違いに由来します。黄桜ではこの伏水を使い、京都初の地ビールも手掛けています。

日 時:2016年7月8日(金) 11:45頃~
場 所:黄桜記念館・キザクラカッパカントリー(京都市伏見区塩屋町228番地)
内 容:自由見学(無料)、有料試飲
最寄駅:京阪本線・伏見桃山駅(約500m)

★アクセス
160708 (6)京阪電鉄中書島駅
この日は大阪市内から京都の伏見まで京阪特急を利用しました(淀屋橋駅9:00→中書島[ちゅうしょじま]駅9:37、運賃390円)。駅を出て、濠川[ほりかわ]の川辺を散策し、月桂冠大倉記念館を見学してから徒歩で向かいました。黄桜記念館から中書島駅までは約600m、月桂冠大倉記念館までは約350mです。

★キザクラカッパカントリー
160708 (101)キザクラカッパカントリー
160708 (109)黄桜_外観遠景
キザクラカッパカントリーは黄桜本社の近くにある直営の複合施設です。
黄桜記念館は、この道路を挟んで南側と北側に2棟あります。記念館の他には、南側に黄桜清酒工房と㈲東山酒造(共に見学不可)、北側に地ビールの麦酒工房(一部見学可)、黄桜商店(売店)、黄桜酒場(地ビールレストラン)、黄桜広場があります。
160708 (102)黄桜_外観
㈲東山酒造は黄桜の関連会社で、杜氏は南部杜氏の保坂康夫氏がつとめています。代表銘柄には、鳥取県・田中農場の”特別栽培米・山田錦”のみを使用した「坤滴[こんてき]」や、京都産の酒米”祝”を使った「魯山人」などがあります。

★伏見の名水、「伏水」
160708 (124)黄桜記念館(南側)入口
伏水は黄桜記念館の南棟の敷地内にあります。
160708 (113)黄桜記念館_黄桜記念館_伏見の名水・伏水アップ
黄桜の敷地にある井戸からは、桃山丘陵地帯を流れる良質な地下水がこんこんと湧き出しています。伏見はかつて「伏水」と呼ばれるほど地下水の豊富な土地であったことから、この井戸もそう命名されました。この伏水で仕込んだ酒は、”きめの細かいまろやかな口当たりと、淡麗な風味”になるそうです。井戸の深さは約60mで、ナトリウム・カルシウム・マグネシウムなどのミネラル分を適度に含んでいます。
160708 (112)黄桜記念館_伏見の名水・伏水
伏見の町を開いた豊臣秀吉は、伏見城内に「金名水」、「銀名水」と呼ばれる井戸を掘り、茶会を催していたそうです。
160708 (141)黄桜記念館_伏見の名水・伏水(取水風景)
近所の方たちが水を汲みに来ていました。長年伏見に住んでいるというシニアの女性は、「洗濯と洗い物以外はこの水(伏水)を利用している」と話していました。伏水で作る料理の味は、水道水を使ったものとは全く異なるそうです。名水を生活用水として使えることは贅沢だなぁと思いました。
160708 (142)黄桜記念館_伏見の名水・伏水(取水の注意)
取水量の上限はありませんが、1度に汲めるのは1.0ℓまで。それ以上汲みたい時は、列に並びなおす必要があります。この日も数名の方が順番待ちをされていました。ここ数日はなぜか水の出る勢いが弱くなっていると話していました。
160708 (107)黄桜_伏水ペットボトル
売店では伏水のペットボトル(500mlで税込140円)も販売していました。
100mlあたりの栄養成分は、
・エネルギー・タンパク質・脂質・炭水化物=0
・ナトリウム=2.5㎎(食塩相当量0.0064g)
・カルシウム=1.6㎎
・マグネシウム=0.55㎎
・カリウム=0.38㎎
硬度は61㎎/ℓで、pHは6.4です。

★黄桜記念館(南棟)の展示コーナー
伏水の他にも、記念館にはみどころがあります。
160708 (120)黄桜_映像コーナー
現在の酒造工程を紹介する映像コーナー。
160708 (119)黄桜_昔の酒造りのジオラマ劇場
昔の酒造りのジオラマ劇場。
160708 (121)黄桜_洗米のようす
ジオラマ劇場の”洗米”のようす。
160708 (111)黄桜記念館_昔の酒造道具
昔の酒造道具。
160708 (116)黄桜記念館_建造物
中庭。
160708 (115)黄桜記念館_建造物
この建造物は何だろう...
160708 (118)黄桜記念館_中庭入口
中庭を抜けて南側に進むと、観光バス駐車場への出入口があります。黄桜の菰樽が良い雰囲気を醸し出しています。
160708 (117)黄桜記念館_中庭
駐車場からの酒造場の眺め。

★黄桜記念館の北棟
160708 (108)黄桜記念館(北側)
続いて、記念館の北棟へ...
160708 (125)黄桜記念館(北側)ギャラリー
入口を入ってすぐ正面にギャラリーがあり、昭和30年代からのCF(Commercial Film)ライブラリーや、おなじみのキャラクター”カッパ”の原画が楽しめます。河童を描く漫画家は長らく清水崑[しみずこん]氏がつとめていましたが、彼が亡くなった1974年からは小島功氏が担当しています。ちなみに、「河童の歌」の冒頭にあるシャックリは、歌詞の一部だそうです(シャックリを歌詞と思っていない人が多いとか)。
160708 (129)黄桜記念館(北側)河童資料館
ギャラリーの右手にある”かっぱ淵”をくぐった先には、「河童資料館」があります。河童の起源や歴史、各地の伝承などを展示した日本有数の河童の資料館だそうです。

★有料試飲(黄桜商店のショット売りコーナー)
160708 (104)黄桜カッパカントリー_有料試飲
売店では、1ショット100円(60ml、税込)で利き酒が楽しめます。
左:「吟醸生酒」精米歩合55%、Alc.16%
右:「涼の樽酒 純米吟醸」国産米100%使用、精米歩合60%、Alc.15%

★京都で最初の地ビール「京都麦酒」と黄桜酒場
160708 (132)黄桜酒場_黄桜吟醸庵
黄桜は1995年に京都で最初の地ビール「京都麦酒」を発売しました。仕込水はもちろん”伏水”。地ビールレストラン・黄桜酒場の奥にあるカウンター越しに、麦酒工房の一部を見学できます。
160708 (133)黄桜_麦酒工房
160708 (135)黄桜_麦酒工房
カウンターからの眺め。

160708 (138)黄桜麦酒の製造工程
お店の通路には、麦酒の製造工程のパネルもありました。
「黄桜麦酒(酒蔵仕込)のできるまで」
①仕込槽:砕かれた麦芽は伏水と混ぜ合わされ、麦芽中のでんぷん質が糖分へ変わっていきます。
②ろ過槽:たっぷりと糖分を含んだ麦汁がゆっくりとろ過されます。
③煮沸釜(仕込釜):煮沸によってタンパク質を凝固。添加されたホップによりビール独特の香りと苦味が生まれます。
④ワールプール(固液分離槽):凝固タンパク質の分離が行われます。
⑤プレートクーラー:透明な麦汁は、所定の温度に冷却されます。
⑥発酵タンク:冷却された麦汁に無菌の空気と酵母を加え、発酵が始まります。糖分がアルコールと炭酸ガスに分離され、「若ビール」ができあがります。
⑦貯酒タンク:若ビールは約0℃の低温で熟成され、2週間程度の貯蔵期間に入り、まろやかな味わいになっていきます。
⑧珪藻土ろ過:熟成の終わったビールをろ過。酵母を取り除き、透き通った美味しいビールができあがります。
⑨ろ過受タンク(サービスタンク)
⑩樽詰め

160708 (136)黄桜酒場_京都麦酒アルト
アルトの一口グラス(税別390円/230ml。グラスは450円/275ml、ジョッキは620円/425ml)。主要3銘柄の飲み比べセット(630円)もありました。
・「アルト」Alc.5%、麦芽・カラメル麦芽・ホップ。焙煎した麦芽の香ばしさ。
・「ケルシュ」Alc.5%、麦芽・ホップ。華やかな香り、味わいはさっぱり。
・「蔵のかほり」Alc.4%、麦芽・ホップ。清酒酵母使用。

160708 (139)黄桜酒場_地ビールカレー黒板メニュー
メニューのカッパのイラストがツボだったので...
160708 (137)黄桜酒場_地ビールカレー
地ビールカレー(税別670円)も注文しました。

★幻の小麦を使ったビール「ナイル物語」
黄桜では、早稲田大学のエジプト考古学と京都大学の植物遺伝学の協力を得て、オリジナル・ビールも造っています。
・「ホワイト・ナイル」:紀元前8000年頃以降、古代エジプトで栽培されるようになった”エンマー小麦”をよみがえらせて、麦芽と共に使用。Alc.5%。
・「ブルー・ナイル」:紀元前1000年頃、古代エジプトで栽培されるようになった”デュラム小麦”(エンマー小麦の近縁種)と麦芽を主原料に、ゆずとコリアンダーを副原料として使用。Alc.5%。
・「ルビー・ナイル」:1920年代まで栽培され、その後忘れられた謎の小麦 ”ピラミダーレ”をよみがえらせて、麦芽・カラメル麦芽と共に使用。赤銅色。Alc.7%。

この飲み比べセット(690円)を利くべきだった...

★黄桜の社名の由来
創業者の松本治六郎[まつもと・じろくろう]氏が”黄桜の花”を好んだことに由来します。黄桜は、「鬱金桜」と呼ばれるサトザクラの一種で、淡く緑色がかった白い花を咲かせます。春の黄桜広場では、満開に咲き誇る黄桜が楽しめるそうです。

★黄桜の沿革
1925年(大正14年)、伏見の蔵元・澤屋(現:松本酒造)の分家として創業
1951年(昭和26年)、法人化して、株式会社松本冶六郎商店を設立
1964年(昭和39年)、社名を黄桜酒造株式会社に変更
2006年(平成18年)、10月1日、現在の社名・黄桜株式会社に変更

この後は、黄桜の本家、松本酒造を訪ねました。

[Link]Indexページに戻る
[Link]Nomura Seijiの公式HP
[Link]ご意見・お問い合わせはこちらから

テーマ : ビール工場見学
ジャンル : グルメ

プロフィール

Nomura Seiji

Author:Nomura Seiji
・お酒と薬膳理論の入門講座、飲酒教育
 nomuras.jimdo.com
・JSAワイン検定講師
・JSAワインエキスパート
・1971年生
・東京在住

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR